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傀儡奇伝(くぐつきでん)  作者: 黒崎 海
第三十八章 恋に焦がれて鳴く蝉よりも…
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第三話

 志狼の手に握られた鉛色にびいろの包丁が、ひゅっ! と空気を切り裂く唸りを上げる。

だん! と、まな板が重い悲鳴を上げたと同時、純 白の大根が真っ二つに割れた。


 夕刻迫る桐野家の台所、かまどでは釜が白い湯気を吹き上げ、熱湯が沸く鉄鍋の近くには夕餉のおかずとなるだろう豆腐や野菜、そして固い鱗に覆われた体を煌めかす黒鯛が、包丁を振るう志狼の後ろ姿を光の無い目で見詰めている。


 いつもなら手早く済ませられる夕餉の支度も、今日はまだ味噌汁一品すら満足にできていない。

いつもより乱暴な包丁さばきと、いつもより目につく無駄な動きが一因だろう。

しかし、最大の原因は昼間の一件にあることは間違いない。


 「なんで俺が海華なんか、っ! 馬鹿抜かすのも、大概にしろ!」


 ぶつぶつ悪態をつきながら大根を千切りにするが、自分の仕事とは思えない、幅も長さも見事ばらばらな代物がまな板に広がる。

苛立たしげに舌打ちし、包丁を放り出した志狼は、腰に絞めていた紺色の前掛けを乱暴に引き剥がし台所に立ち尽くす。


 ふと横を見れば綺麗に水洗いされ、笊に並べられた茄子が目に入り、無意識に頭の中に海華の顔が浮かんだ。


 「……俺、なにやってんだろうな……」


 弱々しい呟きが、湿気を含んだ空気に消える。

勿論、それに答えてくれる者など誰一人としていないのだ。

はぁぁ、と胸の奥から深い溜め息を吐きながら、再び前掛けを絞め直す志狼の項垂れた影が、土間へ長く伸びていった。


 桐野と二人だけの夕餉の席、溜め息をつきつき作った黒鯛の焼き物に刻んだ茗荷をたっぷり乗せた冷奴、大根と油揚げの味噌汁に純白の白飯と、品数は決して多くはない。


 たいして空いてもいない胃袋に無理矢理豆腐を押し込む志狼、その上座では、羽織袴から夏物の着流しに着替えた桐野が、綺麗に焦げ目の付いた魚に箸を入れている最中だ。


 「── 旦那様、窺いたい事があるのですが、よろしいでしょうか?」


 「ん? なんだ?」


 魚をつつく手を止め、桐野が顔を上げる。

膳にある箸置きに箸を揃え、志狼は桐野と正面から向かい合うよう体勢を変えた。


 「轟様について、窺いたいのです。その…… 轟様の御実弟の春勝様と、海華の事で……」


 「春勝殿と海華……お前、それをどこで聞いたのだ?」


 恐る恐るといった様子で話し出す志狼へ、驚いたように目を見開いた桐野は、危うく手にしていた箸を取り落としそうになる。

そんな主へ戸惑いがちに視線をさ迷わせながら、志狼は昼間目にした辻での様子を語り出した。


 「……そうか、そんな事があったのか。いや、そう言われてみれば昨日、修一郎がやたら機嫌が良かったのはそのせいか。きっと、政勝と上手く話しがついたのだろう」


 そうか、そうかと何度も頷き、味噌汁を啜る桐野。 どうやら何も知らなかったのは志狼だけのようだ。


 「旦那様、上手くいったと言うのはその…… もう、海華と春勝様縁談が整ったと考えて……」


 酷く沈んだ声色を出す志狼をチラリと見遣りつつ、桐野は味噌汁茶碗を持ったまま軽く首を傾げて見せる。


 「それにはまだ早いだろう。お互い相手を知る時間も少しは必要だ。後は二人に任せるしかない。こっちが無理強いする訳にもいかぬ。 ……なぁ志狼。お前、海華の事がそんなに気になるか?」


 にや、と白い歯を覗かせる桐野。

突然の問い掛けに、千切れんばかりに首を横に振りたくり、口をぱくつかせる志狼は、焦りのためか他の理由があるのか、耳まで真っ赤に染まっていた。


 「い、え! 私は別に……! ただ、ほんの少し気になりはしました、でも!」


 「わかったわかった、そう隠さずとも良い。……今日の味噌汁がなぜにこうも塩辛いか、理由がよくわかったわ」


 意味深な笑みを残しつつ、再び味噌汁を啜る桐野へ何も言い返せないまま、志狼は顔を紅潮させたまま、がくりと肩を落としていた。







 その翌日、町中にある一軒の茶屋、店が一番込み合う時間帯に、奥まった人目につかぬ席に背中を丸め、何やらひそひそと話し込む男三人の姿があった。 入り口に背中を向けて座るは、二人の黒羽織を纏う侍二人。

そして飯台を挟み座しているのは長い黒髪を射し込む陽光に煌めかせる、一見女と見間違う顔立ちをした、一人の男だ。


 出された茶菓には一切手を付けず、三人は面突き合わせ難しい表情を崩さない。

中でも、眉間に山脈の如き深い皺を刻み込む熊のような体躯をした侍、修一郎が、丸太に似た腕をドンと飯台へ乗せ、頬杖をついた。


 「なぜ今に限ってそんな話しが出てくる? 桐野、志狼が海華に気があるというのは、間違いないのか?」


 「直接、好きだの何だととは聞いていない。 あいつの事だ、聞いてもたぶん言わんだろう。 だが、態度で粗方わかる。あいつ、海華殿の事をきっと好いているぞ」


 修一郎の隣に座る桐野は、薄い手のひらで湯飲みを転がしつつ、ちらちらと自分の斜め向かいに座る男、朱王に視線を送る。


 「とんとん拍子に事が進んだと喜んでいた矢先だ。桐野、お前志狼に少し話しを……」


 「話し? 修一郎、お前まさか海華殿を諦めろ と、儂から話せと申すのか? 志狼は家族も同然だ。そんな酷い真似はできぬ。……大体春勝殿がよくて志狼は駄目だとはどういった理由だ?」


 じりじり眉をつり上げる桐野に『そうは言っておらん』と短く吐き捨てる修一郎。

多忙な公務を抜け出してまでここに出てきた二人の間が険悪な空気に包まれるのを、今まで無言を貫いている朱王ははっきりと感じていた。


 「よいか、修一郎。確かに志狼は春勝殿と身分は雲泥の差がある。愛想が良い訳でもないし、金がある訳でもない。だがな、あれは頼りになる男だぞ。誰と一緒にさせても恥ずかしくはない、長年共に暮らす儂が言っているのだ。間違いはないぞ」


 「それはそうだろうよ。でなければお前が十年以上も手元に置いておく筈がない。……で、朱王よ、お前はどう思うのだ?」


 突然に話しを振られ、ギクリと身体を跳ねさせる朱王は、額ににじむ汗を手の甲で拭いつつ、修一郎と桐野へ交互に視線を向けた。


 「どう……と、申しますと……?」


 「だから! 春勝と志狼、どちらがいいのかと聞いている!」


 次第に声量が大きくなる修一郎。

店内にいる者の視線がこちらに突き刺さるのを感じたのか、桐野は彼を宥めるように、軽くその袖を引く。


 どちらがいいか、そう詰め寄られ、頭を抱えて本格的に朱王は悩みだす。

身分や金銭的な事だけを考えるなら断然、春勝が勝る。

しかし、桐野の前でそう答えることなど出来ないし、何より志狼も海華の相手として申し分ない、そう朱王は思っていたのだ。


 「修一郎様、いくら私達がここで悩んでいても最終的に決めるのは海華です。ですから……」


 「ならば今夜、海華を連れて屋敷にこい。桐野、お前は志狼を連れてだ。これ以上話しが拗れれば、必ず厄介な事になる」


 むっつりと、しかめっ面を向ける修一郎へそろそろと顔を上げながら、朱王は『それは……』と、何やら口ごもる。


 「今夜は……生憎、海華は所用がありまして……その、春勝様と夜に出掛けると……」


 『重ね重ね間が悪い……』

そうぼそりと呟き、飯台に頬杖をつく桐野の横で、修一郎はぽかんと口を半開きにしたまま、再び俯いてし まった朱王を凝視していた……。








 朱王達三人が茶屋で面突き合わせて悩み抜いている、ちょうどその頃、桐野宅の正門を急ぎ足で潜り抜ける海華の姿があった。


 天高く登った太陽は容赦なく強烈な陽射しを地上へ降り注がせ、息を切らす海華も煌めく汗にまみれている。

色とりどりの花々が風に花弁を揺らす中庭を駆け抜け、玄関ではなく縁側へ向かう彼女の視線の先にいた志狼は、紺色の作務衣を纏って縁側に腰掛け、平笊に山となったえんどう豆の筋取りに精を出していた。


 「お邪魔しまーす! あぁ、志狼さん!」


 不意に名前を呼ばれ、びくりと身体を跳ねさせた志狼の手から、若草色のさやが地面へ転がる。

顔を上げれば、にこやかな笑みを浮かべる海華と視線がかち合った。


 「あ……お前か」


 「なによ、化け物見たような顔しちゃってさ。失礼しちゃうわ」


 言葉とは裏腹、輝くようなと形容するのがぴったりな笑顔を見せる海華は、志狼の足元に転がる豆を拾い上げ、笊へポンと放る。

夏の風と戯れる黒髪から、男所帯には縁のない、香の甘い香りが漂った。


 「いきなりごめんなさいね、この間はお野菜ありがとう。これ、少しだけど食べて」


 そう言いつつ、持参した大人の頭ほどもあるだろうか、丸い風呂敷包みを差し出す海華。

それを受け取り早速包みを開けば、中には深緑色をしたごつごつと厳つい体を持つ、大きな南瓜が姿を現した。


 「へぇ、こりゃ立派だな。煮付けか、それとも天ぷらか……」


 「あたしも同じの買ってね、昨日煮付けにしたら、甘くて美味しかったわよ」


 役目を終えた風呂敷をたたみ、袂にしまう海華。 ずしりと重い南瓜を胡座をかいた足の上に抱え、志狼は豆を入れていた平笊を奥へ押しやった。


 「座れよ。今、茶でもいれるから」


 「あ、ごめんなさい、あたしちょっと用事があって……すぐ戻らなくちゃならないの」


 申し訳なさそうにそう告げられてしまえば、無理に引き留めることなど出来ない。

そうか、と答えた志狼は、落胆の色を隠しきれずその場で俯いてしまった。


 「用事……じゃ、仕方ねぇな。……それよりお前、今日はまた随分ご機嫌じゃないか?」


 何気無しに志狼の口からこぼれた台詞。

その途端、海華の紅も塗らない唇が三日月形につり上がる。


 「あら、わかる? 今日ね、春勝様と蛍を見に行くの」


 「何だってっ!? ほた、蛍見に行くって…… 夜か!?」


 「当たり前よ。昼間に蛍なんか見たって、面白くも楽しくもないわ」


 すっとんきょうな叫びを上げて縁側から飛び降り、その場に立ち尽くす志狼に、海華は不思議な物でも見るように小首を傾げる。

質問自体的が外れたものだが、その事すら、今の志狼は気付いていなかった。


 「場所は? どこに行くんだ?」


 「ここからそんなに離れちゃいないわ。菖蒲ヶ池よ。あそこは蛍が凄いって聞いてたけど一回も行った事無かったのよね。それを話したら、春勝様が一緒に行かないか、って」


 ここを訪れた時と変わらぬ満面の笑みを見せる海華を前に、志狼はただただ口をパクつかせるしかなかった。

夜の帳が降りた池の側で、いい年をした男女が蛍見物をする。 その後何があるのかなど、絶対に考えたくない。


 『志狼さんも、一度行ってみたらいいわ』

そんな残酷すぎる一言を残し、踵を返した海華は、夏の香りを引き連れ、唖然呆然としたままの志狼の前を、軽やかな足取りで走り去って行った……。








 無慈悲な夜が世界を闇で埋め尽くす。

桐野家のいつもと同じ静かな夕餉はいつもとは全く異なる沈みきった空気の中、淡々と進められていた。


 中に芯の残る白米に、塩辛さも出汁の旨味も無い豆の味噌汁、面取りもされず、半分煮崩れた南瓜の煮付けは、舌が痺れるくらいに甘ったるい。

挙げ句の果てには、最後まで切られず薄皮一枚で繋がる沢庵と、いつもの志狼からは考えられない酷い料理が膳に並ぶ。


 繋がり合う沢庵を一枚一枚箸で切り分けながら、桐野は小さな溜め息をつきつつ下座に座る志狼に視線を投げた。


 家事に関して意見はするが文句は言わない桐野だが、これはさすがに酷すぎる。

一言言わねば、と考えたのだが、目の前ですっかり意気消沈し、口を付けるでもない味噌汁椀を持ったまま虚ろな目付きで、ぼぅっと畳のある一点を見詰めている志狼を前にその気は雲散霧消した。


 桐野が帰宅した時には既に、志狼の様子はおかしかったのだ。

何をするでもなく、ぼんやりと台所に立ち尽くす志狼に何があったか声を掛けると、帰った答えは『海華が来ました』その一言だけ。

しかし、昼間に朱王から話を聞いていた桐野には、志狼がなぜ意気消沈しているのか、それを知るには充分たる答えだった。


 共に同じ屋根の下で暮らし始めて十余年、これほどまでに意気消沈した志狼の姿を見るのは初めてだ。 恋慕の情というものは、人をこれほどまでに変えてしまうものなのか、そう心中で一人ごつ桐野は、ふとある事を思い出し、手にしていた箸を箸置きへ置いた。


 「恋に焦がれて鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす……か。よく言ったものだ」


 ぽつりとこぼれた桐野の一言に志狼の瞳が小さく揺れる。

ゆっくりとこちらを振り向いた彼に桐野は微かな微笑みを投げた。


 「お前、今の都々どどいつの意味を知っているか?『好きだ好きだと始終うるさく言う者よりも、蛍のように思いを心に秘めている者の方が、思いが切実だ』と、まぁそんな意味だ。お前は差し詰め……蛍のようだな?」


 「── いくら誠実だとしても、思いが叶わぬ事もあるのでしょうか……?」


 桐野の口から答えが聞きたくて、志狼はじっと彼の顔を見詰める。

全ては時の運なのか?足掻いてももがいても、どうにもならぬ事があるのだろうか……? 穴の開くほどに自分を凝視する志狼へ、桐野は表情一つ変えずに、その薄い唇を開く。


 『残念だが、儂らは蛍ではない。ただの人だ。人には言葉にせねば伝わらぬ事もある。それをせずして思い伝わらぬと嘆くのは、ただ逃げているだけだ』と。








 湿気を含んだ重たい夜が身体中に絡み付く。

桐野邸から歩いてもそう時間の掛からぬ菖蒲ヶ池までの暗い道を、疾風の如く駆け抜ける志狼の姿があった。


 日頃なら別段遠いとも思わない場所。

しかし、今は千里の道のりに感じるのはなぜだろう? 満月が顔を出さなければ、その暗さのあまり満足に足も進めないだろう夜道へ、地を蹴る乾いた下駄の音が規則正しく響き、そして宙に溶けていく。


 青葉若葉を繁らせる木々が鬱蒼と生い茂る場所、目にしみるほどの深い緑に囲まれた場所に 菖蒲ヶ池はあった。

地から涌き出る清水が流れる、静かな静かな場所である。

蛍の時期でもなければ、訪れる人もいないだろう。


 夜更かし蝉の眠たげな羽音と、夜露に濡れた青草を揺らし、踏み締める志狼の足音だけが響く薄暗い森の中。

忍の血が流れるからだろうか、夜目の効く彼に提灯の灯りは必要ない。


 闇の帳を切り裂く月光の帯。

その合間を縫うように、山吹色とも青緑ともつかぬ、小さな小さな光の玉が宙を舞う。

熱を感じさせない、微かな命の瞬きと、薄絹を思わせる月の光。

幽玄を具現化したその風景の中に志狼は必死に視線を走らせた。


 細く引き締まった体にまとわりつくよう飛び交う蛍も、最早彼の視界には入っていない。

求めているのは細やかな光ではない。

たった一人の女なのだ。


 下草に溜まる夜露に足元を濡らし、志狼がある一本の大木の陰を覗き込んだ瞬間、小波さざなみの立つ池の畔に、ぼんやりと浮かぶ橙色の灯りが志狼の目に飛び込む。

温かく柔らかなその灯りを取り囲むように、数え切れぬ程の蛍が闇に瞬いていたのだ。


 志狼の薄い唇が、無意識に『いた』と言葉を紡ぎ出す。

きっとそこにいるであろう女の名を叫びつつ、彼の足が青草を蹴ったと同時、視線の先にある光の塊が、何かに打ち砕かれたかのように闇の中へとバラバラに飛び散った。


 「し、ろぅ……さん?」


 弾かれたように顔を上げた女は間違いなく海華だ。 新調したばかりなのだろうか、薄い空色に鮮やかな江戸紫で描かれた朝顔柄の浴衣を惑い、水辺ギリギリに覗く大岩にちょこんと腰を下ろした彼女は、まるで信じられないものを見るように目を瞬かせ志狼を仰ぎ見る。

その手には、濃い墨で家紋が描かれた提灯が、しっかりと握られていた。


 「志狼さん、なんで? どうしてここに?」


 「なん、でって……ちょいと通り掛かっただけだ。それよりお前一人っきりで何やってんだ? 春勝様はどこなんだよ?」


 しどろもどろに口ごもりつつ、志狼は辺りを見渡してみるが、自分達の他に人がいる気配など全くない。 暗闇に目を凝らす彼を見詰めていた海華の顔に、微かな微かな悲しみの笑みが浮かんだ。


 「春勝様……先にお帰りになったわ」


 「帰った!? お前置いてきぼりにして、 そりゃねぇだろう!」


 上擦った叫びを上げ、眉を逆立てる志狼の顔が、わき上がる怒りに紅潮する。

月明かりはあれど、今は夜だ。

しかもこんな人気の無い寂しい場所に女一人を置いて帰るなど、正気の沙汰ではない。

力一杯奥歯を噛み締め、固く拳を握り締める志狼の袖口を、海華は慌てて強く引いた。


 「違うの! あたしが……一人で考えたい事があるから、先に帰ってってお願いしたの! ほら、ちゃんと提灯も置いていって下さったんだから」


 片手に握る提灯を掲げ、海華が白い歯を見せる。 そんな彼女の肩に止まる一匹の蛍が、苛立つ志狼の気持ちを反映するかのように、チカチカと強い瞬きを放った。

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