PK討伐戦
「カモガワ」
「ッス。なんスか清祥」
「偵察頼む。〈D.D.D〉のメンバーが一人で突っ込んでくるとは思えない」
「おっけッス」
ふっと一瞬でカモガワが姿を消す。
清祥は今まで戦っていた〈冒険者〉達に警戒の目を向けながら、夢見る弩砲騎士とキャンデロロの戦いを見守る。
現状は互角の戦いを繰り広げていると言っていい。だがそれは弩砲騎士が右半身のみで戦っている時点で異常な事態だ。
そして清祥の目から見て、今だ弩砲騎士は遊んでいる様に見えた。
「しかし〈D.D.D〉がなんでこんなとこにいるんだぁ?」
「も、もしかしてPK狩りか?」
ダガーマニア@レイピア使いがあげた疑問に、カランドリッツが少しビクつきながら推測の声をあげる。
恐らくカランドリッツが正解だろうとは思うが、確証が見えるまで下手なことは言うまいと清祥は判断する。
(そんなことよりも……)
チラリ、と先程まで戦っていた〈冒険者〉のPTを見やる。彼らは弩砲騎士とキャンデロロの戦いを食い入る様に見つめていた。
もし、隠れている〈D.D.D〉メンバーがいたら、彼らも流石に清祥達と戦わないという選択肢は取るまい。
何せこちらは泣く子も逃げ出す悪質PK。勝てない今ならともかく、勝てるならば打倒しようとするはず。それが普通の反応だ。
カモガワの偵察が上手く行き、あちらの行動より先に手が打てるかどうかにかかっている。
「頼むぞカモガワ……」
ポツリと呟いた清祥の言葉はしかし、次の瞬間に裏切られた。
「清祥!敵ッス………」
「カモガワ!」
周囲を囲む木々の中からカモガワが飛び出してくると、その体が足下から吹き出した円錐状の炎で包まれる。
まるで串刺しになるかの如く炎に呑まれたカモガワの絶叫は、カモガワの背後から飛んできた大型のスローイングナイフに頭を貫かれたことで瞬時に断末魔に変わった。
「くっ、ニコ!直掩に入れ!ダガー!リッツ!敵だ!」
「き、来たのか!〈D.D.D〉が!」
「分からない」
カモガワの隠密能力はここにいるメンバーどころか、集落で待機している ─はず─ のPK仲間の中でも随一だ。
それが見つかったということは向こうの練度が余程高いか、あるいは
「最初から俺達を見てたのか……」
「清祥?」
「カモガワをリザする!詠唱は速いが、それまで頼むぞ!」
「あいあい、りょーかい」
ニコが盾を構えて〈カバーリング〉を発動する。
カランドリッツが手の中で短剣を弄びながら魔法の発動準備に入ったのを横目に、清祥は〈魂呼びの祈り〉を発動した。
足をトントンとうち鳴らすと法陣が広がり、動かなくなったカモガワの身体が炎の中から清祥の真横に転移する。
〈魂呼びの祈り〉は〈神祇官〉が持つ固有の復活魔法だ。
詠唱時間は自身の攻撃行動の間に挟める程短く、対象とした味方が特技を発動した〈神祇官〉の至近に転移するという効果から、立て直しに非常に強い。
無論のこと、比例してMPの消費も多いのではあるが。
「うっ、すまねッス……」
「気にするな。敵は?」
「4人……〈盗剣士〉1、〈妖術師〉1、〈施療神官〉2ッス。あと、丘に……」
「清祥!」
「なんだ、リッツ……っ!」
振り向いた清祥の目の前に刀が降り下ろされる。それをカランドリッツが割り込んで防ぐと、刀の持ち主の〈武士〉の男と鍔迫り合いを開始した。
先程まで戦っていた〈冒険者〉達が気を持ち直したのである。
それと呼応するかの様に木々の中から別の〈冒険者〉も姿を表す。
カモガワの報告通り〈盗剣士〉、〈妖術師〉、〈施療神官〉×2という構成の彼らは、そのステータスに同じギルドの名前が輝いていた。
即ち……〈D.D.D〉。
「お前たちが無垢なる者たちを傷付けるPKですか。全くいただけません。恥を知りなさい!このわたくし、オールドとその仲間がその腐りきった根性に成敗を……」
「兄貴、兄貴。向こうの方、ヒーラーいないみたいだから回復してやらないと」
「おお、そうですね。ヤングは賢い弟だ。兄として鼻が高い」
「分かったからヒールしてやれよ。な?」
〈D.D.D〉所属の二人の〈施療神官〉がそんな会話を行うと、〈召喚術師〉のリーダーを筆頭としたPTのHPを回復していく。
同時に妙に厳しい顔をした須佐×2という〈盗剣士〉が、〈妖術師〉であるタナカサンを狙うダガーマニアのバスターソードをその手に持つ盾で防ぎ、斬り結んだ。
ニコは〈D.D.D〉のPTと〈召喚術師〉のPTから放たれる遠距離魔法から清祥を庇うのに必死だ。
唯一身軽に動くカランドリッツとカモガワは遊撃の様に立ち回ってはいるが、二人とも正面からぶつかるのは苦手なため乱戦となった現在の状況では回避に必死である。
パターンに入られた……そう清祥は歯ぎしりをした。
「〈四方拝〉!」
障壁を張り直すことで何とか持ちこたえられるが、後ろと前を敵に挟まれた状態は不利の中の不利だ。
弩砲騎士の援護があれば別だが、彼は現在キャンデロロと戦闘中だ。
(なるほど、猪突猛進のキャンデロロを囮に取り巻きの俺らを先に潰す判断だったか……)
敵への賞賛と、焦りが清祥へ、そして清祥の指示を待つPK達へと募る。
その時だった。
「全部偽者なのに必死になってるのは、やっぱりおかしいよね」
〈召喚術師〉のリーダーへと持ち手が槍の如く長い、巨大な斧が降り下ろされる。
ソレは一撃で彼のHPを削り取ると、再び処刑人の如く大上段に構えられた。
「おかしいから……偽者は、全部、殺す」
小柄な少女の姿をした悪魔が、そこにはいた。
すっかり忘れてましたが、ミカのキャラシートは以下になります。小説に出す許可を下さったかぴばらさんに感謝を。
▼ミカ
http://lhrpg.com/lhz/pc?id=29379
次回、大斧を操る小柄な少女の正体が明らかに。
しかし、ほとんどの女性が小柄だなこの小説……。




