第一章【戦士としての日々】人間編
戦の後…俺はぐっすり眠っていた、しかし夢の途中、胸を締め付ける苦しみに目を覚ました
うう…苦しい…血が…血が欲しい…
俺はベッドから起き上がり俺が血を呑まないと死んでしまうという秘密をしる女性の部屋を訪ねた
「…すまない…寝ているとは思うが…血を分けて欲しい…」
ドア越しに声をかけるとストロベリーブロンドの前髪目にかからないくらい残し、残りをポニーテールにした女性が…まあ今はほどいているが…幼さを残しているが美しい顔を眠そうにしながら現れた
「あ…ラット…中に入って…」
俺は礼を行って中に入る、彼女のシャンプーのいい匂いを鼻が捕えた
「じゃ…どうぞ…」
彼女は寝巻きのバスローブを肩が露出するまではだけ、俺に言った
「すまない…リリナ…」
俺はリリナの肩を掴み肩口に自分の顔を引き寄せた
そして口を開き、人の三倍はある長い犬歯をリリナの肩につきたてた
「あっ…」
ズブリと牙が刺さり、彼女が痛みに小さく声を上げた、しかし、痛いのは犬歯が刺さるときだけで、後は性交のような快楽が血をすっている間だけ襲ってくるだけだ
ジュルルと音を立てて血をすする、彼女の息遣いが荒くなっている、俺は胸の遣えが取れるまで血をすすり牙をぬいた
「…ありがとう。助かった」
彼女は服装を正し、無言で頷くだけだ
俺は彼女を抱き上げベッドまで運び布団をかけてやり、部屋を後にした俺は昔、母さんに教えてもらった世界のお話を思い出しながら寝た
「世界には人間種族が沢山います…耳が丸く、技術に優れたヒューマ…」
「耳がとがっていて、羽がある…フェアリー…」
「そして…体技に優れた、動物との混血種、亜人…」
小さい頃と言うのは同じ話を何度聞いても楽しい物だ、母はその後こう続けた
「しかし、知能が高いのは人間だけではありません…そう、バンパイアという人種がいるのです…彼等は人の生き血を吸い、人の暮らしを乱す邪悪な存在と言われているのです…しかし…」
「…ちょ…た…ちょう…」
ん?なんだ?声が聞こえる…まだ寝たいんだ…起こさないでくれ…
「隊長!起きて下さい!」
思いきりゆさぶられ俺は目を冷ました
「…ん…ダニー…」
体を起こし、目を開けるとそこには先月入隊した新兵のダニーがソバカスだらけで金髪の革鎧姿で俺を見ていた
「隊長!谷にバンパイアが攻めて来ました!早くご出陣を!」
そう聞くとベッドから飛び下り鎧の所まで走る
「隊長!僕は一足先に向かってます!」
ダニーは俺に頭を下げると走って行った
俺は鎧に着替えながら舌うちした。バンパイアどもの狙いは魔溶鉱石だ、この谷は我が国の最後の採掘場
ここを制圧されたら終わる
「く…バンパイアが…」
鎧を着込み、谷の宿舎から出る、宿舎前には5人のコウモリ型バンパイアがいた
「人間!我が谷を返せ!」
バンパイア達は作りの悪い、歪んだ剣を引き抜き襲いかかってきた
「…ここは俺達人間の土地だ!」
俺も剣を引き抜き、応戦する、まず手前のヤツの剣を防ぎ、後ろから迫ってきたバンパイアを蹴り飛ばす
その手前のヤツの剣の切っ先を強く弾き、その反動で首の動脈を切った
よし、残り4人
「この…人間があ!」
手前のヤツの後ろにいたバンパイアはそう悪態をつくと魔法の永昌に入った、剣を投げ、無防備になったソイツを倒す
残り3人
「このやろう!」
後ろから蹴り倒したヤツが向かってきた、武器での一撃を避けて足を払う
見事にコケた
「青き風よ。我が敵を打ち砕け!【ウインドスライサー】!」
コケた隙を狙いソイツに魔法を放った
掲げた手の平から発された三日月型の青い透き通った刃はコケたコウモリ型バンパイアをまっぷたつにした
「に…人間が魔法を使った!」
「コイツ…強いぞ!」
残ったバンパイア達は口々に感想を言うと飛んで逃げ去った
「ヤレヤレ…」
そう言いながら投げた剣を死体から引き抜いて血を拭う宿舎は谷の一番高い所にある、そこから谷の様子を一望した
「…まずいな…バンパイアの方が勢いがある…」
それに見覚えのあるバンパイアもいた
今日は忙しくなりそうだ