第四部 第五章 第四話(終)『天山飛翔』
そもそも――
この世に鎧獣があるのは神之眼があるからで、その神之眼とは異世界人がこの世界を思うままにし、管理するための端末だった。
鎧獣はその副産物だと言うが、実際は計画された副産物と呼ぶべきであり、異世界人がこちらの世界に渡って来る際、魂の流れに逆らって複数の世界を破壊せぬよう、こちらの人間の魂を閉じ込めておくための器が、その本来の役割だという。
「ちょっと……理解出来ないのですが、それじゃあ異世界の人々は、もう既にかなりの数がこちらに来ている、という事になりませんか? だってそうじゃないと怪訝しいでしょう? 既にこの世には数限りない鎧獣が存在しているのです。それだけの数の鎧獣がいるのなら、同じ数の異世界人が来ているという事になりませんか?」
周囲の立体映像が、宇宙空間から広大な草原、数多の動物の群れが歩くサバンナに切り替わっていた。
しかしそんな変化などまるで目に入っていないかのように、レレケは古獣覇王牙団のロッテを問い詰めていた。
「いや、魂の庭園はまだはじまってない。つまり異世界人も今のところ、まだ一人も来ていない」
「じゃあ、これまでの鎧獣は一体……。もしかして今の鎧獣は、まだ人間の魂が入っていないとか……?」
それを倫理観というかは分からないが、そうであって欲しいとレレケは思った。
けれどもそれは、即座に否定される。
「いや、鎧獣が、人間の魂限定で閉じ込めておくための器である事に変わりはない。だからこの世界の全ての鎧獣も、元は人間だった魂が入っている」
「では、どういう事なんですか……?」
「鎧獣がいるだけで世界の均衡が崩れるわけではない、という事だ。世界の均衡が崩れるのは、霊子分解されないままの人間の魂が、大量にこちらに入ってくるからに他ならない。だからオプス神の願う魂の庭園がはじまれば、こちらの世界の人間が大量に鎧獣にされてしまう。永遠にな」
ちなみに霊子の総量が決まっているといっても、かなりの〝振れ幅〟はあるらしい。
実際そうでなくば、鎧獣がいるだけでこの世界の均衡は崩れてしまいかねない事になってしまう。
「いいか、ボク様が言った中で重要なのは、鎧獣とは人工的に造られた、という部分だ」
「どういう意味ですか?」
「魂の庭園を行う最大の条件が、座標の巫女であるシャルロッタを手に入れる事だ。巫女の力で異世界とこちらの世界を完全に繋げば、異世界人が押し寄せる事になる。そうすればどうなる? この世界の人間の魂が邪魔になるよな? ではどうするか? 器を今よりもっと増やせばいい。受け皿である鎧獣の数をもっと増やして、この世界の人間の魂を奪い、そこに閉じ込める。そうすればこちらの世界の人間の魂を、何百年も閉じ込めておけるというわけだ。理由はわかるな? 鎧獣は肉体が滅んでも、神之眼があれば何度でも再生されるからだ」
「器である鎧獣の数を増やし、魂を奪う……」
魂――その言葉で、レレケは何かを思い出す。
魂が奪われたような――
それはつい最近も目にしたあの――
「竜人の竜牙病……! それにヘクサニアの角獅虎!」
ヘクサニア教国、そして国家騎士団である神聖黒灰騎士団の使う怪人・竜人。
それに噛まれた者は、魂の抜け殻のようになって死に至る。それを竜牙病と呼んでいたが、あれは何のために行なっていたのか。
目的も原理も何も分からなかったが、ここで全てが繋がった。
「その通りだ。あの竜人が魂を奪い、それを角獅虎に閉じ込める」
おぞましい事この上ない話だった。だが同時にまた新たな疑問も浮かぶ。
エポスを倒す事と鎧獣を否定する事が何故同じ意味になるのか。
それをレレケが問うと、ロッテは答えた。
「そもそも神之眼があるからこそ鎧獣が生まれる。エポスの大元になるオプス神は他の神々同様、神之眼の管理を行う一柱でもある。だからエポスを完全に倒す事はオプスの介入を封鎖する事でもあり、つまり神之眼の維持が出来なくなるというわけだ。その結果、この世から鎧獣が消えてなくなる」
まさに善神悪神関係なく、〝神々〟によってこの世界は維持され続けており、その神を否定すれば、自ずと旧来の世界には戻れなくなるという意味だった。
そして錬獣術師である以上、レレケも今まで、それに加担していたという事になってしまう。我知らずとはいえ鎧獣を生み出していたという事は、そこに人の魂を閉じ込めていたという事になるからだ。
知らなかったとはいえ、それで許される話なのか。
何もかもが、恐ろしかった。
「我々はずっと、神話の中にいたというわけなんですね……。でも選択をしなければいけない。神を殺し、この世界を変えてしまうか。それとも神の支配を受け容れ、自分達が神の隷属になってしまう事も受け容れるか……」
「そうだ。今の答えは満点だな」
合格点を告げられても、レレケはまるで喜ぶ事が出来なかった。
今の世界を否定するために戦うか、未来を絶望するために戦わないか。
言っているのはそういう二択である。
「その全ての鍵となるのが〝座標の巫女〟シャルロッタだ。彼女こそが、世界と世界を繋ぐ鍵であり門。あれとイーリオが魂で結び付けば、世界の繋がりは完全に断たれる。そしてザイロウ」
「ザイロウが、一体――?」
「ザイロウとは魂の巫女の守護者。その真の役目はエポス達を完全に倒す事。ザイロウの復活、シャルロッタを目覚めさせる事、これはエポスとの戦いから絶対に逃げられないという事を意味している」
「そんな事……だったら余計に、私一人で決めるわけには……」
「だから言っただろう。お前の試練とは〝選択〟だと。ボク様が出した選択の意味を理解し、それをイーリオに伝える事。少なくともお前の試練は、合格だ」
言った後、周囲の景色が突然消え去り、元の白壁の空間に戻っていた。
「合格……ですか?」
「もう分かるな? 本当の最終試練は、お前達三人で決断するものだ。後ろの扉に行けば元の部屋に戻る。他の二人も無事にそれぞれの試練を合格したなら、そこで会えるだろう。後はお前達三人で決めるんだ」
その言葉を言い終えると、ロッテは預かっていたウルフバードを入れた箱を、何かの扉の中に収めた。
そしてキーボードを操作し、彼女は踵を返してレレケに指し示したのとは別の方に向かって、歩き出した。何もないと思われた壁が自動扉となり、空間が開く。
「え、ちょっと――その、ロッテ様はどちらに?」
レレケの呼び止めに、ロッテは首を傾けてにんまりと笑う。
「ボク様の役割はここまでだ。決断を聞くのは団長の役割。ボク様はこれから別の役目のため〝出かける〟のさ」
それだけを言い残し、彼女はそのまま扉の向こうに消えていった。
レレケは呆然となり、その場にしばらく凝っとしている。
とんでもない試練もあったものだと思う。
このような重大な責任を三人だけで負わなければいけないのか。
運命というものは常に人を巻き込む竜巻のようなものだと彼女は思うが、その中でもこれは、類を見ない巨大なものだろうと思う。
だが目を背けようと、そこからは逃げ出せない。
竜巻とは、動けぬ者から呑み込んでいくものだから。
それを彼女は知っている。
例えどうであれ、必死に踠き、足掻いて足掻いて答えを導き出す。それしか方途はないという事を。
まるで途方もない旅をしてきたかのように、全身をかつて感じた事のないほどの疲労感が包んでいた。けれどもそれを踏みしめるように、レレケは両足に力を込めて立ち上がった。側には、最初から凝っと蹲っている、彼女の理鎧獣・レンアームがいる。
このレンアームにも、人の魂が入っている――。
そう考えると、気持ちは複雑になってしまう。そんな彼女の様子に何かを察したのか、レンアームは立ち上がったレレケに体を寄せると、彼女の右手の甲を舌で舐めた。
「レンアーム……」
それが本当に人間の気遣いのように思えて、レレケはまた一層、胸の苦しさを強くした。
しかしだからと言って、レンアームや自分が生み出した鎧獣たちを全部、否定など出来るはずがない。
自分は間違いに手を染めたかもしれないが、自分の行いで生み出したものが間違いだったなんて、絶対にない。
決して。
そうだ、知る知らないに関係なく、それだけは嘘のない思いだった。
自分は一度だって、鎧獣を道具だなんて思った事はない――と。
だが、エポスの行いや理念は、その真逆だと思えた。
人間だろうと鎧獣だろうと、自分達とそれに関わる者以外全てを、どこか道具のように見ているのが、透けて見える。
レレケにはそう思えたし、それこそが彼女の見つけ出した答えだった。
ロッテといた部屋から退出し、レレケは元の部屋へと戻っていった。
いくつもの立方体が宙に浮く、奇妙なあの空間だ。
「レレケ」
中には、イーリオとドグが先に待っていた。自分が一番最後だったようだ。
しかしそんな事よりも、イーリオの変化に彼女は驚く。
「イーリオ君……一体その姿、何があったんですか……?」
「何がって、それはこっちの台詞だよ。レレケだって服装もそうだけど、随分と雰囲気も違うし、髪だって伸びてる。こっちの方がびっくりしたんだけど」
「いや、それはこちらの言葉ですけど――え? 私もそんなにですか?」
イーリオは緑金の髪が伸び、まるでひと月ぶりに再会したかのような見た目に変わっていた。そしてレレケも自分では気付いてなかったが、どうやらイーリオと同じような変化をしているらしい。
変わらないのはドグだけであった。
いや、彼はもしかすると変わる必要がなかったのかもしれない。
そんな事を、レレケはふと思う。
「どうやら全員、最終試練を合格したようだな」
三人が互いの変化に驚いていると、宙を浮かぶ立方体の一つに座っているオリヴィアが姿を見せ、そこから地に降り立った。
「イーリオには〝覚醒〟、ドグには〝決意〟、レレケには〝選択〟。それぞれの試練を潜り抜けたというわけだな」
「それって――」
「イーリオにはオレと戦闘訓練をして、オレに勝利するという試練を与えた。そして何度も敗北を経て、こいつはオレから一本取ったのさ」
古獣覇王牙団の団長から一本取る。
その意味をレレケは理解していなかったが、ドグが信じられないというような顔をした事で、それがどれほどの事かを朧に悟った。
「いや、スゲぇ……。マジかよ、それ」
「そんな、そこまで驚くほどじゃあ……。真剣勝負ってわけじゃなくて手を抜いてもらってたのは分かるし、第一、何百回の中で一本取るくらいなら、ドグにだってあるだろう?」
「いや、ねえって。俺だけじゃねえぞ。〝ドゥーム〟から一本なんて、カイゼルンのおっさんだって一度もなかったんだぜ。お前、マジでそれはスゲぇよ」
ドグの言葉に、理解したと思っていた以上の驚きをレレケが見せたのは当然だが、当人のイーリオもかなりの驚きを浮かべていた。
「師匠でも出来なかった……? 本当に……?」
驚くイーリオを尻目に、オリヴィアが告げる。
「こいつの風貌が変わったのもそのせいだ。こいつの試練とはただ勝つだけではなく、試練の間で肉体を作り変える事にある。何せザイロウが完全な形で戻れば、それは人間の肉体で扱える代物ではないからな。今のお前は細胞一つ一つに至るまで、通常の人間とは比べものにならない作りになっているぞ」
言われてみれば、背もまたほんの少しだけ伸びたように感じた。
いや、それは体が引き締まったからだろうと思っていたが、そうではないのかもしれない。
「そしてドグの〝決意〟はまあ……アルタートゥムとして最後まで戦う決意だな。そいつを試させた。とはいえこいつの場合、二人と違って出来上がっていたようなものだからな。特に時間のかかるものではなかっただろうし、余計な事をする余裕もあったみたいだ」
どこか抽象的というか、歯切れの悪いオリヴィアの説明にどういう意味かとイーリオは尋ねたくなるが、間を置かず、彼女はレレケの説明に入る。
「最後にレレケの〝選択〟だが、それはこの世界の真相とそこに至るまでの知識を理解する事だ。これが出来るのは、この中でレレケだけだったろう。その成果は、この後レレケ自身から二人に話してもらう。――その最後の〝選択〟もな」
レレケが頷いた。
ロッテから聞かされたこの世界が出来るまでの全て。それをどうやって理解したか。
そしてエポスの正体に、神之眼、鎧獣の真実。
それらを余す所なく、それでいて端的かつ分かりやすく、彼女はイーリオとドグに説明をした。
その話にイーリオは驚愕し、戸惑いを隠す事も出来ない。
一方でドグは、ほんの少し感心したようだったが、イーリオやレレケほどには驚きも戸惑いもしていなかった。
後で彼から聞く事になるが、ドグは八年もここにいたわけで、それだけいれば今のレレケの話も当然ながら一度ならずとも聞かされていたのである。とはいえ難しい話を彼が分かるはずもなく、かといってレレケに施したような知識の外付けを行えるほどの賢さもないため、大雑把にしか理解していなかっただけなのだ。
エポスはオプスって神様の手先。鎧獣は元は人間だった魂が入っているもの。
そんな程度の理解だった。
だからレレケの説明でそうだったのか成る程なぁと感心しこそすれ、驚きはなかったのである。
却説――。
話を終えたレレケは、最後に聞かされた〝選択〟をイーリオに問う。
「イーリオ君の望みはエポスとの戦いを意味します。それは鎧獣のいない世界を選ぶというもの。しかしもし、鎧獣のいる今まで通りの世界を選ぶなら、ザイロウもシャルロッタさんも諦めなければなりません」
「そんな……」
「ただ、私は思うんです」
レレケは一度目を伏せ、その後で吹っ切ったように顔を上げて続ける。
「自分達がどうであれ、この世の人間全てに、鎧獣を戦いの道具として使ってはいけないと言うのは無理でしょう。どれだけ侵略行為をしていようとも、黒母教を崇める人がいなくならないのと、これは同じです。だから本当に自分達で未来を掴みたいのなら、鎧獣をなくしてしまう未来こそ、正しいのではないでしょうか……」
語尾はどこか弱く、消え入りそうなほどに萎んでいった。
まだ迷い続けている。それがありありと見て取れた。
「鎧獣のいない世界ねえ。ま、それもいいんじゃねえの? エポスを倒したら、問答無用でこの世の全部の鎧獣が一瞬で消えちまうってんなら話は別だけどよ。んな事はさすがにねえよな?」
後に続いたドグがオリヴィアに向かって尋ねると、彼女は少しだけ笑みを浮かべて「そうだな」と返す。
「だったら今ある鎧獣だけは、俺達で面倒見れるってわけじぇねえか。その後で消えていくんなら、それはそれで時代の変化ってのと同じじゃねえか?」
むしろドグは鎧獣のいない世界に反対すると、レレケは思っていた。彼女の知るドグは、そういう決断を喜ばない。
けれども八年もあったのだ。それだけあれば、彼だって考えに変化は生まれるだろう。
そしてその変化は、レレケにとって好ましいものでもあった。
それが彼女にとっては、嬉しかった。
「僕は小さい頃、将来は父さんの跡を継いで錬獣術師になるんだと思っていた……」
「イーリオ君……」
「僕にとって鎧獣は身近なというか人生の一部だし、ザイロウは僕の半身そのものだ。それがまさかそんなだったなんて……。それにザイロウだけじゃない。みんなの鎧獣も、これからずっと受け継がれていって、そしたら新しい鎧獣も生まれて……。そうやって続いていくものだと思っていた。でもまさか、そんな未来を今ここで選ばなきゃいけないなんて――」
そうだ。それはレレケにも痛いほどよく分かる。
彼女とて、鎧獣や錬獣術と人生を歩んできたのだから、それを全部消してしまうなど、到底認められるものではない。けれどもそれ以上に、エポスの為そうとしている事を決して許してはいけないと思っているのだ。
エポスを認める事は、根源的な邪悪を許すのと同じではないのか。
魂を自然に任せるのではなく、思うままに操ろうとする――。それは人が犯していい領域ではない。いや、本物の神にだって許されないと思う。
それをするというのなら、おそらくレレケは神とだって対峙する。
そう思っていた。
けれどもそれをイーリオに強要する事は出来ない。説得はするつもりだが、まずは彼の答えがどこにあるか。それを聞かない事にはどうにもならないと思っていたからだ。
「僕は鎧獣が好きだ」
俯いたままのイーリオから出た言葉。
「でもそれ以上に、シャルロッタが好きだし、ザイロウも好きだ。他の誰かやどれよりも、僕はきっと、シャルロッタとザイロウを選ぶ」
「イーリオ君……」
「間違った選択かもしれない……。世界中から恨まれる事になるかもしれない。でも僕は誓ったんだ。彼女の前で。僕はずっと、彼女を守るって。それで世界を変えてしまうなら、僕は世界よりも彼女を選ぶ」
俯いた顔を上げ、イーリオは力強くそう言い切った。
後悔もあれば躊躇いはもっとある。
けれども後戻りの出来ない道でも、迷いはしない。そんな表情だった。
レレケはその言葉を聞いて、はにかみながら笑顔を向けていた。
「お前、世界よりも彼女を選ぶだなんて、そんなクセぇ言葉、よくそこまで真顔で言えたなぁ。聞いてるこっちが恥ずかしくなるよ」
呆れた顔で言うドグの茶々に、二人は笑顔を向けた。
そして今度は三人で、笑い合う。
そんな様子に、オリヴィアが告げる。
「それが、お前達の選択だな」
三人が笑いをやめ、神の騎士団の団長と向かい合う。
「はい」
これが最終試練の答え。
その選択が正しいのかどうか分からない。
けれども三人の決意に、迷いはなかった。
「合格だ」
オリヴィアが、微笑む。
美しい彼女の顔が、初めて母性に溢れた優しい笑みを浮かべた。
「三人ならその答えを導き出すと、信じていたぞ」
「では――」
「ああ、ザイロウを復活させる。そしてシャルロッタを、目覚めさせる」
三人が喜びで破顔する。辛い道のりを超え、苦悩を刻み、どれだけの懊悩を抱え込んできた事か。
それがようやっと報われるというのだ。
「これより天の山は空の向こう、宇宙に浮かぶ星の城へと正式に向かう」
オリヴィアの発した言葉と共に、部屋にあった立方体が明滅した。
「宇宙……? やはり星の城は宇宙空間にあったんですね。という事は、衛星基地か何かといったところでしょうか?」
時代を超越した知識を持つレレケが、今の発言に反応した。
「そうだ。七二基ある軌道衛星リングの巨大演算装置。それこそが星の城」
「七二――?」
「今から向かうのは、その七二の軌道衛星リングを司る中央演算ステーション〝ソロモン〟だ」
途方もない話を聞かされた後では、どれほどの場所であろうと驚きはしない――そんな風に思っていたレレケだったが、それはあまりにも想像を超えていた。
「そ、そこには一体……」
「神だ」
「え……?」
「星の城を統べるそこにいるのは、最高神エール。今からお前達は、異世界存在の頂点、エール神に会いにいってもらう」
遂に宇宙にまで向かおうとするイーリオ達。
果たしてそこにいる最高神とはどんな存在なのか。
けれどもどんな事が起きて、どんなものが待っていようと答えは決まっている。
イーリオにもレレケにもドグにも、その目に迷いはなかった。




