26話 止める者
ウロボロスが出現したことを確認して、突っ走る事、数秒。
標的に肉薄したゲイルは、そのまま一歩で飛び上がり、
「まずは、アクセルが踏みやすいような姿勢になってもらおう。――【左腕槌】」
左の拳底で、ウロボロスの頭を上から殴り倒した。
その衝撃はすさまじく、一瞬で、ウロボロスの頭と首が地面に落とされた。
「――!?」
その威力に驚いたのか、唸りの声をあげながらも、ウロボロスはまだ動こうとした。
だがそこに、バーゼリアが飛び込んできて
「それだとまだまだ、ご主人が走りづらいでしょ! 【竜炎の双拳】!」
炎で象られた二つの拳で殴って、草原の大地にウロボロスの頭を半ばほど埋め込んだ。
「……!!」
それだけでウロボロスの身動きがほとんど取れなくなったようだ。
しかし、こちらの動きは、まだ終わっていない。
「まったく二人とも野蛮ですよ。道はスマートに作るものです。――【氷雪固着】」
サキが呪文を唱えると同時に、地面をかかとで叩いた。
瞬間、地面ごと、ウロボロスの頭が、凍った。
動きが、完全に止まる。
これで勇者お手製の道の完成だ。
「さ、一時的とはいえ、しっかり舗装させていただきました」
「気を付けて行ってね、ご主人ー」
「ではな。アクセル」
こちらの声を聞いて、アクセルは笑みを浮かべて走り出し
「ああ。ありがとう皆。ちょっと行ってくる」
そのまま、加速して、ウロボロスの首が生える光の中へ突っ込んでいった。
あっという間に見えなくなる。
「……よし。これであとは――貴様を止めつつ、倒すだけだな」
アクセルを見届け終わるのと同時、凍り付いていたウロボロスの首が、地面から引きはがされた。
そして八目を凶暴に光らせ、明確な敵意を向けてきていた。
自分にだけではない。背後にいる職員らや、サキ、バーゼリアにも、だ。
「ああ、完全にロックオンされていますね」
「だねえ。とりあえず、ボクらは作戦通り、職員さんたちの撤退を支援する形だけども」
「ああ、その間の、足止めは己がやるから問題はない。ここからは、一歩も通さんから安心して、彼らを避難させてくれ」
ゲイルはそう言って、両腕を大きく広げて、仁王立ちするかのように構えた。
「さあ、ウロボロスよ。第二ラウンドだ」
「グウ……!!」
こちらの闘士に呼応するかのように、ウロボロスは八目の光を強めた。
このような状況であるけれど、ゲイルは思わず微笑んだ。
「――己が名は、拳帝の勇者にして、鉄血の鬼、ゲイル。強敵は何よりも好ましい相手だ。故に、いざ、参る……!」
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