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冒険者登録

 ヴィレジーとエリーザが滞在しているのはデルトリア王国首都ギネガ。

 デルトリアは左程大きな国では無いものの、土壌はそこそこ豊かだ。そして一つ、大きな特徴がある。


 冒険者ギルド本部があるのだ。


 そう、デルトリアは冒険者によって成り立っていると言っても過言ではない。毎年沢山の優秀な冒険者を輩出する冒険者ギルド。依頼者と冒険者の仲介をするだけでなく、新人の育成や冒険者同士のトラブルの解決、モンスターの素材の売買などその仕事は多岐にわたる。

 SSクラスを最高位とし、SそしてA~Fクラスまで区切られている。優秀な者ほど受ける依頼は困難になり、報酬も増える。

 デルトリアは初心者に程良いモンスター―――スライムやゴブリン、コボルト、ラビリンなど、比較的弱い魔物しか居ない為、ギネガは別名『始まりの街』と呼ばれることもある。


「まず、あなた達は最初のFクラスからです。冒険者になる人は、どんな人でも必ずFクラスから始めて頂きます」

 つっけんどんにギルドの受付嬢が説明する。

 よくいるのだ。

己の力を過信し、もっと上のクラスから始めさせて欲しいとごねる冒険者が。そういった輩を説得するには時間が掛かって嫌なのである。

 たしかにFクラスの仕事は、モンスターの討伐どころか、近くの森での薬草探しや人探し、隣町への荷物の配達などが主だ。著名なSSクラス冒険者パーティー――例えば『銀聖の剣』『にゃんにゃんぱーてぃー』『エイヴァラル』などに憧れて冒険者ギルドを訪れた冒険者の卵たちにとって、Fクラスなどやってられない、ということだ。

 ギルドとしては、新人が死のうがどうしようが自己責任でよろしく、と言いたい所だがそうもいかない。そのために規則があるのだ。


「ええ、問題ありません」

「きちんとFクラスから始めさせていただくわ」

 その点、受付嬢が対応した二人はマナーが良かった。不機嫌そうな様子もないし、言葉遣いも丁寧だ。特に青年の方に甘く微笑まれて、不動の心を自慢とする受付嬢も陥落一歩手前の状態だ。


「では、こちらに名前と種族、職業をお願いできますか?」

「あーっと、頼む」

「ええ、いいわよ。抱き上げてちょうだい」

 エリーザの背丈ではカウンターに届かない為、ヴィレジーが腕に抱え上げた状態になる。そんな不安定な体勢でも、エリーザの字は乱れることが無かった。むしろ、その年齢の子供にしては非常に流麗な文字だった。


『名前:エリーザ・V・ゴルノール・ステラ 

 種族:人間

 職業:召喚士               』

『名前:ヴィレジー

 種族:人間

 職業:遊び人               』


 ……どうやら、不備はないようだ。住所や出身、能力の欄は空いているが、必要最低限の事は書き込まれている。

 この二人、一見して兄妹ではないことがわかるが、その場合どういう関係なのだろうか。少し考え、受付嬢は止めた。一々考えてしまっては仕事にならないし、踏み込んではいけない領域もあるのだと身を持って学んでいる。


「問題ありません。では、これで仮登録は完了となります。一か月後、本登録がありますので、忘れず冒険者ギルドにお越しください」

「え?」

「これで登録が出来たのではないのですか?」


 一か月という期間を以て、その人が冒険者という仕事に向いているかどうか見極めるのだ。

 グループの相性、自身の適性、命を懸ける覚悟―――そういったものを培うのに、だいたいそれくらいが目安なのだ。お試し期間、というやつである。


 「その間、クラス昇格試験は受けられませんが、Fクラスの依頼でしたら受けられるので安心してください」


 ヴィレジーとエリーザは小声で話し合う。大丈夫だ、計画に変更は無い。むしろ仮登録ということなら、二人にとっては都合が良い。

 

「ありがとう。分かりやすい説明だったわ」

「ありがとうございます。この後、お茶でもどうですか?」

 ヴィレジーはエリーザに踝を強かに蹴っ飛ばされた。声にならない悶絶に苦しみ蹲る青年を、蔑みの目で見つめる幼女。そういう趣味を持つ者なら正に眼福だっただろう。


「すみません、仕事がありますので」

 そういう趣味を持たない受付嬢はその様子を微笑ましく見守りながら、きっぱりと断った。そうして気持ちを切り替えて、次の冒険者志望者達への説明を始めた。



「痛ってぇな、おい」

「フン、あんな女をお茶に誘うなんてどうかしてるわ。もうちょっと金になりそうな女を捕まえなさいよ」

 受付所を離れると、口調を元に戻したヴィレジーが愚痴る。それに辛辣にエリーザが答えた。言っている内容も中々に鬼畜である。

「彼女は割と美人だった」

「美人より宿屋の女将さんを口説くのね。もしかしたら宿代が無料になるかもしれないわ」

「俺は熟女よりは若い子が好きなんだよ」

「一番好きなのは?」

「エリーザ」

「あら、わかってるじゃない。でもお金は大事よ」

「ケチケチすんなよなぁ。これからがっぽがっぽ稼ぐんだしぃ?」

「ふふ、そうね」

 そうして二人は、依頼の掲示板を眺めはじめた。






いつだって感想全裸待機

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