第三話
「都筑様!」
「おお、朱王か!」
互いの顔を確かめた途端、人気の無い河原に驚きの入り交じった男二人の叫びが木霊す。
朱王の思った通り、真剣な眼差しで河原を眺めていたのは北町奉行同心、都筑その人だった。
朱王に向かい軽く片手を上げた都筑は、転がる大小の石に足を取られながら、よたよたとこちらへやってくる。
すっ、と一礼した朱王の肩から白い桜の花弁が風に吹かれて消えていった。
「暫くだったな、変わりは無いか?」
「はい、お陰様で。今日は…… 高橋様はご一緒ではないのですね」
小さな微笑みを見せる朱王の言葉に、都筑は困ったような笑みを浮かべて頷く。
無二の親友であり、相棒、そして気のおけない仲の高橋が一緒でないことに朱王は内心首を傾げていた。
「あ奴は奉行所だ。俺は……ちょっとした野暮用でな。――先日、ここで死んでいた者がいただろう。確かお前と同じ長屋に住まう男だったな?」
「はい、先月越してきたばかりの人でした。都筑様、あの件は酔った末の事故だと……」
怪訝な顔つきで訪ねる朱王へ、都筑はしかめっ面で何度も頷きながら己の頑丈な顎を擦った。
「確かにな、上は事故として片付けた。だがな、俺はどうも納得がいかんのだ。ただの事故では無いかもしれんと、桐野様に進言致した。桐野様は……、」
「確かな証拠を探してこい、と?」
『そうだ』とこぼした都筑は、しかめっ面から一転苦笑い。
これには朱王もつられてしまった。
いかにも桐野が言いそうな台詞だ。
「ならば証拠を、と連日探しているのだがさっぱりだ。高橋の奴は、あれは事故だと言い張りおって、俺の話しをまともに聞こうともしない」
だから一人で河原に赴き、数多に転がる石の間から、あるかどうかも定かではない証拠を見付けようと躍起になっていたのだ。
「なぁ、朱王。お主死んだ男のことで、何か知っていることは無いか? 何でもよいのだ、長屋での様子やら、家族のことでもいい」
もうお手上げだ、と言わんばかりに都筑の声色が弱々しく変わる。
ざわざわと芦がさざめく音を耳にしながら、朱王は考え込むように視線を宙にさ迷わせる。
道に佇み首を傾げている朱王の背後を、赤ん坊を背負った女が通りすぎた。
と、分厚いちゃんちゃんこで包まれた赤ん坊が不機嫌そうにぐずり出す。
その瞬間、以前真夜中に勃発した嫁姑の大喧嘩の一件が朱王の脳裏に甦った。
作治が死んでからというもの、あの二人が怒鳴り合っているのを一度も聞いてはいない。
下らない、本当に些細な変化だが、朱王にはそれが喉に刺さった魚の小骨の如く心に引っ掛かっていた。
『関係は無いと思いますが……』 そう前置きしつつ、お静とおくまの件を話せば、都筑は興味深げに話しに聞き入る。
「そうか、そのようなことがあったか……。朱王、その嫁姑についてを、もっとよく聞きたいのだが……」
「承知致しました、ただ……長屋での話しについては私より海華の方が何倍も詳しいかと。後程、海華を連れて番屋へ伺います」
「そうか! すまぬな、助かった!」
ぱっ! と明るく顔を輝かせながら、都筑は分厚い手のひらで朱王の肩を些か強めに叩く。
思わずよろける朱王は、ひどく嬉しそうに白い歯を見せる都筑と番屋で落ち合う約束を交わしてその場で別れ、都筑は番屋に、朱王は妹が待つ長屋へと足早に帰っていった。
朱王が都筑と別れた頃、海華は大量の洗濯物をやっと洗い終えていた。
部屋の裏手にある物干棹で風になびく襦袢や着物を前にし、海華は次に何をしようかと思案している最中だ。
今から仕事へ繰り出すには中途半端な時間でもある。
ならば今日は家事に専念すると決め、結局部屋の畳を拭くことにしたのだ。
思い立ったが吉日、桶と雑巾を手に井戸までやってきた海華の耳が蚊の鳴くようなか細い悲鳴を拾い上げた。
「あら? 何かしら?」
水を汲む手を止め、きょろきょろ辺りを見回すが井戸端には海華の他に人はいない。
その間も、『誰か助けておくれ……』と、悲痛な感を滲ませる小さな叫びは海華の鼓膜を微かに揺らせた。
ふと、海華の目が井戸の向こうにある部屋へ向けられた。
そこは件の嫁姑が住む部屋だ。
薄汚れた戸口に近付き、そっと耳を澄ますと『誰か助けて』との消え入りそうな声がはっきり聞こえる。 確か、姑のおくまは病身で一人では身動き出来ないはず……。
そろそろと戸へ手を掛け、きつい引戸を開けた海華の口から、あっ! と小さな叫びが飛び出た。
昼間でも薄暗く湿り気が漂う室内、そこに敷かれた汚れる布団の上で、痩せこけた身体がもがいていたのだ。
「おくまさん! 大丈夫!?」
慌てて下駄を脱ぎ捨て、部屋へと駆け上がった海華が、必死に蠢く老婆を抱き起こして再び布団へと仰向けに横たえる。
ひび割れた唇から安堵の溜め息を漏らすおくまの左手足は、汗染みのできた浴衣からだらりと力無く垂れたままだ。
「すみませんねぇ、ありがとう……」
弱々しく礼を述べるおくまに、微笑みで返す海華は、捲れたままの薄い掛け布団を肩口まで掛け直す。 浴衣の合わせ目から覗く胸は、くっきりと骨が浮かび、暗い影を作り出していた。
今更ながら、骨と皮ばかりのこの老婆が日々地を揺らさんばかりの怒号を張り上げていたとは信じ難かった。
弔問で一度訪れただけの部屋だが、その時より小綺麗に掃除され何よりあの鼻をつく汗臭さや尿臭も感じられない。
ざんばらだったおくまの白髪も、きっちり後ろで一纏めに束ねられ、垢だらけだった顔や身体も拭き清められていた。
「お手間掛けさせました、何しろ、私一人じゃあ満足に寝返りもうてないんでねぇ」
歯の抜けた口がもごもごと動く。
先ほど垣間見たおくまの左手足は、枯木のように細く、固くなっていた。
動けないのも当然か、と納得する海華は微かな笑みで自分を見上げるおくまへ問い掛ける。
「お嫁さんは……お静さんは留守なんですか?」
「あの子は街へ用足しに行ったんですよ。もうすぐ帰ると思うけど……。ああ、それより先日は倅に手を合わせてくれて、本当にありがとうね。 一緒にいらしたのは旦那さんかい?」
小鳥のような円らな瞳がくるくる動く。
『違いますよ』と笑いながら言う海華は、ちらりと戸口へ視線を向けた。
「兄です。一番端の部屋に二人で住んでるんです」
「そうかい、兄さんかい。あたしは全然外へは出ないからねぇ、この長屋のことは、なに一つ知らないのさ……」
おくまの声に一抹の寂しさが混じる。
日がな一日布団にいなければならないおくまにとって、この狭く暗い部屋だけが世界の全てなのだろう。
先日まで、嫁姑の大喧嘩に多大な迷惑を被っていた海華も、これには同情してしまう。
『あとは大丈夫だよ』とのおくまの言葉に、 何かあったらこれで知らせてくれ、と海華が手渡したのは、側に置かれていたひびの入った湯飲みだ。
これを投げれば砕ける音で気付くから、と言う海華に、おくまは歯の無い口を一杯に開けて、けたけたとさもおかしそうに笑い、皺だらけでくしゃくしゃの笑みを見せながら海華の背中を見送る。
おくまの部屋から出た直後、傾いた長屋門を潜る兄の姿が目に飛び込んできた。
「お帰りなさい! 早かったのね?」
桶と雑巾を携えた海華が、にこにこ顔で兄に駆け寄る。
ああ、と一言答えた朱王は、なぜかうかない表情で妹を見下ろした。
ざぁっ、と一陣の風が狭い長屋を吹き抜け、朱王の黒髪を宙へ舞い上げる。
「兄様、どうしたの? いつも使ってる胡粉、なかったの?」
「いや、違うんだ。海華、これから一緒に番屋へ来てくれないか? 都筑様が、お前に聞きたいことがあるそうだ」
兄の口から出てきた、都筑の名にきょとんと目を瞬かせた海華が小さく首を傾げた。
「都筑様があたしに? 何なのかしら、聞きたいことって」
「おくまさん達のことだよ。都筑様な、作治さんが事故で死んだんじゃないって仰っている。あの家族のことをお前から話して差し上げてくれ」
声をひそめる朱王が妹の耳許で囁く。
詳しい理由もよくわからないまま、海華は兄と共に番屋へと出掛けて行った。
二人が番屋に到着すると、そこには忠五郎と留吉、そして先に訪れていた都筑に無理矢理連れ出されたのであろう高橋と、都筑に証拠を求めた桐野の姿があった。
二人を今か今かと待ち構えていた都筑は、挨拶もそこそこに海華を上がり框へ座らせ、作治ら家族についてを矢継ぎ早に訪ねてくる。
そんな同僚の姿に、桐野と共に部屋へ座し、茶の入った湯飲みを手にする高橋はすっかり呆れ顔だった。
「お前、朱王殿達まで巻き込んで……あれはただの事故だ。酔って足を滑らせた、それのどこが気に食わぬのだ?」
「いいからお前は黙っていろ! 気になると言ったら気になるのだ! ――ああ海華、高橋は気にしなくてもよい。お前が知っていることを何でもいい、教えてくれ」
ぐっ、と自分の方へ身を乗り出してくる都筑に、戸惑いながらも海華は頷く。
知っていることと言っても、海華が持っている情報は全てお石やお多喜らからの又聞き、所詮根拠の無い 噂なのだ。
「作治さんは……女癖が酷く悪いって聞きました。誰彼構わず口説き落とす、って。――あの、都筑様、私作治さんのことより、お嫁さんとお姑さんの方が気になるんです」
「なに? 嫁と姑だと?」
その言葉に、室内にいた全員の視線が海華へ注がれる。
留吉が煎れてくれた茶を一口啜り、海華が先を続けた。
「あの家族が長屋に越してきてから、毎日のように嫁姑の大喧嘩がったんです。それも朝晩関係無しに。でも、作治さんが死んでから、それがぱったり無くなったんですよ。あたし、それが不思議で不思議で……同じ長屋の人達も、おかしいって言ってます」
「嫁と姑の喧嘩? それほど凄まじい物だったのか?」
高橋の問い掛けに、海華が思い切り首を縦に振る。
出来ることなら、あの耳をつんざく怒鳴り声を皆に聞かせたいくらいだ。
「もう凄いのなんのって、『この約たたずの馬鹿野郎!』『お黙り耄碌婆ぁ!』って、聞いちゃいられませんよ。 ねぇ、兄様」
「そうだったな。毎日寝不足で酷い目に遭った……」
あの時期を思い出したのか、げんなりとした顔の朱王が湯飲みに口を付け、それを見ていた高橋と親分が小さく吹き出した。
「そりゃあ犬と猿も真っ青だな。でもよ海華ちゃん、そんな喧嘩なんざぁ大なり小なりどこの家でもあるこった」
「そう言われりゃあそうなんですけど……間に立ってくれる人が死んだ訳ですから、いつか首締めたの刺し殺したのって騒ぎになるんじゃないかって、皆ひやひやしてたんです。それがいきなり静かになって……なんかおかしいですよ」
真剣な眼差しで都筑を見詰める海華。
その隣では、朱王も釈然としない表情を見せている。
しゅんしゅんと鉄瓶の湯が沸く音が立つ以外、室内は不気味な程の静けさが充満していた。
「都筑様、一つお伺いしたいのですが、よろしいでしょうか?」
静かな沈黙を破る朱王の問い掛けに、都筑は『何だ?』と一言だけ返す。
軽く一礼した朱王は、都筑へと向き直った。
「なぜ都筑様は、作治さんの死に方がおかしいと思われたのでしょう?」
朱王の疑問は最もだ、と海華は思った。
何しろ一度は事故として処理された事件なのだ。
今更ほじくりかえした所で、何になるのだろう?
朱王の問い掛けに、都筑は一度ぐっと唇を噛み、ひどく小さな声を発した。
「遺骸は、頭の後ろを割って死んでいた。勿論後ろ向きに倒れなければ、あんな傷は付かん。しかしな、身体の全面にも石で打ち付けた痣があるのだ」
「つまりお前は、作治が何者かに背後から石で殴られた。その後仰向けに転がされた、と言いたいのだな?」
横から高橋が口を挟み、『そうだ』と頷く都筑へ小さく笑う。
「それは考え過ぎだ。仰向けに倒れて頭を割った、その時にはまだ微かに息があって、痛みにもがいて転がったのだろう」
「あれだけ酷く頭を割ったのだぞ? お前だって傷を見ただろう。あれは即死だ。転げ回ったのなら、河原にもっと血が広がっているはずだ!」
やいのやいのと言い合いを始める侍二人に挟まれ、兄妹は顔を見合わせる。
確かにどちらの言い分も筋が通っているのだ。
ますます熱を帯びてくる部下の言い争いに、ついに桐野が声を荒らげた。
「いい加減にせぬかっ! 見苦しい!」
雷の如く空を震わせる桐野の一喝に、その場の空気が凍り付く。
今にも掴み合いになりそうな勢いだった都筑と高橋は、表情を引き攣らせおずおず畳へと腰を下ろした。
深く腕を組み、小さく縮こまる二人をぎろりと睨め付けた桐野の口から、ふぅっ、と呆れた様子の溜め息が漏れた。
「ここで争っていても仕方あるまい! おにかく、不審だと思うことがあるなら徹底的に調べろ!」
「しかし桐野様……この件は、既に上が事故だと……」
「上のことなど心配するな、いざとなれば儂が責任を取ってやる! それに、都筑に証拠を探せと言ったのは儂だからな」
高橋の言葉を制した桐野は、じっと目を閉じ顎の下を指で擦る。
固唾を飲んでそれを見守る皆の前で、冷静な光を宿す漆黒の瞳が、ゆっくりと瞼の下から現れた。
「都筑よ、お前はもう一度作治の身辺をよく調べろ。殺められたからには、それなりの理由があるはずだ」
「承知致しました!」
そう一声叫び、都筑は転がるように番屋を飛び出して行く。
その後ろを、目を白黒させた高橋が慌てて追い掛け足を縺れさせにながら番屋を走り去って行った。
そんな二人を見送った桐野は、後ろにひかえた忠五郎と留吉へ視線を向ける。
「お主らは、作治ら家族の生家を調べてくれ。 確かに渋谷村の生まれだとか聞いた。頼んだぞ」
「はい、承知致しました。これから走れば夕方までには帰れまさぁ」
にやっ、と桐野に向かって白い歯を見せる忠五郎は、早速土間へと駆け下り、留吉と共に番屋を後にした。
残されたのは、桐野と朱王、そして海華の三人だ。
海華が手のひらで包む湯飲みの茶は、既に冷めかけている。
「手間を掛けさせてすまなかったなぁ」
些か困ったような笑みを見せる桐野へ、二人は微笑みを返して首を横に振る。
少しでも桐野らの役に立てるなら、二人はいくらでも時間を割く。
それは転じて修一郎の役に立っている、ということになるからだ。
何かわかればまた報せる、という言葉を桐野から貰い受けた兄妹は一先ず長屋へ戻ることにした。
そして翌日の夜、満天の星屑が夜空を彩る頃になって、二人は修一郎の邸宅へと呼びつけられることとなったのだ。
春霞が蕩揺う春の夜、破れかけた提灯を手にした朱王と海華は修一郎の邸宅まで足を運んだ。
薄暗い玄関に、ごめんくださいませ、とよく通る朱王の声が響く。
奥から聞こえる賑やかな些か重たい足音、二人を待ち兼ねていたように玄関へ走り出てきたのは、着流しを纏った修一郎だった。
「おお! よく来たよく来た、さぁ、入れ!」
大きな顔に満面の笑みを浮かべ、修一郎は早速二人を奥へと迎え入れる。
淡い月光を受けて艶やかな光を放つ磨き上げられた長い廊下を抜け、招き入れられた修一郎の自室には、先に到着していたらしい桐野が座し、猪口を傾けていた。
「ああ、来たか。急に呼び立ててすまなかったな」
「いいえ、とんでもない。私共でお役に立てるなら、いつでも馳せ参じます」
小さく一礼する朱王は、修一郎と桐野へ柔らかな笑みを見せる。
行灯の灯りに、四人の影が白壁へ大きく写し出された。
「桐野から大まかな話しは聞いた。酷く家族仲の悪い者らが越してきたらしいな?」
同情を滲ませた眼差しを向けてくる修一郎へ、心底困ったと言いたいように顔を歪めて海華が頷いた。
「ほとんど毎日怒鳴りあいが聞こえて……。まともに寝てもいられなくて」
「そうかそうか、可哀想に。次にそんなことがあったなら、すぐ俺に申せ。わかったな?」
でれでれと目尻を下げ、猫なで声で海華と話す修一郎に朱王と桐野は思わず顔を見合せて苦笑い。
一旦お白州に出れば鬼と恐れられる北町奉行が、女一人を相手ににやけているなど誰が想像するだろう。
都筑や高橋が見れば、きっと腰を抜かすに違いない。
昔から、修一郎は海華に甘いのだ。
「ところで……作治さんについて何かわかったことは……」
にやけっぱなしで海華に向かう修一郎を横目に、朱王が桐野に問い掛ける。
うむ、と頷く桐野は、持っていた猪口を置き、朱王へ視線を滑らせた。
「忠五郎と留吉が、なかなか面白い話しを聞き込んできた」
「面白い話し? なんだそれは?」
ひょい、と顔をこちらへ向け、修一郎は小首を傾げた。
「何だ、聞いておったのか」
「当たり前だ。しっかり聞いていたわ。勿体振らずに早く話せ」
急かすように胡座をかいた膝頭を小さく叩く修一郎に、桐野は再び苦笑いを浮かべる。
海華も興味津々といった様子で瞳をくるくる動かした。
「別に焦らしている訳ではない。――忠五郎が渋谷村の村人から聞いてきた話しなんだが、朱王、お主らから聞いた話しと丸っきり逆なのだ]
「逆……と、申しますと?」
不思議そうな様子で朱王は桐野を見詰める。
行灯の灯りが微かに揺れると同時、壁に映る影も心許なくふらついた。
「作治の嫁と姑……お静とおくま、と言ったな? あれほど仲の良い嫁姑は、どこを探しても他にいない、と村の者は一様に言っていたようだ」
桐野の放った一言に朱王は信じられないとばかりに目を見開き、海華はぽかりと口を開けたまま、穴が開く程桐野の顔を凝視していた。




