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消しカス戦記

作者: 白夜いくと

小学生たちの繰り広げる戦記物語です

『消しカス』は爆弾


※なろう公式企画

【お題で飛び込む新しい世界】参加作品

テーマ「戦記」

 我々は今、怒っている。


 遡ること給食の時間。争いの種が咲いた。クラスメートの茂樹(しげき)が消しカスを投げてきたのである。


(宣戦布告だ!)


 彼の素行の悪さはテストの点数で見てもわかる。れっきとした不良怪獣だ。我々防衛軍も、果敢に暴れる茂樹を仕留めようとした。


「こら、坂本さかもと君のシチューに消しカスが入ってしまったでしょう、みんなで反省しましょうね。はい。仲直り!」


 先生は強引に、平和をつくった。仮初の和平交渉。そんなものこの世に必要あるのだろうか。

 まだ軋轢は残っている。このまま引き下がっていては茂樹の思うがままだ。我々防衛軍は泣き虫の坂本をスカウトした。

 彼は実家が太いと聞く。だから、質の良い消しカスを開発できると思ったのだ。我々防衛軍は極貧の小学生の集まり。悪逆非道の茂樹を倒すには数が少ない。


 そこで、坂本を誘ったのだ。これはパトロン戦略。ママの小説で見た。パトロンは金持ちが我々のような者達を支援してくれるシステムのことだ。つまり、坂本そのものを指す。


 坂本は、目線を逸らして、


「やだな……関わるの、茂樹君は刺激したくないっつーかぁ」


 そう言った。


 我々防衛軍が勝利するためにはどうしてもパトロンが必要だ。だから、我々防衛軍は坂本が大好きな野球やサッカー、バスケット等に積極的に参加して交流を深めた。


「まぁ……そこまで言うなら……あ、消しゴム買うだけだからな?」


 坂本が仲間になった。

 パトロンに消しカスを補充してもらい消しカスを沢山開発した。刺々の、あえて丸い形の、粉々の、様々に開発できた。坂本のおかげである。


「行くぞ!」


 我々防衛軍は、声を挙げて士気を高め、茂樹が一人になる時間ときを狙った。


 放課後の裏庭か。うしし、何か弱みを握れるかも知れない。こっそり隠れて偵察しよう。


「にゃあ」


 猫の鳴き声がする。イレギュラーだ。


 茂樹は猫を抱えるとガンを飛ばし、「きったねぇな」と言って水道水で猫の体を洗い始めた。なに、茂樹に良心はあったのか。


(なんの魂胆がある……)


 我々防衛軍は、茂樹の姿を動画に収めて一部始終を見ていた。茂樹が独りで何か言っている。


「……は、みんな……が居るもんなのか……」


 よく聴こえない。我々防衛軍は袋の中に消しカスを入れてそーっと近づいた。いつでも反撃できるように。静かに。


智也ともや君や宏斗ひろと君達と今日も消しカス投げて遊べたな。いつまで遊んでくれるかな。前の学校では一人ぼっちだったから、思い切ってイメチェンしたんだ。それが良かったのかな……明日も、遊んでくれたらいいな」


 猫を洗い終えた茂樹。

 少しだけ背中が寂しげだった。


「なぁ、宏斗軍曹」

「……うん、行こう智也隊長」


 我々防衛軍は消しカス袋を持って、茂樹に突撃した。茂樹怪獣が笑顔で迫ってくる限り、我々の戦いは終わらない!







 fin

著名な作家様から感想がいただける機会があるかも知れないとのことで張り切りました。普段使わない言葉遣いを心掛けました。


楽しんでくれたら嬉しい限りです!

最後まで読んでくれてありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
 なるほど無邪気な子ども的ではありますが、できれば物は大切に使ってほしかった……。
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