20話 再起
水の柱から取り出されたその槍は、全身に青と銀が混ざったような、幻想的な色合いをしていた。
そして、デイジーの手に従うようにして、宙に浮いている。
その姿を見た瞬間、
「なに、これ……」
ローリエは、思わず震えた。
槍の中には、桁違いの力が渦巻いている。そんな感覚を得たのだ。
……これは怖い、というか、知覚するのに体力を削られるような……
今まで感じた事がない震えの中で、ローリエは見ていた。
「親友!!」
槍を手にしたデイジーが、思い切り、アクセルに向かって槍を投げるのを。
「……ああ」
投げられた槍を、アクセルが見もせずに受け取ったのを。
そして 、
――ブン!
ローリエは見た。
アクセルが受け取った槍を手元で一回転させ、その刃先を鎧の騎士の腕に当てたのを。更には、
「――!」
切断の音すら立てず。
鎧の騎士の腕を切り落としたのを。
そんな、神の鎧を圧倒する光景を、その目で見たのだ。
†
手の中に、ズシリ、という重みが加わったのを、俺は味わっていた。
「デイジー。君のお陰で、行けそうだ」
槍が飛んできた方向を見れば、デイジーが、足の動かないローリエに肩を貸して、泉から離れている最中だ。
彼女の表情は明るく、そしてこちらに、親指を立てたサインを向けてくる。
それに笑みをもって返した後、俺は目の前を見る。
そこには、自らの切断された腕を拾っている鎧の騎士がいる。
騎士は手を拾って、興味深そうに切断面を見た後、
【人為の工夫は、やはり良い】
後ろに放り投げた。
同時、鎧の残った手に持たれていた剣が
――ぐにゃり
と歪んだ。
それは高熱を当てられた鉄のように、或いは水あめのように流動的に形を変化させた。
そして起きるのは、切り落とした右腕との同化だ。
右腕の肘から先が、剣付きの拳になったのだ。
「あ、アクセル! 気を付けて! その鎧の、魔力が膨大に、膨れ上がってるわ!」
背後から、ローリエの声が飛んでくる。
精霊種たる彼女には敏感に感じ取れているのだろう。
「ああ、分かってるよ、ローリエ」
俺も同じものを感じ取っていた。
目の前にいる鎧の迫力が一段階上がったのだ。
跳ね上がった力と、こちらを倒そうという戦意と共に、ビリビリと皮膚を刺激してくる。
「文字通り、神様の奥の手って訳か」
鎧の騎士は、右腕を引いて構える。
殴る要領で、ぶった切るようなそんな構えだ。そして、
【最後の シレンだ 逃げること は 能わない】
との言葉が、響いた。




