第六話 迫る時
多田家本拠地の女潟城城下にて
ガシャガシャガシャガシャ ヒヒィンヒヒィン ザワザワ
ザッザッザッ
石川郡楼「殿、全軍招集終わりましてございます。」
多田義房「わかった…… ではいこうか。」
「狙うは由利根家の本城 天舞城!!いざ出陣ぞ!!」
多田兵「オォォォォォォォ!」
多田氏元「さて、いよいよじゃな」
多田吉峰「由利根家に目にものみせてくれよう!」
石川郡楼「フフフ 楽しみじゃな」
牧田利重「しかし、よくこれだけの兵を集めれたもんだ」
牧田利成「この兵数は初めて見たぞ」
茂山千作「…………殺る」
多田頼方「茂山は怖えな相変わらず……」
石田室信「早く槍を振り回してぇ!」
寺田真善「落ち着けよ室信 お前も岩崎みたいに討たれるぞ」
岩崎寺左衛門「兄の仇…討つ!」
岩崎忠常「まぁ馬鹿な弟の尻拭いをしてやるとするかぁ」
こうして女潟城から多田家の由利根家を攻める軍 八千人が出陣した。
この報はすぐに由利根家に入って来た。
このとき由利根家では久保正繁を重臣に加える儀の真っ最中であり、全ての家臣が揃って天舞城にいた。
由利根頼信「では、これにて久保正繁は由利根家の重臣として迎え……」
ダダダッダダダッダダダッ!
一人の兵士が広間へ駆け込んできた。
門田義満「な、なんじゃ!」
家臣達「なんだ?こやつ」「今は式典の途中じゃぞ!」ザワザワ
由利根兵「ご、ご報告!! 多田軍が天舞城に向け進軍を開始!! その数約…八千!!!」
門田義満「な、な、何ぃぃ!!!!?」
由利根頼信「何だと!?まことか!」
由利根「はい!さらに!多田義房自ら出陣!その他有力家臣の姿も多数! 一大遠征の軍団にございます!」
土井義介「は、八千じゃと… なぜ今なのだ?」
久保正繁「恐らく、父が死んだということがバレたのでしょう。何故かは分かりませぬが。」
田沢義春「なんということじゃ…」
門田義満「ならばこうしてはおれん!軍議をひらくのだ!重臣以外は引き払えい!」
家臣達「は、ハハッ」
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こうして由利根家の対 多田軍への軍議がはじまった。
門田義満「して、我らの軍ははどれくらい集められそうじゃ?」
土井義介「早急に集めて…三千弱…くらいだ」
門田義満「半分以下…か…。」
由利根頼久「籠城しかありますまい!」
吉田重治「籠城しても後詰めが無ければ意味があるまい!」
田沢義平「打って出るほか無し!!野戦なら勝機が!」
門田義満「兵力差をどうして埋めるのだ!」
田沢義平「それは策を…」
門田義満「策がないから困っておるのじゃ!」
田沢義春「他家に援軍を頼めないものか…」
吉田重治「他家といっても近くの島津家しかあるまい。多田家もそこは分かっているだろうし無駄だろう…」
田沢義平「ならどうしたらいいのだ!」
門田義満「それを考えておるのだろうが!!」
由利根頼信「オイ!!!落ち着けお主ら!」
一同「ビクッ!!」
由利根頼信「醜く言い争うな!家中がまとまらねば勝機はないぞ!」
吉田重治「し、しかし殿、どうすれば…」
由利根頼信「…うむ、 ん?久保、何も喋らんがどうしたのだ?」
久保正繁「……よし、いけるな」
由利根頼信「ん?なんと?」
久保正繁「オレに策がある。聞いてくれ。」
土井義介「ほう、どんな?」
田沢義平「生半可な策では意味ないぞ!」
久保正繁「分かっとりますよ、いいですか………」
策の説明をする久保正繁
門田義満「そ、それは……」
土井義介「た、たしかに有効かも知れぬが…」
田沢義春「駄目だ!危険が大きすぎる!」
吉田重治「たしかに危険じゃ…」
田沢義平「いや、これくらいやらねば勝てぬぞ今回は!」
久保正繁「これを実行するかどうかは殿次第でございます。」
由利根頼信「う、うむ……」
(たしかに危険…しかしこれくらいせねば当主とは言えぬのかもしれんな……。)
「よし!いいだろう!その策を採用する!今すぐ全軍招集をかけろ!!」
重臣たち「…ハッ、ハハッ!!」
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五時間後
由利根家伝令兵「伝令!多田軍は我が領内に入った模様!」
由利根頼信「よし、わかった」
久保正繁「全軍招集終わりましてございます。出陣の下知を。」
由利根頼信「うむ、では出陣じゃ!」
由利根兵「オォォォォォォォ!」
門田義満「策が成功すれば……」
由利根頼久「そんなに上手くいくか…」
吉田重治「やるしかない…」
土井義介「……」
田沢義平、田沢義春「……」
こうして天舞城から由利根軍三千が出陣した。
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五時間前
久保正繁「決戦のは場はここ、古沼原!!」
由利根頼信「古沼原じゃと?あんな足場が悪いところでか?」
久保正繁「だからこそです。多田家は古沼原が泥地という事は知らない。そこで一気に策を仕掛ける!」
門田義満「それならば泥地用の装備を兵にもさせよう。」
久保正繁「ええ、お頼み申す。では古沼原を目指し出陣しましょう。」
由利根頼信「わかったでは出陣の支度だ!」
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古沼原に到着した由利根軍
そして軍議が行なわれる。
久保正繁「恐らく多田軍もあと二時間ほどでここにくるはず、そこからはしばらく睨み合いですぞ。手を出したら負けと思われよ。」
重臣たち「おう!」
久保正繁「では殿、手はず道理に…」
由利根頼信「わかった…やってやろうぞ…」
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多田伝令兵「伝令!由利根軍三千が出陣し古沼原付近に陣を張っている模様!」
多田義房「ほう、打って出たか…」
多田頼方「ふん、勝ちですな…」
多田氏元「ハハハッ兵力差を理解しとらんようじゃな」
多田吉峰「迎え討ちましょうぞ!負けはありますまい!」
石川郡楼「何か怪しい気もしますが… 塞いでいるのならやらねばなりますまい…」
多田義房「うむ!由利根軍を迎え討つ!古沼原に軍を進めよ!!」
古沼原に向かう多田軍 迎え討つ由利根軍
合戦まであと 二時間