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全て実話です。少し変えてある場所もありますがほんの少しです。どうか温かい目でよんでやってください。
「愛しい」という感情は、意思とは反対にいつの間にか生まれ、膨れ上がる。
好きになりたくないと思ってもその気持ちは止まらなくて。
ただただ膨れ上がるばかりで自分ではコントロールなんて出来やしない。
どれだけ結果がわかっていても、諦めてくれない自分。
変なところで、感情が高まってしまう自分。
それによって、つらく、苦しい思いをしている自分。
けれど、そういった感情もいつの間にか消えている・・・・・・・・
いつの間にか
高2。
その年は人生の中で一番恋をする年。
本当の幸せ、楽しみ、苦しみ、悲しみを理解する年。
そう思い始めたのはいつだったろうか・・・・?
「一葉ちゃんが・・・おれを好き!?」
靖志こと通称ヤスは猫みたいに大きな目をぱちくりさせていった。
「そうよ?あんた知らなかったの!?クラスの人はみんな知ってるのに」
私はヤスの反応に少し呆れていった。
「いや・・・少しは聞いてたけど冗談かと思ってた」
ヤスは困ったように腕を組んだ。
ヤスの少しパーマがかった栗色の髪がかすかに揺れた。
「で?一葉のことどうするの?あんだけ可愛いんだからもちろんOKでしょ」
私はにっこりと笑っていった。
「いや・・・でも・・・おれ・・・」
「一葉はムリ、ていうんじゃないでしょうね?」
「あー・・・うー・・・」
ヤスは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「ウソでしょう!?だって、可愛いとかいい子だとかいっつも言ってるじゃない!!」
私はつい素っ頓狂な声をあげてしまった。
「いや・・・言うのと好きは違って・・・」
ヤスは気まずそうに顔を指でかいた。
「その・・・おれは本気で好きになった人じゃないと・・・ダメで」
「へ〜・・・あんたでもまじめなこというのね」
私はちょっと感心していった。
「おれだって、一番好きな人はちゃんと決めるぜ?」
ヤスはやたらと真剣な顔で私に言った。
「あ・・・・そぅ。まぁ・・・うん、それはそうよね」
私は真剣に見つめられひるんでしまい、口をもごもごさせた。
「でも・・・じゃあどうするの!?あんたが優しくするから・・・一葉、本気なのよ」
私はいきなりあふれ出した感情を振り切って言葉を絞り出した。
でも、心なしか声が震えてる気がした。
「あーうー・・・・・」
ヤスは困惑して再び苦虫を噛み潰したような顔をした。
「とにかく!自分でゆっくり考えておくこと。私はちょっとトイレに言ってくるわ」
私はそれだけ言って、急いで教室を出た。
ほとんど駆け足だった。
私はトイレの個室に駆け込むと壁にトンともたれた。
「最悪・・・・」
私は片手で顔を覆った。
体は、やはり火照っていた。
「何で、一葉と同じ人を好きになっちゃうかなぁ・・・」
友達と同じ人を好きになるのは嫌だった。
それで友情が崩れそうだから。
私はパシリと両頬を叩いた。
(私には好きな人はいない!!それが私!むしろ、一葉と同じ人なんて・・・ヤスを好きになるなんてもってのほか!!)
私はよし、と声を出してもう一度気合を入れるとトイレから出て一葉のところに行った。
一葉と話して、ヤスへの気持ちを薄れさせようとするために・・・。
***
「・・・・・・・何で気づいてくれないかな・・・」
おれはボソリと独り言を言った。
『一葉はね・・・あんたのこと本気で好きみたいなのよ』
突然、菜実は大人っぽい綺麗な目でおれをみながらいった。
おれの大好きな笑顔で。
おれはため息をついた。
(おれが好きなのはお前なのに)
君はまったく気づいてくれやしない。
おれはそう思いながら再びため息をついた。
一葉が自分を好きというのは周りからいろいろと聞いて知っていた。
だけど、そこまで本気だとは知らなかった。
(一葉ちゃん・・・か)
おれは窓のそばに立っている一葉を見た。
一葉は本当に優しい子でみんなから好かれている。
肩ぐらいの長さの黒い髪は、菜実とは違ってストレートではなくふんわりとしている。
まるで、人形みたいな子だ。
普通の男ならドキッとするような子だがおれは何も思わない。
菜実がいるから。
おれは、ついさっき見た菜実の笑顔を思い出した。
柔らかくて、優しい笑顔。
菜実は友達のことを話すとき、いつも幸せそうに笑う。
おれは、そんな菜実の笑顔が好きだった。
と、菜実が教室に戻ってきた。
おれは声をかけようと口を開いたが菜実は一直線に一葉のところへ行ったのでそれはかなわなかった。
菜実と一葉は本当に仲がいい。
聞いたら、幼稚園からの付き合いだといっていた。
おれは楽しそうに会話している二人を無意識にじっと見ていた。
そして、ふと思いつき、立ち上がって二人のそばに行った・・・
***
「か・ず・は」
私は一葉の肩をぽんとたたいた。
「菜実!」
一葉は私を見て嬉しそうに言った。
子供のように可愛らしく、無邪気な笑顔で。
そんな一葉の笑顔を見て、私の心がちくりと痛んだ。
(やっぱり、ダメよ。一葉と同じ人を好きになるなんて。この子を傷つけちゃダメ・・・)
「何してたの?」
私は出来るだけ平常心を装って聞いた。
「風にあたってたの。物事を考えたいときって、なんか風にあたりたくなっちゃって」
一葉は少し照れていった。
「・・・・・・・・ヤスのこと、考えてたのね?」
私はちょっと苦い思いをしながらいった。
「・・・・・うん///」
一葉ははにかんでいった。
「なんかね・・・・ヤス君のこと考えると、胸がときめくっていうか・・・嬉しいの。あぁ、やっぱり好きなんだなぁって実感できて」
一葉はやわらかく微笑みながらいった。
「そう・・・・」
私は苦笑いをしてしまった。
一葉のその嬉しそうで、可愛らしい姿は。
私の心をじわじわと痛めつけていた。
「でも・・・」
急に、一葉はふっと悲しそうな顔をした。
「でも?どうしたの?」
私は一葉の急激な変化に少し驚いていった。
一葉は少し目を潤ませて顔を上げた。
「ヤス君、私にはまったく興味がないみたいなの」
一葉は辛そうに微笑んだ。
「え・・・?」
トクン
自分の鼓動が、早くなるのを感じた。
「なんだか・・・私のことは嫌いじゃないけれど、好きじゃないみたいな感じで・・・」
一葉は小さくため息をつきながらいった。
鼓動が徐々に徐々に早くなる。
「希望が・・・・全然な・・」
「そんなことないわよ」
一葉が最後までいう前に私はいった。
「ヤスは恥ずかしくて表に出してないだけよ」
私は出来るだけ笑顔になるよう努力していった。
一葉の言葉に喜んでいる自分がいる。
むかつくほど、喜びに浸っている自分が・・・
私は、そんな自分を消すようにいった。
「希望がないなんてまだ決めつけちゃダメよ。一葉は可愛いんだから。きっと大丈夫よ。私が協力するから」
私は、ね?と首を傾けて一葉に向かっていった。
私はダメ。
彼を好きになっては。
大切な友が好きな人を、自分まで好きになってはダメ・・・。
私は自分の心に何度もそう言い聞かせた。
「うん・・・・ありがとう!菜実」
一葉はぱっと光が輝いたように笑った。
私は、そんな一葉の笑顔を見てホッとした。
と、その時。
「何話してんの?恋話?」
ヤスが、私の後ろからひょいと出てきていった。
「ヤ・・・ヤス!?びっくりしたぁ・・・」
私はドキドキする胸を押さえていった。
「そんな驚かれても困るっつーの。で、何の話してたん?」
ヤスは私の反応を見て楽しそうにいった。
男らしい綺麗な顔が、子供のような無邪気な顔になった。
その笑顔が、私をこんなにも緊張させてるのをコイツは知らないんだろうか?
私は少し腹を立てながらいった。
「あんたには関係ないわよ」
「つめたいなぁ〜」
ヤスは私の返事にわざとらしくショックを受けたような顔をした。
「アハハ・・・」
そんなヤスを見て、一葉は頬を紅潮させて笑った。
本当に、女の子らしくて可愛い。
私は一瞬、一葉が羨ましく思った。
「あ!」
ヤスはいきなり、思いついたように声をあげた。
そして、いつから持っていたのか、アメ袋を私達の目の前に出した。
「なぁ、アメいる?結構余っててさ」
ヤスは、また無邪気な笑顔をしていった。
「うん!」
一葉がとても嬉しそうな顔をしていった。
「お、元気のいい返事。可愛いなぁ〜」
ヤスは何気なく笑っていった。
そんなヤスの言葉に、一葉はただ笑い返しただけで何もいわなかった。
緊張して、言葉が出なかったのだろう。
「菜実は?」
ヤスは私のほうを向いていった。
「いる!ありがとう」
私は素直に笑った。
「いいってことよ」
ヤスは満面の笑顔で答えた。
トクン
(ああ・・・まただ。どうして私は・・・)
彼の事がこんなに好きなのだろうか?
なぜ・・・一葉と同じ人を・・・・
私は二人にバレないようにぎゅっと拳を握り締めた。
(ダメよ・・・ダメ・・・私は彼を好きになっては・・・)
絶対にいけない。絶対に。
私は自分にそう言い聞かせた。
何度も、何度も・・・・
でも、それが。
後で私を一生後悔させることになった・・・。




