第二十六話 うち、はっきり言っちゃいます
「もう、やめるにゃ。」
「にゃーたん……」
「にゃーが悪かったんだにゃ。二人とも、ごめんにゃさい。」
そんな事言われても……
あれはきっと誰も悪くなかった。てかそうなんだ。
ちょっと意思が絡まったっていうか、伝わらなかったというか、そむけてきていたと言うか、なんかそうゆーやつだから違うの。そうじゃないの。
あんまここの人のことわかんないけど!
でもさー、あーなんて言えばいいんだろな?
言いたいことがぐちゃっと頭で回っていく。
どうやったら傷つけずに済むんだろう。
「にゃーたんは悪くない。…ティアラさんも。」
「そ、そうだよ!うちらみんな……」
「あたしが、悪かった。」
「いちご……」
何か言おうとしてるけど、言葉が見つからない。
またあんな苦しそうな思いさせたくないし。
……あ。
うちらってこうやって人の事考えて生きていくべきだったんだな。ずっと。
考えてきてた気でいたけど、内面までは当人にしかわからない。
こうやって爆発するまで、ここの人たちも高橋先輩の嫉妬に気づかなかった。
そう、黒煙がでるまで。
「いや、連帯責任っすよ。これ。」
「ティアラさん、今なんて言いましたか?」
「連帯責任でしょ、この結果って。」
「おい、北杜。私は今からこいつを黙らせるいいな?」
「あはは。お好きに。出来るならね。」
「な」
「話を、しましょう。みなさん。高橋さんもにゃーたんさんも座って。
すみません。一旦烏龍茶人数分で。お願いします。鍋は少し待っていただけますか?」
北杜さんが緩やかに進行する。うちに目をむけニコッとした。
この人は、うちの気持ちを組んでくれている。それがわかる。
だから信じて話し始める。
「まず、今回高橋先輩の事情を知らなかったとは言え、追い詰めてしまった事。黒煙を出すきっかけを作ってしまったこと。にゃーたんにも無理をさせた事。
ごめんなさい。黒煙の原因の一部はうちにある。それは理解した。」
「……まずは及第点の回答だ。そうだ。しっかり自分のミスの把握をしているし謝罪もこうやって当日中に行えている。
正直、事情の知らない新人という状況の中でここまでに言葉が出てくるのは驚いた。
見かけによらず、状況把握が早く、何が起きてどう行動すればいいか考える頭はあるらしい。それは認めよう。まずはその謝罪を受け入れよう。」
「なんかむずい言葉ばっかだけど、わかっていただけたならいいです。」
堅苦しいけど、颯斗先輩は結果などには対等に評価してくれるんだな。
それは有り難いかも。今後、助かる。そして、今から言うことも納得してもらったら……
「しかし!先程お前はこの問題を連帯責任と言ったな?」
「はい、言いました。」
「……っ!許せん!!!何故私達まで巻き込まれなければならんのか!」
「えーわかりません?」
「お前…… 本気で言ってるんだな?その連帯席んとやらは!」
「はい、黒煙の件は北杜さんを含むここにいる全員の問題だと思います。」
部屋全体が一気にどよめいた。
そりゃあそうかも、罪の意識がないなら。
「ああん?んだとてめえ!俺は関係ねえだろ!?」
「あんた何言ってるの!?キヨばあはあたしに寄り添ってくれた。罪はないじゃん!ふざけんな!それににゃーたんだって……」
「まあまあ話を聞きましょう。僕も悪いみたいなんで。ね?」
「北杜さん…… ごめんなさい。ありがとう。」
「じゃあ、うちの意見ね。間違ってたら言ってほしいです。
あのさ、まず仲間が困ってるのに気づいて行動してる人少なくないです?」
「はあ?だからキヨばあが……」
「じゃあ聞きます。キヨばあさんに話してさ、すっきりはすると思うんすけど解決に至ったことってあります?」
「え」
うちは心苦しいけどキヨばあと顔を合わせる。
まさか自分が言われるなんて夢にも見ていなかったと思う。けど、言わなきゃ。
「キヨばあさんは優しくて、すぐ話も聞いてくれて。そんなイメージ。まだ。
だからわかんないけど、どうして高橋さんが間違ってることをしてるって言ってあげなかったんですか?」
「そ、そりゃあ……」
「ほら、気づいてるじゃん。」
一気に視線がキヨばあに向く。全員が驚きに満ちた顔で、言葉を失う。
「きっと沢山話、聞いてたんですからわかってたんだと思う。
高橋さんがにゃーたんに異常な程に依存してること、ううん。きっと他にもあった。
でもキヨばあは優しいから、指摘は出来なかったんじゃない?」
「……ねえ、ティアラちゃん。なんでそう思うんかなあ?」
「お茶運ばせたの。高橋さんから絶対理由聞いてるって思うから。そうじゃない?
じゃなきゃ優しいキヨばあなら普通に部屋に運んでくれてたはずでしょ?」
沈黙。
「そう、なんですか?キヨばあ。」
「……ティアラちゃん。負けたわ。そうじゃ。ばあさんはいちごちゃんから理由を聞いた上でお茶を託したわ。そう、今までだって。」
「そうじゃんね。」
「新人とにゃーたんが仲良くてずるい。取られちゃうって泣かれてつい……」
「はー。甘いんだよ、ばあさん。いつも言ってるだろ?ガツンと言ってやれって。」
「あんなあ!昔はそうだったわ!!!!!!!!!はっきりもの言えばなんでも聞いてたんだから!じゃけど今は違うんじゃ!」
キヨばあが急に怒鳴った。その表情は、まるで……鬼だ。
息があがり、一気に吹き出た感情にみんな固まるしか無い。
「キヨ……ばあ?」
「ごめんねえ、みっともない所みせちゃって。ティアラちゃん。」
「はい。」
「あまり今は離す機会じゃないけん、詳しくは省くけど、ばあさんの時代は男の言うことは絶対。何をされても逆らえない時代じゃった。
昔からそうやってひどい目にあってきた子の話を聞くことがばあさんの役割だと思っとった。はー……そうじゃねえ。今もずっと、思ってたんかもしれんね。」
「……うん」
「天国に来て時代が変わって、考え方も更新しているつもりじゃった。
でも今、ハッっとしたよ。……そうじゃな。
ばあさんは話は聞いても、解決になんか導こうなんて思った事はなかったんじゃ。」
「うん。」
「そりゃあ、聞いてるだけじゃ、うまくいくはずないね。
いちごちゃんは何度話を聞いても黒煙を起こしてた。だけど、正直わからなかった。
あんなに聞いたのに、なんでじゃって。時間をとって、誰よりも話したのにって。
その時間はなんじゃったんんじゃろなーって。実は悩んでたんよ。」
「嘘、キヨばあ!違うの!あたしが悪くて。」
「いいや。今目が覚めた。いちごちゃん。ごめんねえ。ばあさん、話し聞いてただけで一緒に解決したり、助けたことなんてなかったねえ。」
「そんな事ない。さっきだって……」
「黒煙に毎回入っているのだって、どこかで自分のしていることが間違ってないって言い聞かせたかっただけなのかも知れない。本当の意味でいちごちゃんを救うつもりがなかったんじゃ。ごめんねえ、ごめんねえ。」
わあっとキヨばあが泣いた。
でもうちはそれがこの人の優しさで罪だと思った。今みんな動揺している。
きっと今、前代未聞の事が起きているから。
でも、うちはここをもっと優しい場所にしたい。
「お前、キヨばあが泣いてるだろ!」
「でも事実だと思う。今キヨばあが言ったことは。」
「目上の人に言う言葉か?」
「仲間に上も下もないよ。うちはそう思ってる。」
「はあ…… おい!北杜!」
「いえ、私は同意見です。ティアラさん、続けて頂いたほうがよろしいかと。」
「なんだと!」
「さあ、どうぞ。ティアラさん。」
うちの意見をぶつける。
喧嘩になったっていい。
話せるから人間っていいんだってパパに教わった。
きっと、北杜さんがうちにしてほしいことだろうから手のひらでコロコロー感半端ないけど。
いいよ。そこでうちは踊ってやるんだ。




