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銀月の狼 人獣の王たち  作者: 不某逸馬
第四部 第五章「天の山と星の城」
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第四部 第五章 第三話(3)『峡谷戦』

 角笛から口を離した呂羽(ルゥユー)が、大きく息をつく。


 ニフィルヘム大陸より西方のあらゆる国々で争乱を起こし、二つ名の通りの災厄として悪名を轟かせた〝渾沌カオス〟の呂羽(ルゥユー)でさえ、二万もの人獣騎士を指揮するのははじめての事であった。しかも一騎一騎がサイにも匹敵する巨体の合成魔獣キメラ角獅虎(サルクス)なのだ。


 指揮をする形式上、そして角笛を響かせるために少し小高い場所から全軍を眺めているのだが、圧巻というのを通り越して、指揮をするルゥユー自身、黒と灰色の濁流に怖気すら感じる。これを前に、一体誰が、どの国が抗えるというのか。


 鎧獣騎士(ガルーリッター)は人間千人力だと言うが、単純に二万の軍をこれに換算すれば二〇〇〇万の軍勢になるという事である。いや、角獅虎(サルクス)の戦闘力を考えれば人口に膾炙される鎧獣騎士(ガルーリッター)とは比較にならないだろう。そうなればもう、戦力としてあまりに桁が違いすぎてしまう。


 自軍の行進を睥睨する呂羽(ルゥユー)は、圧倒的軍事力を誇るより、むしろこれから向かうメルヴィグ側へ、憐れみにも似た同情すら胸の内に湧くほど。


 この軍容を目にすれば、戦意など塵芥になって飛んでしまうはずだ。これに対し、どうにかなるものでも出来るものでもない。

 極端ではあるが、もはや指揮すら意味がないとも言える。

 事実、こちらが出す命令は「攻撃」「やめ」程度しか必要はない。する必要すらないのだ。


 ただただ津波のように押し寄せれば、それだけでどんなものでもすり潰せる。


 この二万騎が、騎士(スプリンガー)の駆る鎧獣騎士(ガルーリッター)ならば、例えば心理戦などで罠に嵌めたり、策略で絡める方法もあったかもしれない。しかし角獅虎(サルクス)の中の駆り手は、爬虫類人間の怪物である竜人(ドラグーン)と、エポスらとイーヴォの研究によって生み出された不気味な人造人間〝灰化人ヘクサノイド〟なのだ。恐怖を感じるかどうかすら分からぬ異形たちに、人の心の機微など分かるはずもない。機械的に目の前の全てを破壊していくだけである。


「確実な勝利というのも驕りかもしれませんが、もう戦う意味すらないのではないですか?」


 騎馬に跨る呂羽(ルゥユー)の側に、別の騎馬が近寄り声をかけた。同じ十三使徒の一人、第十一使徒のサリである。


「これに歯向かうのは愚かを通り越えて喜劇であろうな。そして数多の国を滅ぼしてきた俺からすると、人は時に喜劇的な選択を好んでとるものだ」


 諧謔かいぎゃくというにはいささか面白味に欠ける発言だったかと、呂羽(ルゥユー)は自分の言葉に苦笑を浮かべる。だがサリはそれを、戦闘を望む者としての不敵な笑みなのだと捉えた。


「……ですね。それでも貴方の望む戦いなど訪れはしないのでは? この大軍を止められる者がこの世にあるとは思えません。ましてや我々十三使徒の出番など、もうないのではないでしょうか」

「人には役割というのがある。それは常に同じではなく、時に望まぬ役を行わねばならんのがこの世の中というものだ。この場合の我らの役目は、この人外の群れを操る事。そしてオリンピアのような暴れ牛の手綱を握る事だ。それは俺の役目でもあるが、サリ、お前の役目でもあるぞ」

「は、総司令官閣下(・・・・・・)、心得ましてございます」


 二万の大軍を率いるヘクサニア軍の総司令官は、この呂羽(ルゥユー)であった。


 彼は使徒の中で言えば新参者もいいところだし、異国の人間でもある。そんな自分にこのような大軍をまるごと預けるというのも、肝が据わっているのを通り越して不気味ですらあった。それをファウストに進言したドン・ファンやエヌら上位階の使徒たちにスヴェインといった面々の考えに至っては、まるで見当もつかない。

 万が一己がこの二万の軍を率いてヘクサニアに牙を剥いたらどうするつもりなのか。

 そんな愚かしい誘惑が鎌首をもたげそうになるが、元よりそれすら〝奴ら〟の想定の内なのだろう。それが分かっているからこそ自分は命令に従うのだし、ここに居てこのおぞましくも圧倒的な大軍を見つめようというのである。


 とはいえ、自分の配下に就いたサイモン、エドガー、オリンピア、サリといった他の使徒達には、己の心底など微塵も覗かせるつもりはない。そんなものは露ほども表に出さず、呂羽(ルゥユー)はただ黙々と指揮をするだけだった。




 やがてメルヴィグ王国の領内へ踏み入ったヘクサニア軍は、抵抗という抵抗にもあわず、どんどん王国内側――王都へと近付いていった。


 その途上で、大軍は二つの陸路のどちらかを選ぶ事になる。

 一つは険しく細い道もあるが、王都へはかなり短縮出来るであろうバッハウ峡谷を通る道。

 もう一つは王都まで日数はかかるが、大軍も無理なく進める公路を進む道。

 この二つである。


 これに呂羽(ルゥユー)は、迷わず前者の道を選んだ。

 理由はどれだけ難儀な道だろうと、この大軍と軍容を前に攻めてくるはずがないという事。仮に奇襲を受けようとも、どうあろうと負けるはずがなかった。いや、こちらが負けるような手立てや策があるのなら、むしろ喜んでそれを仕掛けてほしいくらいだとさえ思っていたのだ。


 これは皮肉ではなく、それほどの相手ならば戦い甲斐もあるだろうという、武人の呂羽(ルゥユー)らしい思考からきていた。


 更にもう一つの理由が、伸びつつある兵站の確保である。

 二万の鎧獣騎士(ガルーリッター)というかつてない規模の大軍も、さすがに完全無欠の万能というわけではない。まず、それが異形の存在であろうと、生きている以上ネクタルといった糧食は必要になる。それは竜人(ドラグーン)灰化人(ヘクサノイド)とて同様だ。

 例えば進軍した先でそれらを劫掠するという方法もあったが、そうするとまず、王都を一直線に攻略するのではなく、確実に収穫出来る場所を陥落していかねばならない。そんな事は時間の無駄だし、そもそも二万もの大軍の糧食を確保出来る規模の場所などかなり限定されてしまう。そんな風に攻めていたら、当然ながら進軍は遅れるし、結果、浪費する時間もいたずらに増すだろう。


 もう一つ言えば、彼らは出陣する前、この戦いにはあまり時間をかけないようにとファウスト王より念押しされていた、というのもあった。

 つまりどうであろうと必然的に、大軍はバッハウ峡谷の道を選ばざるを得なかったのである。




 却説(さて)――。


 この峡谷だが、峻険な玄武岩の谷が聳えるように高く切り立ち、ここを通過するにはその谷底の道を通らねばならなかった。この隘路、狭いところになると横幅が六五フィート(約二〇メートル)ほどの幅しかなく、サイのごとき巨体が二万もの数で通り抜けるには近道といっても時間を要してしまう。


 ――メルヴィグ側が仕掛けるとしたらこの辺りだろうな。


 人間同士の戦であろうと鎧獣騎士(ガルーリッター)の戦であろうと、大軍相手なら正面衝突は避け、向かい合う敵の数を絞って戦うというのは定石になるからだ。つまりこの峡谷はメルヴィグ側にとって奇襲をかけるのに最適な場所となる。


 指揮をする十三使徒の誰もが、そのように予測していた。


 だからといって過剰には身構えない。今はただの行軍中で戦闘状態ではないとはいえ、そもそも指揮官である十三使徒たち全員、まだ鎧化(ガルアン)すらしていなかった。それは手にする角笛を操る意味でも出来難い、と言う理由もあったのだが。



 それは通称〝契約の角笛〟と呼ばれている。



 十三使徒のみに与えられたもので、簡単に言えば角獅虎(サルクス)――いや、竜人(ドラグーン)灰化人(ヘクサノイド)を操る道具であった。


 竜人(ドラグーン)は爬虫類のような外見通り、言葉は通じないし意思疎通が成立し辛い。もう一方の灰化人(ヘクサノイド)はそうでもないのだが、こちらはこちらで意思疎通のような手応えはあるのだが、どうにも人形のような反応なので対応に困るところがある。

 しかしこの契約の角笛を使えば、角獅虎(サルクス)の聴覚を通して、細かく的確な指示が出せるのだ。


 ちなみに角笛という名称ではあるが正確には角笛ではなく、単に形状がそれと類似しているから付けられただけの呼び名である。その証拠に角笛の本体にはいくつかの突起があり、それを指で抑える事で音の種類を変えられる仕組みなっていた。ようは後の世に出る管楽器のようなものと考えれば良い。


 だがそれだけではなく、この笛には通常の角笛のような、合図になる大きな音を出す機能すらなかった。一応、人の耳にも微かに聞こえる程度の音は出るのだが、通常の耳では聞き取り辛い特殊な音波を発生させるためのものであり、それが角獅虎(サルクス)たちへ届き、指示となる――というのが仕組みである。


 尚、この角笛、鎧獣騎士(ガルーリッター)でも使えない事はないのだが、何故人の姿のままで使う方が良いかというと、単純に鎧化(ガルアン)すると使い辛いからであった。


 鎧獣騎士(ガルーリッター)になれば体が巨大化するので指も太く大きくなる。つまりサイズが合わないため、細かな操作がし辛い。それに多くの鎧獣騎士(ガルーリッター)に生えている体毛も邪魔だし、牛馬などの人獣なら蹄を変化させた硬質性の指になるので、それはそれで吹き辛くなる。


 なので角笛は基本的に鎧化(ガルアン)せずに使う事が多かった。




 既に先頭は峡谷へと入っているが、使徒達が使う角笛もあって行軍に乱れはなく、今のところ順調に進んでいる。


 しかしそれに反して、空模様は暗かった。


 厚い雲に覆われた天候は昼間でも景色を薄暗いものに見せ、視界もかなり悪くしている。まるで行き先に不穏なものが待ち構えているような、そんな風にさえ感じさせるほどに。


 が、それも束の間、ヘクサニア軍の最前列が俄かに騒然としはじめる。

 場所は先ほど言った幅の狭い隘路に入ろうとする、その手前。

 断崖で見晴らしも良くないため、何があったと呂羽(ルゥユー)が直接自身の目で確認しようとも、それが出来ない。そこへ、伝令が駆け込んでくる。


呂羽(ルゥユー)様! 行く手に敵が!」

「メルヴィグ軍か。誰が出てきた? クラウスか? それともレオポルト王自らが出てきたか?」

「そ、それがその、旗印はメルヴィグなのですが――」


 この後で告げられた名前を耳にした時、呂羽(ルゥユー)の表情が我知らず固まる。聞くや否や、自軍を掻き分けるように前に進み、最前列の見えるところにまで無理矢理に移動するほど。


「何という……」


 予期せぬものを見た事による焦りや怖れではない。その感嘆は、かつてない強敵えものを目にした時の、抑えきれない愉悦からくる独言だった。



 白亜の巨躯。

 手には両手持ちの巨大な剣を持ち、その大きさは角獅虎(サルクス)すら上回るだろうか。


 その横に並んでいるのは、別種のみどりの巨体。

 頭部にある二本のツノが横に向かって伸びているのだが、それがあまりに長大なのが異様だった。いや、長いだの大きいだのという言葉すら物足りなく感じるほどである。


 その白と翠の前にいるのは、琥珀色の矮躯。

 いや、白と翠があまりに巨大すぎるために身体が小さく見えるだけで、大きさは人間ならばかなりの長身に入る部類だ。


 人間ならば――である。


「友好国とはいえ、何故いる……」


 呂羽(ルゥユー)の呟きには、ご馳走を目の前にした、飢えた獣の響きがあった。自分以外の目に映る全てが獲物という、多分に血塗られた趣きではあったが。

 

 立ちはだかるそれは――


 琥珀色をしているのがアクティウム王国国王クリスティオが駆るヴァナルガンド・アンブラ。


 翠色の巨体が、トクサンドリア王国王太子ヤンの駆るエアレ。


 そしてこの中で最も大きな白亜の巨人が、アンカラ帝国皇帝セリムの駆るウルヴァンである。


 先頭に立つクリスティオが、大音声で高らかに言い放つ。


「アクティウムのクリスティオ、トクサンドリアのヤン、そしてアンカラのセリムの三名、我らメルヴィグの同盟国として、貴様らの暴虐非道を誅滅する剣となり、その悪行より民草を守る盾となるため、ここに参上した! 信仰を強要し、無辜の民と我が同胞はらからの棲まう大地を汚さんとするならば、ここで悉く屍を晒すと知れい!」


 ヘクサニアの軍は、そのほとんどが角獅虎(サルクス)で構成されているが、十三使徒以外に騎士騎兵がいないわけではない。怪物達に紛れる形でそれらもいるのだが、今の口上は、そんな彼らが思わず身を竦ませるほどの迫力に満ちていた。


 だが今述べたように、二万の大軍はそのほぼ全てが竜人(ドラグーン)灰化人(ヘクサノイド)の駆る角獅虎(サルクス)なのである。

 目の前で苛烈な威嚇をされても、異形異種の彼らにそれが届くはずもなかった。


 一方でこの言葉に別の意味で身を震わせていたのは、神聖黒灰騎士団(ヘキサ・エクェス)・第五使徒の呂羽(ルゥユー)である。


 出来るならば今すぐにでも、目の前の三人と刃を交えたい。一人一人など勿体ない。三人いるのだ、三人を共に〝喰って〟みたい。

 今にも身を乗り出さんばかりにそう考えていた。


 しかし今の彼は、流浪の武人でも雇われの反逆者でもなければ、平地に乱を起こす謀反人でもない。ヘクサニアの尖兵にして黒母教の武の聖人、十三使徒の一人なのだ。目の前の誘惑よりも使徒の責務の方が、この時はまさった。


「各国の王や皇帝にしてその国の最強を誇る強者つわものであろうと、我らを前に何を吠えたとて蟷螂の斧。数の絶対をその身で以って味わい、己らが屍を晒してその愚かさを悔いるがいい」


 嘲りと、旨そうな獲物をみすみす逃してしまわなければならないほんの僅かな残念さを覚えつつ、呂羽(ルゥユー)は契約の角笛を吹いた。


 指令は単純、内容は明白。


 全軍、前進。目の前の障害はただすり潰せ。それだけである。



 ところが――ヘクサニア軍が動き出すより先に、目の前の三騎が攻撃を仕掛けていたのだ。



 まずは琥珀色。

 最速を誇るタテガミオオカミのクリスティオ=ヴァナルガンド。


 高速戦闘を誇る鎧獣騎士(ガルーリッター)でも、その頂点に位置する最速の動きは、彼我の距離を一瞬で縮め、鎧化(ガルアン)前の敵軍を縦横無尽に斬りつけていった。


 いくら角獅虎(サルクス)鎧獣(ガルー)の時点でも桁外れの能力を有していようと、超常騎士の頂点にいる速度を前にしては、為す術などあるはずがない。

 噴き上がる鎧化(ガルアン)の白煙と同時に、血風が濃霧のように峡谷を満たしていく。数秒にも満たぬ数瞬の間に、一体どれほどの魔獣が血肉と化したか。


 しかしそんな事で怯むどころか進むのをとどまるヘクサニアではない。

 数瞬もあれば魔獣騎士は姿を見せ、その凶剣を振るうのである。


 が、それであっても――


 琥珀色の人狼は止まらなかった。否、止められなかった。


 まるで石組みの間を水流が縫うように、角獅虎(サルクス)たちの剣など毛先一本掠らせもせず、敵軍の只中で血の嵐を巻き起こしていく。

 さすがにこれには手のつけようがなかった。


「噂に聞くアクティウム最速とは、ここまでであったか……!」


 確かに角獅虎(サルクス)は強大且つ強力無比だが、攻撃を当てられなければただの木偶の坊に過ぎない。クリスティオはそう言わんばかりに、ただ一騎で敵軍を翻弄していった。


 この時万が一を考え、呂羽(ルゥユー)は自分も含めた十三使徒達に鎧化(ガルアン)を命じている。角笛の扱いが面倒になろうが、構わない。油断や侮りこそ、どれだけ巨大な力を持っていようと蟻の一穴にもなり得てしまう事を、彼は知っていたからだ。


 そこへ畳み掛けるように、今度は白亜の巨人がその巨体には似つかわしくない速度で、ヘクサニア軍に真っ向から突撃をしていく。


 それは蛮勇を通り越えて、無謀にしか見えなかった。


 セリムの纏うウルヴァンは、古代絶滅種にしてキリンの原種にあたるシヴァテリウムである。

 簡単に言えばシカほどに首が短くなった、体格のいいキリンだ。


 それだけに鎧獣(ガルー)の時点でも体は一際大きく、ほぼゾウの鎧獣騎士(ガルーリッター)に並ぶほどの大きさがあった。つまりその巨体故に、いくら速度があろうともヴァナルガンドのような小回りを効かせた攻撃は出来ないという事。真っ向からの力押しでいくしかない。


 いくら峡谷の狭さで相手取る数が全軍でなくとも、それは荒れ狂う海原の前に一艘の船で進もうとするようなもの。最初は抵抗出来ても、いずれ波にさらわれて砕かれるだけだと思えた。


 ところがここでも、信じられないものが繰り広げられる。


 セリム=ウルヴァンの武器は、刀身にいくつもの輝石が埋め込まれた、巨大な両刃剣(イルウーン)


 それがウルヴァンの麒麟角(オシコーン)と連動するように光を放ったかと思えば、雑草を薙ぐように水平一閃。



 虹の軌跡を残した後には、数騎にもなる角獅虎(サルクス)の巨体が両断されていた。



 これを暴風の凄まじさで、何度も斬りつけるのだ。たちまちの内に、桁を超える勢いで魔獣が斃されていく。

 結果、前進を命じられたにも関わらず、ヘクサニア軍は軍勢まるごとで足踏みせざるを得なくなったのであった。


 とはいえ、これら大陸に冠たる騎士達の活躍を目の前にしても、まだ呂羽(ルゥユー)が動じることはなかった。どれだけ強かろうが何だろうが、数の論理は絶対なのだ。倒す事は出来ずとも勢いを止めるなど二騎だけでは絶対に不可能。

 そう時間もかからず、先に尽き果てるのは向こうだろうと確信していた。


 ここまでは。


 もう一騎の巨人が、動き出すまでは。


 白と緑の鎧に、体表もみどり


 トクサンドリア最強。そしてあの百獣王カイゼルンをして、自分より〝膂力ちから〟は上、と評した人牛騎士が、今まさに猛然と真価を発揮する。

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