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銀月の狼 人獣の王たち  作者: 不某逸馬
第三部 第一章『希望と絶望』
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第三部 第一章 第二話(2)『皇帝崩御』

 ゴート帝国皇帝ゴスフレズⅢ世の葬儀は、しめやかに且つ豪壮に行われた。


 百官が列をなし、特異な任についた者以外は皆、喪に服した。

 諸国からも皇帝の死を悼む声が届いたが、そこに領土的野心を含む声が混ざらなかったのは、それだけハーラルの治める現状が確固たるものであるという証だろう。


 それを示すかのように、葬儀に居並ぶ北央四大騎士団の姿は、数も質もあまりに圧倒的である。

 多くの鎧獣(ガルー)を手掛けてきた国家最高錬獣術師グロース・ライヒ・アルゴールンのインゲボーですら、ずらりと並んだ姿には息を呑むものがあった。


 彼女は弟のビョルグに頼み、父の死について、そして存命しているという噂のもう一人の皇子についても調べようとしていたものの、さすがにこの状況下では身動きが取れないでいた。だが葬儀が終われば、すぐにも戴冠の儀式が行われる。当然、諸侯も帝都にとどまらざるを得ず、色々と調べを進めるまたとない好機だとも言えた。


 そしてそれは意外にも、向こうの方からやってきたのである。


 インゲボーとビョルグの両名に、トルステン大公から呼び出しの声がかけられたのであった。




 葬儀の終わったその日の内、帝都にある大公の邸宅に呼ばれたスキョル姉弟。

 そこには大公と北央四大騎士団のグリーフ騎士団団長ギオル・シュマイケルの他、見知らぬ姿の若者も二人、姉弟を待っていた。


「急な事で済まぬな、インゲボー殿、ビョルグ団長」


 怪我をして一線を退いたものの、ヴォルグ六将の一人であった威風はいささかも衰えてはいない。そんなトルステンが一体どんな用で自分達姉弟を呼んだのか。それにどうしてギオルまでがここにいるのか。二人は身を固くせざるを得なかった。


「貴殿ら姉弟は、父君の件もあり、あまり宮廷の争いに関わらないでいると聞く」


 いきなり口に出された話題に、姉弟は驚きを隠せない。自分達が知りたいと思っていた事に触れられて、どう反応すべきかといったところだろう。


「反面、私は亡くなられた陛下とは友と呼び合った仲というのもあり、皇帝派などと呼ばれる一派に担がれておる」

「一体、どのようなお話しでしょうか……? それに、そこのお二人はどなたで?」


 インゲボーが固い口調で返した。


「この御二方については後で説明する。氏素性についてもこの私が保証しよう。――それにここへ呼んだのも、我が一派に加われなどというのではない。むしろ皇帝派だの皇太子派だのといった煩わしさに縛られておらぬ、中立のそなたらを見込んで、お願いをしたいのだ」

「はあ」

「ただ……呼び出しておいて申し訳ないが、ここから先の話は、一度耳にすればもう引き返す事は出来ぬ。だがどうあっても、我が頼みは聞いて欲しい」


 ゴートきっての老宿将が、若き二人に頭を下げる。呆気に取られる二人だが、その老大公の傍らで、ゴート一の剣士と名高いギオルが、表情の読めぬ目でこちらを見つめていた。

 成る程、剣呑な話なのだろう。

 だが同時に、これは自分達にとってもまたとない話だと確信もした。


「では、話をお聞きする前に、私ども二人も大公殿下にお尋ねしたい事がございます。それに余す所なくお答えいただければ、私ども姉弟も殿下のご依頼をお受け致しましょう」

「ふむ。貴殿らも私に用があったとは意外だな。よろしい。では、先にそちらの話から伺おうか」

「ありがとうございます。では率直に――。二〇年前、クロンボー城が襲撃された事件で亡くなったとされるオーラヴ皇子。その皇子が生きておられるという噂を耳にしました。この事について、大公殿下は何かお知りではございませんか?」


 単刀直入すぎるインゲボーの質問だったが、それには理由がある。

 そもそも皇子が生きていたという話そのものを、彼女はあまり信じていなかったのだ。


 皇太子の皇帝戴冠が近付いたこの折りに、都合良過ぎる皇子存命の噂。

 ハーラル皇子を良く思わない一派が吹聴する出鱈目に近い話だろうと彼女は値踏みしていたが、重要なのはそれがどういう形で齎されたかという事だった。自分の父の死について、そこに何か大きな手掛かりがあるかもしれない。だからまず、何の飾りもなくその事を尋ねたのだったが――


 老大公とギオルの目が、驚きに見開かれていた。

 予想だにせぬ二人の反応に、姉弟二人もどういう意味か計りかねる。


「まさか……貴殿らからそれを持ちかけられるとは……」


 こぼした言葉の意味から察するに、まさにその事を、大公は話そうとしていたのだろう。

 トルステン大公が横を向いて頷くと、傍らに控えていた若者の一人が前に出る。


「順をおって話そう。おそらく我らの利害は重なっているだろうからな」


 老大公の話した内容は、姉弟二人の予想だにせぬ内容であった――。




 氷の巨城――

 帝都ノルディックハーゲンの北寄り中央に聳えるアケルスス城を、人はそう呼んだ。ところどころに飾られたゴートガラス製のステンドグラスが明かり取りの役割をし、遠目からでも水晶のような輝きを見せる事からそのような呼び名がついたのだと言う。

 窓が大きいのは北国の特徴で、日照時間が僅かな冬ともなれば、ほんの少しでも多くの日光を建物内に取り入れる事が望まれる。そのため、建物の多くは大きな窓を設え、採光に工夫を凝らしていた。

 そのステンドグラスから降り注ぐ光を受け、城の大広間に、ずらりと並んだ騎士の隊列があった。


 ゴート帝国の誇る最強最大の騎士団。

 北央四大騎士団の団長格が、一堂に会していた。


 その様相は圧巻の一言に尽きる。


 ヴォルグ騎士団からはヴォルグ六騎士。


 ゴゥト騎士団からは団長と二名ある副団長の内の一人が。


 ベルサーク騎士団からはビョルグ団長と副団長。


 グリーフ騎士団からもギオル団長と副団長。


 中でも最強最古と呼ばれるヴォルグ騎士団の六騎士が揃う姿は、そうそう見られるものではない。

 それぞれに重要な任に就く事の多い彼らは、常にどこかに出ている場合が多く、こうやって並ぶ事など年に一度あるかないかと言ったところだろう。

 彼らが列を為している理由はひとつ。


 皇太子ハーラルの皇帝即位と婚約者のお披露目。


 それを祝う為に騎士団が呼び集められているのである。

 騎士団団長や付き従う騎士らの後ろには、武門の帝国らしく、彼らの騎獣も控えていた。さらにそこからはずれた場所には、有力諸侯や官僚も並び、それどころか城の外には帝都の民衆が次期皇帝の姿を見ようと、ひしめきあって押し掛けているほどだった。

 玉座には既に、次期皇帝の象徴とも呼ばれていた氷獣の帝騎ティンガルボーグが侍っている。


「ハーラル皇太子殿下が、おなりあそばします」


 ギヨーム宰相が声を張り上げると、全騎士全諸侯が、一斉に片膝をつく。

 同時に、彼らの鎧獣(ガルー)も呼吸を合わせてその場に蹲った。


 若き皇帝が、姿を見せる。


 老人のように色素の抜けた、真っ白の髪。極北の氷海よりも冷気を孕んだ氷雪蒼色(アイス・ブルー)の瞳。

 威厳はその身に相応しく、今や誰も、彼の事を氷の皇太子(イクプリンス)とは呼ばない。

 ハーラルが、帝冠を恭しく捧げるギヨーム宰相の元へ、一歩、また一歩と近付いていった。

 厳かなひと幕。

 まさにその時だった。


「お待ちあれ!」


 突如、諸侯の群れから叫ばれる野太い声。

 この厳粛な場を引き裂かんとするような声が静寂を破り、列からはずれて一人前に出る。


 シュタイエルスカ大公トルステン・ステンボックだった。


「此度の即位に、異議を申し上げ奉ります!」


 すわ、トルステン大公、気でも触れたかと広間の皆が一斉にざわめく。

 しかしこの常識はずれな行いをしているのは他でもない、皇帝家の外戚にあたる三皇家の大守なのだ。彼より家格の高い貴族は他になく、誰もが止めるべきか否か逡巡する中、トルステンに倍する声で、これを咎める音声が、場を圧した。


「大公殿下、いかなるご乱行か。この場が何であるか、分かっておられるのかっ」


 ヴォルグ六騎士の一人、ゴート帝国総騎士長にして元老院議長のリヒャルディス・グライフェンであった。年齢はトルステンよりも上になり、全騎士でも最高齢。総司令のマグヌス・ロロを除けば、帝国中から尊敬を集める一人である。それ故、大公だろうが三皇家だろうが、リヒャルディスには関係ないと言ったところか。


「黙れ。私の気が触れたとでも思うか、リヒャルディス。私は帝国の行く末を正すため、この場を借りて皇太子殿下の即位に異議を申し上げているのだ」


 むう、と唸るリヒャルディス。

 かつては轡を並べて共に戦場を駆けた戦友でもある。

 トルステンがただならぬ覚悟で声をあげている事くらい、リヒャルディスにはすぐ分かったし、だからこそ処刑されるも辞さないこの行いの目的に、困惑した。それは大広間の全員が同じであり、トルステンの返した言葉で、場は尚一層ざわめきを大きくした。


「静まるがいい、皆の者」


 外にまで漏れ出そうな混乱の中、皆を見下ろす位置にいたハーラルが、ひと声でどよめきをおさめる。

 全ての視線が、若き次期皇帝に注がれた。


「どういう事か申せ、トルステン」

「誠にご無礼ながら、奏上仕ります。我がゴート帝国は、建国の祖帝ホルガー陛下以来、長幼の序を以て国家の礎となしてきました。それもこれも、帝国に無用の内乱を起こさぬため。しかしながら皇太子殿下、それに諸侯の皆よ、その長幼の序が蔑ろにされ、そればかりか無法な行いを次期皇帝が為されるとあらば、それは見過ごせぬ事にございます」

「どういう意味だ?」

「陛下の兄君、オーラヴ殿下はご存命にあらせられます」


 動揺が堪えきれぬ波となって、広間の端にまで広まっていった。

 ハーラルもまた、両目を大きく開く。


「オーラヴ殿下は名を変え、密かに今日(こんにち)まで生き存えておったのです」


 どういう事だ、何を言っている、とざわめきがやまない。

 一部の人間の表情は変わらなかったが、ほとんどは信じられないといった面持ちである。あの帝国最強、武の化身と謳われるマグヌス・ロロですらもそうだった。

 トルステンが手招きをすると、彼のもと居た場の後ろから、付き添いの服を偽った若者が二人、老大公の横に並んだ。

 その内の一人がフードを外すと、緑金色の髪がステンドグラスの明かりにはじけた。

 目にした途端、隠せぬ動揺をこぼしたのはハーラル。エッダらの顔は、影になって分からないし、他は誰も表情を訝しめるのみ。誰だあれは、という声が小さく交わされているようだった。


「彼こそがそのオーラヴ殿下。現在まで、イーリオ・ヴェクセルバルグと名乗っております」


 どよめきが一層大きくなった。

 イーリオの名を知る者、知らぬ者、誰であれ予想だにせぬこの告発に、狼狽えぬ者などいない。


「血迷うたか、トルステン。お主ほどの者がそのような戯れ言を申すなど」

「戯れ言ではないぞ、リヒャルディス。これを見よ」


 頷いてイーリオの方を見ると、彼は首元からペンダントを出す。

 二重蓋が開き、そこに見えたのはあの至尊の紋章。


「リヒャルディスよ、そして帝家所縁の者よ。お主らなら分かるであろう。皇帝継承権の証、皇帝紋〝ホルス・ハルヤ〟だ」


 最初はリヒャルディスに、そしてギシャール宰相や騎士たちにも分かるようにゆっくりと回しながら、紋章の入ったペンダントを掲げるトルステン大公。最後はハーラルの正面に向かって、紋章は翳された。


「ここにおわすイーリオ殿、いや、オーラヴ殿下はこの皇帝紋の所有者にあらせられる。紛れもなくオーラヴ殿下だ。そして――」


 次いでイーリオの傍らに控えていた若者――ジョルト・ジャルマトが首肯しグリーフ騎士団のギオルとベルサーク騎士団のビョルグに合図を出す。するとそれぞれの列に身を潜めていた鎧獣(ガルー)が前に出た。


 白銀の体毛を持つ、見目鮮やかな堂々たる騎獣が、イーリオの傍らに近付く。


 大狼(ダイアウルフ)のザイロウだ。


「この鎧獣(ガルー)も、皇帝家に連なる人間なら知る者もいるはずだ。これこそホルガー祖帝がティンガルボーグと共に封印した、〝不使(つかわず)〟の帝家鎧獣(ロワイヤルガルー)。これを纏えるのは皇帝家の直系のものだけ」


 厳粛にして神聖な儀式の場は、今や混乱の渦を巻いていた。

 だが、そんな中にあって――最初こそ驚きに目を開いたものの――終始表情を変えない者がいた。

 ハーラルである。


「で、それが何だと言うのだ」


 喧噪に近い当惑の声があがる中、静かに、だが場を圧する声で、ハーラルが言った。

 再び一瞬にして、この場の音すら凍り付くほど。

 その姿に、影で控えるエッダなどは、何とも言えぬ喜びに満ちた顔を受かべている。


「そこの者がオーラヴ兄上だとして、それが一体何だ。――成る程、長幼の序というのはそうだろう。だがそれが確かであっても、だからと言って今まで身を隠してきたその〝兄〟に、帝国の政事(まつりごと)が行えるのか? 軍を動かせるか? それに余は正式に立太子を受けた身。この帝国の現状にあって、誰がもっとも皇帝の座に相応しいか、問う必要のある話か?」

「さすがはハーラル殿下、まさに仰る通りにございましょう。私めも今更こちらの兄君をたてて、帝国を騒がそうというのではございませぬ」

「ほう、では何を言いたい」

「皇帝にならんとするお方が、人倫にもとる非道な振る舞いを為されようとする。私が異議を申してるのはその事にございます」

「非道? 何の話だ?」


 眉をひそめるハーラル。

 トルステンが何かを言い出すより先に、イーリオが一歩前に出た。広間の視線が彼に集中する。


「僕の婚約者を返して欲しい」


 イーリオが表れた時同様、少し顎を上げ、両目を丸くするハーラル。

 重ねてイーリオが言った。


「貴方が婚約をしようとしている女性は、四年前連れ去られた僕の婚約者、シャルロッタだ」


 もうどよめき声は起こらぬものの、場の全員が事の成り行きに固唾を飲んで見守っていた。

 付き添いのジョルトも覚悟を決めているとはいえ、緊張と空気の重みで臓腑がねじ切られそうな心持ちだった。むしろここまで堂々としているイーリオの姿に、ジョルトは感心の眼差しさえ向けていた。


 ――すげえな、こいつ。


 愛する人を取り戻す為とはいえ、これほどの場でこんな風に立ち、あのような言葉を出せる者が果たしてどれだけいるだろうか。


 笑い者になってつまみ出されるならまだいい。百回殺されてもまだ足りぬほどの死と後悔を、いつ与えられてもおかしくない状況なのだ。ある意味これは、ゴートという巨大帝国そのものに、たった一人で立ち向かおうとしているのに等しい行いだと言える。

 例えるならば、数万人を収容出来る巨大な競技場の中央に立ち、絶対に敗北の許されぬ試合に臨むのと同じ――いや、その何倍もの圧力に晒されているようなものだった。


 度胸とか胆力などという言葉すら、今のイーリオにはまるで空疎に聞こえたに違いない。自分で選んだとはいえ、それほどの中にいるのである。

 そのイーリオの言葉を繋いだのは、再びトルステン大公だった。


「そうです。例えどれほど為政者として才覚と実力がおありでも、実の兄君と(・・・・・)婚約をなされた女性を奪い、その方を己のものとするなど、天下の大帝国の主君として相応しい行いか否か。聡明な皇太子殿下よ、お答えくだされませ」


 重苦しい沈黙が、広間を埋め尽くした。

 ハーラル皇子は即答しない。

 認めるにせよ認めないにせよ、どちらの返答でも本日の式典にケチがつくのは避けられない、そんな問いかけだったからだ。


「さっきも――」


 おもむろに、ゆっくりと、ハーラルが口を開く。


「さっきも申したが、誰がもっとも帝位に相応しい?」

「……?」

「余だ。そして銀の聖女を娶るのにもっとも相応しいのも、そこの兄と名乗る男ではない。余だ。余こそ、聖女の伴侶たる資格を有するもの」


 広間そのものが息を呑むかのようだった。同時に、耳障りな音も固く響く。


 歯ぎしりの音。

 イーリオの歯ぎしりの音だった。


 だがイーリオが激する前に、老大公がすぐさま非難の声を浴びせる。


「殿下はそのような非道をなされるおつもりで――」

「先ほどお主は、帝国の礎を長幼の序と言うたな。それは間違いだ。帝国の礎とは、頑迷なしきたりなどではない。正しき為政者が正しき政事を行う事である。その為ならば、例え行いが人倫にもとろうとも、余はためらわず、それを為そう」

「なんという事を仰る……!」

「正しき支配者とは、時に倫理すらも飛び越えねばならん。道徳がどうのと言うのであれば、哲学者にでもなれば良い。人々の上に立ち、支配者となるべき者には、氷山の如く揺るがぬ意思がなくてはならぬ」

「やはり貴方は――」


 ここでスッとハーラルが手を翳す。


「しかしそれでは、納得のいかぬ者も出よう。お主らのようにな。己の行いで家臣が分裂するなど、正しき為政者の為すべき事ではない。だからだ――」


 ハーラルが、自身を飾る丈長く装飾華美な外套(マント)を脱ぎ捨てた。


「ヴォルグ騎士団!」


 ハーラルの声に、ヴォルグ六将が一斉に立ち上がる。


「場を設けよ」

「はっ!」


 今の一言だけで全てを心得たヴォルグ六将とこの場の配下が、即座に動き出す。

 広間の中央に人垣が割れ、一本の道が作られた。


「トルステン、今より我が帝国らしく、正々堂々と黒白(こくびゃく)を明らかにしようではないか」

「な、何を……?」


 壇上よりハーラルが降り立つ。

 その後ろに続く、灰色虎(マルタタイガー)のティンガルボーグ。


「イーリオ・ヴェクセルバルグ。貴様と余、どちらが聖女を()るに相応しい騎士か、剣と獣をもって決着をつけようぞ」


 白髪の騎士皇子と緑金の髪をした若き聖剣騎士が、互いの視線をぶつけて対峙する。

 緊張の水位など、もはやとうに決壊していたジョルトは、それをただ見守りつつ、息をするのも忘れていた。

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