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銀月の狼 人獣の王たち  作者: 不某逸馬
第四部 第五章「天の山と星の城」
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第四部 第五章 第四話(3)『神魔生誕』

 目は朧で、霞んでいる。


 耳も聞き取り辛い。


 全身が重く怠く、呼吸(いき)も水底にいるように苦しかった。


 早くこれから解放されたい。解放されるはずだった。こんなに苦しい状態を我慢し続けるなど、夢にも思っていなかった。


 こうなればいっその事、とりあえず死んでやろうかとも思う。そうすればこの苦しさからは解放されるだろう。

 だがそんな事をすれば自分達エポスの計画は遅延するし、何より己の立ち位置を危うくしてしまいかねない。

 いや、それで済めばいいが、そんな自分の堪え性のなさのせいで計画そのものが破綻でもしたら、それこそ取り返しがつかなくなるだろう。



 どうであれ早く新たな〝器〟をもってきてくれと、神女ヘスティアこと、ヘレ・エポスは渇望していた。



 彼女はエポスの中でも少し特殊な立ち位置にいる存在だ。



 E.P.O.S.(エポス)――Eternal Polymerization unit Of Soul



 魂の永久重合者と呼ばれる彼女らは、適合可能な器となる人間の魂を取り込み、そしてその肉体に移る事で何度も蘇る事の出来る存在であった。器が死んでも新たな器さえあれば何度だって蘇られるし、仮に適合の対象外でも、強引に乗り移ろうと思えばそれも不可能ではない。


 実際、第四使徒のエヌ・ネスキオーことヘルヴィティス・エポスは、それに近い事をしている。


 ただ、ヘレ・エポス――彼女は違った。


 彼女の司るのは〝信仰と生命〟。


 そして、エポスにおける〝ホスト〟の役割も担っていたのだ。

 エポスは知覚可能な集合意識とでも言うべきか、後世に言うコンピューターネットワークのように、空間を超えて意識や記憶を共有する事が出来た。ようは六人個々の体験や目にした事聞いた事全部、六人全員で知る事が可能なのだ。


 ただ、それはホストであるヘレがいればこそ。


 ヘレは通常、ホストとしての役割に徹するため、他の五人とは異なり神女ヘスティアとなって、あえて己の活動を制限させていた。またその副産物として、彼女以外の五人は器の肉体年齢に合わせて老衰していくが、彼女のみ通常の人間の肉体年齢を二倍、三倍に存えさせる事が出来たのだ。


 それが神女ヘスティアが異常長寿でいられた理由であった。


 だからこそ他の五人のエポスより、彼女の器の選定は慎重かつ厳密に行われてきており、今回も最適な器に乗り換えられるはずだったのだ。


 ところが、もう限界間近、いよいよ器を換える時かと決断したその矢先――。


 器とするべく捕まえていた人間が、逃げ出したというのである。


 メルヴィグ王国の手の者の仕業だというが、どうやってそれを可能にしたのか。いや、そんな事は彼女にとってどうでもよかった。問題は器がいない事である。



 よろよろとした動きで、己の手の甲に視線を落とす。

 寝台に横たわり、まんじりとも動く事さえ難儀だが、指一本動かせないわけではなかった。ただ見つめた先の手は、つい数日前まであった若々しいものではなく、高齢女性のそれに成り果てている。

 それを見つめ、彼女はひどく狼狽した。おそらく全身がこうなのだろうと。


 とはいえ、仮にこの身体の限界が先に来て命を失ったとしても、エポスの魂そのものはオプスの管理下にあるため、魂が消滅してしまうわけではない。

 だからこその不死の存在〝E.P.O.S.(エポス)〟なのだ。


 しかし死なずとも、器がなければただの置物と変わらない――。

 そんな自虐的な皮肉が浮かぶほど、彼女は焦っていた。


「まだ口はきけるか?」


 ヘレのいるのは黒母教の聖地ヒランダル黒聖院の奥殿、その最も深きところ。

 以前、ゼロやヴィクトリアが侵入した所よりも更に複雑に入り組んだ最奥の間である。

 その一室で、紗幕の覆った天蓋付きのベッドの上に横たわっていた。


 ここへ入れるのは、世話係の女官を除けばエポスの五人のみ。この国の王であるファウストでさえ、おいそれとは入れないのだ。


 そこへいつの間に侵入していたのか。


 紗幕の向こう側に人型の輪郭が映る。


 眼球を動かすのさえ大儀そうに、ヘレは視線をそちらに向けた。


「ふむ、意識もはっきりしているようだ。まだ大丈夫だな」


 どこをどう見て大丈夫などと言えるのか。忌々しさを睨む目に籠めるが、それが声の主に伝わったかは分からない。

 それもそうだろう。何せ声の主は人間ではないのだから。


 紗幕を割って姿を見せたのは、爬虫類のような頭部、顔。

 神聖黒灰騎士団(ヘキサ・エクェス)が使う謎の怪人・竜人(ドラグーン)と酷似したもの。

 しかし表情というか目つきや佇まいには彼らと異なる強く深い理知があり、黒衣に黒のマント、全身黒づくめの出で立ちでその正体が分かる。


「ヘル……」



 神聖黒灰騎士団(ヘキサ・エクェス)・十三使徒の第一使徒ヘル・エポス。



 何のためにここへ――そう言いたかったが、言うだけ無駄なのと億劫さが勝って、ヘレは口をつぐむ。


「まずは報告だ。アルナールの〝紅玉竜王(アラム)〟が目覚めた。次はおそらく〝水晶竜王(サルコテア)〟か〝黄金竜王(アウラール)〟だろう。アンフェールも体を入れ替えて準備に入っている。他の二人もそれぞれに最後の準備に取り掛かっているところだ」

「そうか……」

「何だ、嬉しくないのか?」


 ヘレは寝台の上を覆う天蓋を見つめる。しかしその目には何も映ってないのか、虚ろな面持ちで呟いた。


「嬉しいさ。私の器さえ早く戻ってくればな」

「それだがな。残念ながらお前の次の器はもう戻らん」

「何……?」


 ヘレの声色が低くなる。苦しさすら押し込めて、彼女は感情を露わにした。


「諦めろと言っているんだ」

「何を巫山戯ている? 諦めろ? 戻らん? お前――正気でそれを言っているのか」

「俺は今まで一度たりとも気が触れた事などない。これからもないだろうな」


 皮肉というにしては、あまりに笑えなかった。どういうつもりの発言か。ヘレは意図を図りかねた。


 そもそも、諦めろで済む話ではない。エポスが一人欠ければどれだけ計画に支障が出るか。いや、その中でも自分は要の存在なのだ。計画がここまで大詰めにきて、六人のホスト的位置付けであり、〝魂の巫女〟の代替も兼ねる自分を離脱させるなど有り得ぬ。


 だが死期の近い体では、強い抗議を発する事もままならない。

 無理にでも体を起こし、火を吐きかねないほどの怨嗟に満ちた目で、ヘルを睨みつけた。


「ここまで状況が揃えばさすがに気付くと思っていたが、案外貴様も〝E.P.O.S.(エポス)〟という囲いがなければ、人間どもと変わらぬものよな」

「……何を、言っている」

「分からんか? 本当に致命的だな」


 言葉と共にヘルがヘレの寝台に近付き、そのまま彼女の口を片手で塞ぎ、押し倒した。


 もごもごとヘレが喘ぐ。


 何とかヘルを押し除けようとするが、そもそも身体中が限界に近いのだ。抗う力も、風に吹かれる枯れ葉より頼りない。


「アートが寿命で怪訝おかしくなる事は予想出来た。これは全員が理解している」


 アートとはアート・エポスの事。

 離反した七人目のエポス。

 即ち、エッダの事だ。


「同時に、お前の器が俺の計算通りに限界が来るよう、調整をかけておいたのだ」


 ヘレの目が開かれる。


 馬鹿な、そんな事いつ――


 そこで思い出す。

 八年前、あのメギスティ黒灰院の戦いを。

 イーリオ=ザイロウが暴走し、それを黒騎士ヘルが止めたあの出来事を。


「そう、メギスティの時だ。一時的に二人分のエポスの力を繋げる事で、規約解除を試みたあの時。その際に仕込んでおいたのだ。そしてそれは計算通りにハマった。計画通り、貴様はその後四年の歳月をかけ、〝母体〟として力を注ぎ、数万にも及ぶ〝卵〟を〝出産〟した。元は俺の代替ボディであった竜人(ドラグーン)をな。まずはそれで、大幅に力を失わせた。更に〝出産〟に力を注ぐため、ホストの役割も停止せざるを得なくなる。そのため、今や貴様は完全に孤立状態だ。他の四人を呼ぶ事すら出来ない。――分かるだろう? 貴様が老衰をしても、誰も何も違和感を覚えるはずはない。それを疑いもせず、お前も他の四人もお前の器の寿命がきたのだと思い込んだ。そう思わせただけだというのに。結果、お前は今や文字通りの意味で、ただの孤独な老婆になったというわけだ」


 ヘレが驚愕の顔になる。

 この人間もどきは何を言っているのか。千年以上の付き合いであるにも関わらず、理解が追いつかなかった。


「さて、ここからがここに来た本題だ」


 カチャカチャと音がなっている。


 何の音だ? 何をしている?


「〝信仰と生命〟のヘレ・エポスよ。お前には最後の役割を、今から果たしてもらう」

「だ――誰か! 誰かないか?!」


 口を塞いでいた片手が外れた事で、ヘレは叫び声をあげた。しかし出るのは木枯らしのように掠れたもので、大声というにはあまりに幽けき響きだった。

 それでも彼女は必死で叫んだ。


「無駄だ。人払いはしてある。ここにお前の助けは来ない」


 他の四人が竜の復活でそちらに出向いているのも、こいつの計算という事か――ヘレは忌々しさと這い上がってくる恐怖に、抵抗をする。けれどもこちらを押し倒した黒の竜人(ドラグーン)は、びくともしない。


 寝台の上。のしかかる恰好のヘルが、こちらを見下ろしていた。

 衣服を脱ぎ捨て、爬虫類の皮膚はだを露わにして。


「どう……いう、つもりだ……?!」

「最後の務めと言っているだろう。今の貴様の役目は何だ? 身籠り、産む事ではないか。最後のそれをしてもらう」

「何……だと……?」


 鱗を持ったヘルの両腕が、皺だらけになったヘレの両足を掴む。


「止せ……やめろ……!」


 産むだと? 馬鹿な。今のこの体でそんな事が出来るわけがない。出来てもそれと同時に肉体は限界を迎えるのは確実。死と共に新しい竜人(ドラグーン)を一体増やして何になる。私の魂はオプスの元に返ってしまい、もう取り返しのつかない事に――

 そこまで考えてヘレは気付いた。


「まさか、貴様――!」

「やっとか。やっと気付いたか。そうだ。お前の存在そのものを貰い受けるのだ、巫女の代替者よ」

「そんな事、母様の許可もなく出来るはずが――」


 ヘルが爬虫類の顔で笑っていた。


「何だ、まだ分かってないのか。俺は今、母様と〝繋がって〟いる。即ちこれは、母様のご意志だ」


 直後、ヘレの肉体が貫かれた。


 拒絶したいのに出来ない無力さ。

 仕組まれた企みにまんまと嵌められた事への絶望と怒り。

 何よりも受け容れ難い己の運命に、彼女の両目から知らず知らずの内に涙が零れていた。


 しかしそんなヘレを前に、まるでその事によって情欲が掻き立てられでもしたかのように、ヘルが何度も侵入をしてくる。


 こんな老婆の肉体を抱いて、何になるのかとあざけってやりたい。けれども出来ない。ただ無力に、蹂躙されるがままであった。

 傍から見れば、実におぞましい光景であったろう。

 何せ爬虫類の怪人が、少女の面影を濃く残す老婆を、陵辱しているのだから。


 犯されるたび、ヘレの意識は遠のいていく。

 もう、抵抗も拒絶も、叫び声すら上げられない。


 まるで生きながら獣に体を食い荒らされているようだと思ったが、やがてその感覚すらも消えていった。


 そうしてどれくらいの時間が過ぎただろう。

 事を終えたヘルが亡骸のようになったヘレを見つめていると、徐々に老婆のはずの彼女の体が若さを取り戻していったのだ。

 同時に、死体にしか見えないヘレの腹部が、風船のように早回しで膨らんでいく。


「ヴァッ……アッ……ヴッ……ヴウッ……」


 最早生き物の声とも言い難い奇妙な呻き声がヘレの口から漏れると、何かが引き裂かれるような音がそこに重なった。


 めり。

 めりめり。


 寝台が血に染まる。


 最後に一際大きな痙攣を起こし――

 ヘレの下半身が、内部から破裂していった。


 確認せずとも、ヘレが死んだ事は分かる。

 その上半身はぐったりと力尽き、若返ったはずの相貌は再び老婆のものに戻っていた。

 そして妊婦のように膨張していた腹部が今度は逆再生になって萎んでいくと、二つに裂かれた彼女の股間から、ずるりと何かが転げ出た。

 ヘルはそれに手を伸ばし、目を細めながら抱き抱える。



 それは巨大な卵だった。



 まだらで光沢があり、土色や濃緑など、汚れているようにも見える色が虹のように混沌とした、奇妙で不気味な卵。



 既にもう、ヘルの目にヘレは映っていない。

 寝台で汚らしく事切れているのは、かつて神女と呼ばれ、ヘレと呼ばれていただけのただのモノ。少なくともヘルにとっては、それ以下の物体としか認識していなかった。


 この後、衣服を着て仮面を被ったヘルは、ヘクサニア教国の国家最高錬獣術師グロース・ライヒ・アルゴールンイーヴォ・フォッケンシュタイナーの元へと足を運ぶ。


「そうか、ヘレが」


 差し出された卵を見て、イーヴォが眉間に皺を寄せながら呟く。受け取った彼の両腕は、僅かに震えていた。


「何を怯える?」

「何を? 何をだと? お前がそれを聞くか。私は協力者ではあるがただの人間なんだぞ。お前らとは違う。おぞましい結末を知らされて、私が貴様に怯える。それのどこがおかしい?」

「そうか、その通りかもしれんな。では、はじめろ」


 声の抑揚は変わらず、イーヴォに何の共感も同情もしていないのは明白だった。冷淡や酷薄といった類いの反応ではない。むしろそれらの方が、まだ人間らしいというものだ。


 ヘルのそれは、羽虫を見つめる視線そのものであった。

 人間が、窓の外で虫が一匹鳴いたところで、殊更憐れみや慈しみを覚えるはずがないのと同様、ヘルもイーヴォの訴えをそれと同じようにしか感じていなかった。


 その隔絶されたおぞましさに、イーヴォは底知れぬ恐怖を覚える。同時に、見下された事への反発心も。


 しかし、もしも逆らったらどうなるか。


 怒りの刃で首を落とされるならまだいいだろう。幼児が微小な虫をいたぶるように、深い意味などまるでないまま消されてしまうと、イーヴォはそう直感した。

 己の無力感を噛み締めながら、イーヴォは何一つ言わずに卵を受け取った。



 大きさは二四インチ(約六〇センチ)ほど。

 ダチョウの卵の四倍はあろうか。


 受け取ったそれを、鎧獣(ガルー)を生み出す際に使われる容器のようなものへと入れる。

 容器の中を薬液で満たすと、それに繋がっている管を通じて薬品や追加の薬液を入れ、底に設えた釜のようなものにも火を入れた。火は強くなく、とろ火といったところ。

 そこから十数分。


「準備は出来たな」

「ああ」


 ヘルが容器の前に立ち、仮面を外す。

 露わになる竜人(ドラグーン)の顔。


 そうしておもむろに自身の額に手を翳すと、そこから黒い光が漏れ始めた。


 光なのに黒――。


 まるで矛盾した物言いだが、そうとしか形容できない光線の帯。

 やがて光は収束し、ヘルの額に輝石が現出する。


 黒色の神之眼(プロヴィデンス)


 そのままヘルは、己の額にあらわれた神之眼(プロヴィデンス)に爪を突き立て、指ごと頭部にめりこませていった。


 耳を塞ぎたくなるような、不快な音。


 これを自傷行為と言うべきかは分からないが、ヘルの顔は平然としていた。額からは夥しい血が流れ、顔中が赤黒く染まっているのに、表情一つ変わらないし声もあげない。

 痛みを感じないのか、それとも竜人(ドラグーン)だから感じないのか。


 いずれにしても額から抉り出した神之眼(プロヴィデンス)を、その容器の中へ投入した。


 途端、容器の中の薬液が、沸騰したように泡で満ちていく。

 同時にその場に崩れ落ちるヘル。まるで抜け殻になったかのように、あの三獣王・黒騎士が、一瞬で命を失っていた。


 だが、イーヴォはそんな事に目もくれない。

 容器の中の変化だけを見つめている。


 泡は衝撃を与えた炭酸水のように容器の外へ噴きこぼれていくが、その勢いは一向に止む気配がなかった。やがて天井に届きそうなほどの勢いで大きな水柱が生まれ、同時に容器は粉々に砕けてしまった。


 両腕で水飛沫を避けていたイーヴォが、おそるおそるそれを見つめる。


 容器の中央。

 卵が置かれていた場所に、うずくまるような恰好で小柄な〝それ〟はいた。


 黒髪が全身を覆うように長く垂れている。

 細長い瞳孔がイーヴォを一瞥すると、彼は思わず「ひっ」と裏返った声を上げた。


「そう、恐れるな」


 〝それ〟が声を放った。


 人の形。

 人の顔、人の手、人の足。


 しかし人ではない。


 体の一部を鱗が覆い、皮膚はだは人の白さではないほどに白い。しかし顔の造作は整っており、美形と呼ぶに相応しい見た目をしていた。

 けれども瞳は爬虫類のそれに近く、何より体は男性と女性両方の特徴を備えていた。


 骨格は細身の男性だが、乳房がある。

 しかし男性器もついているし、隠れて見えないが女性器もあった。


 更に臀部中央からはトカゲのような長い尻尾。


 見た目は大人ではなく、人間で言えば十代前半ぐらいに見えた。しかし声はヘルと同じ類のもの。男なのか女なのか。老人なのか子供なのか分からない、そんな声。


「どのように……お呼びすれば良いのでしょうか……?」


 何もかもが混ざり合ったような〝それ〟は、薄く笑って答える。




「オプス」




 〝オプス〟はイーヴォの傍らに置いてあった布を手に取り、それで体を包んだ。


「ヘルでありヘレであり、そして我が〝世界〟より受肉せし黒の神」

「黒神オプス……」


 ヘルとの性交によりヘレの魂を無理矢理封じ込めて産ませた卵。


 そこにヘルが神之眼(プロヴィデンス)を使い、彼の魂を融合させる。



 二つの人造魂魄と種を超えた肉体が融合し、ここに人を超えた異形の存在が生誕した。



 ヘルとヘレの持つ全てを有した、神であり魔である存在。

 終わりの祝福とはじまりの絶望を齎す、究極の生命体が。

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