18話 水上
剣の一撃に合わせてタックルをぶち込んだアクセルは、鎧の騎士と共に、泉の浅瀬にいた。
十数メートル前には、鎧の騎士が相変わらず健在だ。
タックルにより吹き飛ばしで一旦距離を取ったものの、ダメージはほとんどないようだ。
だが、そんなことは分かっている。大事なのは、ここから後ろの二人に、何ら戦意を活かせない事だ。
「神様というべきか、鎧の騎士というべきか、分からないけども。――俺の仲間が、頑張っている間な。俺との戦いを楽しんで言ってくれ」
その言葉に、にやり、と兜の頭が笑った。
刹那、
「――」
音を超えた速度で踏み込んできた。
最速の突進だ。
鎧の騎士の速度は、先ほどから上がりっぱなしだ。
付いていける範囲内ではあるが、この速度で動き回られると面倒でもある。だから、
「ここからは、時間稼ぎの為にも、細かい技を披露しよう……! 【竜脚】!」
言葉と共に俺は、足元を蹴る。
蹴りの勢いで飛沫となって吹き飛ぶのは、浅瀬にあった水だ。
それが鎧の顔の付近目掛けてぶち当てた。瞬間、
「……」
突進がわずかにぐらついた。
そして、手で水を払おうとして、その上、こちらを探す動きを見せた。
……視覚はあの兜の光――目の付近あるみたいだな。
水飛沫で動きが鈍った。
が、まだ突進速度は保たれている。
だから、その速度を利用する。
「例え倒せなくても――」
俺は鎧の騎士の腕を、己の腕と絡めるように取る。
そして、そのまま、
「これならどうだ……!」
背負うように投げ捨てた。
――バシャン!
という飛沫と共に、鎧の騎士を、背中から水面に叩きつける。
本来は硬質な鎧を纏った者の、生身に衝撃を与える技。
重ければ重い程、その衝撃は着用者に響き、頭を揺らすことになる。だが、
……今回の相手の中身は空っぽだ。
効き目はどんなものだろうか、と、水面の甲冑騎士を見ていると、
「……」
数秒、起き上がらない。が、
「――」
バネ仕掛けのように起き上がった。
その兜の表情は、笑みのような形になっている。
【先の技は、生きてきて初めて食らった。それが人の子の格闘か】
「ダメージはなさそうだが……ちょっとは、動けなくなってくれるのかね」
その言葉に対する反応は、再びの突進だ。
先程と同じように突っ込んでくる。
だから俺も、先と同様に投げようと腕を絡めようとした。が、
【――一度見た技は、あんまり面白くないから、いい】
甲冑騎士の胸に文字が光った瞬間、
――パン!
と、俺の手は鎧の腕に弾いてきた。
「なるほど……!」
俺は弾かれた腕の勢いを利用して、身体を流しつつ、更には鎧の足を蹴った。
走ってくる相手に足を引っかけつつ、横に進む動きだ。
当然、鎧はバランスを失い、自分の背後ですっこける。
そのまま倒れて、しかし数秒で立ち上がる。
そしてその兜には、笑みが浮かんでいる。
……楽しそうだな。
俺の手と足にビリビリとした痺れが来ている。
先程まで剣で受けていたから分かってはいたが、パワーや重量も相当なのだから当然だ。
しかしそれ以上に厄介であるのは、
「一度で飽きるとか、贅沢な神様だな」
一回技を食らったら、二度目は弾いてくる事だ。
先ほどの、剣のスキルを使っている時もそうだった。
二回目からは避けたり、弾いたりしてくる。
ただ、ひとつの技を食らうと、何秒か止まってくれるのは有情ではある。その反応はこれっきりかもしれないけれど、
……試す価値はある。
だから、俺は肩を回してから、構える。
「なら、別の技でエスコートしよう。――よそ見は禁止だぞ、神様」
鎧の騎士の兜は、にやりと、笑った。
その反応に俺も笑みを浮かべながら一歩を踏む。
他所に――デイジーたちの元に行かせる余裕もなくすために、俺は神の鎧に向かっていく。
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