第5章 逆転の行進曲≪マーチ≫ⅩⅡ
どうも、お久しぶりです。
部長の王子様です。
新年度が始まり、忙しい日々が続いたせいで更新が遅れたこと、深くお詫び申し上げます。
さて、堅苦しいのはここまでにして、物語の方に移っていきたいとおもいます。
それでは、
はじまり~はじまり~
射撃第二防衛ライン
そこでは、額から汗を流しながら久吉の介抱をする奈々と、四つの救護班の姿があった。
久吉は、目立つ外傷こそ少ないものの、封印解放による消耗が激しく、なかなか目を覚まさなかった。
「ナッツがここまで消耗するぐらいの敵って、どんなんだろ?」
奈々が久吉をここまで追い込んだ、まだ見ぬ敵の姿を頭に浮かべながら、回復魔法を久吉に施していると、身支度を終えた維新が深紅の洋弓―――『王族の洋弓』を片手に久吉の様子を見に来た。
「西小金さん。ナッツの容体はどう?」
「ん〜、なんとも言えないかな?今はとりあえず、失った魔力と体力を回復させてはいるけど……。完全回復までは、まだまだ時間がかかりそうだね」
「そうか……、わかった。じゃあ、僕はもう行くね。ナッツの回復の為にも、敵を一秒でも長く射撃第一防衛ラインにとどめておかなきゃ」
「お願いね」
「了解。ナッツのこと、よろしく頼んだよ」
「わかってる」
二人は元気よくハイタッチを交わす。
そして、維新は戦場へと、奈々は久吉の下へと、お互いの行くべき所へと、駆け出していった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
こちらは、クロッカスと愉快な仲間達(笑)を一人で相手取っている沙輝だが、その戦場に大きな変化が訪れていた。
「『我が身に宿るは不屈の意思。我が魂が宿すのは折れない誇り。我は弱者を護る翼を広げ、強者を倒す牙を磨ぐ者!!強化・第一加速』!!」
そう。
その変化を齎したのは、沙輝が発動した一つの魔法。たった一つの魔法でニヤニヤとしていたクロッカスは驚きに眼を見開き、余裕を持って沙輝と戦っていた愉快な五人の仲間達―――バアル、アガレス、ウァサゴ、ガミジン、マルバス、は劣勢に追い込まれた。
なぜ、沙輝は戦況を覆せたのか?
それは沙輝が発動した魔法―――『第一加速』の能力のおかげだった。
『第一加速』
それは、沙輝の実家であり師範代を務める荒風道場に昔から伝わる(荒風道場が創設されたのは明治元年である)太古強化魔法の一つである。
その能力は術者の速度と力を最大まで引き出すことであり、最大の能力を引き出すために、全身の隅々まで魔力を伝達させてドーピングのような効果を齎している。
話を戻すが、その魔法によって深紅の魔力を纏った沙輝は、残像が見えるくらいのスピードで高速移動を繰り返し、隙を見ては5人に切りかかっていた。
「はははっ、地獄の騎士と言うのは名ばかりか!!このくらいのスピードについて来れないようでは、到底私は倒せぬぞ!!」
「ぐっ、小娘が調子に乗りおってぇ」
額に青筋を浮かべるクロッカスに対し、その口に三角形の笑みを浮かべる沙輝は5人の装甲をとてつもない勢いで削っていった。
この戦いが始まった当初は、頭の頂点から爪先の先まで傷一つなかった5人の騎士甲冑は、篭手の部分が消滅し、胴体部分には無数の傷が付いていた。
いくら防御魔法をふんだんに使っているとはいえ、甲冑が壊されるのは時間の問題だった。
基本的に表情を表に出すことの無い5人の顔にも、焦りの色がありありと浮かんでいた。
(この戦い、もらった!!)
内心で勝利を確信した沙輝は、さらにスピードを上げようとしてあることに気がついた。
つい先程まで怒りに拳を震わせていたクロッカスが、凛!!と澄ました顔で何事かをブツブツと呟いているのだ。
(奴は何をしているのだ?新たに召喚でも行うつもりだろうか、それとも……)
ここで沙輝の考察は中断を余儀なくされる。
バアルが沙輝に向かって棍棒を投擲してきたのだ。
危なげも無くそれをよけた沙輝は、今の攻撃を起点とした5人の連携攻撃によって一旦守勢にまわる。
しかし、そこは流石に荒風道場で師範代というべきか。『第一加速』の能力をフル活用し、5人の連携をヒラリヒラリと避けていく。そして、お返しとばかりに黒赤色の鎧を着ているヴァサゴの胸に突きを繰り出した。
しかも、それはただの突きでは無く、『風狂』と呼ばれる荒風道場に伝わる、鎧越しに相手の肉体に直接ダメージをあたえる体術だった。
第一加速により、速度と力が普段より上がっていた『風狂』は、見事にウァサゴの鳩尾部分にヒットし、ウァサゴの意識を闇深くに沈めた。
◆◇◆◇◆◇
射撃第一防衛ライン
戦闘開始の当初は、圧倒的な手数とリーチで騎士たちを圧倒していた生徒たちだったが、時間の経過と共に疲れが見え始め、だんだん形勢を逆転され始めていた。
また、近接戦闘を愛美と久美の二人だけに任せているので、相手の全てを足止めできるわけもなく、敵の何体かは生徒たちの懐深くまで潜り込んでいた。
「……くっ、敵の数が多すぎて、とても私たち二人じゃ捌ききれない!!」
「しかし!ここで私たちが退けばラインの崩壊は目に見えています!!」
「……でも、これ以上は!」
「!!、愛美さん、伏せて!!!」
久美の声に反応してその場に身を伏せた愛美の頭上スレスレを、遠距離型の騎士が放った矢が通過していく。
今更ながらに、自分たちが命のやり取りの場に居ることを、頬を流れる一筋の汗と共に痛感した愛美は、今一度気を引き締めるために、自身の両頬をパンッ、と叩いた。
★☆★☆★☆
戦闘開始からすでに30分近くが経過し、前衛担当の二人の消耗も激しく、防衛ラインを突破されるのは時間の問題かと思われていたが、一人の男の登場が戦況を大きく変化させる。
「『来たれ、天より降り注ぐ数多の星よ。悪しき邪悪なる物を麗美なる光で浄化し、この地に平穏を齎したまえ!!攻撃・千流星雨』!!」
その男は、自身の周囲に黄金に輝く球体を浮かべ、空中に悠然と佇んでいた。
久々の更新でしたが、読者の皆様方に満足いただける内容に仕上がってましたでしょうか?
紙の方には次の話が書き終わっているので、次はあまり遅くならないで投稿したいです。
がんばります。
※感想待ってます!!誤字・脱字の指摘や辛口感想も大歓迎です!!(あまり辛いと作者が死にますがWWW)