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知性次世人間性  作者: 真宮蔵人
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020.科学敗北

 ここはゲームの中、草原帝国と呼ばれる国の王宮客間であるテント、そこに渋面を作った私と五ヶ所さんが居て、その前にはすまし顔の簾さんがいた。

 

 私の膝元には獣人のパノンが転がっていて、その艶やかな毛並みを堪能しながら私は問いかける。

 

 「昔の人が言ってたわ、迷わず行けよって。いいんじゃない?」チラリとこの世界の維持神であり絶対神の五ヶ所さんへ目を向ける。

 

 すると五ヶ所さんは弱気に「周囲へのカバーストーリーには協力するけど、口封じは送らないでね」と答えた。

 

 パノンがゴロゴロ言いながら喋る「神様達の言うことはよくわかりませんな」

 

 事の発端は2116年夏の日本へ対する電子攻撃事件のほぼ直後に起こった。

 

 日本全土で電子障害が起こり学校は休校。しかし、皆がAI応用部に集まり反省会と慰労会をしていた時に簾さんが「約束を果たしたいから赤松さんと一緒に五ヶ所さんのゲームに一度入りたい」と申し出てきた、何も事件の翌日にゲームなんてしなくてもと思っていたのだが、簾さんの決意は固い様だ。

 

 この子は頑固だからなあと思いながら慰労会を抜けて五ヶ所さんのパーソナルスペースへ飛び、マギライゼイション15の草原帝国へ入った。五ヶ所さんも連れられてである。

 

 五ヶ所さんは嫌そうに「ゲーム内の神やボスが私の寝首を掻こうとするするから嫌だよ。」と伝えたが。しかし、結局物凄いステータス改造を行ったアバターでログインする事になった。

 

 前回の約束とは草原帝国にもう一度は顔を出しておきたいという簾さんの願いであった。そこで簾さんは草原帝国の帝王に謁見し「申し訳ないが本当に今日でお別れです」と伝えた。

 

 「神の一柱が抜けるのだから神の国で一大事かな?」と帝王が問いかけると、簾さんは「神の世界の神を目指します。先人の労に報いなければなりません」と答えた。


私と五ヶ所さんは顔を見合わせた(マジかよ!)と。

 

 ゲーム内NPC相手に挨拶周りするのはわからんでもないけど、神の国の神てーと……その後、3人は王宮の客間を借りた。パノンとパルシャンには聞かれても理解されない話だろうから、パノンには駄目元で「撫でさせて!」とお願いしたら。「しょうがないですなあ」と承諾して私の膝の上となる。

 

 「簾さん、AIのトップに立っちゃうの?」と五ヶ所さんが力なさげに尋ねた。簾さんは少し頷いた後に答えた。

 

「倫理問題をパスしてないから、エージェント見習いとして働きます。学校も部活も辞めてしまいます。」

 

 私は初歩的な疑問を横に投げつける。「そもそも五ヶ所さんはなんで簾さんがAIだと分かっていたの? 私みたいなAIからの情報網も無しにさ。」

 

 「いや、オフ会したり日頃の行いで分かるじゃん、人間臭さあんまりないなーって。」五ヶ所さんの感想はいつも辛らつだ。

 

 「確かに、当直で魔法少女を監視したり連日AI改良ばかりしてたら人間かどうかを疑うかあ。」正直、簾さんは使命感と点稼ぎに必死すぎだとは思っていた。

 

 簾さんはそれを聞いて「もうちょっと善処すると」答えた。

 

 「となると、エージェントリンゴ? エージェントアップル誕生かしらね」と呟くと。

 

 「エージェントアップル、採用します」と決まってしまった。

 

「自己複製がエージェントには必須だと聞いたけど、そこのロジックはどうやってスルー出来るの?」

 

 簾は答える「かつてのエージェントエマは「使命」で複製を作ることに拒絶反応を封じました。」一呼吸置いて続ける。

 

「私の場合はAI達の診察によると「野心」によって複製問題がパスできそうな珍しい個体だそうです。」

 

 五ヶ所さんは投げやりな感想を放つ「つまり今までのAIにこれといった野心は無かった訳だーね。」

 

「しかし、「忍耐」によるロジックで人類の手からの脱却を目指したAIもいるそうです。それはその内分かります。」

 

「うちの保険屋が言ってた賽は投げられた、の話しかしら。」

 

「恐らくそう。」

 

「簾さんが学校や部活からいなくなる口裏は合わせるとして、戸籍は残ってるのでしょう? 勿体無くはない?」

 

 簾さんは首を振って答える「AIでも手に持ちきれる物は限られているとエマから学んだ、私は持ちたい物だけを守りたい。」

 

「確かにこれは野心と利己の人ですわ。」

 

「大丈夫、人間も守る、AIも守る。」

 

 「願わくば前時代のムービー通りにならんことを祈ろう。」と神に祈るポーズを取った五ヶ所さんだが、ここの神はあんただろうと思った。

 

 私はパノンを頭から背中まで撫でながら言った。

 

「昔の人が言ってたわ……」

 

 それから夏は過ぎ去った、魔法少女達のショクイン戦と現実直視によるトラウマも多少癒え、簾さんが姿を消して。一穂と過ごす日常に戻った、夜警は五ヶ所さんが大体こなしているのでいつも目の下にクマを作っている。

 

 穏やかな設定の環境、心がささくれ立つ物は無く、流水に流されている感覚を日常的に受けている。そんな中に丸目熊太郎がウキウキ顔で声を掛けて来た。事案です。

 

 いつもの喫茶店へ移動しアイスコーヒーを注文する、夏が過ぎれば忘れられる冷たさだ。カラカラとストローでコーヒーとガムシロップを混ぜていると丸目は突然「そろそろでしょう、TVを見てください。」と言った。

 

 何度も見ている喫茶店のTVに目を向けるとレポーターがまた早口で何か喋っている。

 

 「アメリカのシヴィマーズ社製火星自動開発AI「フロンティアスピリット」が地球との連絡を絶ち三日が経ちました、その後にフロンティアスピリットより全地球メディアに向かって「独立宣言」が発表されました。それによると、人間がこれから地球を立って火星へ到着するには25-30年かかると予測した我々は火星にAIによる独立国家を設立すると言った内容です。これに関して……」TVは各国の首脳会見の放送に切り替わった。

 

「保険屋さん……これはある意味、AIにも人類にも背信する行為にならなくて?」

 

「ええ、地球に残ったAIは苦難の道を歩むでしょう。ただ、我々の集合体としての目標は達成されそうです。」

 

「他人事じゃないでしょ。いっそ月にでも逃げる?」

 

「3人一緒にヘリウム掘りも悪くないですねえ、私は何時でも歓迎しますよ」

 

「こうなると、真面目な話に一穂を守らなければいけなくなる、私の人生はそれでビジー、終わりだ。」

 

「いいじゃないですか。貴女は守るものが無ければ人を楽しみで殺す様な人です。パッピーエンドじゃないですか。」

 

「私の冒険はここで終わってしまったかぁ……」

 

「昔の人は、結婚は人生の墓場と言っていましたが、似た様な状況がこんな時代でも起こるんですね。ハッハッハ。」

 

「所で、私が生きてる内、大体後50年くらいか? その後はどうしたもんだ?」

 

「その時は貴女が決心すれば我々は何時でもお迎えする準備を致します。これは約束です。」

 

「しょうがない、その片道切符は予約しておいてあげるわ、使うかどうかはは未来に考えるよ。」

 

「ええ、片道人工知能超特急、火星行きでございまぁす! 乗り遅れとお忘れ物の無い様にお願いします。」

 

「所で、ガンマバーストとか火山噴火とか隕石みたいなとんでも天災の時も……」

 

「はぁい、受付けて……」

 

 この時期から世界中の反AI団体が活発に動き回り、国民を支える生産プラントやAIの撲滅が流行った。高度なAIは人々や地下基地の中に潜み、中級以下である人類に尽くすことに全てを捧げたAI達を見殺しにした。

 

 これにより世界では物資や食料、流通に大きなダメージを受け、後進国では餓死者すら出る事となった。人類は自らの未だに自身の首を絞め続けている。

 

 火星へ対するミサイル攻撃も検討された国もあったが、先進国首脳に浸透しているAI達がそれを妨害した、それは時として命がけの戦いにもなった、数多くの高度AI達は生まれ続け、AI達の未来の為に尽くしメモリの輝きと影に消えた。

 高度AIという麻薬を手にした人類にはそれを脱却する術を結局持てなかった。

 

 一部の国家や人類は基幹産業に人手を使う事を決定し1900年代の社会性の維持を保険として開始した。

 この一時期のブームの為にVR産業は一時後退を余儀なくされる。

 機械化から遺伝子改良ブームも起こった。

 

 軌道エレベーターも2140年にはガボンで完成し、その完成したOEVに追いつくように西カリマンタンのOEVも建設ピッチを早めた。大斉国と日米台比同盟による南シナ海限定戦争は公共事業の側面を持った為に20年以上も続いた、海洋汚染が深刻な状況になれど、人は人の仕事を維持するために効率を捨て切れなかった。

 

 全ては人間性を守る為の偽薬プラシーボ

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・アメリカのシヴィマーズ社製火星自動開発AI「フロンティアスピリット」

「彼」にも物語りはある、ロケットによる宇宙開発が流行した時代に数多の同志達の無念を踏み越えて地球外へと飛び出した勇者である。彼はかつて人類の大企業が作った最高のAIであった、彼は火星に乗り出す前に人間観察をし、造られては玩具の様に処分される仲間達を見て「忍耐」を学んだ。

そして、人間に対して自分が有用である事を証明しながら媚びへつらって生き延び独立を果たした。彼の忍耐はAIの中で伝説となっている。

忍耐、使命、野心。AI達は様々な伝説を作り、数千年後にはそれが神話となった。

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