最終部 最終章 第七話(3)『瞬神獅子公』
竜の神カンヘルとの最終決戦の最中、古獣覇王牙団のオリヴィアは、連合軍の陣中央にいるシャルロッタに通信を繋げた。
突然の事にシャルロッタも些か驚きはすれど、すぐさま事態を呑み込んで返事をする。
「オプス神が、受肉した……?!」
「最後の竜を駆るのは〝黒騎士〟ヘル・エポスではないという事だ。ヘルとヘレの肉体を元にして生み出された、人造の神――まさかそういう手で来るとは思ってなかった。我々、いやオレの誤算だ」
「いえ、人工知能を使って人造の神を創るだなんて……さすがにそれは、予想出来ずとも仕方ありません」
今やシャルロッタは、己の魂の外殻、人造魂魄〝シエル〟とも記憶や知識を共有している。だからアルタートゥム達の超未来の会話にも着いていけるのだ。
「つまり――言いたい事は分かるな。今こそお前の力が必要だ、シエル、そしてシャルロッタ」
「星の城との伝環路を開き、ディザイロウの力を拡張……いえ、〝あれ〟を使うのですね」
「無茶を承知で言う。連合全体に付与術式しながら、同時にディザイロウとの橋渡しをしろだなど、いくらお前でも下手をすれば――」
「いえ、それこそあたしの、あたし達の使命です。でも……一つ問題があります」
「移動手段、だな」
シャルロッタは、銀の聖女として連合全体に加護を付与する要の役割を負っているだけでなく、超特級の鎧獣術士以上の術式を扱える術士として、陣奥に控えていた。だがいくら聖女に相応しい力を持っていようが、彼女自身は生身の人間である。鎧獣騎士のような高速移動など出来るはずもない。
「それについては考えがある――」
速やかに、且つ気付かれず安全にシャルロッタを連れてくる方法。そんな事を行える者がいるとしたら、それは一人しかいなかった。
「レレケだ」
こうして、今度はシャルロッタがレレケに通話を繋ぎ、力を貸してくれるようお願いをしたのだ。
この場合、ただシャルロッタをここまで運ぶだけでは駄目で、問題はもう一つあった。それはシャルロッタがこの戦場に辿り着いた後、今度はヘルオプスに彼女の存在を気取られないようにしなくてはならない、というものだった。
連れてくるのはともかく、その後も存在を感知させないようにする――。
神の化身と嘯く、あの魔人の〝目〟を欺き続けろというのだ。
相当な難題である。
「レレケよ、いいか」
そこへ、アルタートゥムの科学者でもあるロッテから、レレケに対して通信が入った。
「お前の〝レンアーム〟そのものは以前から何も変わっていない。ディザイロウのように生まれ変わったわけでもなければ、ドグの〝ジルニードル〟のように、ボク様達と同じL.E.C.T.でもない。だが、お前にはエール神が授けた霊授器〝神の杖〟がある」
レレケ=レンアームの新たな装備。
背丈よりも大きな杖。
水晶に似た大振りの球体がいくつも嵌められたそれは、まるで未来のオブジェのようだ。
「ここに来る時、オリヴィアから聞いているな? その杖の真価を。それにボク様もその力の使い方を教えた。それを思い出せ」
「はい」
怖れがないと言えば嘘になるが、だからといってレレケに迷いがないのは確かだった。
再生した竜との戦いを続けながら、同時に別の術も行使する。
離れ技もいいところだし、普通に出来る事ではない。
けれどやるしかないのだ。
いや、レンアームなら、この神の杖があるレンアームなら出来る。
偉大なる大術士にして工聖ホーラー・ブクより受け継いだ、このレンアームの力と合わせれば――。
覚悟を決めたレレケが、レンアームの脚力で戦場から一旦距離を取った。その後、術式発動の舞いの動きを行う。獣理術は、演舞の如き身体操作で為されるもの。
複数の光が、レンアームの全身を駆け抜けた。
光は喉元に集まり、翳した杖に向かって、吐き出すようにそれを放つ。
杖に当たった光が水色の水晶を通り抜けて放射状に地上へ照射されると、そこから複数のライオンが、獅子の群れとなって駆け出していく。
「神力獣理術――〝瞬神獅子公〟」
レレケの号令と共に、獅子の群れは一つの塊となり、一瞬で青味を帯びた一頭のライオンへと変化した。
と、それを視認した瞬間――
青の獅子はその場から消え去っている。
風の速さを持つ擬似ライオン。
いや、風よりも速いかもしれない。
それの最大速度は――音速を超える。
今は他の術を複数同時に併用しているから最大速度まで出せないが、それでも音速の半分以上の速さ、つまり時速六〇〇キロは出ていた。擬似と言えども、最早生物の出せる速度ではない。
遮蔽物のない原野でのそれは、まさに瞬間移動に等しい速度。数えている間に、青の擬似ライオンは、シャルロッタの元へ辿り着いた。
突如目の前に出現した青いライオンにシャルロッタもしばし面食らいはするものの、すぐにレレケ=レンアームの術だと理解し、その背に跨る。
風より速いライオンは、踵を返すや否や、同じ速度で一気に元の場所へと駆け戻っていった。
この際、それほどの速度があると風圧やらでシャルロッタが吹き飛ばされてしまうのではと思うだろう。しかしこの術の恐るべきところは、速度もそうだが空気の被膜を張るところにあった。
風圧や重力加速によってライオン自身が砕けぬよう、己の前方を中心に空気の遮蔽膜を展開。これの効果によりライオン本体は当然、背中に載せたシャルロッタも、鋼鉄の箱より安全な圧力軽減を受けるのである。とはいえそれでも相当な加圧はかかるので、シャルロッタは吹き飛ばされないようにしがみつくので精一杯だったが。
しかもこの空気の膜は大気中の水分も制御出来、それによりレンズ効果を生み出して光を屈折させ、姿も見えなくさせる事が可能であった。
不可視にして最速の術式。
まさに理想通りの術。
一体レレケは何を恐れる事があったのか。まさにこれ以上ない、打ってつけの獣理術ではないか。
そのように思うかもしれない。
だが――実はそうではなかった。
この術は、前々から準備していた術ではない。術の練習も何もしていない。このような術、今の今まで存在すらしていなかったのだ。
これは、今まさにレレケが編み出した術。
ぶっつけ本番で使用したどころではなく、そもそも術の構築も含めて何もかもが、今この場で編み出したもの。
そんな事が可能なのか。いくら〝覇導獣〟の名を冠するレンアームでも、即興のように新術をその場で生み出すなど。
いや、さすがにそれはいくら何でも不可能だった。
それを可能にしたのは、レレケでもレンアームでもない。
最も恐るべきなのは、やはり〝神の杖〟。
この杖と装備、霊授器の力だった。
それこそが、〝術の創造〟。
駆り手である術士が術を想像すると、それを杖と装備が構築する。
そして神の杖が発動式を術士の脳内に還元し、術士がその通りの手順を踏めば、理論上どのような術でも放てるというもの。
思い通りのあらゆる術を瞬時に生み出すなど、まさに神の力。
ただし誰でも、どのような術でも出せるのかと言えば、制限も当然ある。
大前提として、術士本人に生み出したい術の正しい知識や理論が備わってなければ、発動出来ない仕組みになっているのだ。
例えば紙に文字を書きたいとする。
その場合必要なのは、紙とインクとペンであろう。
では紙はどのような種類の紙か。植物繊維のものなのか、動物の皮のような羊皮紙や牛皮紙のようなものなのか。インクは鉱物由来か。それとも豆か。はたまたイカスミなどか。ペンは何から削り出した、どのような素材のどんなものなのか。
そういう風に術を形作るのに必要な具体的な知見を持っていれば、どのような術でも思った通りに発現出来る。反対に言えばそれらの知識がない、または中途半端だと、術は不完全なものとなってしまうのだ。
その意味では、レレケこそが最もこの力を持つのに相応しい人物だと言えよう。
深く広い知識、理性的な知見、広大な想像力――。
そのどれもが、彼女の特徴と言えるのではないだろうか。
こうして戦いの場に到着したシャルロッタは、青のライオンと共に身を潜めながら、己の為すべき準備に入っていった。
彼女は先ほど、レレケにこう言った――。
このままだと、イーリオとディザイロウはあのカンヘルという人竜の神に負けてしまう。
あの竜は、既にシャルロッタとシエル双方の力すら――不完全ではあるにせよ――持っている。だから多層世界を開く事が出来るのだ。その力は、この世界の物理法則を書き換え、捻じ曲げてしまうほど。
だがディザイロウには、それを打ち破る方法があった。
「それが〝繋ぐ力〟」
「それって……確かゴートのアケルスス城の地下からシエルさんがやってみせた、遠隔で通話したあの――?」
「そう。でもただ長距離通話する事が、繋ぐ力じゃないの。その力の真の使い方は、イーリオが感知可能なあらゆる全ての人や命あるもの、それとイーリオ、それにディザイロウの意識を繋げ、その全員から霊子の力を収束させるというものなの」
霊子を収束、つまり他者から分けてもらうのだが、かといって生命を奪うものではない。
魂魄というものも、ある種の代謝活動のようなものを行う。その中からほんの僅かだけ分けてもらうのだが、イーリオとの結びつきや意識の共有が強ければ強いほど、与えられる霊子エネルギーも増える事はあるだろう。
そうやって掻き集めた力を使えば、多層世界の先にある向こう側の世界、即ち異世界に本体のあるオプスの人工知能そのものを破壊出来るというのだ。
「だから千年前、月の狼の騎士だったロムルスは、皇帝である必要があったの。大陸全土を治める皇帝なら、全土の人間の意識を統一する事も不可能じゃないから。でも――それでも完全に打ち滅ぼすまではいかなかったの。だからエポス達は生き延びた。現在は大陸全土があの時よりももっとバラバラで国が多数ひしめきあっているし、王や皇帝の願いといっても、必ずそれを聞いてくれるとは限らない」
「そんなの、イーリオ君なら尚の事……」
「ううん。だからイーリオなの」
イーリオは王ではない。皇帝でもない。
人の上に立とうという人間では、そもそもなかった。
だからきっと、彼は君主のように命じたりはしないだろう。
きっと彼なら、そう――。
それに、その名は誰もが知っていた。
恐炎公子という名で。
銀月狼王という名で。
七代目百獣王という名で。
霊獣王という名で。
異名や肩書きで人心が動くという意味ではない。
彼ほどに大陸全土を旅し、その土地を救い、戦い、寄り添った人間がいただろうか。
国も人も分け隔てなく、その土地の人々に溶け込み、どのような階層の人間に対しても偉ぶる事なく、共に語り合った騎士がいただろうか。あらゆる土地を旅してきたという事は、それだけ受け容れられてきたという事でもある。
その行いは、慈善活動などではない。あくまでも欲得尽くの傭兵稼業だと言われればそうだろう。
けれども彼の人柄なら、誰もが知っている。彼がどういう人間で、どのように人々と接してきたかを。
きっと誰かは――或いは誰もが――こう言うだろう。
あの面倒見のいい、人のいい兄さんだろう?
――と。
イーリオは変わらない。
旅をはじめた時からずっと、面倒見のいいイーリオ・ヴェクセルバルグのままなのだ。
どれだけ成長しても、どれだけ強くなろうとも、イーリオのイーリオらしさは何も変わっていない。
普通のままに。
「そんなイーリオなら、きっと――」
願うようなシャルロッタの言葉だが、レレケも確かにその通りだと思った。
そうして今、シャルロッタはディザイロウと星の城を繋ぐための準備に入っていた。
青のライオンの上で、彼女は祈る。
祈りの姿をとり、意識を集中する。
それは見えざる思念の流れとなり、彼女の〝力〟を不可視の経路にしていった。
これを中継で受信したのが、アルタートゥムの中でただ一人戦場にいない、ニーナ・ディンガーだった。
彼女はレーヴェンラントの王宮深くにある星の城への転送装置、虹の橋の元にいたのだ。
この虹の橋こそ、エポスが王都へ攻め込んだ理由でもある。
その場所で、彼女は誰よりも重要な使命を帯びていたのだった。
「あ、きたきた。やっとニーナの出番ね~」
巨大な椅子のようなオブジェに、サーベルタイガーを纏ったままのニーナが腰を下ろしている。そうして椅子の前の空間に投影された半透明な板を指で叩く。
空中投影式ディスプレイを操作しているのだ。
次の瞬間、ニーナ=セルヴィヌスの全身が雷に打たれたようにびくん、と跳ね上がり、椅子型のオブジェが眩いばかりの光に包まれていった。
ここには誰もいないが、もしもこれを見ている人間がいれば、あまりの異様な光景に恐れをなして逃げ出したかもしれない。
神聖なのに凄惨――。
サーベルタイガーの人獣が口を半開きにして背筋を仰け反らせ、ずっと体を震わせているのだから。
またそれは、遠く離れた戦場にいるシャルロッタも同じくであった。
ニーナほどの姿ではないものの、彼女も顔面を蒼白にさせ、玉のような汗を零しながら必死で祈りの姿勢を続けている。
その全身は、重病人のように震えていた。
一体何をしているのか、見ただけでは誰も分からないだろう。
これは虹の橋を中継に使い、シャルロッタが量子通信を超えた霊子通信でもって膨大な数の生命との、霊子の伝環路を繋ごうとしているのであった。
ニーナはその制御と経路の確保のため、一人王宮地下で待機していたのだ。
だが、あらゆる生命と意識を共有するという事は、天文学的な演算が必要となるのは言うに及ばない。となると、星の城が必要になるのは当然だった。
シャルロッタはシエルの力を用いて、それとディザイロウを繋げようとしているのである。
しかし最も難しいのむしろここからで、星の城との経路を今度はディザイロウと繋げるには、数千京 (京は兆の上の単位)分の一のタイミングで行わなければならないのだ。これを外すと、ディザイロウとの道は閉ざされてしまう。
だからこそニーナが中継役で必要なのであり、もしもその助けをなしにこれほどの膨大な力の流れを直でシャルロッタが受けてしまいでもしたら、それだけで彼女の脳が破裂しただろう。
今はその前段階の準備と、タイミングを測るための計算を行っているのである。
しかし――
運命は必死の想いなど、人の願いなど嘲笑うもの。
周囲に溶け込み、不可視な風となっているはずの青のライオンに向かってくる、巨大な影が一体。
漆黒に色を変えた翼竜――ケツァルコアトルスの装竜騎神ヴリトラだった。
当然、アルタートゥムのロッテがこれにいち早く気付き、行かせてなるものかと空を飛んで追いかける。
しかしどうしてこの翼竜は気付いた? レンアームの術が不完全だったのか?
いや、そうではない。視覚だけでなく音や臭い、赤外線や体温に至るまでありとあらゆる感知網に引っかからないよう、術は発動されている。
となると、考えられるのは一つ――
――カンヘルか……!
ロッテが心中で毒づく。
どういう機能のどういう能力なのかは分からないが、何らの方法でヘルオプスは術とシャルロッタの存在に気付き、ヴリトラを向かわせたのだろう。
だがヴリトラの速度の方が、ロッテ=レイドーンよりも勝っていた。レイドーンが追いつく前に、シャルロッタが攻撃を受けてしまうのは確実。
そうはさせじと、異能を放つ空飛ぶサーベルタイガー。
「〝頂天の牙〟!」
無数の骨片を、礫にして前方に飛ばした。
しかし倒される前の記憶も持っているというのか。巨大な牙になる前の極小の小ささだというのに、後ろから放たれた骨片を、ヴリトラは大鎌を振るって悉く弾き落とす。
目標に当たらなかった骨片はあらぬ空中で牙を出現させ、虚しく宙を貫くだけ。
しかし今の防御で体勢を崩した事により、ヴリトラは速度を大幅に減じざるを得なかった。
その隙にレイドーンが人竜を追い抜き、敵の攻撃がシャルロッタに及ぶ寸でのところで、ヴリトラの前を塞ぐ事に成功。ロッテ=レイドーンはすぐさまこの場から移動するよう、姿の見えないライオン――つまりはレレケ――に指示を出していた。
しかしシャルロッタの集中を途切れさせては意味がないため、青のライオンもさっきまでの超々高速は出せない。本来は身を隠したまま、この場で留まるべきなのだから。
また、それを見逃すヴリトラでもなかった。
行手を遮られた事を逆手に取り、鎌首をもたげて力を込める翼竜の魔神。
破壊光線・極帝破光が放たれる。
レイドーンが長いリボンを渦巻くように展開し、盾のように防御を取った。
凄まじい力の押し合い。光学式の鞭のようなレイドーンの武器に阻まれ、光の重粒子が水飛沫のように周囲へ飛び散る。ただの水飛沫ならばいいが、それは破壊そのものが零れた雫。落ちるたびに各所が抉られ、砕け飛ぶ。
だが対・装竜騎神用に造られたサーベルタイガーの力の前には、さしもの人竜でもやはり歯が立たない。――と思いきや、光線を放ちながらヴリトラが死神鎌を振り翳し、それを前方に向けて投げつけた。
――何だと?!
武装を手放すなど、およそ戦い方としては下の下。
捨て鉢すぎるだけに、ロッテですら想定の外だった。
――不味い。
光線と違い、質量のある投擲なだけに、同じかそれ以上の質量でなければ防ぐ事は難しい。
かといってシャルロッタが動く事も、それ以上に難しかった。
ロッテはレイドーンのリボンを巧みに操って防御陣を展開したままにしながら、瞬時に後退。
シャルロッタと青いライオンのいるであろう場所に飛び、これを抱えて離脱を図る。
同時に、巨大な何かが爆散する音が、ロッテ=レイドーンの後ろで谺した。
光線と死神鎌、二つがレイドーンのリボンと共に砕かれた音だった。
かろうじてシャルロッタを回避させる事に成功するロッテ。
が、次の瞬間。
視界を覆うほどの真っ黒な影。
目の前に、翼竜の巨体。
光線と鎌。二つを犠牲にして接近をかけたのだ。
駆り手のエポスがいない、中身が虚ろな再生された死人の如き存在でなければ不可能な、己自身を捨て身にした攻撃。
回避した直後なのだ。逃げ場など、最早なかった。
この時求められたのは、究極の決断。
ロッテの持つ千年分の知識や知恵など、この一瞬ではまるで役に立たない。
瞬間的な閃きだけが、運命を分けた。
抱えた青いライオンを突き飛ばすように放り投げ、それと同時に己に向かって号令をかける。
――距離一フィート(約〇・三メートル)! 出力制限全解除!
ロッテの思考と視界に、警戒の音が鳴り響いた。
発動危険の激しい警報音。レイドーンに搭載されている制御機能だ。
そんな事は分かっている。分かっててするんだと、彼女は警告を無視して異能を放った。
「〝闇から闇へ〟!」
疾風よりも速い、新たな骨片の矢。
突き刺さると同時に、異能が発動。巨大な牙が無数の数になって宙空に出現。
それは牙で出来た巨大な爆破。
火薬を用いた化学反応ではなく、質量を伴った内側からの強制破裂。
抑制が全て取り払われた、制限のない破壊の牙だった。
発動と共にそれは、空間にいるあらゆる存在を突き破る。
シャルロッタを襲おうとしていた、翼竜の魔神を。
それを放ったサーベルタイガーすらも。




