第十九話 うち、友だちになりたい
「と、言うことです。皆さん。よろしくお願いします。」
北杜さんがきっちり頭を下げたものだから、今回ばかりは本気なのだとチームの皆が感じていたのがわかる。
きっとこれは珍しい光景なんだろなー。
4人は顔を見合わせて、慌ててたり、呆れていたり、イライラしたり、おっとりしている。
「ティアラさん、迷いは無いですね?」
「うん、北杜さん。ありがと。」
ぶっちゃけやられたーってかんじだけど。でもうちは話していきたい。
「ひ、人助けなんていらないです。あたしは一人でもやっていけますし。」
「同感です。私も仕事も成績も問題ありませんから。」
「まあまあ。いいことじゃない。新しい風が吹いたってことじゃけーな。」
「俺は納得いかねーぞ。」
「は?今のあんたの空気の壊し方自覚しな?やべいからね?」
「ああん?」
「その高圧的なのやめな?意見言いにくいし、話しかけづらい。」
「んだと!」
「てか、仕事の時もそんな喋り方なの?まじで聞きたいんだけど。」
「そ、そりゃあ。」
「ああ、鞠男さん記録映像は僕の資料にあります……」
「あーーーーー!わかったわかった!ちげえよ!仕事の時はしっかり話してる。」
「やっぱりー、出来んじゃん!」
きっと鞠男さんが睨んでくる。
まじで罰の線引が曖昧過ぎてそろそろキレそう☆
「うち、皆とチームになるなら。皆と、友だちになりたい。」
「「「「はあ???????」」」」
「4人がやっと同じ事を発言したじゃん?逆にびびるわ!」
「友だち……久しぶりにきいたわ。」
「そよねえ、高橋さん。びっくりしたわ。」
「バカ言ってんじゃねー!」
個々になんだか呆れ返った空気に。うちは本気で言ったんだけど。
だって、仕事仲間でもなんでも話せた方がいいしな。
「……大島ティアラさん。でしたっけ。」
先程と同じように颯斗さんが目の前にやってきた。礼儀作法はあるようだ。
でもさっきよりも気迫がある。圧倒されそうになるけど、ぜってー負けない。
「友だち、だって?貴方は未成年みたいだから教えてあげますけど、個々は職場だ。
遊びに来ているわけじゃない。個々に皆仕事をしている。それなりの成果もあげている。
仲良しごっこしているチームもここにはごまんとある。そちらを紹介してもらえばいい。」
「でもさっき、ここが笹森さんに差別されているって言ってた。悔しくないん?」
「……全く。と言えば嘘になるな。しかし、私達にはプライドがある。
誰にもなし得ない、とても難関な仕事をこなしていると。
リスクも最も高く、時間がかかる。 罰でなく天使であるとバレれば一発アウト。
そんな環境下で働いている恋愛科のチームは他にはない。
人員が減ることも多いが、……今はいないが5人でやってきたんだ。」
あれ……?もっと何か言われると思ったけど。なんだか、言葉の節々から優しさを感じ取ってしまった。なんだ?この違和感ある言い方。
だって、さっき差別されていることに皆悔しそうだった。それに颯斗さんもそう今認めた。
でもこのままでいい。どうして……
「ちょっと、話すけど。」
そういって高橋さんが急に立ち上がった。いきなりだったからびっくりした。
でも、なんでか号泣している!?
「え!?ちょ、大丈夫!?」
「来ないで!!!」
「高橋さん、落ち着きぃ。ほらお茶。」
「キヨばありがとう。 ……あのさ。わかんない?颯斗さんが言ってること。」
「え?」
「あんたバカァ?」
「はあ?!」
「颯斗さんはこう言いたいの。
すぐに居なくなるかも知れない危険なチームに未成年が入るな。
ましてや友だちみたいな絆を作らせそうとしてんじゃないって!想像出来ない?
あたしたちは悔しいよ、のけもんにされるの。でもそれがいいの。いつか急に別れが来るかも知れないから。友だちなんて…… 友だちなんてほしくないの!!!!!」
あ……
「こんな優しく言ってるんだから。出てってよ。このおっさんはともかく、あたしたちは貴方にまで悲しい思いさせたくないの。わかってよ……」
「んだとコラ!」
そうだよ。ここにいる人は天国にいる天使なんだ。悪い人なんていない。
不器用だったり、時代が違って順応出来なくて空回りしてる人ばっかじゃん。
じゃあここの人だってそうに決まってるじゃん!
なんで気づかなかったんだろ。特に颯斗さんはうちの目の前で毎回意見を言ってくれた。伝えようとしてくれていたじゃないか。
うち自身の無知さとか、その経験のなさとか、そーゆーもの全部が皆を傷つけたんだ。
「仕方ないじゃろ。」
キヨさんがうちにお茶を持ってきてくれた。凄く高そうな湯呑み。
ゆっくり受取り、「ありがと」と言っていただく。ほっとする、味だ。
「あんたらじゃって、若い頃があって今があるじゃろ?じゃけーお嬢さんの意見は本当に思っとる事なんやと思う。」
「それはそうかも知れませんが……」
「ばあさんはね、毎度煩いほどの意見のぶつかり合いも、失った時の静寂も見てきた。
それが普通になってしまってしまったかもしれんな。
ここが、心が少しも動かん瞬間が合ったんじゃ。良いんか悪いんかわからんかった。
けど、今、お嬢さんに友だちになりたい言われて、ばあさんは嬉しかった。」
「ほん……とう?」
「ああ。ばあさんは死ぬ前にはまあすごーく前の話じゃけどな。先に友だちが死んでもうたり、病院に入ったり。結婚もしてなかったけんな、一人で死んでもうた。
じゃけんな、孤独で出来るこのチームに入った。慣れて取ると思ったけんな。
……そうじゃなかったんじゃねー。今更気づいた。ばあさんも友だちが欲しかったんじゃ。」
「キヨばあ、こんな話してるの初めてみた。」
「高橋ちゃんとはよく話すけどね。でも皆にはなかったな。
ティアちゃん、私は富田キヨ。友だちになってくれるかい?」
キヨさんが手をすっと出してくれた。うちは嬉しくって、思いっきり抱きしめた!
「あらあら。」
「……よろしくおねがいします。」
「キヨばあ!いいの?本当に!」
「高橋ちゃん。いいじゃない。この子は根性もありそうじゃし。だって初対面の私達にあんな啖呵切って話せるなんてすごいじゃない。
ばあさんに出来る事はこの子を失わないようにすること、かしらねえ。」
「俺は認めないからな!」
「はいはい、鞠男さんはずっとそうしてないさいな。」
「な」
「キヨさん。」
颯斗さんはキヨさんの前に行く。やっぱりすごい人だ。
「……いいんですね?私は出来るだけの忠告はしました。
そのうえでのご判断ですね?」
「颯斗ちゃん。そうよ。きっとこの子は、うまくしてくれるわ。北杜さんの推薦ですもの。」
「ええ、僕もそう確信しております。」
「……でしたら。大島ティアラさん。降参です。
ようこそ、恋愛科、愛のキューピットチームへ。私は辻井颯斗。ランクSS。
さあ、皆さんもご挨拶を。」
ため息を付きながらも皆が横に整列する颯斗さんが上司なんだ。
「あたしは高橋いちご。苗字で呼んで、恥ずかしいから。ランクSS。」
「ばあさんは富田キヨ。岡山出身じゃけー方言がわからんかったら言ってくれたら説明するけん、よろしくね。あ、ランクSSじゃ。」
「……」
「鞠男さん。」
「……合田鞠男。ランクSS。」
「じゃあうちも改めて。大島ティアラ。今日からよろでーす!!!
てか!みんなランクSSって凄くないすか?びびったんだけど!」
「他のチームと違い、チームでの成果が反映されるのではなく、自分自身の成果のみが乗るのでこれくらいは。」
「へーそうなんだ!じゃあすごいじゃん!楽しみ!上司は颯斗さんでいいのかな?」
「いや、うちのボスは……」
ちりん
奥の窓から飛んできたものの鈴がなる。
レースカーテンからシルエットが見える。動物だ。
でも、うちこの音、知って……
「おかえり、にゃーたんさん。」
「あー、疲れた。あ、北杜!いるなら魚よこせ!」
赤い目の大きな赤いリボン、大きな鈴をつけた黒猫。
間違いない。
「にゃーたん……?」
「にゃ?」




