32話 行きはよいよい
ウロボロスを討伐したことで、精霊都市には様々な変化が訪れた。
一つは精霊の泉の汚れが直ったという事。
どうやらウロボロスが原因であったという読みはあっていたようで、精霊の泉の水は奇麗な色を取り戻していた。
パルムによれば、まだ汚れの残滓が残っているとはいえ、数日もすれば武器の精練に利用できる、ということだった。
そんな精霊の泉以外にも、ウロボロスが原因で起きていた問題は幾つかあり、それらも良い方向に変化した。
それらはとても良い事であるのだが、その変化の一部は俺たちにも影響を与えていて、
「す、すみません。本当に……。アクセルさんたちを向こうに返すことが出来なくて……」
「いやあ、別にパルムさんが謝る事じゃないよ。まさか、しばらく精霊道が開けなくなるなんて、予想がつかなかったんだから」
そう。ウロボロスに食われたり、戦闘の場所に使われたせいもあってか、精霊道がしばらく使用不能になってしまったのだ。
「ローリエの話だと、調整や何やらが必要みたいらしいな」
ローリエがウロボロス戦の後、精霊道を開こうとしていたが、『あ、もうこれ、人通れるサイズにならないわね。一旦、魔力の循環のみにして、色々と直しましょう!』と言っていたし。
「すみません。復旧の目途も、出せない状態でして……」
「まあ、あれだけの戦闘をやらかした後なんだから、気にしなくていいよ。ちょっと帰れなくなっただけだし。それにこうして生活の面倒も見て貰えてるしさ」
そう。俺たちは宮殿の一角にある客間に泊まっていた。
こういう状況になってしまったせめてものお詫び、だとパルムが宿から何まで手配してくれたのだ。
因みに俺と一緒にこちらに残ることになったデイジーもいて、
「親友、宮殿の中にも温泉があるみたいだぜ?」
今は客間のデスクに備え付けられた、宮殿内の案内板を見ながらそう言っていた。
「宮殿内の温泉か。面白そうだな」
「うん。後で行ってみようぜ、親友!」
「そうだな。一息ついてから行くか」
そんな風に話す俺とデイジーを見て、パルムは目をぱちぱちとして驚きを露わにしていた。
「お二人ともこういう異常事態に慣れていらっしゃるというか、前向きなんですね……」
「予想外の出来事はいつでも起きるもんだって勇者時代に学んだからな。それに、後ろを見る必要がないしさ。そもそも槍も直す必要あるんだから」
精霊界の精霊都市に来た一番の目的がまだ果たせていない以上、帰る必要性もないのだ。それに、
「泉が回復して、使えるようになるまで、時間もあるしさ。折角だから精霊都市で仕事とか、何かしらやる事を探そうとは思うよ」
「おー、付き合うぜ、親友。なかなかこっちに来れる事は無いからなあ」
などと、デイジーと共にゆったりと喋っていると、
「……その、アクセルさん。デイジーさん。このような状況で、なんなのですけども、少し込み入ったお話をさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
パルムがそう切り出してきた。
今までの微笑やら、申し訳なさそうな表情とは異なる、どちらかというと悲しそうな表情で。
「込み入った話っていうと?」
だからすぐに問い返すと、パルムは意を決したように言葉を紡いだ。
「精霊都市を救ったお二人にお願いがあるのです。…………どうか、精霊姫様を救って頂けないでしょうか? 今も病に蝕まれ、命の危機を抱えているあの方を」
最近、裏サンデーで、「叛逆の血戦術士」という作品の漫画原作を始めました。是非、そちらも読んで頂けると嬉しいです。




