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推しを殺すラスボス(悪役令嬢)に転生してしまった  作者: 心音瑠璃


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09.

 城下視察イベント。

 ゲーム中においてのそのイベントは、ヒロイン・エレナを含めた第一学年が城下へ視察に行った先で、突如魔物が現れ、風紀委員として同行していた攻略対象者達と共に魔物を倒し、魔力覚醒と好感度急上昇がかかっている重要なイベント。

 ピンチであれはあるほど恋も加速する、という展開なのは分かるけれど。


(転生した今、それが大いに危険を伴うイベントだということも分かる)


 予想だにしない魔物の発生に、逃げ遅れる民やパニックに陥る生徒達だっているはず。

 被害を最小限に食い止めるためにも、避難場所や経路を予めこの目で確認しておきたい。

 そう思い、ゲームの知識を利用して、一人で下見を行うはずだった。

 それが……。





「食べないの? 美味しいよ」


 そう笑顔で私の目の前に串焼きを差し出すリベリオ殿下の姿があまりにも見慣れず、眩暈さえ覚える。

 三日前の約束を律儀に守ったリベリオ殿下と二人で城下へ向かったまでは良かったものの、城下についてから、彼はずっとこんな調子だ。

 きっと周りに多くの人がいるから、他所行きの顔をしているのだろう。

 でなければ、素の彼がこんなことをするはずがない。

 お腹が空いたからと私の分まで串焼きを買ってくれて、その上“あーん”だなんて、こんなこと……。


「……リベリ」

「リオ。そう呼んでって言ったでしょう?」

「……っ」


 有無を言わさないその笑みは、どこか優しげなだけでなく、甘やかにも見えて。

 内心悲鳴を上げながら、その串に手を伸ばす。


「リ、リオ。自分で食べれるわ」

「そう? それは残念。僕が手ずから食べさせてあげたかったのに」

「……っ」


(な、何なのこの人!?)


 そう思いながらも、串を受け取った私の手を、今度はリオが握って言った。


「危ないから気を付けて食べて」

「!?」


 優しく上から握られたその手は、私の手がすっぽりと収まってしまうほどに大きく、温かくて。

 なんだかそれが心臓に悪くて、直視できずに誤魔化すように串焼きに齧り付けば。


「……! 美味しい」

「ね、美味しいでしょう?」


 私の言葉に微笑む彼を見て、また心臓が大きく跳ねる。


(って、違うでしょう、私! いちいち慣れない扱いを受けてときめいている場合ではないの。彼はこういうことに慣れているんだろうし、きっと皆にやっているはず……!)


 そう自分に言い聞かせつつ、リベリオ殿下の軽はずみな行動が気になり、つい注意してしまう。


「でも、貴方の立場上、毒見もなしに安易に口にするのはよくないわ。どうしても食べたいのなら、私が先に食べるから言って」

「……それ、本気で言ってる?」

「え?」


 それまで笑みを浮かべ、上機嫌だったリオが無表情になり、一気に機嫌が悪くなる。

 そして。


「君のそういうところ、嫌い」

「!」


 その言葉に、私は目を瞬かせた。彼もまた、しまったというような顔をして……。


「……ごめん、言いすぎた。ちょっと頭を冷やしてくる」


 そう言うと、私を置いてどこかへ行ってしまう。


「……結局一人になってしまった」


 どうして怒らせてしまったのだろう。

 彼はこの国の第一王子なのだから、当然のことを言っただけなのだけれど……。


(仕方がない。一人で下見をしましょう)


 急にリベリオ殿下が行くと言い出すまでは、本来一人で下見をするつもりだったのだし、彼と二人で行動しているときにはあまり下見をさせてもらえなかった。

『仕事は後で』と、下見が目的なのにそれを後回しにされて……。


(……何か思い出したら腹が立ってきたわ)


 私に今すべきことは、何も考えず街を練り歩くことではなくて、城下視察の対策として下見をすること。

 自分が優先すべきことを間違えてはいけないのだ。

 そう自分に言い聞かせると、誰も見ていないことを良いことに串焼きを頬張る。


「……美味しい」


 これで頑張れる、と気合いを入れ、その場を後にした。




「……ここね」


 グルリと見渡すと、建物が密集して立ち並ぶその場所は、決して広くはない道の大半が、日中でも建物の影で覆われており、影や暗闇を好む魔物の生態としても居心地の良い環境であることは間違いなかった。

 それに。


(……少し気味が悪い)


 心を乱されている場合ではない。この場所から遠ざけ、建物がない広場に魔物を誘き出す、その最短経路を前もって辿る必要がある。

 だけど、先ほどまで賑わう街にいたからか、誰一人いない路地裏のような道は、まるで異次元に吸い込まれるような、そんな気さえしてしまって……。


「ロザリア!」

「!」


 不意に後ろから名前を呼ばれ、腕を掴まれる。

 ハッとして振り返った視界に映ったのは。


「……ランベルト」


 銀色の長い髪が乱れてしまっているのにも構わず、慌てたように私の顔を覗き込む、紫の瞳と目が合った。


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