第二十八話 うち、きっとここでやってける
カラン。
烏龍茶の氷が溶けて音を立てる。それほどの静寂。
本気で本気でうちってやっぱバカじゃん!
勝手に背負い込んで、勝手に偉そうに説教して!
何が知りたいだよ!先に言えばいいじゃん!!!!
本当にすぐに喧嘩うった感じになっちゃり、言い合いになるのは生きてる時から変わらないじゃんか……
何度も何度もそれで痛い目にあってるのに。
顔が一気に火照ってく。図星だ。
うちはだから…… あの時も。
北杜さんはこうなるって思ってたの?
誤算だったから怒ってるの?
もうなんにもわかんない!!!どーしたらよかったの???答えがあるなら教えてよ!
でも、このままじゃ駄目だ。
うちが終わらせなきゃ……
「今日はお開きにしましょう」って言わなきゃ。
そうしたら、みんな帰るはずだ。そう、元通り。
……それでよかったのかな。今はそれもわからないな。
ま、いいじゃないか。言ってしまおう。
「カシオレ。」
はっと見ると、高橋先輩がこっちを見ている。
ってか今……
「あたしは、恩もあるし、歓迎したげる。ま、まあ?これからチームになるんだし??」
「高橋先輩……」
「あらあら、ならばあさんは日本酒でもいただこうかしらね。久しぶりに。」
「キヨばあさん……」
「歓迎、させてちょうだい。大切な事気づかせてくれた天使ちゃんだもの。」
「まあ、にゃーは最初からいるつもりだにゃー。」
こそばゆい、なんて言えばいいかわからない。
ありがとう?ごめんなさい?
でも、今精一杯言える言葉を言っていこう。
「嬉しいです。」
高橋先輩、キヨばあさん、にゃーたんは微笑んでこっちらをみてくれた。
後は……
「颯斗さん、鞠男さんはどうされますか?自由にしていただいて構いません。」
またなんとも言えない空気になった。
いや、多分二人は難しいと思う……
こんな奴、いやだろうし。うちも考え直したら最低過ぎるかも。空気も、なにもかも。
あーーー!!!
「颯斗さん、鞠男さん。すみませんでした。偉そうに。
気を悪くされたなら、その、無理にしなくて大丈夫なんで!あの、その……」
「おい、新人。」
鞠男さんが膝を立てて少し苛立ちながら話してくれた。
「そうだよ、俺達の事ぜーーーんぶ知ってるように話されたのが気に食わねえ。
最初っから。変えてやるだなんだって。現状維持を望むやつもいる。俺もその一人だ。
それはわかんのか?」
「……はい。今更ですが。」
じっとうちの顔を見てるー!!!!ひいいいい。
怖いよこわい!改めて見たら鞠男さんって貫禄ある顔っつーか!なんていうか!
瞳が座ってんだよなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。
全く動かない瞳。
「わかりました。ごめんなさい。」
「あぁ。」
一気に烏龍茶を飲み干した。にゃーたんの!!!
「にゃー!!!」
「うるせぇ!てめぇは水でも舐めてろ!生きてるうちはそーだったろ!」
「今は飲めるにゃ!!!」
「うるせーなぁ。おい、新人。」
ああ、何言われんだろ……。
「……わかんねーけどよぉ。今考えが変わったやつもいる。それも事実。これが北杜が言うあっぷでーとってやつなのかもな。そんな急に全部は受け入れるくらいの度量は俺にはない。」
「はい……」
「だけどよ、何かはさっぱりだが、さっきの言葉が俺には響いた。何かに。何かが変わる瞬間?みてーなのに。
悔しいけど、おれはお前を知りたい。得体のしれねえお前が、次こんな事しないようにしてやんねーと、颯斗さんが持たねえしな。」
「わ、私ですか?」
「嫌だろ。毎回こんなズバズバ言われて、困るぞー俺等。それにターゲットにこんな事されちゃあやべーだろ。
冷静に考えろ。今回俺等だから良かったまである。
これがターゲットだったら?考えただけで恐ろしいな。そうだろ?」
颯斗さんがものすごーーーく悩んだ顔をしている。
「あ、もうしないから!!!!!まじで!!!!」
「そんな長年の癖なんてすぐに変えられるかーー!!でも、考えは直してくれ。」
「はい!そうです!」
颯斗さんはとんでもなく大きなため息を吐く。
そして目の前の烏龍茶を一気飲みした。
コップをダンと置き、うちをまた睨んだ。
「再教育だ!!!全員!再教育だ!!」
「ほう。」
北杜さんの声に少し反応していたが、無視して颯斗さんは続けた。
「悔しいが、ティアラさんの言葉は正しい。
北杜さんの言う通り、タイミングや言い方は考え直すべきだが。
こう言って意見を交換したり、交友を持ってこなかった。
今まで私達はあえて、…いや、逃げていた。少なくとも私は。」
「だから、こうなってますからねぇ。」
「北斗さん……あんたって人は。」
「しかし、ティアラさんの仰る通り。今回は私の監督放棄の責任もありますから。反省してます。
ティアラさん、初日から喝を入れていただきありがとうございます。そして申し訳ありません。」
全員がうちを見てる。
どう考えているかはそれぞれ違うけど。
でも、今やっと、この人達がうちに関心を向けてくれてるって思う。
「ティアラさん。歓迎させて。今更だけど。」
高橋さんがそう言うとみんなが各々頷く。
「ティアラさん。よかったですね。カニ鍋。食べられますよ。」
「ギリだけど。」
「あははは。でもこれが貴方の力ですから。誇ってください。また間違えそうになったら次は責任を持って止めますから。」
「……うん!」
「では注文しますよ、颯斗さんと鞠男さんとティアラさんは飲み物決めておいてくださいね!
すみませーん!カニ鍋!お待たせしました!お願いしまーす!」
「え!あ!」
そこからの歓迎会は二つの鍋にカニたっぷりでみんなでめっちゃテンションあがって。
お酒が入ると鞠男さんが逆に泣き始めたり、高橋さんが素に戻ったり。キヨばぁさんはそれを介護してた。
なんだか賑やかな雰囲気だった。
北斗さんはずっと鍋奉行をしていて、ずっとずっとみんなを見回っていてやっぱり凄いなって思った。
にゃーたんはたらふく食べたら昔みたいにうちの膝の上に丸くなって寝ちゃった。
すっと隣に颯斗さんが座ってきた。
え!!!あ、これ怒られ……たり?




