第十五話 うち、意見曲げらんないから
部屋の中にうちは強い意思で入っていく。
キッと睨んでくる笹森さんとなんとかなだめている志島さんが椅子に座っていた。
「失礼しまーす。大島です。」
「挨拶もろくにできないのね、本当常識もない。」
「な!」
「笹森さん、僕からお願いです。ティアラさんのお話を聞いてあげていただけませんか?」
「はあ?なぜですか?」
「折角久しぶりに入った新人さんです。大切にしてください。」
「……でも」
「笹森さん。お願いします。」
北杜さんが頭を下げてくれた。めっちゃびっくりして咄嗟にうちも同じようにする。
沈黙が続く。その中、志島さんがなにかこそこそ言ってるのがわかる。
「わかりました。話させてもらいます。」
「わかっていただけて良かったです。では、ティアラさん。どうぞ。」
敵意があるのはわかってる、でも譲れないものは守りたい。
それに、北杜さんがこんなに頑張って繋いでくれたんだ。
この場面ができたことがラッキーなんだから、ちゃんと話す!
「笹森さん。さっきはババアって言ってごめん、なさい。まじでそこは言いすぎた。」
「……」
「でもさ、最初から、見た目とかで判断されたのはやっぱり納得いかないっす。
うちバカなんはわかるけど、でも、意味なくここに来てないし。
理解されんかもだけど、うちなりに天使としてここに来るために準備してきた。
だから、うちの事、もうちょい知ってほしいっていうか。」
「知ってるわよ、資料は読んだわ。」
「そうじゃないっす。うちを今、みてください。」
ずっと下を見続ける笹森さんに志島さんが促してやっと目があった。
「初めまして。大島ティアラです。」
「…… 事故でここに来たって。大変だったわね。」
「はい、こんな早く死ぬ予定無かったので。」
「そうよね。17歳、だものね。」
「はい。」
笹森さんは言葉をすげー探して、めっちゃ考えて話してた。
それを支える志島さんはとても信頼できる右肩のような存在なんだろうなと思う。
「どうして、ここを選んだのかしら?」
もう一度同じことを聞いてくれた。これが一番聞きたかったんだな。
「私には、その、不真面目でよくわからない人がきて。本当にどうして恋愛科を選んだのかわからないの。真剣にやってくれるのか、とか。
でもそんなはしたない格好で、その。今は普通なのかも知れないけど。えっと、
とにかく、教えて。どうしてここだったの?」
北杜さんが少しうちの背中を押してくれた。
言って良い。うちの、気持ちも、意見も。
「ぶっちゃけ、最初は給料でした。斡旋してもらって、一番下にここがありました。
で、質問したときに、受付のおっさんに言われたんです。
【恋愛経験がなくとも、貴方には人の事を考え行動出来る生き方をされていたので、
その経験をいかしたサポートが出来ると確信しておりますよ。】って。
そん時さ、うちこんなに期待された事無かったなって。思った。
当たり前に誰でもできることを当たり前にこなしてきたつもりだった。
人に優しくしてもらいたいだけ、だからうちもそうしてただけ。ズルい奴だって。」
「やっぱり。」
笹森さんはもう一度ため息をつく。でも、負けない。
「でも聞いて下さい!ここに来てうち色々気づいた事があります!
人は一人ではうまくいかないことも沢山あって、でも人は、助け合えるんだって思ったんすよ!
考えることも、遊んだりとか、なんかを食べるんも、誰かと一緒にさ、できるんだって。
生きてる時、当たり前に感じていた優しさとかに甘えていたんだなって思った。
だからさ!ここでは常に自分を持ち続けなくちゃならないんじゃねって。
自分の気持ちや、やりたいことも、伝えなきゃならないって。
天国で後悔した生き方したくない!いや死んでるけど!でもうちは、したくない!
だから、ああやって馬鹿にするやり方は嫌っす!!!やめて。」
「笹森さんも馬鹿にしたわけじゃないんです!」
大人しそうな志島さんがやっと口をひらいた。
「すみません。ティアラさん。お気持ちわかりました。でも違うんです!
仕事に真剣になってるあまりに、最新の情報に疎くて。
特に令和になっての新人さんは初めてでして。その、戸惑ったといいますか。」
「志島さん。ありがと。……うん、でもやっぱうち、さっきめっちゃ傷ついた。だから謝って欲しいんっす。それを言いにきました。」
沈黙がまた流れる。笹森さんが口を開かないのはプライドの高さなの?
なんなのかわかんないよ。
でも、何かを変えなきゃ、始まらないから。
「うちはうちの考えを今は曲げる気はありません。」
どうにかなるくらい重い空気。でもここで負けられない。
すると北杜さんが一歩前に出た。
「笹森さん。アップデート。いつも言ってるじゃないですか。
時代は変わります。人によって考え方も。今は令和です。
今までは貴方が怖くて意見する人はいなかった。
しかし、今はこうやって言ってくれる方がいらっしゃいます。
時間がかかってもいいので、どうか耳を傾けてほしいです。」
「……少し、時間がかかります。でも、大島さん。一つだけ、言わせて。」
「はい。」
ゆっくり立ち上がった笹森さんは先程より落ち着いたように見える。
小さな声で北杜さんが「大丈夫」と言ってくれた。
ぐぐぐと口を開くのに時間がかかる。でもこういった。
「よろしくおねがいします。」
ゆっくり頭を下げてくれた。これが笹森さんの今の精一杯なんだ。
「うん、よろです。」
「ティアラさん、良かったですね。」
「北杜さんがいあたからっしょー。」
「あはは、僕は隣にいただけで。」
「和泉さん、他の方々の挨拶を……」
「ええ、わかってますよ。あなたは少し休んで居たほうがいいと思いますので。
志島さん。引き続きお願いします。」
「はい、おまかせを。大島さん、よろしくお願いします。」
そう言って、一礼して部屋を出た。
するとそこには従業員がズラッと聞き耳をたてていたようで並んでて焦った。
「あー!聞いてたんすか?」
「いやあ気になってさ。」
「ごめんなさいねー、あはは。」
わっとみんなが取り囲んでくれた。
恋愛科はとてもいい雰囲気なのがわかる。
「今いるのは夜の担当の方と朝の担当の方です。順番に挨拶していきましょうか。
お休みの方もいらっしゃいますが、そこはまた後日ということで。」
「あー、うち名前覚えるのまじ時間かかるから勘弁してね。」
「後でお渡ししますが、みんなプレートが配布されます。そこに名前が書いてますよ。」
「え!?」
そう思って目の前の女性のプレートを見ると
【矢丘みすず ランクC】と書かれていた。
「あーランクとかも書かれてるんすね。」
「はい、なので更新されていくものなので、ランクについても後ほど説明します。今は挨拶を。」
「はーい。」
そこからは一人一人と挨拶していく。
なんとなくわかったのはランクは最低はF。そこからあがっていくらしい。
みんなびっくりするほど人あたりがいい。確かに人をつなげる仕事だからな。
だったらなんで笹森さんはランクあんな高いんだ・わかんねー!
全員と挨拶し終えたのでみんなによろしくお願いします!と言ったら拍手が起こった。
まじ歓迎モードでアゲって感じ!!!!!!
「じゃあ、ここからは業務について説明しますね。」
「うん、よろー……」
北杜さんのプレートを見てうちは絶句した。
【和泉北杜 ランクSSS】
「え、北杜さん、あのー。」
「ああ、申し遅れました。ここの代表をしています。和泉北杜です。
よろしくね、ティアラさん。」
そ、そういうのは先にいえっつーーーーの!!!!!!!!!!!!!!!!!!




