4話 出発
踊り子の服からいつもの服に着替えたサキとバーゼリアの二人に手伝って貰いながら料理を作った後、俺は一軒家の食卓スペースでちょっと遅めの朝食を取った。
そして、食後のお茶を飲みながら、俺はテーブルに座るデイジーと言葉を交わしていた。
「それで、修復作業は順調なのか?」
「ああ。五十パーセントは進んだって感じだな」
「おお、もうそこまで進んだのか。……割と手間をかけちまってるみたいだが」
やり手の錬金術師であるデイジーは普通の金属で出来た武器であれば、数分で直せてしまう。魔力的な加護の入った武器ですら、短時間で直しているのを戦時中はよく見たものだ。
けれど、そんなデイジーでも俺の武器に関しては、異なるようで、
「まあ、前も説明したけれど、親友の武装は特別製だからな。砕けてても頑丈だし、単純に打ち直す訳にはいかないからさ。手間はかかって当然だし、そこまで気にしなくていいぞ、親友」
「そうですね。アクセルの武器は、龍の鱗を貫けることが最低条件になっていますし。神林都市で他の鍛冶師の方々に聞いた時は、一目で無理だと言われましたからね」
サキもそんな事を言ってくる。
そう。武器が壊れた時、俺たちは神林都市にいる鍛冶屋に幾つか寄っていた。
そこで口を揃えて無理だと言われたのもあり、直せる腕前と素材を持つデイジーに修理を頼むことになったのだ。
「親友の武器を直すのは歯ごたえがあって、楽しいしな。手間暇上等だぜ」
「はは、ありがとうよ、デイジー」
礼を言いながらテーブルのデイジーを撫でると、嬉しそうに身をくねらせた。
「へへ、親友に褒められるのはやっぱいいぜ。やる気がどんどん湧いてくるからな」
「これ位ならいくらでもするさ。他に、何かやれる事とかあったら言ってくれよ」
「おう。っと、そうだ。やれる事といや、そろそろ、考古学ギルドに行く必要が出てきたんだよな。必要素材が、商業ギルドの取り扱っている範囲を超え始めたからさ」
デイジーの言葉に、俺は部屋に取り付けられた窓の方を見た。
この拠点は街の中央近くに建てられており、窓の外には冒険者ギルドの支部が見えた。
その奥には商業ギルドなどもあるが、
「考古学ギルド――っていうと、商業ギルドの向こう側、大通りの突き当たり近くにある建物だよな」
商業ギルドの依頼で街を巡った際に、大体の地理は頭に入っている。それを思い浮かべながら言うと、デイジーはこっくり頷いた。
「そうそう。あそこは、遺跡を探索して、古代の素材や装置を保管しているからな。素材を貰うなり、機材を借りるなりさせて貰おうと思うんだ」
デイジーの話を聞いて、俺は思い出す。
……そういえば神林都市のシドニウスからも、『考古学ギルドに知人がいますので。何か用があったら行ってみてください。そしてお手すきの際に手紙も渡してくだされば嬉しいです』と推薦状と手紙を貰っていたな。
手紙を渡す機会は今という事だろうか。
「普通だと機材の貸し借りとかは難しいのかも知れないが……オレの古い知り合いもいる筈だから、どうにかなるだろうとは思うぜ、親友」
「ふむ? そうなのか。だとしたら助かる話だし……行く必要性があるっていうなら、今日のうちに行ってしまおうかね」
今の時刻的には朝を大分過ぎた頃合いだ。
考古学ギルドまではそこまで遠くないし、尋ねても迷惑な時間帯ということもないだろう。
……手紙や推薦状も、渡したい所だし。
やる事が決まっているならば早いうちに動いてしまった方がいい。そう思っていると、
「ご主人ー、洗い物終わったよー!」
キッチンの方から、バーゼリアがとてとてやってきた。
「おお、ありがとうな、バーゼリア」
「ご主人のお料理を食べられたんだからこれくらいへっちゃらだよ。……それで、向こうで話を聞いていたけれど、どこかお出かけするんだよね?」
バーゼリアは耳がいい。
どうやら皿を洗っている中でも、会話が聞こえていたようだ。
「ああ、考古学ギルドにな。この後行くんだが、準備は出来そうか?」
「勿論。今すぐ行けるよ!」
バーゼリアは、両手をぐっと握りながら言ってくる。
「私も問題なしです」
「オレも直ぐにいけるぜー」
他の仲間達も問題ないようだ。ならば、
「それじゃあ行くか。考古学ギルドへ」




