表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件  作者: 羽黒楓


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/46

第7話 到着!

「着いたーーー!」


 錆ついたブレーキの音とともに、零那(れいな)は自転車をドアの前に停めた。

 スマホを見ると、所要時間はあと一分まで減っていた。

 間に合った!

 あんまり遅れると低評価されちゃうのだ。

 今回は時間ぴったりだからきっと低評価はされまい。

 いやいや、まだ油断は禁物だ。

 見ると、今回の配達は手渡しとなっている。

 ここで接客をしくじるとやっぱり低評価をくらってしまう。

 ドアの前にたち、コホンと空咳をして、「あーあー」と小さく発声練習。

 とびっきりの笑顔を作って――。

 ドアをノックしようとしたとき。


「ぐるるるる……」


 左側から唸り声が聞こえた。

 そちらに目をやると、そこには熊の妖怪がいた。

 正式名称は知らないけど、零那(れいな)羽衣(うい)は『化け熊ちゃん』と呼んでいる奴だ。

 そいつは今にもこちらへ襲い掛かろうと体勢を低くし、零那(れいな)を睨んでいる。


「うーん、ごめんね、今は遊んでいる時間がないんだ。ちょっとあっち行っていて」


 零那(れいな)はそう言って、首からぶら下げていた法螺貝を口に当てる。

 そしておもむろに吹き始めた。


 プオオーーーーン、プオオオオーーーーーーン……!


 その瞬間、周辺の空気が変わった。

 本来ならば、森林が広がる山奥で吹くのが法螺貝である。

 ダンジョンの通路は幅数メートルはある。

 しかし、山に比べればはるかに狭い空間でしかない。

 そんなダンジョンの通路内に、その音はとんでもなく大きく響き渡った。

 壁や天井で反響し、耳をつんざくほどの大音量となった法螺貝の音は、ダンジョン内の空気を大きく震動させた。

 それだけではない。

 ここにもし零那(れいな)以外の人間がいたら、透明なはずの空気が青色に色づくのを感じただろう。

 辺り一帯を清浄な空気に変えているのだ。


 神を呼び、邪を祓う、それが山伏(やまぶし)の法螺貝である。

 零那(れいな)から見て格下の怪異は、この音を聞いただけですくみ上がり、逃げ出す。

 化け熊ちゃん――アルマードベアも、例外ではなかった。

 零那(れいな)が吹く法螺貝の音色を聞いただけで、鎧のように固いアルマードベアの体毛が逆立った。

 並の探索者相手であれば秒殺できるほどの力を持つ熊のモンスター。

 しかし、そのアルマードベアは今や、圧倒的な恐怖に襲われていた。


 零那(れいな)はそのアルマードベアを睨みつつ、法螺貝と反対の手で持っていた錫杖をドン! と地面に突き立てた。

 それと同時に、錫杖の頭に取り付けられた金具がシャン! と鳴る。

 ただそれだけでアルマードベアはおびえて浮足立った。


「こら! あっちに行ってなさい!」


 零那(れいな)が叫ぶと、巨大な熊のモンスターはビクッとして、熊どころか、まさに脱兎のように逃げ出した。


 それを見届け、零那(れいな)はうんうん、と頷いて、


「いい子だね」


 と呟いた。


 零那(れいな)にしてみれば、化け熊程度、戦うに値しないほどの弱い生き物なのである。

 長いポニーテールをかきあげて形を整え

ると、零那(れいな)はドアの前で改めて飛び切りの営業スマイルを作り、ドアを強くノックした。


「お待たせ致しましたー! ウービーイーツでーす!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ