第二話
海華と世間話に花を咲かせていた惣太郎は、店へ戻らねばならぬと足早に長屋を後にする。
茶道具の後片付けをする海華は、心に引っ掛かっていた疑問がすっかり解決したからか、先程とは一転晴れやかな表情で土間に立っていた。
そんな彼女の背中を横目で見つつ、作業を再開した朱王。
白木を削る心地好い音と、室内に広がる木々の香りは、平々凡々な日々の訪れを示しているようだ。
急須や湯飲みを洗い終えた海華は、濡れた手を手拭いで拭き吹き室内へと上がり、鏡台の前へ腰を下ろす。
やおら鏡の蓋と鏡台の引き出しを開けた彼女が次に手にした物は、白粉の入った木製の小さな入れ物と、まだ真新しいであろう、貝殻で出来た紅入れだった。
歯の抜けた櫛で丁寧に髪を梳いた後、顔全体に白粉をはたき、薄く紅を塗る。
乾いた空気に広がる白粉の匂い、朱王の眉間に小さな皺が寄った。
「よし、出来た! 兄様ぁ……あたし、もう一回出てくるわ」
やたらに笑顔を振り撒いて、海華は人形の収まった木箱へ手を伸ばす。
しかし、一瞬早く横から伸びた朱王の手が、木箱を更に壁際へと押しやってしまった。
「── 人形なんざ邪魔になるだけだろ?」
「やだ……ばれちゃった?」
じろ、と横目で睨み付けられ、海華の頬が引き攣る。
ふん、と鼻で返事をする朱王は再び作業へ向き直った。
「── 行っても、いい?」
「駄目なら駄目とはっきり言っている。あまり遅くなるなよ」
『ありがとう!』明るく弾けた歓声を響かせたと同時、海華は脱兎の如く部屋を飛び出していく。
爽やかな木の香りの中に、白粉の残り香が揺蕩う空間。
化粧には興味すらなかった海華から、以前は絶対嗅ぐ事のなかった香りに朱王は小さな溜め息を漏らす。
「妙に色気付きやがって。……ばれないとでも思ってたのか」
苛立ち半分、呆れ半分の呟きが朱王からこぼれる。 変に寂しげな表情を見せる彼の呟きに、答えてくれる者はいなかった……。
さて、その頃、長屋から少しばかり離れた小さな稲荷の前にそわそわと落ち着かない様子の若い男が一人、立っていた。
大きな通りから通り一つ奥まった場所にあるそこは、周りを勢いよく生い茂る雑草や笹に囲まれて人目につきにくく、ここに社がある事すら知らない者も多い。
遠くから聞こえる喧騒に耳をそばだて、茂る雑草の向こうに幾度も目をやる、癖のある髪を後ろで束ねた男。
と、不意に笹藪がざわざわと派手にざわめき、目にも鮮やかな朱の布地が男の視界いっぱいに揺れる。
「海華!」
「 志狼さんいたいた! 待たせてごめんなさいね」
裾についた土埃を払いつつ、駆け寄る海華は、長屋で見せたのと同様、弾ける笑顔を自分を待っていた男、志狼へ向けた。
「いや、俺も今来たばっかりなんだ。── それよりお前、木箱はどうした?」
海華の背中を覗き込み、志狼が不思議そうに尋ねる。
仕事にかこつけ会瀬を楽しむようになったのは、ここ最近のこと。
いつも木箱を背負う海華が手ぶらなのは初めてだ。 志狼の問いに、海華は悪戯っぽく笑い、ぺろりと赤い舌を覗かせる。
「兄様にね、ばれちゃったみたい。木箱持って行っても、邪魔だろ、って」
「そうか、やっぱり知られちまったか……。 よく出てこられたな、大丈夫か?」
いくらよく知る仲とはいえ、海華を連れ出しているのを知られてしまっては……自分だけではなく海華も叱られるのではないか。
そんな不安を抱く志狼を安心させるかのように、海華は彼の背中をぽん、と軽く叩いた。
「大丈夫よ。ちゃんとここにこられたんだから。兄様が許してくれてる証拠よ。そうじゃなかったら、あたし今頃縄で括られて土間に転がってるわ」
けらけらと笑いながらそう言いのける海華を見ていると、自然に不安が消えていく。
やがて、二人は社を抜け、人でごった返す表通りへと消えていった。
「へぇ、育てられない赤ん坊を引き取って、か……」
茶菓として頼んだ饅頭を頬張り志狼は目の前を揺らぎ消えていく湯気を目で追う。
彼の正面に腰かけていた海華は、湯飲みにほんの少し残った茶を飲み下し、指先で唇を拭った。
取り敢えず座って話そうと暖簾をくぐった茶店は、二人以外客がおらず、白髪を結い上げた店番の老婆も、二人へ茶と菓子を運び終わると、奥でうとうとと船を漕いでいた。
水入らずで話しをするに、これ以上ない好条件なのだ。
「捨てる神あれば拾う神あり、ってさ。よく言ったものよね」
しみじみと言いながら饅頭をつつく海華。
しかし、志狼は鼻の上に皺を寄せどこか胡散臭げな表情を見せ、無言のままに腕を組む。
それにいち速く気付いた海華は飯台に肘をつき、ちょこんと小首を傾げた。
「どうしたのよ志狼さん、せっかくいい話しを聞かせてあげたのに、そんな怖い顔しちゃってさ」
「別に……ただよく出来た、いや、出来すぎた話しだと思ってよ。お涙頂戴物の『いい話し』ってのは、ハナッから信用できねぇ性なんだ」
ぼりぼり頭を掻きながら低い声でこぼす志狼を横目で見遣り、饅頭をかじる海華の口角が微かにつり上がる。
「つまり、ひねくれ者ってことかしら?」
「そう言われりゃあ、そうだろうな。でもよ海華、生き馬の目を抜く江戸でだぞ、そんな上手い話しがあると思うか? 赤ん坊だって、育てるにはそれなりの金がかかるんだ」
自分と同じく飯台に肘をつき、身を屈めてじっとこちらを見詰めてくる志狼。
食べ掛けの饅頭を皿に置き、無意識に眉根を寄せつつ海華は小さく呻く。
確かに、出来すぎていると言われればそうだ。
志狼の言葉通り、赤ん坊は霞を食べては育たない。
ましてや、引き取っているのは絹田屋の赤ん坊一人だけではないのだ。
赤ん坊の面倒は誰がみているのか、そして養育料はどう工面しているのか……。
疑問が更に疑問を生み、眉間の皺がますます深くなる。
厳しい表情を崩さないままその場に固まる海華の額を、やおら志狼がチョン、と指先でつついた。
「いつまでも苦虫噛み潰したような面してねぇでよ、気になるなら確かめてみたらどうだ?」
「確かめるって、どうやって?」
丸い目を更に真ん丸に変えた海華にそう尋ねられ、志狼は意味深な笑みを浮かべる。
「どうやって? 簡単じゃねぇか。尼がいるってぇ寺に行ってみりゃあいいんだよ」
志狼の口から紡がれた単純な、それでいて大胆な答えに、海華は思わず絶句した。
「でも、いいの? 兄様は、余り余計なことに首突っ込むな、って言ってたし……」
「馬鹿、何も寺に押し入ろうってんじゃねぇ。ただ外を歩いて様子を窺うだけだ。鬼や蛇が出てくる訳じゃあるまいし。……まぁ、何かあっても俺がついてる。安心しろ」
『ちゃんと家には返してやる』そう付け加え、志狼は苦笑する海華の額を、再びチョン、とつついた。
思い立ったが吉日、とばかりに二人はその足で中野、正願寺へと向かった。
そこは人家からかなり離れた場所にあり、周りは芒が一面に生い茂る原っぱだ。
古く苔むした石門の中、重厚な瓦屋根を乗せた本殿はひっそりと静まり返り、煤けた白壁はあちこちに大小のひびが走っている。
寺の裏手には墓地が広がり朽ち果て傾いた卒塔婆の上で、闇の色をした烏が羽を休めていた。
一見廃寺かと思われる程に荒れたそこ、近々に張り替えられたのだろう真っ白な障子紙だけが、そこに人が住んでいること示していた。
「ねぇ、本当にここなの? やたらと寂しいところじゃない」
葉が全て散り落ち、細い枝ばかりとなった梅の木の陰で海華が怪訝そうな面持ちで呟く。
その隣で石門に凭れていた志狼は本殿へちらりと視線を投げた。
「間違いじゃねぇさ。門の入口見てみろ、『正願持』ってちゃんと掘り込まれてるじゃねぇか。── それにしても、妙っちゃあ妙だな」
海華同様、顔をしかめる志狼は門から身を離して寺を仰ぎ見る。
何が妙なのか、聞くまでもなく海華にはわかっていた。
ほぼ同時に、二人は顔を見合わせる。
「── どうしてこんなに静かなの?」
「さぁな? 泣きも喚きもしねぇ、聞き分けのいい餓鬼ばっかりなんだろうよ」
茶化すような台詞を吐き、足元の小石を蹴り飛ばす志狼。
そんな彼を横目で睨みつつ、背伸びをしながら門の奥を覗き混もうと海華が身を乗り出した刹那、電光石火の勢いで横から伸びた志狼の手が、着物の襟首を鷲掴む。
悲鳴を上げる暇も与えられぬまま、巨大な石門の後ろへ引き摺り込まれて、全身を駆け抜ける鈍い衝撃に視界がぼやけた。
「── っ! なにするの……」
「しっ! 静かにしろ、誰か来る!」
眥をつり上げ怒りを顕に自分を睨み付ける海華へ、真剣そのものの表情を見せる志狼は、己が唇に人差し指を押し当てる。
そんな彼の勢いに圧倒されたのか、怒りの叫びをぐっと飲み込みカクカクと何度も無言で頷く海華の耳に、ヒィヒィと掠れるようなか細い泣き声が吹き抜ける秋の風に乗って届く。
石門の裏でぴたりと身を寄せ合う二人は、その泣き声が聞こえた方角へ顔を向ける。
「今の、聞こえた?」
「ああ、聞いた。── おい、あれ見てみろ」
そう耳元で囁かれ、志狼が見据える方へ視線をやれば、立ち並ぶ長屋の方向から伸びる一本の道をこちらに向かい歩いてくる人影が目に飛び込んできた。
目を凝らしてよくよく見れば、それは胸に薄汚いぼろ布の塊を抱いた五十ほどの中年女だった。
ろくに手入れもしていないだろう、傷みきったばさばさの髪を乱雑に結い上げ、血色の悪い細面の顔には、泥濘に刻まれた轍の如き深い皺があちこちに走る。
垢に汚れた継ぎ接ぎの着物が埃を舞い上げる風に、ばたばたと乾いた音を立てた。
肉に埋もれた小さな瞳が放つ肉食獣にも似 た鋭く冷たい光。
それに気付いた瞬間、海華の背中に冷たい物が流れる。
息を潜め、身を縮める二人の横を、足音も立てず女が通り過ぎていく。
女が抱えていたぼろ布がモゾリと蠢き、オギャァ、ッ! と甲高い泣き声が辺りに響いた途端、海華の手は志狼の着物、ちょうど胸元の辺りをきつくきつく握り締めた。
『赤ちゃんだ……』 聞こえるか聞こえないかの微かな声が海華の唇からこぼれる。
異様な雰囲気を醸し出す赤ん坊連れの女が寺の中へ消えたのを確かめた後、二人は隠れていた石門から離れ、寺を見上げた。
「今の人、誰かしら? 赤ちゃんの親って感じじゃなかったわね」
「婆ぁさんか親戚の人間か……いずれにしても、あの赤ん坊をここに預けに来たんだろうぜ」
海華に鷲掴まれ、皺の寄った胸元を指先で直し志狼が口を開く。
不気味なほどに静かな子預けの寺と得たい知れない女、この不自然な状況を前に海華が黙って帰るはずなどなかった。
「ねぇ志狼さん、ほんの少しでいいから、中へ入ってみない? また天井裏でも、なんだったら縁の下でもいいから。ねぇ、駄目?」
「駄目だ。危ねぇ真似はさせられねぇ。もしバレてみろ、朱王さんにどやされるぜ」
首を左右に振る志狼ににべもなく断られ、河豚よろしくパンパンに頬を膨らませて不服を露にする海華。
じっと寺を睨む彼女の肩を叩きながら、志狼は寺とは反対、女が来た道の向こうへ視線を投げる。
「そんな危ない橋渡らなくてもよ、もっと簡単な手があるぜ」
にや、と意味ありげに笑う志狼へ向かい、膨れっ面を崩さないまま海華は小首を傾げて見せた。
「簡単な手って、なんなの?」
「すぐにわかるさ。もう埃まみれの鼠にゃなりたくねぇだろ?」
『こっち来て待ってろ』そう言いながら、志狼は再び海華の手を引き石門の影に身を隠す。
二人の姿が寺の前から消えたのはそれからすぐ後のことだった。
「── 簡単な手って、つまりこういう事だったのね」
とある朽ちかけたあばら家の前に立ちながら、海華は独り言のようにぽつりと呟く。
『簡単だったろ?』といささか得意げに言いながら、志狼がシミだらけの板塀から顔を覗かせた。
赤ん坊の消えていった寺を後に、二人が向かったのは……正確に言えば女の後をつけ、辿り着いたは薬研堀。
沢山の商家や将軍家の御殿医が住まう武家屋敷がずらりと並ぶ、江戸の中でも活気に溢れた場所だ。
しかし、どの世界にも光があれば影がある。
高名な御殿医や腕の良い町医者が数多く住むその陰に、身を寄せ合うようにして医者と名乗るには未熟すぎる藪医者や闇医者、そして堕胎を生業とする産婆が、これまた数えきれぬほど住み着いているのだ。
裏路地を幾つも抜けた場所、日の光もろくに届かぬ貧乏長屋やあばら家が軒を連ねる一角に、追ってきた女は消えて行った。
足音を忍ばせ、気配を消してその後を追う二人の目の前で、女は傾きかけ、今にも崩れ落ちてしまいそうな一軒の小屋へと入って行ったのだ。
日陰独特の、水が腐ったような悪臭と、むせかえる黴の臭いに顔をしかめつつ、二人は小屋の入口にぶら下げられた一枚の木切れを凝視する。
それは黒く変色した板に、ごちゃごちゃした文字が書かれた、いわゆる看板だった。
書かれた文字を何とか読み取りたい、しかし自分達の存在を気付かれたくない……。
気配を消しつつ、いっぱいに首を伸ばした時だった。
二人の横、土台も見事に傾いた廃屋の戸口が、がたがたと騒々しい悲鳴を上げる。
弾かれたように真横を振り向いた志狼、表情を強張らせた海華の前でガラリと戸口が開き、垢まみれの真っ黒な顔が突き出される。
「お前さんがたぁ、そこでなぁにやってるね?」
やけに間延びした嗄れ声が悪臭漂う空気に溶ける。
黒い顔を持ち、折り畳まれたかと思う程に背中の曲がった老婆は目の前で固まり立ち尽くす二人を交互に見遣り、がたがたの乱杭歯を覗かせて、顔いっぱいに、にたりと不気味な笑みを張り付かせた。
「あんた方ぁ、薬が欲しいのかね? それとも流したいクチかねぇ?」
にやにやと嫌な笑み顔一面に張り付かせ、せむしの老婆が小首を傾げる。
何を言われているのか理解できず引き攣った顔を見合わせる二人を前に、泥にまみれた草履を履いた足を、苛立たしげに軽く地面を叩いた。
「何をぼやっとしとるんだ、兄さん、あんたぁこの娘といい仲なんだろが。孕ます前かね、それとも、もう孕ましちまったのかねぇ?」
土気色のひび割れた唇から飛び出すとんでもない台詞。
頭をぶん殴られたような衝撃を受け、目を白黒させる志狼を他所に海華の腹をぞろぞろ撫でながら、老婆は呆気にとられた様子で立ち尽くす海華を見上げる。
「なんだい、まだちっとも腹が出てないじゃないか。これくらいなら、流すのはぁ簡単だよお姉さん、隣に行く気ぃだったなら止めときな。場数はあたしの方が踏んでるからねぇ、痛くも痒くもなく流してあげるよぉ」
にたぁ、と真っ赤な口を笑みの形に歪める老婆。
髪の生え際まで赤くし、こめかみに青筋を浮かべる志狼が、怒りと羞恥に目を剥いた。
「いい加減にしねぇか糞婆っ! 俺はな、まだこいつに指一本……」
「ちょっと止めてよ、周りに聞こえるじゃないの!」
今にも老婆に掴みかかりそうな勢いの志狼を必死で押さえ、ぽかんと口を半開きにさせる老婆へ愛想笑いを向けた海華は、おもむろに懐から財布を引っ張り出し小銭を引っ掴むと、垢にまみれた老婆の手をとり、半ば強引に握らせる。
「怒鳴ってごめんなさいね、この人血の気が多くって……。お隣さん腕がいいって聞いて来たんだけどさ、実際どうなのかしら?」
老婆の背丈に合わせて身を屈め、声を潜めて尋ねる海華に、手中の銭を慌てて懐に押し込んだ老婆は所々歯の抜けた口を蠢かす。
どぶを思い起こさせる口臭と、汗のすえた臭いが鼻をついた。
「隣が腕いいって? 冗談じゃないさ。二、三年前に流れてきた他所者だよ? 前はちまちまと子堕ろしをやってたけどさ。……あの生臭が来るようになってから、なんだかおかしいんだ」
『あの生臭』忌々しげに吐き捨てられた台詞に、海華の口元が微かに緩む。
「生臭ってさ、もしかして正願寺の尼さんかしら?」
「ああ そうさ。お客に子堕ろしを止めさせろ、産まれた赤ん坊は買い取るから、ってさ。ふざけた話をあたしにしてったよ。隣なんか、両の指で足りないくらいの赤ん坊を売り飛ばしてるさね」
汚い物を見るような眼差しを隣に投げる老婆。
腕組みしながら彼女を見下ろしていた志狼の顔に驚愕の表情が浮かぶ。
「赤ん坊を買い、取る? 引き取るじゃねぇのか?」
「当たり前さ。あんたね、誰がタダでそんな面倒事引き受けるかい。赤ん坊が腹から出るにゃ十月十日はかかる、流すのは一日で終わり、どっちが簡単か、馬鹿でもわかるだろ? 世の中にゃあね、産まれて来ない方が幸せな赤ん坊が、山といるんだよ」
ふん、と小馬鹿にしたように鼻を鳴らす老婆に、志狼がまたもや眉を逆立てる。
そんな彼を何とかかんとか宥めすかし、海華は老婆に礼を述べると未だ怒りが治まらない志狼の腕を無理矢理引っ張り、その場を後にする。
『産まれて来ない方が幸せな赤ん坊が山といる』
老婆が放ったその台詞が、海華の頭の中でいつまでもいつまでも木霊していた……。




