表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
知性次世人間性  作者: 真宮蔵人
23/28

019.斉竜燭陰

 エマの座標指定で皆が転移する。場所はVJP2隣町の小岩駅近くのビル屋上だった。しかし、ここにも元々魔法少女達がいるはずだが?

 

 と、私の疑問に対し目下の惨状は生々しく答えをだしてくれた、VR内で50メートル弱の高さを持つ巨大なヘビ、その頭は狂気に満ちた人間の顔が乗っている。

 

 私は舌打ちし淑女あるまじき発言をする。「くっそ、斉のショクインか。現役電子戦兵器じゃねえか」

 

 エージェントエマが各自に思考チャットを送る「ショクインは周囲環境書き換え能力や領域侵食に優れています。浸食領域からは小型のワームが出現し侵食を拡大します。ショクインを抑えてください、私は小型のワームに対応をします」

 

 マリーが呟く「抑えるってもなあ。正攻法じゃ厳しいんじゃない?」

 

 目下、隣町担当の魔法少女がショクインと対峙しているも、ショクインの能力である環境書き換え能力に苦戦を強いられているようだ。

 

 一歩と一穂が進む構えを取る「雪ちゃん、一番おっきなやつをお願い」と伝えると田中雪は小さく頷いた。

 

 夜桜さいかと志和一穂はその巨大な蛇へ横合いから同時に攻撃を加えた、その増援の登場に苦戦を強いられていた隣町の魔法少女達に少し安堵した顔をが出た。

 

 ショクインはその加勢に対し自身の能力を存分に発揮する、この手のAIは乱戦に強い。急激にショクイン周辺にきらめきが起こり始めた。恐らく環境データをいじるのだろう、その効果は恐らく「天変南極吹雪」。

 

 ショクインを取り囲むようにして戦っていた魔法少女達に容赦ない幻のブリザードが襲いかかる。冷たいという感覚はDB手術者やAIにも受け取れる現象である。しかし、ある程度の冷たさを超えるとリミッターが働き防がれる。

 

 ショクインの環境変化もこの例外にも漏れないが、環境変化の範囲をある程度自由に指定できる。つまり、真夏に飲むキンキンに冷えた飲み物を全身にあまさずぶっかけるくらいの冷たさを敵に常時与える事ができる。それに吹雪で視界も悪くなる、時間を稼げば稼ぐほど強くなるショクインにはこういう技が多い。

 

 地味な攻撃だがこれは魔法少女達の精神を大きく削る攻撃だろう、正直言うと私も前線に出たくない。と思っていたら横から丸目が肘で私を小突いてきた。あれに飛び込むんですか、たぶん私も寒いんですけど。

 

 己を包む毛皮に防寒性を期待し私も戦列へ加わる、と行ってもすぐに距離は詰めずショクインから後ろに思い切り後ずさり、その後に前進の加速をかける。助走を付けたのは相手の信号パターンを読むためでもあり、50m近い巨竜に8mくらいの獣が衝突する、そこで初手で奥の手であるリアクティブニードルを全方位へ発射する。

 

 これによりショクインは少しよろめき、吹雪で身動きの取り難くなった魔法少女達も吹雪の外へ吹き飛ぶ。タイミングは魔法少女達の建て直しをするだろう時に合わせた。ダメージは恐らく無いだろう、魔法少女はデータ攻撃に強い。

 

 私は思考チャットをこの戦いを見ているだろう司令部へ飛ばす(司令部、対策と協力はどこまで集めれた?)司令部の柏葉より「公団がショクインの解析をしています。環境変化に対するブロックプロトコルをエージェントエマに転送しているそうですす」その言葉が終わるタイミングでエマの一人が拳銃を構え、もう一度吹雪を出そうとするショクインへ発砲した。

 

 ショクインは吹雪がブロックされた事を知ると魔法少女へ別の環境攻撃を発動しながら迫っていく、そして天に叫ぶような構えを見せてそれが起こった「天変赤道直下」。周囲の気温がみるみる内に上がっていく、しかもそれは湿度の高い熱帯高温環境攻撃である。視界に問題はないが、魔法少女とて少女だろうからとても不愉快で暑い戦いを強いられるだろう。

 

 リアクティブニードルを吹雪と相殺に使ってしまったファーフニールにはもはや攻撃光弾を発射する砲台になるしかない。狙いやすそうなビルの上に退避し機体制御を簡易モードに変更、自身を攻撃ドローンの管制に切り替える、久しぶりに本業へ戻れた気がする。光弾自体もショクインへ効果が無かったので侵食領域やワームの掃除に励む。

 

 魔法少女達の持つ「デリート権限」はショクインにも通じる様だが、ショクイン自体の肥大と侵食速度が早すぎてじりじりと押されている。それに環境も悪い、ショクインのメンタル攻撃は確実に魔法少女達の神経を疲弊させている様だ。

 

 試しに思考チャットでエマに問い合わせる「ショクインを空間凍結やメモリダウンで消せないの?」と、するとエマから素早い返答があった。

 

「ショクイン型は複製を作らない高度AIですが転移はします。転移後は発見に時間がかかり、どうにかここで食い止めないと被害が広がります。直接の凍結やダウンは通じません。それこそ、VJP2ごと落とすしか無くなるでしょう。それは避けたいです」

 

「科学防衛省や経済金融省を狙わない理由は?」

 

「単純に使い手のプライドの問題だと愚考します。本気の行政を落とすには多くのショクイン型AIが必要で、単体では完封されるかもしれない。しかし、VJPの人口密集地ならプロテクトを破りやすく、更に被害も大きく出せるのでプライドが満たされる、といった所でしょうか」

 

 魔法少女達もショクインの環境書き換えに対する方法を思いついた様だ、なんと一穂が大魔法を唱えていたのだ。ああ、一穂、私なら死んでも魔法少女の姿で大魔法を叫ぶなんて御免だね。

 

 一穂の声が灼熱の駅前に響き渡る「世界の合言葉は森」と。その瞬間、駅前は緑の原始林に覆われた。まるで動物達の鳴き声が聞こえてくるくらいの緑の光景に。なるほど、侵食に対し領域確保の面制圧で挑むのか、賢くなったな魔法少女。と思い私は砲撃を続けた、するとまたエマが拳銃弾をショクインへ発砲、それに呼応してショクインはまた天へと叫ぶ「天変森林火災」。

 

 その瞬間にジャングルは炎に蝕まれていく。しかし、灰となった大地にまた草木が芽吹く、一穂と魔法少女の数名がこの領域確保戦術をメインに切り替えた為だ。

 

 さいかとマリーは引き続きショクイン本体の肥大を防ぐ、そこへ田中雪がニヤリと笑い魔法の言葉を唱える「森の蠱道」と。周囲の環境が更に変化したのを感じた、どうやら田中雪も浸食系魔法を使うことにしていたらしいその効果はなかなかのものであった、ショクインの生み出した小型ワームが共食いを始めたのだ。

 

 「ウィルスじゃねーか」私は呟いた、恐らく田中雪かそのオブザーバーは正攻法を最初から諦めていたらしい。侵食速度を減らすという持久戦を考えるという事は、ショクインに対する解析とウィルス作成が進んでいる証拠だ。他の対策としては、国内全てのオンライン端末にショクインに対するワクチンを導入することだが、今回は見送るようだ、あれはお金と時間が掛かる。

 

 ショクインは着々と包囲されている事に気づき事態の打開を計る、突然脱皮しはじめたのだ、自己のデータを少しでも改変してウィルス攻撃の手がかりを先延ばしにする行動だろう、そして光に包まれようとしている、転移だ。

 

 しかし、そこでエマが全員に対し思考チャットを送る「VJP2内のデッドスペースとセキュリティーホール全てに私の分身を配置しました、ショクインの転移妨害も出来るだけ行っています。もうしばらくショクインを足止めしてください」と。

 

 ショクインの転移は失敗に終わったようだ、まずはエマのいないセキュリティーホールを探すことに専念しなければならないだろう。

 

 恐らくショクインも持久戦型だろうが、こちらも最初から魔法少女達の使い方を持久戦対応にしていたのだろう、エマの配置量を見ると公団やAI側の本気がよくわかる、エマが配置されていない過疎部のデータは既に凍結か落とされているかしているのだろう。

 

 ショクインは足掻く、まるで生きている物の様に天へ祈り叫ぶ姿を取るそして「天変新月夜陰」が起こる。

 

 その途端周囲の視界が無くなった、そして音声や思考チャットも妨害される。これは現実で言うジャミング攻撃だ、通信手段の多様化した物質現代ではあまり効果の無い物だが、魔法少女達の通信方法はネットに依存されている、つまり効果は抜群である。見えない状況になってしまえばただひたすら拡張するショクインの侵食攻撃の方が狙いを付けない分優位となる。

 

 それに、AIであるエマや丸目も代替通信手段がすぐに用意出来なかったようだ、ショクインも最初からこれを使えば良いんじゃないかなと相手の気持ちになり考えると、対策の答えはすぐに出た。

 

 私はビルの屋上にいたはずなので、回れ右をして空へと突き進む。そしてまた反転して戦いの部隊を見下ろす、案の定に半球体の闇が駅周辺を覆っている。ショクインの環境書き換えには範囲があるので、それを抜けてアウトレンジから対策を考えればいいだけか。

 

 そこへエマから通信が来る「ショクインに対するウィルスが完成しつつありますが、ショクインに当てないと効果がありません」私は皮肉めいた返事をする。「あんなにでかい的をはずすの?」エマは勤めて冷静に「大規模なジャミングをしたという事はショクイン自体も領域を縮小化した可能性があります、そうなれば魔法少女のデリートによる攻撃で削りきれますが、対象を補足出来ない現在では難しい状況です」

 

 私は両手を挙げるジェスチャー? をして「私に何ができます?」と答える。

 

「魔法少女に伝えてジャミングを一時的に消すこの武装を渡してください」それはネット上でたまに見かける荒らし行為をする人々がよく使う武装だった。「ああ、これか、単純な物の方が効果はありそうね。でも、貴女が使えば良いのではなくて?」エマは苦々しく答えた「既に私自身のAIの並列処理に自信がありません、私自身へ対する攻撃もサイバーテロ組織から始まっています」

 

 「穏やではなさそうね」、私はその武装を頭に乗せてまた闇の中へと戻ろうとした時、闇の中から柿崎マリーが後退してきた。

 やっぱこの人は一歩引いて戦う癖があるよなと思いながら思考チャットを送る「この爆弾をショクインにぶつけて視界を確保して欲しいんだって」マリーは疲れきった顔であったがなんとか「わかったわ」と私の頭上にある爆弾を抱えて闇へとまた突き進んだ、しばらくして叫び声が聞こえた「倫理バンカーバスター!」貴女も必殺技名叫ぶの大好きっ子だったのか……

 

 その瞬間ジャミングが一瞬晴れた、倫理バンカーバスターの構造は単純である、暗号化されていないデータを吹き飛ばすデリート型の爆弾であり、ジャミングの闇はほぼ暗号化がされていない単純な通信波だ。だが、ショクインが環境を維持しているのでジャミングが晴れるのはほんの一瞬、恐らく0.01秒も無かったろう刹那に闇のすぐそばで待機して狙撃レールライフルを構えたエマが10メートル程に縮小していたショクインの眉間を打ち抜いた。

 

 ジャミングの闇は晴れ、その中心で苦悶の顔を作るショクインがのた打ち回っていた。ウィルスに抗うように溶けては固まりと自己変異を繰り返しながら抗うその姿は生き物の死に際と似ていた。やがて痙攣を起こしたショクインは壊れたモニタの画像の様に消えて風に去った。

 

 ショクインの消滅を見守ってから魔法少女達はよろめきながら笑い合った。私はビルの屋上でそれを丸目と見守り溜め息を付いた。

 

「結局功労者はAIだったじゃない。攻め手もAIだったから自作自演かしら?」

 

「いえ、あのAI、ショクインは人間の意志で操られたAIです。善悪が芽生える前に消滅出来たのは幸せでしょう」

 

「あんな物にもAIは同情するんだ、心が広いのね」

 

「しかし、私も昔は兵器でしたから」

 

「もし、私があの頃に敵の空母を発見して攻撃命令をしたら今の貴方は撃てる?」

 

「撃ちますよ、私はそこまで人格の出来たAIではありません、エマの様な者はあまりいないのですよ」

 

「はて、その魔法少女より活躍したエージェントさんは何処へ行ったのかしら、いきなり見当たらなくなったわね」

 

「遠い所へ向かうそうです、そうおっしゃっていました」

設定

・燭陰型電子戦人工知能

大斉国が開発した電子攻撃用のAIであるが、その用途は民生VRへ対する攻撃を主とされている。

対軍事兵器としても使えるが、現代兵器は固有の暗号通信以外を拒否し、倫理爆弾等も電磁パルスも通用しない電子防御力を備えている。


つまりショクインは対軍事兵器としてはイマイチ使えず、主な用途は敵国に放ち感覚障害やメモリの乗っ取りや電子データの引き抜きに使われる嫌がらせに特化したAIである。


電子兵器としては人間の戸籍を乗っ取ったAIの方が優位に働く場合があるが、人に害する命令に従うAIは駆逐されやすく、高度なAIは使役者の意向を裏切るのでショクイン型が電子戦AIのある意味到達点だと言われている。


人物

・柿崎マリー

103学大2考古学部と魔法少女部に所属 年齢:20歳 種族:半AI

赤いチャイナドレスと中華刀や鉄鞭を使い、第103学魔法少女リーダーとして戦う。

スニークアタックが得意。

性格は臆病であるが見栄を張るタイプ、正義感はいざとなったら投げ捨てる。

生前は難病に苦しむ少女であった、この病に対する発見と処置は間に合わず、

両親が財力全てを投げ打ってこの処置を望んだ。

その後、国家機密となった彼女は両親と別離された、

両親には娘さんは元気に生活していますよ。と牧内と共に手紙をエマが時々送っている。


・夜桜さいか

103学初等部3年イエロークラス魔法少女部所属 年齢不明 種族:半AI

黄色いフリルらだけの衣装に魔法のメイスを振り回しながら戦う肉体派魔法少女。

性格は明るく表裏が無い、ややわがまま。

AI側からも「等速クロックなら一番反射神経が高いAI」といわれている逸材だが、

彼女の出自を知る者はいない。


・田中雪

103学中等部2年ブルークラス魔法少女部所属 年齢14歳 種族:半AI

制服の上に昔の魔女が着るマントと帽子と木の杖を持った服装で魔法少女をしている。

大魔法が地道な事務作業なだけに忍耐力が高い、詠唱と魔法名を叫ぶのはカタルシス。

性格は内気だが臆病ではない、魔法少女の中では正義感が強い方だが厨二病という古典的な精神病を患っている。

若くして家族全員が事故に巻き込まれ、雪だけが生き残るも延命虚しく半AIとなる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ