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知性次世人間性  作者: 真宮蔵人
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006.斜陽

万年日暮れのビーチサイド、安楽椅子に座りながら。

 

「私が私である証明が今は心の内にしかない」と呟いてしまったらしい。

 

五ヶ所さんが駆け寄ってきて「ヘウレーカ? ヘウレーカなの?」と聞いて来るので正直ウザイと思った。

 

 私は溜め息をつき、しょうがなく説明する。

 

「独り言が出ちゃっただけなのだけど、VRのみで暮らしてる私たちの様な人達は自己証明が怪しくなるのよね、お役所的な話込みで」

 

 五ヶ所さんは真面目に答える。

 

「そうねー、マイナンバーと暗証番号と筆跡割られちゃったらBotで成りすましも出来るのよね」

 

 さらりと怖いことを言うがその真面目さは10秒と持たなかった。

 

 五ヶ所さんはウクレレをポロロンと鳴らしながら歌う「だからリアルは捨てられなーい♪」

 

「まぁ↑その為の保護者と仮想家族だと思うよわー♪」 ポロローン

 

「200年前は飢えない事を知らず。100年前は不労を知らず。今は自分個人を知らない。可愛そうな未来人赤松さーん♪」

 

 煽ってるのかしらねえ。

 

 そこに「カランコローン」という音が響き新たな入室者が加わる。

 

 金髪で大柄な女性、大学部の北マリナと、現在中等部1年青組所属の出来る子、簾林檎であった。

 

「あら、マリナさんとリンゴちゃん。ごきげんよう」

 

「ごきげんよう」「ごきげんよう」「どうも」

 

 マリナは一番大きな安楽椅子に腰掛ける、部長席である。簾さんは隅っこの椅子に座る。

 

 「アンナといるかちゃんは今日部活欠席だそうよ」とマリナが目を瞑りながら言う。

 

 「集団で出来る事は最近ないからね、情報収集と解析くらいかしら」と五ヶ所さんは呟く。

 

 簾さんはいきなりスッと立ち上がるとパルテノン神殿の方へタブレットに書き込みしながら向かっていった。

 

 「簾さんは優秀だけど一人の方が好きよね、でもなんでパルテノンなのかしら」と私は問いかけると。

 

 アンナが答えてくれた。「パーソナルメモリが狭くて使いにくいし内申点が欲しいからここで頑張ってるんだってさ。」

 

 「さすが元黄色情報通、暗黒社会学の使い手ぇ↑♪」五ヶ所さんのノリはいつもセンスが良くない。

 

「正義の社会学者の卵のつもりよ。所で、今日辺りに魔法少女が出動するかもしれないわ」

 

「「なんで?」」不覚にも五ヶ所さんとハモった。

 

 北はそっけなく答える「妹がソワソワしてたから」。北マリナの「仮想家族」内には姉妹枠に北淳子という人物がいる、この103学園高2年緑組と私と同じクラスなのだけれど接点が無い上に、人を近寄らせない動きを取るのでコンタクトを取ったことは無い。

 

 どうやら、この娘は反特定団体組織か魔法少女の追っかけ等のどこぞの組織に所属しているらしい。

 

「あー失敗した、いるかちゃんとアンナと松本にメッセージだけでも送っておくべきだったわ、送ろ」

 

「柏葉センセイには?」

 

「緑子ちゃんはあんまり役に立たないからいいよ」はーっとマリナは溜め息を付く。

 

五ヶ所さんはメガネをくいっと上げて言う「所で部長さん、点取り効率の相談は何時しよっか?」

 

「みれいは熱心ねー、コストかかる趣味を持つと大変だわ」

 

「部長、ジョークでも煙草吸うモーションを学校でしないで下さい、アンナちゃんとかの教育に悪いわ」

 

「こりゃ失礼しました。で、内申点を国民点にさ、効率良くロンダリングするのがブームかなあ思うのよ」

 

 内申点とは、VJP(仮想日本1-2サーバ)内で稼ぎ使われる通貨と言うよりは善行の値、いわゆるカルマ、徳とかそんなものである。

 

 内申点が高いと公団や民営のメモリ容量を多めに確保出来たり、公団などの持つ量子コンピュータをわずかな時間借りれたり、電子事故被害の救済が優先されたりする多くて困らない物である。

 

 一方、国民点は現実のカルマであり、これが高いと違反や罰則の軽減、保険やローンの査定が甘くなるという物質文明では強い数値である。

 

 国民点はデジタルマイナンバーステータスから確認出来る、内申点は表示出来るソフトが民間製なので安定しない点なのが問題である、公に内申点は実在しない事になっているのだ。

 

 肉体がほぼ無い私には国民点はあまり関係ないのでこの話は流す程度で聴いている。国民点は稼ぎにくいらしいとしか知らない。

 

「内申点でメモリや計算機を借りて難病治療や学術機関に枠を寄付するのも最近マネしてる人が多くてレート悪いからねえ」

 

 そこへまた「カランコローン」という入室音が3重に響く。

 

 安手いるか(高等1年青組)アンナ=セーラム(中等3年緑組)松本ニャン(高等3年青組茶道部部長)の入室である。

 

私はその三人目に尋ねる。「……松本さん、茶道部はいいの?」

 

「ええ、すぐ戻るから顔だけ出しに来たのよ」

 

 松本さんは客将である、部員ではないがダメコンとバックアップ時の冷静さを買われてマリナが昔スカウトしたらしい。

 

 アンナといるかはあまり部活に顔を出さないAIO部員である、この二人は同じアルバイトをしているらしく、内申点稼ぎの鬼と評判らしい。

 

 アルバイト内容はVJP2(仮想日本第二サーバ)の地形データ復元とバグ潰しだそうな。

 

 「アンナといるかはアルバイト? あるのに顔を出すのは殊勝ね」とマリナ。

 

 滅多に喋らない、いるかの代わりにアンナが答える「バイトは最近、業者入札が厳しくて実りが薄いんです。部活動の方が当たれば大きいのです」

 

「利己的な正義、結構だわ。じゃあ、今夜「もしも」の為にスクリプトを見直さないとね」

 

「対応マニュアルも増やそうと思うの」

 

「防衛ドローンのルーチン改善とか、大魔法の被害を物的に出す誘導スクリプトももっと組みたい……」「…えげつない。」

 

 この会話は私の専門分野では無いのでここも流し聴きと思っていたら。

 

 「竜の調教具合はどう?」とマリナからわざとらしい会話のパスを受ける。

 

 溜め息を付きながら私は答える。「いつか反乱を起こすんじゃないかと思える調教具合よ」

 

「調教師みれいはドSだから、しゃーない」

 

五ヶ所さんはこちらへ振り返り宣言「私は何時だって最善を尽くしているだけです! ご心配なく!!」

 

「マリナ先輩が卒業したらみれいさんを部長に押し上げて私が調教師やるのがいいなあ」とアンナが言う、笑えない。


「私もう一回学生やろうかしら・・・」

 

 「「 ハハハ 」」 何時だって先のことはわからないから、笑い合う。

人物

北マリナ、21歳

第103大学部社会学科3年AI応用部現部長

AI応用部の部長であり、北淳子の仮想姉でもある。

生活は勝気でややおっさんじみている。部活内では若い部類。

AI使役に求められる反射神経と判断力よりもその行動力が買われている。

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