6話 過去の繋がり
それは大きなハサミのマークが刻まれた門を持つ三階建ての建物だった。
「ここで、いいんだよな」
「ああ。そうだぜ、親友。ここが考古学ギルド『スコルピオ』だ」
あそこに看板もあるぜ、とデイジーは門の脇を指し示す。
そこには『考古学ギルド受付。ご用の方は奥へどうぞ』との文字と、ハサミのマークが掘られた看板があった。
「奥へってことは、勝手に門を開けて入ってもいいのかね」
「多分。オレがこっちにいた時は、普通に出入りしていたからな」
じゃあ、今回もそうしてはいってみようか、と俺が門に近づこうとした。そのタイミングで、
ギ、と重たい音を立てて扉が開いた。
中から現れたのは、浅黒い肌をした若い女性だ。彼女は、扉の前にいたこちらを見ると、
「え……?」
と、目を丸くして声を上げた。何か驚くべきものを見るかのように。更には、
「あ、貴方達! だ、大丈夫ですか!?」
慌てたようにそんな事を言ってきた。
「えっと……大丈夫というと、何がだ?」
「何がって……貴方はこの嵐の中、顔色が変わっていない……? 貴方達は一体……って、あれ?」
首を傾げつつ、彼女は俺たちに視線を向けて来る。そんな彼女に対し、俺の胸ポケットに隠れていたデイジーがひょっこりと顔を出し、手を上げた。
「よお、おひさだな、ミカエラ」
その姿を見て、デイジーは再び目を見開いた。
「で、デイジーさん!? そ、それに後ろにいらっしゃるのは、勇者様パーティーの方々、じゃないですか……!」
「そうだぜ。今日は、仲間と一緒に来させて貰ったんだ」
デイジーは気楽な話し方をしている。
人見知りで、基本的に警戒心が強めなデイジーがこの態度を取るという事は、
「この女性が、君の古い知り合いか、デイジー?」
「ああ、考古学ギルド長を務める一人でな。前もこの街にいた時、話していたんだよ」
「ギルド長の、一人?」
俺が声を上げると、目の前の、ミカエラと呼ばれた女性がこくこくと頷いていた。
「あ、は、はい。私は確かにギルド長ですが……デイジーさんはいつからこの街に……。というか、な、なんで、皆さんは、その装備でこの砂嵐の中で平気な顔をしていらっしゃるんです……か? もしかして魔力や耐性能力が高いから……」
「平気な顔って? それに耐性とか、砂嵐とか……何かあるのか?」
聞くと彼女は、表情から慌ての色を消した上で、ええと……、と口をもごもごとさせる。そんなとき、背後のドアが再び開いた。
そこから出てきたのは女性だ。ギルドの職員だろうか。考古学ギルドの看板にあったハサミマークが刻まれた服を着用している。そして、
「研究長! そろそろ『紫嵐』が本格化してきますから。外門の戸締りはいいので、戻られてください!」
彼女はミカエラにそんな事を告げた後、俺たちに気付いたらしい。
「え?」
と声を上げた。更には、
「け、研究長? なんでこの方々は、この紫嵐の中、息も切らしていないのですか?」
そんな驚きの声も上げてくる。
ミカエラと同じ反応だ。
……どうやら、この環境で自分達が普通にしていられるのは、驚くべき事らしいな。
彼女たちの態度を見れば、それ位は分かる。
そんな事を俺が思っている間に、口をもごもごさせていたミカエラは、考えをまとめたらしい。
「えっと……何と言うか、少しごちゃごちゃしてきましたが、諸々説明させて貰いたいので、まずは中へどうぞ。会議室でお話しをしましょう。そして、ジュリ、そう言う訳なので、この方々は私のお客さんでして、部屋の用意をお願いします」
ミカエラは、己の背後にいた職員にそう声を掛けた。
「は、はい!」
職員はその指示に頷くと、奥の方へと走って戻っていった。
「私たちも入りましょう。これから砂嵐が本格化してきますから。音も煩くなるでしょうし。お話もしやすいですから」
「ああ、お気遣い、有り難う、ミカエラさん」
そうして、慌ただしくも丁寧な口調のミカエラによって、俺たちは考古学ギルドへと迎え入れられるのだった。
私の別作品である『100人の英雄を育てた最強預言者』の書籍版1巻が、先週、6/19に発売されています!
とても面白く仕上がっているので、是非、読んで頂ければ嬉しいです。
そして、いつも応援ありがとうございます!
面白いと思って頂けましたら、下のブクマ、評価など、よろしくお願いします!




