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the school of magic  作者: 長部 真
第2章 強襲の狂詩曲≪ラプソディー≫
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第2章 強襲の狂詩曲≪ラプソディー≫Ⅵ

凶刃に襲われた奈々の運命や如何に!?


はじまり~はじまり~

習魔学園本棟大校庭




黒剣は振り下ろされた。

それはただ無情に、ただ人を殺すという作業の一環として、地面に倒れ何の防御もして無い奈々に向かって………。



ズバッッ!!



刃が物を切り裂く音が校庭に響き渡った。

久吉たちは瞬間的に目を閉じ、その後に来たるであろう悲鳴に耳を閉ざした。





しかし、悲鳴は上がらない………。



そして、代わりに聞こえて来たのは、騎士が消える時に出す独特の音だった。


不思議に思い久吉はそっと目を開ける……。

そこに見たものは、未だに地面に倒れている奈々と、見覚えのある女性の姿だった。

奈々が無事だった事に安堵を覚えたのか、久吉は一瞬だけ戦闘から意識を外した。そう、戦闘中にもかかわらず(・・・・・・・・・・)、だ。


当然、騎士はその一瞬を見逃さ無かった。

久吉の後ろから一体、上から三体。計四体の騎士が久吉に向け剣を振り下ろす。しかし、その剣は久吉に届くことなく、奈々を助けた女性の刃に止められた。

その姿を見た久吉は、自分を助けてくれた人物の名を呼ぶ。


朝比奈沙輝(アサヒナサキ)!!」

「……、没」



久吉の呼びかけに対し、沙輝は漢字一文字で返した。そして、久吉を一瞥すると騎士に向かって切り掛かった。

久吉はそれを見てギョッとした。先程の自分たちの戦闘を思い出したのだ。

維新、愛美、久吉と三人がかりでも倒すのに苦労した相手。それに女手一つで立ち向かおうというのだ。

無謀にも程がある。


しかし、久吉の予想に反して沙輝は一方的に騎士一体を切り伏せた。


そこで久吉は彼女が何者であるかを思い出す。


「伊達に荒風道場のNo.2な訳じゃ無いってことかよ!!」


荒風道場とは、久吉が通っている剣道場の名前である。

沙輝はそこの一人娘でありながら、館長、つまり沙輝の父親の次に強い。

久吉と同い年とは思え無いほどだ。

そして、美しい。

荒風道場に入門する人の半数以上が、彼女目当てだと言えばわかるだろうか。


手入れの行き届いていると思われる艶のある長い黒髪。それを頭の後ろで一つに束ねて、背中まで延ばしている。

そして、容貌はまさに可憐。

少し青みがかかった双眼は見つめられた者が動けなくなるほどに美しく、僅かに高い鼻は彼女のコンプレックスであったりする。

それらが顔一面にバランス良く配置されていた。

こちらも愛美に引けを取らない程に『大和撫子』だった。しかし、タイプが違う。

二人を景観で表すと、愛美『新緑の森』だが、沙輝は『荒々しく吹き荒れる風』。

つまり、愛美は何事にも動じなく、全体的に『静』。反対に沙輝は、一本の芯が通っていて、全体的に『動』だった。




騎士の一体を切り伏せた沙輝は、久吉に語りかけるべく一度騎士と距離をとる。


「ヒサ、お前の剣はなまくらにでも成り下がったか。なぜ、守るべき友がいるのにいつまでも地に伏せている?」


沙輝はチラリと維新たちの方を一瞥すると、また正面に視線を戻す。


「だけど、俺の刀じゃ騎士達(やつら)の鎧に傷一つ付かなかった。それをどうしろと?」

「それはお前の刃が後ろ向きだからだ」

「??」

「つまり、お前は『逃げれば良い』、『皆で力を合わせれば』と、自分の力で道を切り開こうとしていない。そんな奴が刃を振ったところで、傷一つ付かないのは道理。私の刃もお前の刃も性能は互角。なのに切れないのはお前の心が後ろ向きだからだ!!」

「ッ……!!」


久吉は反論できなかった。沙輝が言った事が全て事実だったからだ。


だからといって久吉もいつまでも地に伏せている気は無かった。


「沙輝、ありがとよ。おかげで目が覚めた。そうだよな、俺が奴らを倒せば良いだけの話しだよな。だったらもう、迷いは無い!!」


言葉と共に久吉は前に飛び出した。



騎士との距離を一瞬で詰めた久吉は、まだ反応仕切れていない騎士の鎧を、下から上に切り上げた。

先程まで弾かれていたその刃は、バターを切るナイフの様に鎧に食い込むと騎士の身体を真っ二つにした。

真っ二つにされた騎士が地面に落ちきる前に、久吉は次なる行動を起こす。自分に切り掛かってきた二体の騎士を、一度鞘に納めた刃で抜きざまに切り倒す。

そして、物理的エネルギーをそのままに、背後から切り掛かってきた騎士三体を真っ二つにした。


周りを見ると沙輝が七体ほどの騎士を相手にしていたが、優先度が高い奈々たちの応援に向かう。


奈々たちの周りには数十体もの騎士が立ち並んでおり、黄道十二騎士団が相手をしていたが、数で押されて防戦一方だった。


それを見た久吉は魔法を繰り出すべく、意識を集中して騎士の上空へと飛翔する。


「『我が分身なる深淵の影よ、その姿は鋭利なる刃、孤高なる狼。その牙で敵を喰らえ!!攻撃(アタック)薄刃影狼(ウスバカゲロウ)!!』


黒く染まった刃を久吉は騎士に向かって振り下ろす。

刃の先から飛び出した黒い塊は、六匹の狼へと姿を変え騎士へと向かって行く。攻撃に気付かない騎士たちの頭上から黒狼が牙を剥く。


黒狼は騎士など目に入らないかの様に、着地点を中心に扇状にそれぞれ直進していく。

そして、黒狼が通り抜けた場所にいた騎士は無数の薄刃に切り裂かれた様な傷を負い、バタバタと倒れていった。


騎士の数が減ったことにより攻守が逆転し、奈々たちの周りにいた騎士は全員霧散した。

沙輝の方も片付いたようで、沙輝がこちらに歩いてきた。


「やれば出来るじゃないか。ヒサ、そちらの方々は?」

「こいつらは俺の友達で、名前は……」

「西小金奈々です!ヨロシク!!」

「山神維新です、以後おみしりおきを」

「……金成愛美」

「丁寧な挨拶痛み入る。私の名は朝比奈沙輝。皆と同じく十六。ランクはHG(ハイパーゴールド)で、2-Aのクラストップをやっている。拙い腕だが剣を少々やっている。これからよろしく頼む」


沙輝の自己紹介の途中に久吉が「どこが拙いだ」とぶつぶつ言っていたが、誰も聞こえ無かったようだ…。


「ヒサ、質問があるのだが」

「なに?」

「このチームの皆のランクはどうなっているのだ?」

「それなら俺がSMPで、残りは皆SSだ」

「……、ありがとう。思ったよりも、皆のランクが高いので驚いた。で、これからどうするのだ、ヒサ?」

「まず目の前の大講堂に入る。話はそれからだ」

「了解した」



この騒ぎが始まってから初めての休息を取るべく、皆の足が講堂に向け動きだした瞬間。今まで何もしてこなかった上空の騎士が、大群を成して降りてきた。

その数、約千体。

それを視認した久吉は横にいる沙輝に声をかける。


「沙輝、皆を連れて先に行け」

「……ッ、しかし、それでは!!」

「お前は男の覚悟を無駄にする気か!!」

「………、わかった。その変わり一つだけ約束しろ」

「何を?」

「必ず生きて帰ってこい!」

「ケッ、んなもん当たり前だろ!!」



久吉の返答を聞いた沙輝は一瞬顔を歪めると、三人を掴み走り出す。

三人は何が起きたか理解する前に、沙輝に連れ去れた。



四人が行ったのを確認すると、久吉はそっと眼鏡を外し、つぶやく。


「封印解除」


と……。


またまた新キャラ登場です!


朝比奈強すぎ(笑)

ここで主人公をサポートすると、久吉も強いです。

朝比奈と同格です。


では、次回予告です。

襲いかかってきた騎士千体。

どうする久吉!?


そして次回はアノ敵キャラも???

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