012X.赤松無法伝
2105年頃の話である。
南海軍備社西カリマンタン支部こと基地のとある一室午前1時、ここに集いがあった、悪い奴らの集いである。
具体的に言うと90式D空母の予備パイロットや火器管制パイロット、そこにすら辿り着けなく一般職に回った人物達、歩哨ドローン監視組もグルである。
彼らは花形である90式D空母機体操縦手の後塵を拝した者達でもあり、追い抜こうとも足を引こうとする者でもある。
9歳未満で「入社」しエリート教育を施された彼らにこの結末は実に性根を腐らせた。
彼ら悪い集まりは悪い事をとりあえずした、未成年での酒、タバコ、マリファナ、女遊びは田舎娘だらけで面白味が無いとの事であった。
ああ、本土のオンナがいいなあとか、本土モノは退廃さのケタが違うだのと日々ろくでもない情報が飛び交っていた一室だ。
そんな日々の中で一人がぽつりと呟いた「マフィアでも狩るか」
その一言は後に数人の人生を大きく大きく変えたと言っても過言ではない、歴史をも変えたかもしれない。
このろくでもない一言が小さな英雄を生み出すとは人類側には数百年以上分からなかった。
特に他の話題も無かったのでこの一言を真面目に検討しはじめる奴が出始めた。
無論、人一倍プライドと計算と興味心の強い赤松敬もその一人だ。
彼は「相方が志和じゃなかったら操縦手だよな」と周りが認める実力者である、それになにより行動力が高い。
赤松が呟く「1.対抗マフィアを装って襲う。2.警察を装って襲う。3.徹底的に暗殺に徹する。こんな所か?」
「装備はどうする?」「警察から押収品を買えるさ」「前時代の地元武器は使い勝手が良くないぞ」
「斉国からコイルガンとレールライフルを輸入するという手もある、船を使えば良い、昔ながらの海上貿易さ」
「装備はどうする? 軽装で挑むと死人が出るぞ」
「防具は本国のコスプレショップから軍の払い下げが買える、揃えると結構な額だな。そして、見た目は警察よりになる」
「マフィアの金を巻き上げよう」
「奴らはもう現物取引が主体だ、金と麻薬だ、俺らには捌くルートが無い」
「趣味の範囲でやるしかないな、全面戦争は資金的に厳しい」
「何よりこちらは安全地帯だ」
入念な下準備とマフィアのルートを確認しメンバーを選抜して決行する。弱いマフィアには一般職よりの戦力で、武闘派と噂される場所には精鋭戦力で挑んだ。
地元の夜は銃声が響くようになった、マフィアとPMCではさすがにマフィアは相手にならない。
最初は緩慢であった地元警察の捜査も素早くなって来た、マフィアと癒着しているからか単純に警察の威信を賭けてかの捜査か分からなかったが、ついにマフィアを殺して回っている集団が南海軍備社社員だと突き止められた。
物証は残さなかったが、警察やマフィア以上の錬度で攻撃性のある組織など西カリマンタンでは地元軍隊か南海軍備社しかない。突発的かつ短期間で収めなかったのが失敗であったと赤松は後年反省する「熱くなりすぎたの」と。
菊池教官の前に首謀者と思われる人物達が並ぶ、この事件に関しては会社が多方面にカネをバラ撒くという日本伝統芸能で収めたらしい。
「まず、首謀者格のお前らには各々で罰金5000万円と懲罰房2ヶ月入りを命ずる、拒否した場合は日本国法で裁かれる」
菊池は父親も同然の人物だ、出来の悪い息子達が有罪である事はすぐに分かったろう。
首謀格には各々の職種で一番要領の良い悪ガキが選ばれている、その推測は間違いでもない。
懲罰房の中は暑かった。そして、来るなと言っても相方は時より差し入れをしにくる。
懲罰房を出て復職した時には自分達が一番危険な90式D空母フォーメーションの下段に変更されていた。
悪行の報いで相方を道連れにしてしまったのだろうか、確かにこれは一番つらい懲罰だ。
相棒の目が腐っていないだけに心が痛むよ。




