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天使、はじめました☆  作者: 大牧ぽるん


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第十二話 うち、席変わってあげたい

桜花さんと宗さんがそっと道の縁に車を止める。

くるりと宗さんがうちを確認したけど、寝ているふりをした。

ほっとした顔をして宗さんが桜花さんの方を向くと、もう涙でぐちゃぐちゃの少女のようになっていた。

宗さんは黙って、背中をさすった。何か話すまでゆっくりゆっくり待っていた。

うちも息を潜めて待っていた。



桜花さんがゆっくり息が整ってきて、宗さんの手を握り「ありがとう。」といい、振り払った。



「灯里がいるみたいだった。今日。誘ってみて、こうやってショッピングモールに来て。

ああ、これがいいねと言いながら買い物して、カフェに行って、お話して。楽しかった。」

「……ああ。俺も楽しかった。」

「いつもの買い出しじゃなかった。そう、こうやって娘と同じ歳の子と話して、過ごせて。

いや、わかってる!灯里じゃないんだって!でも思っちゃったの!!

ティアラちゃんと、灯里を重ねてしまった。

そうやって1日過ごしてしまった。罪悪感と、でも、嬉しくて……。」



うちはテディベアはあかりさんのものだとはっと気づいた。

そうか、だから後部座席にあるし、シートベルトって言ってたのは娘さんに言ってるみたいにしていたってことか。

今日言われた一言一言事に納得がいく。



「……俺も否定はしない。少し意識はした。灯里を。痛いほどわかる。

でも、ティアラちゃんは……」

「ティアラちゃんだから。灯里じゃない。」



凄く重い空気。

うちもどうしたらいいかわからなかった。

起きるタイミングだってわからない。これからだって……



すると、桜花さんが急に宗さんの目を見ながら言った。



「そうよ、全部私が、私が。いけなかったわね。ごめんなさい。」

「違う!」

「そうなの!!!だって、私が、私達があの時、殺されなければ……!!!!」



え……?殺されて?



宗さんは言葉に詰まったようだった。

うちもショッキングな事を聞いて、動揺してしまった。

どういう事?多分あかりってのは娘さんだよね?

でご存命で二人だけ天国に来ちゃったって事?どうして……



「あの日、灯里をお母さんに任せて…… いつもより遠出をしよって言って。」

「桜花。」

「久しぶりにデートだってはしゃいじゃって!」

「もういい!本当に!」

「そこで通り魔に出会ってしまったのも、あの道を選んだ私のせい!!

灯里を一人にしたのも、貴方を殺してしまったのも!!」

「違う!」

「違わない!貴方は私を庇って最後まで覆いかぶさってくれた!!

貴方が事切れた瞬間、私も……」



うわああああああああと車に桜花さんの悲しみがこだまする。

宗さんはゆっくり桜花さんを抱きしめていた。



そんな…… どうしてそんな事に?

よくニュースでも見る無差別殺人。二人はその被害者って事……?

なんで!こんな優しい人を?

なんで!娘さんがいる人を?

なんでなんでなんで!

今までTVの中の話だった。でもこうやって本当に被害者に会うことなんてない。

こんなにも被害者は苦しくて、それを背負ったままここにいなきゃならなくて。

天国にいるってことはとてもいい方々だったから。

でもこの殺された恐怖や、悲しみ、娘さんをおいてきてしまった後悔を……



そんな悲しいことがあって、娘さんを思い出しながら今日はいたんだ。

うちと…… おんなじ。

そっか、うちらっておんなじなんだ。ある日突然、家族と離れてしまった同士。



うちだって、ママとパパと良く行ったああいった所に行って、はしゃいでさ。

クレープ食べたくってだだこねて、買ってもらったのに食べきれなくってパパが食べきってくれたり。

ママがは靴のサイズの変化にいつもすぐ気づいてくれてすぐに一緒に選んでくれた。

そんな事をうちだって思い出してたよ……



だから一緒。少しならわかってあげられる。



「年に2回会える灯里はもう17歳。もう5歳の灯里じゃない。

でもなんだか成長が見えてしまって。勝手に妄想して。本当……

灯里を忘れた訳じゃない。ティアラちゃんを蔑ろにしたいわけじゃない。

なのに私…… どうしたら……」

「桜花……」



うちは勇気をだして顔を前の座席にひょこっとだしてみた。

二人は「うわあ!!」と声を出す。



「思い出して何が悪いの?」

「ティアラちゃん……」

「ごめん、ぶっちゃけ最初っから聞いてた。あのさ、桜花さん宗さん。

うちもごめん。二人をママとパパみたいだなって思って今日過ごしてた。」

「え?」

「死んじゃった理由もとっても怖かったと思うし、苦しいだろうなって。

うちは即死っぽかったからあんま痛かったなあーとかなかったけど。

そこはごめんなさい。触れてもわかんない人に何いってんだってなったら嫌だから一旦おいておくね。」

「……ありがとう。ティアラちゃん。」

「ううん。でも思い出してもいいと思う。これからお互いにね。

だからこうしない?うちは大島ティアラで、二人は桜花さんと宗さん。

これだけはちゃんと尊重していくって約束するんは?」



宗さんが桜花さんをゆっくり見ている。



「だからうちを娘扱いしない!うちもママとパパ扱いしない。

ちゃんとうちは二人の、友だちになりたい!!!」

「友だち…… か?」

「娘と同じ歳の?うふふふ、面白い事言うわね、ティアラちゃんは。」

「でっしょー。でも、本気だから。どうかな?」



二人は向かい合ったまま笑いあった。



「ティアラちゃん、お願い出来るかしら?」

「俺からもよろしく頼む。」

「やったあ!天国最初の友だち!あ、ちょっとまって。あかりちゃん…… って左に座ってた?」

「え、ええ。」

「なら。」



うちは座布団を全て左にのせ、テディベアを左座席に座らせた。

そしてしっかりシートベルトをしめてあげた。



「こうしてあげたら?一緒にいるんだから。うちはこっち座るし。」

「ティアラちゃん……」



二人は座席から降りて、左の座席の扉をあける。

ちょこんと座っているテディベアを桜花さんが撫でる。



「灯里…… 灯里。」

「このぬいぐるみは灯里の誕生日にあげたものでお気に入りだったんだ。

でも棺桶に入れていたようでこちらにあるんだ。きっと一緒にいたいと思ってくれたんだと思ってずっと大切にしてきたんだ。

こうしてあげても、良かったんだな。」

「うん、思い出すのは誰にも責められないよ。だからさ、大切にしよ。」

「うん、うん……」

「これで、灯里の席は空けて置けるな。いつ来ても。」

「そうよね、ここは灯里の、席だから。」




家族が揃ったみたい。

うちが出来る事はこんなことしか無いけど、二人が幸せそうでこんな仕事ができたら良いなと思った。



満天の星。

キラキラうちらを照らしてくれてる。祝福してくれてるくね?





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