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第一章 3

「はふぅぅぅ。」


 休憩所にて盛大に溜息。そら、溜息も吐きたくなるわ。そんな俺に不思議そ~な顔の轟。


「どうしたよ、導?朝一ブルー入ってんな?」


「おう…。溜息でも吐かねぇとやってらんねぇよ…」


「んん?…あ!お前が気になった、っつう空野ってやつのことか!」


「ああ…。思い出すだけでやる気がそがれるぜ…」


「聞いたぜぇ?…ってか、噂になってるぜ?天才指揮者、初対面の女にボディー決められる、って。」


 …ニヤケやがって…俺の身にもなれっつうの。


「…もう、絶対ぇ関わらねぇ。…あんな天災女。」


「…そういや、空野、奏?…だっけ?…なぁんか、…どっかで聞いたような…」







 距離確認。…1歩、2歩、、、、歩幅を合わせて、ここで!


 タンっと軽く音を立て空に舞い上がる…けど、…あっちゃぁ、またバー落ちちゃったよ。


「お疲れです!先輩!…今日は、調子悪いですね。」


 と、スポーツ飲料を渡してくれた、ヘッドバンドをした若草色のセミショートのこの子は、哲峰音子てつみねねね。陸上部であるあたしの後輩で、演奏科の一年。…でも、この子はあたしと違って音楽センスは抜群で、躍動的でバイタリティー溢れるサックスの演奏は、あたしから見ても、間違いなく本物。それでも驕ることなく、あたしに尊敬の視線を向けてくれるのには、本当に感謝している。あたしの方も、この子は大切な大切な後輩だと思うよ。


「うん。ちょっと、ね。」


「もしかして、先日のテストのことですか?きっちり合格したって聞いてますけど…」


「まあ、…合格したのは嬉しいけど…」


 そう、あたしだって、良識ある20歳なんだ。癇に障ったとはいえ、さすがに初対面の、しかも、恩人でもある人に、ボディ決めたのは申し訳ないよね。一応、あたしでも、後悔はしてるんだ。…でも…


――音大生ならそんなこと説明せずとも分かるだろうが!もっと真剣に音楽と向き合えってんだ!


 …ああいう、何でも出来るやつには、あたしの気持ちなんて…分かんないよね。


「あ、先輩!お客さんですよ?」


「え?…っ!」


 ペコリと下げる、黒髪セミショートストレート。…き、気まずぅっ!

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