第二十二話 うち、資料読めないなう
「だあああああああ!ムリムリムリ!!!」
「なんにゃあ!」
「文字読むの嫌いなの知ってるでしょ!?国語が一番苦手だったって!うち資料とか見れんってーーーーー!」
「まだ読み始めて五分もたってないにゃーーーー!!!!!!」
自分でも壊滅的な欠点だと思っていたが、文字を読む集中力がない!圧倒的にない!
文面のやり取りよりしゃべった方が百倍早いし!気持ちも伝わりやすいじゃん!
小説とか、小学生の時に読書感想文書かされた時【面白かった、イケてる】って書いたらまじでゲンコツ飛んできたもんな。
「ティアラ!これは仕事にゃ!少しは頑張るにゃ!」
「ぐぬぬん」
「働くとはそういうことにゃ。社会の厳しさを思い知るにゃ!
にゃーも最初は絶望したからわかるにゃ?ゴロゴロして自由に甘えたりするだけじゃ生きていけないにゃんて!でも、現実そうにゃ!」
「しっかりしたねえ、にゃーたん……」
「次はティアラが頑張るにゃ!!」
「えーーーん!」
やる気にならないことをやるって結構頭使うからなー。
だけどあんな啖呵切ってここに来たわけだし、なによりにゃーたんといたいし!
ちょっとだけ、ちょっとだけ……
そうは言ってもかなりの文字量。目眩がするな。
「別にゆっくり読むにゃ。」
「え?でも」
「誰も最初から完璧なんて求めてないにゃ。特ににゃーはティアラが文字が苦手なのは今に始まったことじゃないのを知ってるにゃ。
そんにゃ事気にせず、やることをやってみて挑戦してみる事が大切にゃ。
にゃーはここでそう教わったにゃ。だから、やってみるにゃ。頑張るにゃ!」
「にゃーたん。……うん。そうだじゃんね!やってみなきゃわかんないよね!もうちょい頑張ってみる!」
「ん!にゃーはティアラに飲み物を用意させてくるにゃ。待ってるにゃ。」
「え!?いいって!」
「ここの人にやり方を聞くのもいいかもしれにゃいだろー。」
そう言うと、扉下の小窓から出ていった。
いやそこに出入り口あったんかい!!!!
もう一度、頑張ってみよう。
勉強みたいに、メモとペンを持って書いていってみる。
【初めての仕事! 鬼塚充 藤田夢子 ラブラブ大作戦!
天使ってばれたら駄目!バレずに二人をくっつけるのがうちの仕事!
鬼塚充優しいけど、顔怖すぎて人と距離を取られがち。夢は食堂を持つこと。
友だちは一人だけいるが、それ以外の交友関係はあんまない!
好きなのはイチゴのクレープ(ポイップ多め)
昔、顔が怖くて強いと勘違いされてヤンキーに喧嘩をしかけられた。
運よく警察が見つけてくれたから怪我は無かったが割とトラウマ。
(まじありえん。)
藤田夢子女をモノみたいに扱う頭おかしい村に生まれる。(まじムカつく!)
抜け出すべく、こっそりお金をためて半ば夜逃げのように上京。
上京してからはばれずに、大学生活を過ごしているがまだ普通がわかんな
い!その上、結局どうなりたいかがわからないまま3年過ぎてる。
友だちはいなくて、上辺な関係の子はいるみたい。
猫カフェに行くのが趣味。(いいね!)
☆任務内容☆
二人は同じ大学に通っていて実は帰り道がほとんど一緒。
ある日、木から降りられなくなった猫と降ろそうとする少女に同時に気づいてもらう。三人で救出。
ここで会ったのも……! って事で猫の入れるカフェに。そこで互いの共通点や話が弾むように誘導。連絡を交換させる。
んで、何回か様子を見に行きながら告白を促していく。】
なんとなく資料をまとめたらこんなもんか。
頑張って自分なりにまとめるとこんな短いのか。なんだラクショーじゃん!
「にゃーたん出来たよ!」
「にゃーーーーたんカワイイカワイイねええ。はすはす。」
集中して気づかなかったが、そこには高橋さんがにゃーたんを猫吸いしている姿が。
あ、なんかそんな感じじゃなかったじゃん!!!えええ!?
「いちごー。そろそろ仕事に戻るにゃー!」
「やだやだやだー。またどーせ落ち込んでる子の話聞くやつだもん。やだずっとこうしてるー!にゃーたーーーーん。」
「あのお……」
「ああ?新人?ちょっと黙ってて?」
「あ、ハイ。」
「にゃーたん今日はうちに泊まってよー。いいでしょーーーー?」
「今日はその、あの。」
「今日はー魚買って帰ろーよ!近所のスーパー特売だったし!」
「今日はその、ティアラが、」
「あ、新人ちゃんにはいつでも会えるようになったし、いいじゃん!」
「いやそういう意味じゃなく……」
「新人、いいよね?ね?先輩の言う事だよ?」
「いちご!聞くにゃー!」
スルッと高橋さんから離れたにゃーたんは、身体をフルフル震わせた。
高橋さん、めっちゃにゃーたんの事気に入ってくれてんだな。
元飼い主としてはなんか複雑だけど、きっとにゃーたんも寂しくなかっただろうし、良かった。
でもこれは……
にゃーたんは高橋先輩に向かって言った。
「今日は、ティアラのところに行くにゃ。」
「ええ!」
「はああああああ?なんで?」
「今後の会議もしたいし!にゃ!?一応研修任されてるし?にゃ?」
「業務外じゃないそんなの!」
「久しぶりに会えたし、その、一緒にいたいのにゃ!」
「うぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ」
高橋さんがキッと私を睨んだ!ひいいいいいいいいい
「新人。」
「ティアラですう。」
「ティアラ。さっきもあんま認めてなかったけど、にゃーたんのことはそれ以上に、認めない。元飼い主かもしれないけど!ここでにゃーたんと一番仲がいいのはいちごなんだから!勘違いしないでよね!?」
「高橋先輩。そのにゃーたんはにゃーたんなので、その意見を尊重されては?」
「いちごとにゃーたんは仲良し!ね?」
「にゃ!そうにゃ!にゃーはみんなと仲良しにゃ?」
「い・ち・ご・と・!」
にゃーたんを見ると、割と困った顔をしていた。
ママと喧嘩した時、家出して一緒に来てくれた時、部活辞めたて泣いた時。あの時の顔だ。
「……いちご先輩。」
「だから高橋って……」
「いや。今はにゃーたんが好きで堪らないいちご先輩に話すっす。」
「……ふうん。いいわ。何?」
「まずはにゃーたんに良くしていただきありがとうございます。元飼い主として、亡くなってしまってから寂しくしていないか。ずっと考えてたから。きっといちご先輩がいたから楽しく過ごせていたんだと思います!嬉しいです。」
「……ふうん?わかってるじゃない。ここに来てから研修をしたのもあたしだし、お互いの家に泊まる仲なんだから。寂しくさせてないわ。感謝してもらって良かったわ。」
「でも、少しだけ、にゃーたんの気持ちを汲んでよ。」
「は」
にゃーたんはうちの足によじ登ろうとしたが、頭を撫でて「大丈夫」と言った。
「いちご先輩にこれからにゃーたんと仲良くしてほしいです。だから、言うっすね。
先輩が一方的に甘えるのは違うくないですか?」
「はあ?あたしが?何を?」
「だって、さっきからにゃーたんの言葉なんて聞かないで、マジあり得ないっていうか。
もう少しにゃーたんの言葉にも耳を傾けてほしいっす。
今の関係って、いちご先輩のわがままに付き合ってるにゃーたんに見えるっす。」
いちご先輩は黙った。
にゃーたんはとても困った顔をしている。
うちもどうしたらいいかわからなかった。でも言わなきゃならないかった。
どうしようもない時間が、過ぎていった。
机にお茶があるのに気づく。
冷めちゃうな。そんな事をふと思った。




