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知性次世人間性  作者: 真宮蔵人
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001.序章 平日

 「ごきげんよう! 恵子さん」天候設定爽やか晴れの朝、親友の明るい挨拶が響く。

 

 彼女を包む黒と緑を基調としたブレザー(古典的学生服)が朝日受け良い絵になる、小走りで駆け寄って来る。

 

 私はその微笑ましいワンシーンに私は心休まる。

 

「ごきげんよう、一穂。そんなに走ると転びますよ」

 

 と私は出来るだけ優しく語りかける、ずっとこういう時間を大事にして生きたい。

 

 明るい日常、平穏な時間、優しいひと時、以前なら考えられなかったあり様に私は居る。

 

 この道のりが積み上げたものか、転がってきたものか悩みながら、自分に正しいものなのか。

 

 親友と他愛も無い話をしながら通学路を歩むとレンガ作りの校門が見え、

 

 そこ抜けるとそこは夢の庭、花咲き乱れる場所でもあり、願いの均衡に立つ場所でもある。

 

 ここは国立仮想第103女学院、ある程度「選ばれ」た人々が「女生徒」として学ぶ場である。

 

 西暦2116年 長栄48年。

 

 AIとロボット産業の発展により現実産業はほぼ人員不要となった。しかし、ここ100年以上起こっている少子化により実日本の人口は現在約3000万人。

 

 その3000万人が政治家や一部の公務員以外は無職、といった事に耐えられる国民性な訳が無かった。

 

 限定ベーシックインカム法が制定されて約30年。実業開発(宇宙含む)に行き詰まり、

 

 人々は仮想空間へその探究心や労力を注ぎ込んでいた、そんな時代のお話。

 

 他愛も無い話を続けながら一穂と教室に着くと、もう始業のチャイムが鳴る頃なのに生徒の姿はまばらであった、

 

 この学園には遅刻へ対するペナルティは無い。

 

 ペナルティが無い事と、ここ高等部2年緑組クリーンクラスは穏やかな性格な生徒が多い反面、

 

 マイペースな生徒も多い為に遅刻は学年で一番多い。

 

 とはいえ、ここはバーチャルリアリティ空間なのであるから通学を飛ばして瞬時に座席へ着くことも可能である、

 

 つまり遅刻の要素は自意識からではないかと私は思うが表向き皆勤賞の私は特に追求した事は無い。

 

 成果無き成果主義の現代では遅刻等という物質文明の習慣は廃れたのかもしれない、

 

 気がついたらみんな着席してる日もある。

 

 なお、担任教師も遅刻する姿があるのだからそういうプレイなのだと私は割り切るしかない。

 

 私も以前は瞬間移動で着席して授業を受けるつもりでいたが、

 

 一穂がどうしても「一緒に通学は詫び寂びだよ」と意味不明な発言をした為に

 

「では一穂さん、私は無遅刻を目指しているので、せっかく通学するのですから優雅に計画的に遅刻せず通学しましょう」

 

 と返す事になった為に朝早く起きて自宅から学校へのそこそこの距離を通学するという現代的贅沢を満喫する事になったのである。

 

 担任教師が朝の挨拶をする、出席は取らないがこれはこの学園が特殊な所だけであって現実的な学校は未だにまともな皆勤賞も単位も評価もあると思う。

 

 私が現実生活の頃は全寮制だったので、危うい通学通勤遅刻という概念とは無縁の人生であり、これから大きな心変わりが無ければ今までと変わらず遅刻とは無縁だと思う。

 

 通学通勤の撲滅は過去人類の悲願だったらしく、通学時間を使うという行為は自己愛の強い現代では「時間の無駄、絶対嫌」という話をクラスメイトから聞いた。

 

 おや、その噂のクラスメイトである「五ヶ所みれい」さんが、、、

 

 あれは転移ではなくてログインかな? <おいすー>という挨拶を私のハンドコンソールへメッセージを送ってきた。

 

 私は思考チャットで<ごきげんよう。>と返答しておく。

 

 五ヶ所みれいさんは私と同じ部活動の部員でもある、人工知能応用部、通称AIOあいおーと呼ばれているゆるい部であり、

 

 AIガチ勢である人工知能研究部とは微妙な関係にある。

 

 五ヶ所さん曰く「もっと効率よく楽したい、その為のAI」というモットーらしいが、

 

 その発言がAI研のロマン派に漏れた為にロマン派には嫌われている。

 

 そんな風聞に対し五ヶ所さんは「ロマンは人間の特権」とのコメントも残している。

 

 そんな感じでチラホラと生徒達が登校(瞬間移動)し始めてる、

 

 学園はそういう生徒を配慮してか午前は学ばなくても人生に支障は無い文系の授業が多い。

 

 理系、主に数学と科学は大人になるとヒョコっと出てきて使わざるを得ない場合がある(実体験)ので午後に回されるのは納得出来る。

 

 私は幼少環境の都合で文学に触れる機会が無かったので午前の授業が大好きです。

 

 しかし、賛同者が少ないのは少し悲しい。

 

 やれ数百年前の詩だの歴史だのを聞き流していたらチャイムが鳴ってお昼の休憩時間が訪れる。

 

 親友は「今日は恵子ちゃんお弁当の日!」と諸手を挙げてはしゃぐ、

 

 このテンションでよく一穂はグリーンクラスに選ばれたなと未だに謎に思う。

 

 「そのはしゃぎ方はイエロークラス(黄色組)ね」と私は溜め息をつきつつ教室で机を付けてお弁当を広げる、

 

 お弁当は一穂と一週間交代で二人分作るという事にしている。

 

 そもそも私達は食事を取らなくても良い状態にいる。

 

 現実でも「消化器効率化剤」や「満腹中枢調整剤」やその手の手術が私の生まれる前からある。

 

 医学の進歩により食事もまた贅沢品になりつつある。そもそも私達は今……

 

 しかし、一穂がまた「侘び寂び」がどうとか贅沢を言い出すので全面的に協力する事にしている、

 

 それに「料理」は今までの人生にはなかった刺激であった。

 

 五ヶ所さんやいくらかのクラスメイトはリアルで食事サプリメントのみもあるを取る為にログアウトしている様子、

 

 周りを見ても「食事」を教室で摂るといった変わり者はここの二人しか居ない。

 

 その他は校内レストランで赤や黄組のおもしろ料理大会を遠巻きに見ているか部室や屋上やら中庭でのんびりしてるのが緑組の気質である。

 

 私が今日用意したお弁当も女子らしく控えめに彩りよくしていたのだけれど、

 

 一穂はいつも通り「うん、おいしい」と言いながら食べる、二人とも昔の習慣で早く食べ終わってしまったが。

 

 となると授業までの余暇が大きく出来てしまい、余暇は別れて部室へ行くことにしたのだが。

 

 「恵子さん、良かったらウチの部室に来ない?」と誘ってくれるも私は「ならないよ、魔法少女……」とそっけなく返す。

 

 親友の志和一穂は魔法少女部員である。

 

 魔法少女部とは、今世(仮想日本第二サーバー)にはバグやクラッキングのひずみが時々発生するのでそれを陰(難しい)で解決し、世の為、人の為に特別に作られたAIの入ったステッキ等武器を振り回し戦う組織なのだという事に

 

 この世界に来て一番のカルチャーショック? を受けた私でございます。

 

 私は遠慮がちに「あれは一般人が踏み込んではいけない領域だから遠慮しちゃ駄目かしら……」と一歩下がる。

 

 思い浮かべると「私は一生を魔法少女に捧げる!」と謳う大学2年生、振り付けと必殺技名に悩む初等生、今時に黒革張り本にブツブツ言いながら必死と何かをペンで書き込む中等生。

 

 そんなカオスメンバーな部室の内装は異様に作り込まれてて、タイトルをつけるとしたら「かわいいと黒魔術」みたいな感じになっているあの魔法少女部部室。

 

 私は「そもそもね、グリーンクラスでしかも高等生の魔法少女部員は一穂だけなのよ」と嗜める様に続けるも、

 

 一穂は「だからそれがいい!」と自信満々な顔をする。あの仕事で危険な目には何度も会っているはずだし、

 

 よくわからない使命感が彼女を動かすのだろうか、かぶってるキャラも居ないらしいし。

 

 キャラが確立してしまって根付いてしまったのか、でもそこで挫けず私だけでも立ち上がらないと、逃げる為に。

 

 「私はほら、AI応用の部活が忙しいからね」と言いかけたけれど、

 

 以前に一穂曰く「私のAIOのイメージはビーチでウクレレ弾いてるBotの後ろで安楽椅子に座ってポケーっと夕日を眺めてたら突然後ろのパルテノン神殿から五ヶ所さんが「ヘウレーカ!」と叫びながら走ってくる摩訶不思議な空間だと思いました」

 

 ……間違っていないのが痛い所。AI研みたいな真面目な部活では無く、駄目な人達のたまり場だと言われても返す言葉が無い。

 

 だが、それは表向きの姿なのだよ一穂君! と自分に言い聞かせて立ち直す。

 

 色々と思い出しながら私は少々強引に決断した。

 

「そこは分かり合えない私達! という訳で各々の吹き溜まりへ別れ!」

 

 「別れまーす」一穂は納得しようがしまいが受け入れてくれたようだ、これぞ友情、たぶん。

 

 AIOの部室は魔法少女部とは離れた大学部よりの区画にあるので反対側同士へ向かう事になる。ちなみに大学部から魔法少女部は正反対の位置にある。

 

 大学部と高等部の境の5階の角部屋、窓にカーテンの掛かった喫茶店の様な押し戸を押すと、

 

 「カランコローン」という音と「ざざーん」というさざなみと軽快なウクレレの音色が響く。

 

 部室内は担任の許可あらば規定内容量で改装しても良いとする、規定は読んだ事無いけどあまり厳しくはなさそうだ。

 

 海へ沈む太陽(東向きの部室)を背景に部員である五ヶ所さんは安楽椅子に座り「考える人」のポーズを取っていた。

 

 「たぶんパルテノンで取ったほうが様になるポーズだよ」と言うと、

 

 五ヶ所さんはハッとして腕に巻く時計というアンティークを見て驚く、

 

 「危ない危ない、もう下校時間かと思ったよ」と一人で安堵している。

 

 「また部室にずっと居たの? 何時から?」と問うと当たり前の様に五ヶ所さんは「朝にちょっとだけ出て後は全部Botだったよ、気づかなかったでしょ?」と得意げにサボりの申告をする。

 

「授業中に他の人を注視する趣味は無いから私には評価できないね」

 

 五ヶ所さんは頭を抱えながら「授業に出て悩み続けてるよりはBotの方がマシだと思ってね、やる事も考えることも多すぎてさ」

 

 確かに奇面? が顔に出やすい五ヶ所さんが授業中に「考える人」な顔をしていたら残念な人だ、実に残念美人だ。

 

 私も並ぶ安楽椅子の一つに腰掛け考える人の隣で目を閉じさざなみの音に心を任せる。もう5年くらい経ったのかな、ここに流れ着くまで。

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