017X.少女の物語
私の家の両親は働かずに限定ベーシックインカムで暮らしているよくある家庭であった。
しかし、ちょっとだけ小金持ちだったらしい。その理由を父が一度酒(現在日本では発売禁止)に酔った勢いで私を殴りながら言った。
「お前の母親は自分の子供を作っては売りを繰り返して稼いだろくでなしなんだよ」と。
お願いです。殴らないで下さい。
私は自分が一人っ子だと思っていた、父の発言が正しいならば、母は代理母出産か人身売買をしていたという事だ。
どちらもよくある話であったので真偽は分からないが、実か種違い兄か姉がいる可能性が出てきた訳だ。
両親は嗜好品で贅沢をしているが、私の生活は並みかそれ以下の扱いだった。
家が郊外にあり、現実世界の学校へ通うとお金がかかるのでVJP1の学校へ通わされた。VJP1の学校は体罰があるので好きではない、感覚HMD越しでもダメージを受ける、嫌な方向に科学は進んだなと子供心に思った。
痛みはもう嫌です。
頭の出来は普通だった、両親を見て頭が悪く生まれなかったのは救いだったと思う。運命に感謝したのはこの時くらいだ。
万事そつなく、そつなく、泣かずトばさず。
私が17歳の頃に母が死んだ、相続税で母の遺産が大きく目減りしたので父は荒れに荒れた。
人を、子供を殴る事に抵抗は無いのですか。
殴られるのは嫌だ、それに次は私を使って酒代を得ようとするかもしれない。
私は父の暴力的な状況を撮影して児童相談書へ駆け込み告発した。
私の数少ない勇気を搾り出した。
年齢的に児童保護施設へ入る必要が無いと判断された為に単身別居を決める、生活奨学金も18歳までの1年間受けることにした。
18歳になれば限定BIと投票権が手に入る、それで父親と縁を切れる可能性が出来た、母の遺産はいらない。あの馬鹿な男から離れれればそれで良い。
父と母は頭も良くなくがさつであった、出来る仕事は母の代理母か子供売り以外全てAIでも出来る仕事だったろう。
AIがなかったら父と母はちゃんと働き良い家庭を築いてくれただろうか、兄や姉とも一緒に暮らせたろうか。
学校卒業後数年で父も死んだ。現代医療はとても進んでいるのに父とは母死んだ、病院嫌いだったからだろうか。
私を生んだ時点で両者高齢だった為に2世紀くらい前の基準だと「寿命」だったのかもしれない、父と母は2世紀前の人間より頭が悪かったかもしれないだろうし。
そして、相続税で目減りしたが遺産が結構な額で入ってきた。
あの両親なりに死ぬまでには貯金を崩しきる計画はあったのだろうか、早死にしたのは誤算だったろう。
その頃、私は現実日本で介護師として働いていたが、そこでとある団体に勧誘される。
人が人らしい仕事を無くしたのは人工知能の影響だと唱える反AI団体である。
その団体の会合に時折参加し考える。私もAIに淘汰される血筋になるかもしれない、と。
子供を作る予定は無いが、そうなったら子孫達は同じ過ちを繰り返すだろうか、とも。
その団体に加入しても私は鳴かず飛ばずを貫いた。そこに目を付けられたのだろう。
ある日、団体の幹部である女性から話を持ちかけられた「VJP2でスパイをして欲しい、援助もする」と。
半信半疑でVJP2に来てみたが、そこでの生活は理想的かつ快適であった、幼少時代が本当に嘘のようだ。
秩序、民度、風景、利便性、全てが輝いて見える。実際に理想郷を目指して作った仮想世界らしい。
しかし、この世界もAIに支えられてるかと思うと、一部の人間のみに許された贅沢だと思うと、心に影がさす。
AIの世界全てを壊したい訳でもなく、VJP2の世界を広めようとも思わないが、AIと人間の折半はしなければならないと思う様になった。
もしくは、AIを無しの機械力だけで人間を補助する世界に戻るべきか未だに答えは出ない、恐らく大多数がそうだろう。
良い事も多くあった、VJP2で仮想家族という暖かいコミュニティが作られ、そこに自分より年下のかわいい姉が出来た事だ。
私は登校前に居間で見かけたその勝気でかわいらしい姉に挨拶をする。
「おはよう、マリナお姉ちゃん」
人物
・北淳子 28歳 種族:生身の人間
第103女学院高等部2年グリーンクラス ミサイル部所属
反AI団体からのスパイであり、北マリナの仮想妹である。
スパイとしては臆病なノンポリシー派と見られている、反AI思想があるかも怪しまれている。
そこに漬け込まれる事が多い。
赤松敬の種違いの妹であるが、本人達がお互いを認識できるのはいつの話だろうか。




