第二十一話 うち、自分のスタイルを考える?
「じゃあ、そろそろやるにゃ。」
ひらりと慣れた様子でスクリーンを出して、タブレットをタタタと触っている。
生きてるときには考えられない行動だが、今のにゃーたんにとっては日常なんだな。
すっげ、まじで。猫ってここまで出来るもん?
呑気に考えていたら、スクリーンに【愛のキューピットチームについて】と書かれている。
「ここの仕事は数少ない、外界に行き天使とバレることなくカップルを成立させるものにゃ。上層部からデータで来たターゲットと相手をどうにか会わせるきっかけをつくったり、話し相手になって後押ししたり、合コン潜入したり。やり方は人によっても状況よっても様々にゃ。」
「へえ、決まってるわけじゃないんだ。」
「日本人はどこか後押しが無いとうごけなかったり、きっかけがないとって性格の人が圧倒的に多いにゃ。それを手伝う形になるにゃ。」
「うーん、確かに。」
マキも今の彼氏になるまでめっちゃ話聞いたもんなー。
決断がぱぱっと出来る人ってなかなかいないイメージはあるかも。
「ただし!天使とバレた場合は罰ではなく一発アウト、輪廻の輪からも外れるにゃ。これは聞いたにゃ?」
「北杜さんからちょっと。確か記憶がなくなって地縛霊にって。」
「そう、何度もそれで同僚を失ってるにゃ。だからとても難しい仕事にゃんだ。
約束してくれるにゃ?絶対に消えないって。」
「にゃーたん。」
本当にここのチームの人は優しい。凄く心配してくれてんだ。
会ったばかりのうちに、そんな感情をぶつけてくれていたし。
でもにゃーたんは違う。
もっともっと本気だ。
うちも二度と会えなくなるなんて嫌だ。
「わかった。そうならないように、指導もお願い。」
「……にゃ!」
ここからはひたすら過去問題を例にしてやり方を説明される。
そこで個々のやり方もなんとなくわかってきた。
颯斗さんは元役者らしく、どんな方法もやり遂げるトリックスター。
合コン潜入、一瞬だけ親友のようになったり、バーの店員でさりげなくアピールする手伝いなんかもするらしい。
役の作り込みもあり、前回成立した方とすれ違っても気づかれないほどらしい。すっげ!
とりあえず、難しい案件は彼に行くことが多いらしく件数も段違いなんだとか。
高橋さんは女性部門のプロ。どちらかと言うと、危ない奴と付き合ってる人を助けて正しい方に導くかなりしんどい事が多いらしい。
カフェでのおしゃべりや、推し活仲間として潜入してSNSも駆使した現代っ子らしいやり方が得意みたい。じゃあ歳も近いのかな?
キヨばあちゃんはまじで外界に占いの館を構えているだって!外界では占い師として有名らしく、ダイレクトに導いたりするらしい。そうか、こっちはターゲットの情報があるんだから、的確に言うことが出来る。
だから外界ではめちゃ当たると、連日忙しいらしい。
常設。そんなやり方もあるんだ。溶け込み系じゃん。
鞠男さんは基本夜勤の人で、毎晩ターゲットと一緒に飲み屋に行って話を酒の力で聞き出し後押しする系らしい。
主に40代あたりからがターゲットにしており、熟年再婚させたり、今まで恋愛に縁がなかった人を導いていくみたい。
まあなんかわかんないけど、飲み屋に一人はいるよなって見た目だったし、そういう場でああいう感じの人って染みる感じがする…… かも?
「にゃーたんは?」
「にゃーはシンプルにターゲットと仲良くなって、ある日突然二人が出会うように誘導してそこでごろごろしてるにゃ。」
「…… それだけ?」
「猫っているだけでいいんだにゃ。」
「確かにー!!!」
「だから結構自由にやってるにゃ。黒猫で特徴もあまりないし、天使なんてバレるはずもなく。ここは極楽な場所だにゃー!」
猫って…… 確かにここは仕事にするなら天国かも。
「と、こうやって皆長年かけて自分のスタイルを見つけているにゃ!
そこまでに何度もみんな危険な目にもあってる。だからティアラ、自分のスタイルを早めに見つける必要があるにゃ!!!」
「う、うん!そうじゃんね!」
「でも、ティアラ。おみゃーには他の人にない、欠点があるにゃ。」
「ええ!?何?」
「今から、嘘をつくにゃよ?わかったね!?」
「わかった!!!」
にゃーたんはじっとうちを見つめている。
え、何、緊張するんだけど。まじ、何。
「......ティアラ 最近美味しかったものは?」
「えっと、桜花さんとこのオムライスかなあー。めっちゃうまかった。
あ、今日の朝のモーニングもめちゃ安いし美味しくって!!! ……あ。」
「昔からだから今もだと思って試したけど、やっぱにゃー。
そう、ティアラは嘘が全くつけない!!!!!!!!!」
「た、たしかにーーーーーーーーーーーーーー!
で、でも嘘つく必要ってある?正直者はいいじゃん!」
「人間ならにゃ。でも天使は?」
「え」
「どこに住んでる?今から行きたいと言われた時、なんて答えるにゃ?」
「あ、」
そうか、天使ってばれない為には多少の嘘も必要ってことか。
え、やばいじゃん!そんな嘘なんてつける?
いやいやいやいや。
「今までそんな事したことないもん!やべえええ!」
「という訳で、ある程度、慣れてもらうまでは研修としてにゃーと一緒に行ってもらうにゃ!」
「え!?にゃーたんと!」
「喜んでいる場合か!あのにゃ、独り立ちはいずれしてもらう。その為の研修!」
「は、はい。すみません。」
「ちょうど次の案件が来ているにゃ。スクリーンを見るにゃ。」
すると、スクリーンに男女二人が映し出され、名前や情報がずらりと並んでいた。
誕生日や、出身、趣味や、歴史。もう本当に全てがかかれていた。
「ターゲットは鬼塚充。大学3年。彼女は今までナシ。名前と見た目で凄く誤解を受け続け、恋愛とは縁がなかった。しかし、誰よりも優しい一面もある。
家族には姉がおり、女の子への立ち振舞は叩きじょまれているから無礼な事はない。
料理が趣味で、いつか自分の食堂を作ることが夢。
ここまで大丈夫にゃ?」
「一旦?」
「じゃあ、相手。藤田夢子。大学3年。大学デビューで上京。男尊女卑の田舎の村にいた頃に彼氏がいたがひどい目に会ったため、彼氏作る気がない。」
「え?ないんじゃだめじゃん!」
「最後まで聞くにゃ。彼女は大学で男性の克服も出来ず、未だにやりたいことを見つけられていない。」
「うー、うん?」
「今回はこの二人をカップルにするにゃ!」
「えええええええ。でもこの夢子さん?だっけ?と充さんって合うの?そういうもの?」
「上層部の言うことは絶対にゃ。それに根拠の資料もある。
今、この資料と根拠をスマホに転送したにゃ。自分で読んでみるにゃ。」
うちは送られてきた資料に目を通す。めっっちゃ漢字!!
くっそーーーーーーー。検索をかけながらちゃんと最後まで読まねば。
「ティアラ。」
「何!今忙しい……」
「いちごからちゅーるもらってるにゃね?よこすにゃ。」
「な、なんで知って。」
「いちごは優しいからにゃー。」
「めっちゃ懐いておる、うち以外に。」
「にゃーーー」
ちょっと複雑な気持ちで、ちゅーるを渡した。
にゃーたんは嬉しそうに食べている。うちの特権が!
そんな少し悲しみがありつつ資料を読み進めるのであった。




