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02.

 エレナ・ガレッティ。

 ガレッティ公爵家の次女である彼女は、乙女ゲームのパッケージにも攻略対象者に囲まれるように大きく載っていた、可愛い系ヒロイン。

 そんな彼女と私は……。


「! お姉様!」


(まさかの姉妹設定……)


 これも私が詰んでいる原因の一つ、と白目を剥きそうになるのをなんとか堪えている私の元へ走り寄ってきた彼女は、私と唯一お揃いの大きな金色の双眸を心配そうに揺らしながら尋ねた。


「ご体調は? もうよろしいのですか?」


 私の体調を真っ先に心配してくれるその言葉と瞳に、偽りがないことを確認した私は内心安堵する。


(良かった。攻略対象者だけでなく、ヒロインまで性格が真逆なんてことがあったらどうしようかと……)


「……お姉様?」


 エレナが私の顔を覗き込み首を傾げる。その姿を見て、私は冷静に言葉を発した。


「心配には及ばないわ。それよりも、貴女に伝えておきたいことがあるの」

「……?」


 エレナは首を傾げる。その姿も愛らしいと思うけれど、私は心を鬼にして言葉を発した。


「貴女は公爵令嬢であると同時に、風紀委員会の一員となった。つまり、在校生の模範とならなければいけない存在。だというのに、貴女は初日の一度のみならず、今日の挨拶当番と昼休みの会議の二度、三度と遅刻するとは良い度胸ね。何か言い訳があるなら聞くけれど?」

「……っ、ごめんなさい、お姉様」


 エレナが謝る。それを見かねたのか、攻略対象者であるアルノルドが言葉を発した。


「まあまあ、良いじゃないですか。まだ彼女は新入生になったばかりで学園にも慣れていないのですし」


 アルノルドの先ほどとは比べ物にならないほどの柔らかな物言いに、背筋がゾワリと鳥肌が立つ。


(っ、早速出たわ、攻略対象者達の猫被り!)


 彼ら、ということで、外面が良いのはアルノルドだけにはとどまらず、今度はランベルトが口にした。


「そうですよ、委員長。そんな眉間に皺を寄せて怒ったら、せっかくの美人が台無しですよ?」


 エレナを庇う外面だけは良い彼らを見て、私は深くため息を吐いて言った。


「……分かったわ。彼らに免じて、貴女の遅刻に関しては目を瞑ることにするわ。けれど、風紀委員会に入ったからには、それ相応の自覚を持ってもらいます」

「自覚……?」


 エレナの言葉に頷くと、私は指折り数えるようにして伝える。


「まずは、私のことを“お姉様”とは呼ばず、風紀委員の仕事をしている最中は、“委員長”と呼ぶこと。それから、風紀委員会の一員として模範生でいてもらうために、廊下を走らない、部屋に入る時は一言断りを入れる、授業及び練習場以外での魔法使用は禁止。これらはすべて鉄則だから、万が一違反したところを先生方に見つかれば委員は即クビ。それから」

「委員長、今日はその辺で」


 私を制したのは、リベリオ殿下だった。

 リベリオ殿下もまた公私混同を避けるため、私のことを委員長と呼びつつ、エレナに向かってにこやかに言った。


「大丈夫。風紀委員会は先生方からの期待が生徒会の次に大きい組織だからね。何かと目をつけられやすいのは私達の方なんだ。だからこそ、委員長は君を心配しているんだと思うよ」

「ちょっと」


 思わず声を上げかけたけれど、リベリオ殿下は私に目配せしてから、エレナに向かって手を差し伸べて言った。


「こうして委員長も復活して全員集まったことだし……、改めてようこそ、風紀委員会へ。新入生である君の加入を心から歓迎するよ。よろしくね」

「っ、はい! こちらこそ、精一杯頑張ります! よろしくお願いいたします……!」


 エレナがリベリオ殿下の手を両手で握る。

 その光景と言葉に、ドクンと心臓が大きく跳ねる。


(たとえ私が倒れてイレギュラーが生じたとしても、物語の世界は何事もなかったかのように進むのね……)


 ゲームの世界を目の当たりにしたことで、改めて私がラスボス化予定の悪役令嬢、ロザリア・ガレッティに転生した事実を突きつけられた、そんな気がした。




 放課後。

 箒でゴミを掃きながら、昼休みの出来事を思い出し長いため息を吐く。


(やってしまった……)


 休みをいただいた三日間、ずっと考えていた。

 どうしたらラスボス化を回避出来るかと。

 一番良いのはやはり、エレナに頑張ってもらって殿下との好感度をMAXにしてもらった状態で殿下ルートに入ってもらい、ラスボス化した私を倒せば、殿下を唯一死なせずに済み、被害を最小限に食い止められる方法ではある。

 しかし、少しでも好感度が足りないと私が殿下を殺してしまう可能性があるのに加え、他のルートではやはりどう足掻いても私と殿下の死は免れない……。


(パラメーターのように、エレナと攻略対象者達との好感度を確認する術がない。となると、全エンドを知る私が自力で新規開拓ルートを目指す方がまだ可能性が高い)


 という結論に至り、まずは乙女ゲーム中でエレナを虐める悪役令嬢である姉にならないように行動するつもりだった。

 だけど、エレナがあまりにも委員としての自覚がないことから、けじめをつけてもらわなければと思い注意した結果、リベリオ殿下を始め攻略対象者達に止められるくらい強い口調になってしまったと言う……。


(あら? でもよく考えてみれば、乙女ゲームの舞台は風紀委員会にヒロインであるエレナが加入してきたことによって物語が始まる。つまり、エレナがもし委員として相応しくない行動を取り、教師から目をつけられクビになれば、舞台は成立しない。つまり、物語が途中で強制終了となる可能性が……って)


「そういう考えがまさに悪役令嬢以外なんじゃない……」

「誰が悪役だって?」

「わっ!?」


 近い距離で声をかけられたため驚き見ると、そこにはリベリオ殿下の姿があった。



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