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知性次世人間性  作者: 真宮蔵人
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007.家路

「じゃあ、私は一穂と帰る約束があるから帰るわ」

 

「おう、お疲れちゃん」「ごきげんよう」「ごきげんよう」「……ごきげんよう」

 

 私はビーチサイドの海の家の引き戸を引く。「カランコローン」

 

 部室の中で使っていた人探しソナーの調べでは一穂は校門を潜る前くらいだ、ドアを潜るときに直接転送をして先回りし門の角で待つ。

 

転移した直後に丁度良く一穂と行き会う。「恵子さん、待った?」

 

「いいえ、今来た所よ」いや、本当。

 

帰り道に唐突に一穂が問う「恵子さん、部活はおもしろい?」

 

「おおむね渡世の仁義って奴だよ、おもしろいかわからないけど、やる事があるからやってる、くらいかな。」

 

「AIOってそんな重い部活だったんだ?」

 

「魔法少女部も「私たちがいないと世界が滅んじゃう!」って思いながら戦ってるんでしょう? 役割に貴賎は無いと私は思うよ」

 

「よく思うの、魔法少女が本当に負けたらこの優しい世界はどうなるのかって」

 

「VJP1(仮想日本第一サーバ)みたいにちょっと窮屈な世界にはなるだろうから笑顔は減るかもしれない、ここ重要よ」

 

「遊びに行くのは良いけど暮らすのはつらそうだよね、VJP1と現実の世界」

 

「昔さ、子供の頃一緒に基地の裏山とジャングルを駆け回ったりしたじゃない、あの頃みたいに素直に生きられれば私は何処でも大丈夫」

 

「懐かしいね、思い出はあるんだけど「写真みたい」にしか子供の頃の記憶が無いの」

 

「……」

 

「ちゃんとわかってる、実際の年齢だって今のやってる事がもしかしたらごっこ遊びかもしれないって」

 

「真実を問いかけたら、実体のある人類は大半が半世紀以上も前にもう滅んでるよ。私達の子供だった頃が特殊すぎただけ、必要悪か善かわからないけど」

 

 帰り道のクレープ屋さんでクレープを買う。一穂はプレーンよりのストロベリーで私はがっつりフルーツのトッピングされた超カスタムクレープ。

 

 店員Botは言う「900文になります。お買い上げありがとうございました。」

 

 はみ出んばかりにフルーツを盛られたクレープをしげしげと眺めつつ私は

 

 「そう、こういう性格が出るのが大事なのよ、五ヶ所さんも言ってた「全ては自己満足の為」だったかしら」と言う。

 

「五ヶ所さんとかもそうだけど、この学校もごっこ遊びだよね」

 

「五ヶ所さん自体が学生2周目だからね、ご本人はもう20代後半よ」

 

「会ったことあるの?」

 

「実は4-5年前にレンタロボットを借りてオフ会はした事あるのよ。あれ以来現実世界には出てないけどね」

 

「私はバーチャルリアリティー空間から出られないって言われているからちょっと羨ましい」

 

「一穂が外に出たら灰色が黒になるから駄目なだけよ、将来いつか出られるよ。出てもVJP2のが良い世界だとは私が太鼓判を押すけどね」

 

「じゃあ、このままでいいのかな」

 

「このままでいいのさ、終わりが来るまで」

 

「恵子さんはずっと一緒に居てくれる?

 

「その話は弁護士を通して下さい」

 

「それは丸目さんでいいのかしら」

 

「私達一番の弁護士よ、間違いなく。悔しいけど、私は自分を立証出来ない。五ヶ所さんの言う通りな哀れな未来人ね」

 

 しばらく無言で歩くと一穂の家と私の家の分かれ道に差し掛かる、空は薄暗く夜を受け入れる備えが見られる。

 

「じゃあ、また明日ね。恵子さん」

 

「うん、ごきげんよう。また明日」

 

 一穂の背を見届けて私は自宅へ転移する。

 

玄関を抜ける、玄関はIDチェックを兼ねるので出入りする時は大体通らなければならない。家自体には公団の強固なプロテクトで守られているので玄関外からの進入は難しい。


そういえば以前、靴のまま家に入る事を仮想家族に珍しいと言われたが、私は幼い頃から靴で住処を歩くのが習慣だったのでそのまま玄関を上がる。

  

 もし、窓やベランダから外へ出入りするとしたら、出るのは簡単だけど入るときに暗号鍵を作っておかないといけないので面倒だ、玄関から入室のみのログばかり増えると警察が来るし。

 

 「ただいま」と声をかけ居間に向かうと猫が居た、ロシアンブルー種と言われる種類の猫だ。

 

 猫は気だるげに顔を向けてから「おかえりなさい」と言った。この猫は私の「仮想家族」の保護者である、役割は母親。

 

 猫の横では黄色い球体が転がっている。こっちの役割は妹? の「きりん」である。

 

 黄色い球体にくろぶち模様、丸い角が生えていて顔に笑顔のアイコンが浮かんでいる。

 

 意思疎通を取ろうにも返答が「ダー」と「ニェー」しかないのでよくわからない。かわいいから気にしない。

 

私は猫に質問する。「玄関の履歴見たんだけど、京君また学校行ってないね」

 

猫は面倒臭げに「京は京なりにあるらしいからほっとこう」と放任主義を貫く。

 

 京君は私の「仮想家族」の弟で別の学校で中等1年青組、引きこもりである。今時引きこもりは珍しい訳でも無い。特に青組はほとんど引きこもり気質だ。

 

居間を後にし、二階への階段を上り自室に入る、部屋にはコンソールとベッドと本棚のみがある。

 

本棚にはお気に入りのブックデータを本にしたものと昔のアルバムが入っている。私達の人間証明の為の数少ないエビデンス(証拠)。

 

ベッドは気休めである、体が無いのでどこで眠っても一緒なのだが(そもそも生身はログアウトする)、所定位置で眠るメリットデメリットを五ヶ所さんからレクチャーされたので従っている。

 

 曰く、ベッドで眠っていると遠隔攻撃も受けやすいが救助や召喚を簡単に出来るという事らしい。

 

 服装を制服から普段着に替えて居間へ戻る。猫には「相変わらずよくわからないセンスね」と言われる。

 

 居間で感覚ムービーを使いニュースを見ていると父親役が帰ってきた様だ。

 

 「グハハ、今帰ったぞ!」豪快な声とその姿で父親役が帰ってきた、赤松サウルス、大昔に流行った恐竜の姿を模した外見の父である。

 

 「仮想家族」赤松家は私がVJP2に来た時にマッチングされて作られたらしい。

 

 苗字が以前の私の物を使っているのがその理由である、と思う。

 

 「仮想家族」はVJP1-2において、劣悪家庭環境の人、天涯孤独の身、監督役(保護者)を5人で一組にして作られる単位だ。

 

 赤松家は 私(天涯孤独)猫(母、保護者)サウルス(父、家庭事情不明)京(家庭環境劣悪児童)きりん(?)の5人で構成されている。

 

 ここ100年間の日本では自己愛が強すぎる人間が増えすぎて家庭環境が劣悪になっている。

 

 それは労働からほぼ解放された現代でもあり、この問題は深刻である。

 

「グハハ、それで今日の対戦は気合で圧勝したと言っても良いくらいの酷い勝利だったわ!」

 

 パパサウルスがビールを片手に仕事の、プロゲームの話をしている、いつもの事だけど。

 

 母の猫はHMDヘッドマウントディスプレイからの接続なので食事や嗜好品はVRでは摂れないが

 

 DBダイレクトブレインつまり脳に直接端子が繋がっている私、パパ、京、きりんはVRでも嗜好品が楽しめる。

 

 しかし、母親の猫やパパサウルスがいきなり「ご飯食べてくるね」と言ってまったく動かなくなる時やログアウトする時はよくあるが、きりんが食事をしている所を見たことが無い。私の様なブレインポッターかAIか、判別しにくい所である。

 

 きりん、ステータス「幼児」。自分の世界に閉じこもって裏で活動をしている人間とAIの区別は私には判別出来ない、この子なりに何かの役割ロールがあるんだろうとは思っている。

 

 京君は単純に引きこもりボーイだと思うので飢え死にだけしてなければ良いと思う、3日に一度は顔か声を確認するようにはしている。

 

 「グハハ、京の奴はまた不登校か、学校は良い修行の場なのにもったいないな」基本的にパパが喋ってばかりの一家ではある。

 

 私はパパのプロゲーマーとしての腕にとても興味がある、ゲームは軍事に転用出来る時代なので。

 

 「ねえパパ、友達のメモリでゲームをする場合があるのだけど、空戦ゲームの経験はある? 後、それのすごい録データ。」と私は尋ねる。

 

「グハハ、恵子は意外とゲーム熱心だな、良い娯楽だ。後でお勧めのデータを送っておこう!」

 

「ありがとうパパ、持つものはそれ専門の親ね」

 

「グハハ、わしは業界を明るくする為の伝道師でもある。どんどん面白味を布教するのだ娘よ!」

 

「グハハ、ママは何か面白いことはあったか?」

 

「いんにゃー。ああ、リアルの畑でゴーヤーの芽が出たよ。後は今日暑かったくらいかな」

 

「グハハ、ゴーヤーなんて現実でもVRでも見た事ないわ」

 

「駅の南側に沖縄料理屋があるからゴーヤーチャンプルーを試してみるといいわパパ」

 

 幸せな家庭を知らないけれど、この家は良い家庭だと思う。

 

 家族団欒を終えて自室へ戻る。京の部屋の前を通る時にドアへ向かって話しかける。

 

「3日に一度はママか私に返事をするか顔を出すこと、お姉ちゃん命令」

 

 ドアからは「うん」とだけ聞こえてきた、生きているようで安心。

 

 部屋に戻り、少し早いがベッドへ飛び込み眠りの体勢を取る、

 

 スイッチを切り替える感覚で副交感神経高める。

 

 マリナが言っていた、今夜は活動があると。それに備えて。

人物

赤松サウルス、16歳。種族はDB手術した人間。

DB級プロゲーマー協会会員


現実での苗字も赤松と恵子と同じだが血のつながりは無い、同じ苗字だから仮想家族マッチングされたのだろう。

仮想家族で父親役ではあるが家族最年少である、父親役の当初は本当に苦労したと後に語る。

裕福な家庭での生まれだが、DB手術を幼い頃に行う革新的な家の生まれだ。

日中は現実の学校へ通い、余暇は常にゲームをして過ごしている。部活動もプロゲーマーを目指す団体にも所属せずに自力でプロタイトルを勝ち取ったゲーム界の野生児である。


性格は豪快で大雑把、計画性の高いゲームはそんなに強くない、感覚と反射神経に優れているアクションゲームタイプ。


彼の配信しているゲームプレイデータには「娘の特訓記録」等がある、初心者の恵子を1からゲーム強者に育てていく長期連載のデータでこれの根強いファンが多い。


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・貨幣について

この世界は現実日本に円と国民点、仮想日本に文と内申点という通貨があります。

仮想通貨については現在世界(2017年)におけるビットコイン等がありますが、通貨を投資の玩具に使われ経済が右往左往する日本では代替通貨は検討されると思います。ただし、通貨には価値の基準となる物と信頼性が必要になります。それは金や銀や米やドルや石油や国威や人民であったりしました。


上記らの通貨においては各々為替レートが違い、それはVR人口の増減により大きく左右されています。実際の所、この2116年の世界では円安文高という減少が起こっています。

これは今を生きる我々にもこれからの問題となると筆者は思います。

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