設定用語集 錬獣術編Ⅲ
ゴールデンウイーク特別企画 毎日投稿週間! 最終日!
設定紹介その1
本作に出てくる専門用語紹介。
鎧獣に関する用語・設定紹介の第三弾です。
※読まなくても、本編は楽しめます。
あれ?あの言葉なんだったっけ?って時に読む用のものです。
ここに記す内容は特に設定好きな方以外、読み飛ばしてもまるで問題ないです。
……が、さらりと重要情報も載せてます(笑)。
ストーリーを楽しむ分には何ら知らなくとも大丈夫になってます!
★古代種・絶滅種について
作中にはダイアウルフをはじめとした、現代では絶滅した動物が数多く登場する。
これら作中で絶滅種と記載されているものは、当然この世界でも絶滅した動物になる(一部、現在の私たちの世界では絶滅しているが、中世相当という事でまだ現存している種もある)。
当然、野生の〝神之目持ち〟から神之目を採取出来ない。
ではどうやって生成しているのか。
ひとつは第二部のジャミラ・カーンが〝神の騎獣〟ウルヴァンを生成したように、一族などが古くから保管・保存しているなどのパターンである。
もうひとつが特殊な環境下で埋まっていた神之目が発掘されるパターン。
発掘の場合、それが古代絶滅種かどうかは後述する「ノービス液と色別符帖」で判別する。
では前者の場合、そもそも一族の最初の者は一体どうやって入手したか。発掘の場合もあるだろうが、実はもうひとつ、全ての練獣術師にまことしやかに伝わっている、ある方法で手に入れたという伝説のようなものがある。
それは練獣術の始祖アウグストゥスが弟子達に配ったというものである。
これが真実か否かは大いに謎だが、いずれその謎も解き明かされるかもしれない……。
★『授器』について
授器は武装である。武器であり鎧である。
ただ、鎧としては極めて軽装で、鎧獣騎士の全身はほとんどが剥き出しになっている。つまり武装としてあまり効果的とは言い難い。事実、授器がなくとも鎧獣騎士の身体は堅牢なのだが、それでも防具部分がいるのには二つの理由がある。
〈役割1:消費ネクタルの還元と野良化の防止〉
知っての通り鎧獣はネクタルという加工食品を食物にしている。
これは食料だけでなく、鎧化などでも大きくを燃焼するのだが、そういった特殊な行動のみならず、鎧獣は常にネクタルを消費し続けている。
これを放置すれば、実は鎧獣の寿命が早まってしまうのだ。
授器はこの全身から放出・消費されるネクタルを備蓄する役割を担っており、一定量を鎧獣の体内に還元している。
こうする事で鎧獣は寿命の消耗も軽減出来るだけでなく、野生化する事なく駆り手に従順になるのだ。
授器は常に着け続けるわけではないのだが、十数日から数週間ほど授器を着けないで放置しておくと、徐々に鎧獣は鎧化出来なくなってしまう。それどころか場合によっては野生化してしまう例もあった。これはとても悲しい出来事で、野生化してもネクタルしか食べれない鎧獣は、長くは保たずにほぼ間違いなく早晩死ぬ事となる。
ちなみに全身を覆わないのは四肢、背中回りなどさえ抑えておけば還元率が最も高いからである。
これが一つ目の理由。
〈役割2:特殊防具としての役割〉
実は授器はとても重い。普通に人間が扱うには重量がありすぎる。
ところがこの授器、微量でも気化した消化ネクタルを浴びるとおそろしく軽くなるのだ。
授器はとても密度の高い物質で、それ故に見た目に反して重量があるのだが、気化ネクタルはこの重量を軽く出来る仕組みがあるらしい。
鎧獣は全身からネクタルを放出しており、それ故、普通なら超重量であるこの武装が、鎧獣にとっては羽毛のように軽い素材という感覚しかなく、負担がほぼないのだ。
しかも超高密度の物質であるため伸長・変容・変化も多様で、だから獣の防具から人間の防具にスムーズに変化が出来る。またそれだけの高密度だからこそ、どの物質にもない堅牢さを持っているのである。
……全身を覆わないのは還元率もあるが、外して重くなった授器を装着するのが大変だという理由もあった。
★鎧獣の等級判定について
鎧獣の等級判定にはアレンビックと呼ばれる測定器が使われる。
これを口にくわえる事で各項目の等級が判定される。
★ノービス液と色別符帖
ノービス液は歴史に名を残す練獣術師ラモン・デ・ラ・ノヴァが発見・発明した試験液。
詳細は省くがこの液に神之目を浸けると、透明だった液の色が変わり、種別が判定出来る。また、色だけでなく泡立ったり別の変化を起こせば更に詳細な種別の判定も可能。
色別符帖は、この変化の詳細を印した本で、どの色、どういう変化がどの種かを判別するのに必要なカラーチャート。
ちなみに覇獣騎士団の各隊の色がカラフルなのは色別符帖から由来している。つまり、メルヴィグ王国建国当時は、大型猫科だけではなかったという意味である。
★調合表
鎧獣を生成する際、薬液の配合や温度、湿度、容器など様々な要因で出来上がる鎧獣の性能は大きく変化する。それは僅かな変化でも差は顕著になる場合もあり、これは再生の際に最も注意がいる事だ。
何となく適当に行程を経れば同じ鎧獣になるわけではなく、同じ神之目であっても、ちょっとした違いで全く能力の異なった鎧獣になってしまう可能性があった。
それらの配合や生成過程を、練獣術師たちは記録しており、その記録帳こそが〝調合表〟と呼ばれるものだ。
調合表は練獣術師の命、最も重要な財産で、死んでもこれだけは守るというのは練獣術師に共通した考えだろう。
★調整師
元はフランス語で猛獣使いの意味。
鎧獣の調整・整備を生業とする職業で、準・練獣術師とも言える。
下位位階の練獣術師と違うのは、練獣術師の徒弟ではなく調整だけで職能にしているところである。ただ、ここら辺は曖昧で、ほぼ徒弟のような調整師もあったり、そこから練獣術師になる者も多くいる。
★鎧獣の購入について
鎧獣の価格は等級によって千差万別。
大まかな価格参考は以下を参考。価格は円に換算しているが、価格価値はこの世界のもの。大体都市部の一般家庭なら10万円もあれば二ヶ月は余裕で暮らせるくらい。
ただし体格等級ほか、諸々の査定も入るのでこの通りではない。
・特級・・・3000万円以上~
・上級・・・800~3000万円
・中級・・・200~800万円
・下級・・・80~200万円
特級より上になれば億を超える事はよくある。ここら辺りはエール教の教会による保険や国家騎士団なら国家による保証や軍備で賄われる事が多いので、個人の負担は少ない。ただし、その場合は所有権は個人ではなく国家や教会に帰属する。
これは現行の軍隊の装備と同じ。専用機はあってもその機体の権利は軍や国家が持っているというもの。
ちなみに帝家鎧獣は億越えが普通。
ティンガル・ザ・コーネなど国宝に等しく価格は付けられない。おそらく国ひとつ買えるくらいはあるはず……。
★鎧獣の購入について その2
購入については大きく分けて三つある。
一つ目はエール教教会が運営する教会獣猟団やF.R.A.G.などの獣猟団を通して購入する方法。
二つ目は国家が運営する組合を通じて購入する方法。
最後は練獣術師から直接購入する方法。
上の二つは手続きや申請書が必要で、まあまあ面倒。
国家であっても最終的にはエール教教会に登録される事にはなり、その後、その鎧獣の持ち主として認定される事になる。
実はこの登録料がバカにならず、購入費の30%も払わなければならない。
教会の大きな財源にもなっているのだが、この収入があればこそコンポステーラの大図書館なども維持出来るので、あまり各国家や練獣術師らも表立っては異を唱えてはいない。
ただし、F.R.A.G.などはこの登録料が割安になっており、そういった点で昨今は教会への登録を嫌がる騎士が多いという。
★鎧獣の性別・生態などについて
鎧獣の生態は人間に順応するよう調整されている。例えば昼行性や夜行性などはあまり強く出ず、人間のライフサイクルにおおむね同期して生活する。
また、鎧獣は動物の形態の時、外見上は普通の動物と変わらない。
食べて、排泄し、寝る。
排泄するという事は排泄器もあるし、性器も備わっている。
ただ鎧獣騎士に変じた時、男性器・女性器などは細胞レベルで変異し、見当たらなくなる。
これは単純に邪魔になるのと、そこが急所になるからだ。
動物形態の時に性器があると言う事は、一応性行為も可能であり、そのような姿はごくたまに目撃されている。基本、生殖の本能が備わっていない鎧獣は、そういう行動を取らないのだが、稀にそういう例も報告されている。鎧獣だって恋をするのだ。
しかし子を宿す機能が備わっていない鎧獣は、生殖行動は出来ても妊娠や出産にはならない。性行為もあくまで愛を確かめ合う行為でしかないとも言えるし、実は鎧獣自身、その事を理解している節もある。
★変位双性
作中で出ない可能性もあるので、ここで紹介する重要設定。
証相変というのがある。
駆り手が肉体の一部機能を捧げ、欠損する事で鎧獣と駆り手に特殊な結びつきを施し、鎧獣騎士の能力を底上げする練獣術の禁術だ。作中でもティンガルボーグやクリスティオのヴァナルガンドがそれである。
この証相変だが、たった二騎だけ、特殊な変化をする鎧獣があるのは分かるだろうか。
一騎はそう、百獣王カイゼルンのヴィングトール。
もう一騎はトクサンドリアのヤン王子が駆るエアレ。
この二騎の証相変は、まず鎧獣の見た目が常に変化後のものに固定されないという事。駆り手の血を数滴舐めさせ、符牒を唱えて後で証相変状態になるのだ。
(ヴィングトールなら金毛、エアレは翠毛)
実はこの変位双性、ただ変化を固定しないのが目的なのでなく、実は証相変の最大のネックである「駆り手は一生、その鎧獣しか使えない」が適用されないのだ。
つまりカイゼルンもヤンも、別の騎獣を扱う事が出来る(五代目カイゼルンがそうである)。
他の騎獣が使えるのであればリスクも大幅に少ないのは明白。となれば全ての鎧獣にそれをすればいいのでは? と思うかもしれないがそれは出来ない。
この変位双性、証相変よりも遥かに危険なのである。
証相変との大きな違いは上記だけではなく、最初の手順にこそあった。
変位双性は、身体の一部どころか、生命そのものを捧げて完成するのだ。
その捧げる箇所は心臓。
駆り手は自分で己の心臓を抉り、それを鎧獣に捧げ、その上で鎧化して初めて変位双性は成るのである。その間、勿論の事だが心臓をなくした状態で駆り手は死んではいけない。「生き」ねばならないのだ。
心臓をなくしながら数秒か数分か生き続ける。
それは不可能を超えた異常とも言える行為。
だがそんな超人的行為を経なければ変位双性は成らず、即ちこれが出来るほど、超・異常な生命力を持った人間でしか、変位双性は出来ないのである。
つまり歴代のカイゼルン達は人間としてもバケモノ揃いであり、ヤン王子もそれに匹敵する人物でなのである。
それゆえ、第二部のクルテェトニク会戦で、カイゼルン・ベルはエアレを「自分のヴィングトールと同じ」と言ったのである。
★真性鎧化
第二部ラストでカイゼルンとヴィングトールが見せた第二の鎧化の事。
「赤化」
の声で発動。
ヴィングトールの場合の特徴は、全身に浮かぶ文字列と胸部近くに浮かんだ「L.E.C.T.」の文字。
駆り手との完全融合による能力の解放――と言えば簡単だが、それだけではない。
「L.E.C.T.」の意味と共に、詳細はいずれ分かるだろう。
これの真相がイーリオに伝えられる時、鎧獣騎士の真実もまた明かされるのかもしれない。