第5章 逆転の行進曲≪マーチ≫Ⅹ
逆転のマーチ編10話目突入!!!
と、言っても何らおめでたくはありません。
ハイ。 またもや更新が遅れてしまい、本当に、ほんとーーーに、ごめんなさい。
マジでスミマセン。
はい。と、一通り謝罪した所で
はじまり~はじまり~。
「山神さん?助けに来ましたよ」
ニコッと微笑む愛美に目を奪われながらも、維新は現状の確認をすべく、愛美に語りかける。
「か、金成さん?助けに来てくれたんだよね?」
「その通りです」
しかし、その維新の言葉に答えたのは、副官である久美の方だった。
「部隊は私たちの後方で待機しています。このまま此処に射撃第一防衛ラインを展開し、敵の足止めをしようと思いますが……、まだ戦えますか、山神さん?」
「俺は戦えるさ。ただ――」
そこで維新は、自身の横で倒れている久吉に視線を落とした。
「―――ナッツは、無理だね」
「そうですか、でしょうね。わかりました。愛美さん!」
「……ッファイ!?」
ボーッとしていた所に急に声をかけられ、声が裏返ってしまった恥ずかしさからか、僅かに頬を赤らめる愛美を恍惚の表情で眺めつつ、久美は話し続ける。
「ここは一度、中津さんを第二射撃防衛ラインまで送り届け、西小金さんに回復をお願いした方が良くないでしょうか?」
「……それは良い考えです。ですが、その役は誰が?」
「俺がやるよ」
言いながら既に久吉を背中に背負っているのは、自身もかなり消耗しているであろう、維新だった。
「西小金さんの所までナッツを届けに行くんだったら、ついでに俺も回復してもらってくる。な?一石二鳥でしょ?」
「わかりました。では、お願いします。敵の足止めは私たちにお任せ下さい」
久美の返事を聞いた維新は、大きく頷くと自身の肉体に強化魔法をかけ、風の様に走り去った。
それを見届けた愛美と久美は、仲間たちからの狙撃でバタバタと倒れていく騎士たちを見てから、自分達も攻撃に参加すべく武器をとる。
久美の方は、投擲ナイフを数十本。愛美の方は、摩迦般若播羅御陀と書かれた大小様々な札を、それぞれ左右の手に握った。
「……では」
「始めましょうか」
今、戦乙女たちの戦いが始まる。
◇◆◇◆◇◆◇◆
相変わらず陣屋を探している沙輝は、徘徊していた森の奥で奇妙な白髪白髭な老人を見つけた。
何が奇妙か、と言われても困るのだが、デカイ本を開いて、謎の模様が画かれた地面の上に鎮座している。
こんな様子を見て、奇妙じゃない、と言う奴がいたら目の前に連れて来て欲しいと思う、沙輝の現在の心境であった。
(うーん。あのご老体には声をかけた方がよろしいのだろうか?しかし、あのご老体が敵だった場合………。う〜ん、どうした物か……。……よし!)
「お尋ねしたい事があるのだが、今よろしいか?ご老体」
散々迷った挙句、話しかける事にした沙輝は、奇妙な老人へと声をかける。
それに対し、声をかけられた老人は人柄が良さそうな目で、沙輝のことを見た。
「ん?どうかなさったか?若いお嬢さんや」
「あ、いや。こんな森の奥で何をなさっているのかな、と少々気になりました物で。ご迷惑でしたでしょうか?」
「んにゃ。ワシも暇しておった所でな。そう言うお嬢さんこそ、こんな所で何をしておったのかの?」
とてもゆっくりとした話し方に、多少戸惑いながらも、沙輝は話を続ける。
「私は逸れた友を探しているのですが、近くで若い男を見ませんでしたか?」
「見ておらん。スマンな力になれずに」
「あっ、いや。こちらこそ、初対面の相手に変な事を聞いてしまい失礼しました」
丁寧にお辞儀する沙輝を見た老人は、遠くを見る様に目を細めると、ポツリと言葉を呟いた。
「あぁ。ワシの孫も生きていたら、今頃はお嬢さんと同じくらいの歳になっていただろうね……」
「お亡くなりに……、なったんですか……?」
「ああ、そうさ―――」
ザワッ。
ここで沙輝は目の前の老人から何か得体の知れない物を感じ取り、身構えてから老人の言葉を待った。
老人は両肩をプルプルと震わせ、額に青筋を浮かべて怒りをあらわにして言葉を繋げた。
「―――お前ら、人間に殺されてな!!!!」
次の瞬間。
老人の身体からは、大量の魔力が噴き出し辺りの木々は大きく揺れた。
「ご老体、貴方は魔族だったんですね!?」
授業で習った事を頭に思い浮かべながら、沙輝は老人の姿を凝視する。
この世界にはいくつもの層が存在する。
現在、久吉たちがいるのが人間の住む『表層』。
その直ぐ真下に位置するのが、妖精や獣人が跋扈する『幻層』。
逆に、真上に位置するのが、奈々が召喚した天使の様な神聖な者が存在する場所である『神層』。
そして、それら三層とは全く別の次元に存在し、いつも混沌とした闇に包まれている『魔層』。
そして、魔族とは。
人の形をした人ならざる者。
異界中の異界である『魔層』の住人。
そう、普通だったら例外を除き、決して交わる事の無いそれぞれの層の中に在りながら、全ての層と行き来できる特別な層―――それが、『魔層』。
そんな、特別な存在である魔族が目の前にいる。
それが、沙輝には信じられ無かった。
「なぜ魔族がこんな所にいる!?」
「それは、復讐の為。家族や大切な人を殺された者の悲痛なる戦いのためじゃ!」
怒鳴る老人は、怒りの勢いそのままに手に持っている本を乱暴に地面に叩きつける。
「お嬢さんには直接の恨みは無いが、これは全人類に向けての天誅なのじゃ。よって、ここで死んで頂く」
言葉と共に魔力による圧力は増大していき、言葉の終わりと共に沙輝が吹き飛ぶぐらいの勢いを持って、爆発した。
老人は口を開き、自分の名を名乗る。
「我が名はクロッカス・ガナッシュ!!貴女のお命、頂戴いたす!!」
「個人的には老人と戦うのは、心が痛むのですが……。荒風道場師範代、朝比奈沙輝。いざ参る!!」
二人の言葉で戦いの火蓋が切って落とされた。
先に攻めたのは、白髪白髭の老人―――クロッカスの方だった。
クロッカスは、自身の手中にある古びた本を開き、詠唱を開始する。
「『憎きソロモンの王に封印されし、72の我が同志よ!!我がために力を開放し、敵対せし者に地獄の裁きを!!我は所望する。1~5の位を持つ精鋭たちを!!召喚・ソロモン72柱バアル、アガレス、ウァサゴ、ガミジン、マルバス』!!」
通常の幾何学的魔法陣とは少し変わった形状の魔法陣が地面に浮かび上がり、そこから異形の五人の戦士が現れた。
「吾輩は見ての通り年でな。代わりにこの者たちに相手をしてもらおう」
「それは良かった」
沙輝は心底安心したように溜息を一つつくと、二振りの刀―――『夕凪』と『朝凪』を左右の手に構え、クロッカスに向け大きく言い放った。
「それならば、私も本気で戦える」
そう言った沙輝の表情は、獲物を前にした肉食動物のソレと全く同じ物だった。
最近リアルの方で鬱鬱鬱だったもので、ぜんぜん筆が進みません。
しかし!!
今日、その鬱々の原因であった出来事も片が付きました。
これからの執筆が捗るように頑張ります。