表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傀儡奇伝(くぐつきでん)  作者: 黒崎 海
第三十六章 刺青の陰謀
168/205

第三話

 「お前に何がわかるんだ……」


 怒りの沼から湧き上がる圧し殺した呻き。

そこらの男ならすくみ上がりそうなそれにも臆することなく佇む志狼は、ふ、とどこか寂しげな色を澄んだ瞳に映し出す。


 しかし、激情にかられた朱王には、それすらも気付くことが出来ないでいた。


 「知ったような口を叩くな……お前にわかるか? 膿を絞り出す時の痛みが、傷口に沸いた蛆を焼き捨てた時の気持ちが……お前にわかってたまるかっ!」


 いっそ死んだ方が楽だと思わせる、骨を砕いて神経を焼き付くさんばかりの激痛。

生きながら体が腐り爛れていく恐怖と絶望……。


 それすらもわからない他人に自分のしていることを『やましい』等と言われるなど、朱王には我慢ができなかった。


 「どうせわからないだろうな? わからないか ら、軽々しい口を叩けるんだ。いつもそうだったよ、いつも……他人は俺の傷を面白おかしく眺めるさ。見世物みたいにな」


 どうしようもない悲しみが、苦しさが怒りを裏打ちする。

自分でもよくわからない、複雑に絡まった糸よろしく乱れる心を抱えた朱王の吐き出す罵詈雑言を、志狼は一言の反論もせず、ただ黙って聞いていた。


 「元通りになんてなれない……そんなこと百も承知だ。でも、それでも傷を消したいと思っちゃ駄目なのか? それはやましい考えなのか? お奉行様に知らせない俺は……どうしようもない卑怯な人間なのか!?」


 噴き出す激情と乱れる呼吸に自然と声が大きくなる。

わなわな震える握り拳の中から伝わるのは、手のひらに食い込む爪の痛み。


 自分を斬った者の息子に『傷痕を消す』と伝えれば、相手はどんな顔をするだろう?

どんな気持ちになるだろう?

それを知るのが朱王は怖かった。


 「……わかんねぇよ。あんたがどれだけ痛かったか、苦しかったか……斬られたことの無い俺にはわからねぇ。あんたのしようとしてることも、卑怯だなんて思わねぇ」


 そうぽつりとこぼした志狼は、肩で息をし顔を紅潮させて自分を睨む朱王にを真っ直ぐに見返した。


 「朱王さん、あんた、見てくれが悪いから、その傷を消したいのか? それとも……恥ずかしいから、傷を消したいのか?」


 その台詞を耳にした瞬間、ずきりと傷口が熱 く疼く。

頭の中いっぱいに鳴り響く己の拍動。

滴る汗が、着流しの合わせ目を黒く変色させていった。


 「傷を受けたのが恥ずかしいのか? 他人に後ろ指指されるのが恥ずかしいのか? その傷は、あんたにとって人生の汚点になる物なのか?」


 真剣な声色で発される問い掛けに、朱王は返す言葉が見つからない。

好奇の眼差しを向けられるのは確かに苦痛だ。

だが、恥ずかしいと感じたことは一度たりともない。 この傷は、自分が好き好んで付けたものではないし、自分のせいで出来たものでもないからだ。


 だが、心の深い部分では、無意識のうちに傷を『恥』だと感じていたのかもしれない。

だから必死に背中を隠し、傷を消したいと躍起になって……。


 凍り付いた時の中で、傷は朱王を嘲笑うかのように、鈍い痛みを発し続けていた。


 「もう一度聞く。その傷はあんたにとって恥なのか?」


 曇りのない、真っ直ぐな眼差しが斜陽の中に立ち尽くす朱王を射る。

全ての時が凍りつき、言葉は胸の中でどろどろに凝った異物と化した。


 何も答えられず、呆然と唇を噛み締め立ち尽くす朱王を一瞥した志狼は、ふぅ、と小さく嘆息した後、夕暮れ迫る空を見上げる。


 「恥……なんかじゃない」


 絞り出すように、本当に絞り出すように朱王の唇から零れた一言。

普通なら聞き逃してしまいそうなその一言を、志狼の鼓膜がしっかりと受け止める。


 朱王らしからぬ哀しい、どこか怯えを含んだ瞳を揺らして顔を上げた彼に、志狼はただ、小さく頷いた。


 「この傷は……海華を助けてついた物だ。俺が斬られていなければ、海華は死んでいた……」


 ぽつりぽつりと話しだす朱王の目の前には、はっきりとあの日の夜の、月が姿を消した新月の夜の光景が浮かび上がる。


 鬼と化した養母の顔、振り翳される凶刃、闇をつんざく海華の叫び……。


 「俺は海華を助けた。人に後ろ指をさされる事なんてしていない……!」


 掠れた叫びが乾いた唇から飛び出す。

肩を揺らし、荒い息を吐く朱王を前にした志狼の口角が、初めて微かにつり上がった。


 「やっとその台詞が聞けたぜ。海華もよ、あんたと同じこと言ってた。『兄様はあたしを守ってくれた。背中傷はその証だ。兄様はあたしの誇りだ』ってな」


 ニッ、と白い歯を覗かせる志狼を、朱王は信じられないものを見るような表情で見詰める。

『兄様はあたしの誇り』その一言が、冷たく凍りついた心に痛いほどしみた。


 「あいつが、本当にそんなことを?」


 「ああ、そうだ。ここで嘘ついても仕方ねぇじゃねぇか」


 さもおかしそうにケラケラ笑う志狼は、次の瞬間些かばつが悪そうに頬を掻き、足元に転がる小石をこつんと蹴る。


 黒い影と化した小石は、狙ったように朱王の爪先に当たり、跳ね返った。


 「別によ、海華に焚き付けられたわけじゃねぇんだ。ただ……昼間ちょこっと話しをしただけでさ。あいつもあんたのこと気に掛けてたぜ」


 今までとは打って変わった様子の志狼に、今度は朱王が唇を綻ばせる番だ。

しかし、その笑みは沈みゆく太陽と、やがて世を支配する闇に紛れてゆく。


 「まぁ……これからどうするかは、あんたと海華でよく話し合え。刺青屋は逃げたりしねぇんだからよ」


 「ああ、わかった。すまなかったな。よけいな心配かけさせて」


 「だから、それは海華に言ってやれ。俺、旦那様の夕餉の支度があるから先行くぜ」


 そう言うが早いか、志狼は風の如くに朱王の横を走り抜け、通りを行き交う人混みと薄闇の中に溶けてゆく。

あっと言う間に見えなくなったその後ろ姿にいつまでも目を向けながら、朱王は何かを吹っ切るように、天へ向かって大きく息を吐いた。


 二度と変わることはないだろうある決意を胸に、朱王はとっぷりと日の暮れた道を長屋へと急ぐ。

長屋門を潜った時そこに人影はなく、空っぽの胃袋を刺激するように、飯の焚けた甘い匂いが漂っているだけだ。


 蝋燭の放つ柔らかな光の漏れる自室の前で足を止めた朱王、風雨に曝され、濃茶に白っ茶けた戸口に掛けた己の指先が微かに震えるのを感じながらも、彼の手は一気にガタピシ揺れる戸口を引き開けた。


 途端に彼を襲ったのは、どこか渋いようなそれでいて青臭い湯気の塊。

春雨が草木を濡らす 春の野山そのものの匂い。

いつも嗅ぎ慣れた土埃と古畳の匂いとはかけ離れた新緑の香りに包まれた室内、呆気にとられた朱王の目の前では、きりりと襷掛けをした海華が額に玉の汗を浮かべ、きょとんとした表情でこちらを見詰めている。


 もうもうと立ち込める湯気、立ち尽くした彼女の持つ一抱えもありそうな笊の中には、目にも鮮やかな深緑、色よく湯でられたわらびが山盛りとなっていた。


 「おか……えりなさい」


 「ただ、いま。……どうしたんだ、それは……?」


 「お駒さんにもらったの。知り合いが持ってきたから、お裾分けって。……そんなところに突っ立ってないで、入ったら?」


 重そうに笊を抱えたまま、海華は顎で部屋の奥をちょんちょんと示す。

もっともな彼女の言葉に思わず苦笑いを漏らしつつ、朱王は素直に室内へと上がった。


 春の香りをまき散らす笊の中身を、どこから借りてきたのだろう大皿に盛った海華は手早く襷を外し、困ったような笑みを彼へと向ける。

仄かな明かりに照らされた彼女の顔、細い顎から一滴、煌めく滴が滴った。


 「こんなに一杯貰っても二人じゃ食べきれないわね。桐野様達の所へも持って行くわ。兄様先にご飯食べててね……」


 「いや、まだ飯はいい。飯よりも……まずお前に話したいことがあるんだ」


 彼の定位置、作業机の前に胡坐をかきながら自分を手招きする兄を見て、海華は何度か目を瞬かせつつ、何も言わずに室内へ上がる。

彼女が目の前にちょこんと座ったと同時、朱王は静かに形良い唇を開いた。


 「ここへ来る途中で、志狼に会った。それでな海華……俺、傷を消すのをやめようと……いや、やめることにしたんだ」


 その瞬間、みるみるうちに海華の表情が強張り、膝の上に乗せられた手は関節が白く変わる程に固く固く握りしめられる。

兄と視線を合わせぬまま、幾度か唇を戦慄かせた彼女は、意を決した様子で伏せていた顔を ゆっくりと上げた。


 「ごめんなさい、あたし志狼さんに喋っちゃったの……。志狼さんがなんて言ったかはわからないわ。でもね兄様、本当に……本当に、それでいいのね? 後から後悔なんてしない?」


 今にも泣きだしそうに声を震わせ、すがる目付きでこちらを見詰める海華の顔は紙の如くに真っ白だ。 おろおろと落ち着きなく視線を彷徨わせる彼女を安心させるよう、朱王は『後悔なんてしない』そうきっぱり言い切る。


 「絶対に後悔なんてしない。今は、むしろ傷を消した方が後々悔やむことになると思う。お前が俺を誇りだと思ってくれる限り、傷は消さない」


 「それ……志狼さんから聞いたのね?」


 その台詞を耳にした途端、海華は表情を崩して恥ずかしそうに俯いてしまった。

泣きたいのか、笑いたいのかわからぬその様子、きっと兄には言わないでくれと頼んでいたのだろう。


 『飯を食ったら、もう一度彫龍に行ってくる』そんな朱王の言葉に、海華は何も言わず、しかしどこか嬉しそうにこっくりと頷いた。






 夜の帳が下りた世界に朧月が眠たげな光を降らす。


 緩やかに頬をなでる夜風、月明かりを浴びて艶を放つ黒髪を揺らせ、提灯を片手に彫龍へと向かう朱王の横には、足取りも軽く小気味よい下駄の音を響かせ歩く海華の姿があった。


 『なにもお前がついてこなくてもいいんじゃないか?』出掛けに兄から投げ掛けられたそんな台詞にもめげず彼女がついてきた訳、それは他でもなく『兄がちゃんと断れるかどうかが心配』だからだ。


 泣き落とし、拝み倒しにでもあって上手く丸め込まれでもしたら大事だ。

『あっちが文句でもつけてきたら、あたしがガツンと言い負かしてやる』そう宣言し、半ば無理矢理ついてきた海華だった。


 光の薄絹に包まれた夜道には二人の他に人影はなく、ぼんやりと霞んだ夜空ににからころと二人分の下駄の音が響くばかり。

提灯の明かりを道連れに辿り着いた『彫龍』の戸口は固く閉ざされ、『ごめん下さい』と呼べど、ささくれた戸板を叩けど、中から返事はおろか物音一つ聞こえない。


 「おかしいわねぇ、まだそんなに遅い時間じゃないのに……どこかに出掛けて留守なのかしら?」


 しきりに小首を傾げ、眉間に皺を寄せる海華を横目に、朱王は戸口を叩く手に勢いを付け、更に「ごめん下さい」と呼びかけ続けた。


 二人が店に着いてからどのくらいの時間が経っただろう、不意に奥から地を蹴り付飛ばすかと思う程の荒々しい足音が響き、思わず顔を見合わせる兄妹の目の前で、風雨に曝され変色した戸板が力一杯跳ね飛ばされる。


 『こんな時分に何の用だっ!』酒臭い息を吐き出し、開口一番そう罵声を張り上げたのは、酒精に頬を赤く染めた又造だった。

呆然と自分を見詰めるのが朱王だと気付いた刹那、又造はへらへらと繕うように笑い、無意識だろう、ばりばりと頭を掻きむしる。


 「いや、すまなかったな朱王さん。まさかあんただとは思わなくてよ。この通りだ勘弁してくれ」


 「こちらこそ……夜分に押し掛けて申し訳ない。実は刺青の事で話しがあったんだが……明日改めて出直した方がいいか?」


 刺青、その言葉が朱王の口から零れた途端、又造の顔がみるみるうちに赤く染まるのを朱王の隣で二人のやり取りを耳にしていた海華は見逃さない。

それは明らかに酒精のもたらしたものではなく、狂喜とも呼べる感情から来るものだ。


 「明日だなんてとんでもねぇ、二度手間掛けさせる訳にゃぁいかねぇよ。こんな所で立ち話もないだろう。さぁさ、上がってくんな。そっちのお嬢は……一度風呂屋で見たことがある、確か妹だったか」


 舌の動きも滑らかに又造は兄妹を店内、その更に奥にある自室へと招き入れる。

刺青の下絵が壁一面に張られたそこに、海華は些か落ち着きない様子で兄の隣に座る。

以前朱王の会った女の姿は見えなかった。


 にこやかな、大袈裟とも思える満面の笑みを浮かべて自分の正面に座る又造、どこからどう切り出せば良いのか思案に暮れる朱王は、乾いた唇を一舐めし、『刺青はやめることにした』 そう一言告げる。


 一瞬、又造の顔から笑みが消え去り、ひくりとこめかみが蠢く。

しかし、彼が示した反応はそれだけだった。

自分を問い詰める事もなく、怒りの片鱗すら見せない又造に、二人は些か拍子抜けした様子で再び顔を見合わせていた。


 「そうか、やっぱり刺青は入れられないか、俺としちゃあ残念だが……あんたがそう決めたんじゃ仕方ねえよなあ」


 「散々迷ったんだが……妹とも話し合って決めたんだ。充分な時間をもらったが、すまない。今回の話しは無かったことに……」


 恐縮しきって顔を伏せる朱王と海華にひらひら手を振り、又造は白い歯を覗かせ、やおら腰を浮かす。


 「なに、気にしねぇでくれ。それより、俺な、あんたの背中に彫る刺青の下絵をよ、先走って描いちまったんだ、それだけ目を通してってくれねえかな? 奥の部屋にあるんだ」


 「ああ、それなら喜んで拝見させてもらう」


 「そりゃ良かった。お嬢さんは……今、茶を持ってこさせるからよ、ここで待っててくれ」


 再び満面の笑みを顔一面に浮かべる又造の言葉に、海華も小さな笑みを覗かせ無言で頷く。

又造に連れられ、部屋を後にする兄の後ろ姿を眺める海華の背後で、ひびの走った土壁と貼り付けられた下絵の山に浮かぶように、小柄な人影が一つ、音もなく揺れた。


 又造に誘われ足を踏み入れた部屋、そこで朱王を待っていたものは刺青の下絵などではなく、闇に潜む野獣の如く、ぎらつく瞳でこちらを睨みつける屈強な二人の男達だった。


 手入れもされていない乱れた月代に襤褸ぼろを縫い合わせたと思わんばかりの着物、荒れた唇の端から黄ばんだ歯を覗かせる男の頬には、刃物で一撃を食らったのだろう小豆色の切り傷が見える。


 一目で破落戸とわかる男らの出迎えに、朱王の眉間に深々と皺が刻まれた。


 「これは……どういう事だ?」


 朱王の唇から威嚇じみた低い声色が漏れる。

だくだくとうるさいくらいに脈打つ鼓動を無理矢理抑え込み、突き刺さる二つの視線に負けじと鋭い眼差しを投げつける朱王を嘲笑う又造は、『悪かったなぁ』と抑揚のない声色で一言呟いた。


 「あんたから良い返事が聞けるとばっかり思ってたんだが、嫌だと言われちゃこうするより仕方ねぇ。朱王さん、あんたの背中を買いたいってぇ人間をよ、もう見つけてきちまったんだ」


 にやにやと薄い笑みをこぼす又造が紡ぎ出す言葉の意味を理解することが出来ず、朱王はぐっと息を飲む。


 「背中を、買いたい? 何を言って……」


 「だから、そのままの意味よ。俺が墨を入れたあんたの背中の皮を買いたいって奴がいるのよ。だから……あんたにゃ大人しく墨入れてもらうぜ」


 「最初から、それが目的だったのか……っ!」


 腹の底からわき上がる怒りに声を震わせ、朱 王は射抜かんばかりの勢いで又造を睨む。 背中の皮を売る、それは自分が命を落とすだろ う事を意味していた。


 「戯言はそれだけか? なら……俺は帰らせてもらう! 自分の身体を売りに出す気は……」


 「だから、はい、そうですかと帰す訳にゃいかねえよ。後ろ、見てみな」


 嫌な笑みを絶やさない又造は、顎の先で朱王の後ろを指す。

その瞬間、朱王の全身から音を立てて血の気が引いていった。


 弾かれたように後ろを振り返った彼の目に飛び込んできたもの、それは室内にいる二人と同じ風体の巨漢に羽交い絞めにされた挙句に分厚い手のひらで口を塞がれ、苦しげに表情を歪める海華の姿だった。


 何とか男の手を振り払おうともがく海華の隣では、先日朱王に妖艶な笑みを投げ掛けた女が又造と同じ、にやにやといやらしい笑みを浮かべて事の次第を眺めている。


 「ちょっとでも騒げば妹の首をへし折るぜ。これでもまだ嫌だって言うかい? 大人しくこっちの言うこと聞いてくれりゃ、妹には何もしない」


 混乱する頭の中に又造の声が木霊す。

すぐ目の前にいるのに助ける事すらできない妹 は、両目にうっすらと涙を浮かべながらも、『話しに乗るな』と言いたげに何度も小さく首を振っていた。


 「……俺がここに残れば、妹を逃がしてもらえるんだな?」


 血の出る程に唇を噛み締め、朱王が呻く。

最早海華を助ける手段は一つしか残っていなかった。


 「ああ、約束するぜ。あんたが言うこと聞いてくれりゃあ、無駄に人は殺さねえ」


 「俺の事なら……もう好きにしろ。早く妹を離せ」


 忌々しげにそう吐き捨て、朱王は海華から目を背けてしまう。

悲しみに、そして恐怖に見開かれた海華の大きな瞳から、一滴の涙が滴り落ちた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ