表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件  作者: 羽黒楓


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/46

第35話 羽衣の実力

 羽衣(うい)は、その小さな姿と比べると巨大に見える錫杖(しゃくじょう)を片手で掲げる。

 彼女の姿がほのかに光った。

 ふわふわの長い髪の毛が重力を失ったように宙で舞う。

 そして、羽衣(うい)は声を張り上げて叫んだ。


「天に満つるは日月星辰にちげつせいしん、地に満つるは五行百神。五芒の星宿よ、人に仇なす(あやかし)を打ち倒さん!」


 すると、羽衣(うい)の持っている錫杖(しゃくじょう)の頭部分から、何かが浮かび上がった。

 それは、青く光り輝く線で描いたような五芒星。

 羽衣(うい)はさらに叫ぶ。


急急如律令きゅうきゅうにょりつりょう!!! セーマン!!!」


 その瞬間、青い五芒星が弾かれたように杖の頭から放出された。

 それはヒュンヒュン! とまるで手裏剣のように回転してまっすぐ鋼鉄蜘蛛(アラクネ)へと向かっていく。

 そのスピードはゆうに時速200キロを超えているだろう。

 足を三本失っている鋼鉄蜘蛛(アラクネ)は、それを避けることができない。

 五芒星が鋼鉄蜘蛛(アラクネ)の胴体に当たり――そして、瞬時に真っ二つにした。

 激しい火花を散らしながら、二つになった鋼鉄蜘蛛(アラクネ)は床に倒れて二度と動かなくなった。


〈妹ちゃんもすげー!〉

〈すごい魔法だ〉

〈っていうかセーマンって言った?〉

〈セーマンってドーマンセーマンのセーマン?〉

〈それって山伏(やまぶし)なのか?〉

〈修験道というより陰陽道だよな〉

〈急急如律令は陰陽師の詠唱だぞ〉



 コメントを聞いて、零那(れいな)は笑って言った。


「そうなのよ。羽衣(うい)はね、修験道の修行頑張ってたけど、修験道ってさ、陰陽道の影響も受けているのね。で、陰陽道の勉強するうちに修験道より陰陽道にハマっちゃったみたいでさ……」


 命を助けられた虹子は、その場でパチパチと拍手をして、


「すっごーーい! 羽衣(うい)ちゃん、ありがとー! やば、すご、羽衣(うい)ちゃんも強い! 危険レベル4のモンスターだよ? お姉さまだけじゃなくて羽衣(うい)ちゃんもヤバッ! 私、今死んだと思ったのに……」


 そう言って自分の腕をさする。

 その手はまだ少し震えていた。


〈たしかに〉

〈あっさり倒したけど、危険レベル4を倒した人類ってこれで二人目だぜ〉

〈なんだこれ、俺の中の常識がこわれるなあ〉

〈信じられない。鋼鉄蜘蛛(アラクネ)を低級モンスターみたいに一蹴したぞ〉

〈よく考えたら妹ちゃんもSSS級なんだよな〉

〈俺、そのランク付け、なんかの間違いだと思ってたけど、全然合っているな〉


 虹子は続けて羽衣(うい)に聞く。


羽衣(うい)ちゃん、これって陰陽道なの? 羽衣(うい)ちゃんって、陰陽師なの?」


 羽衣(うい)は頬を赤く染めながら、


「いえ、山伏(やまぶし)山伏(やまぶし)なんですけど……。陰陽道の方が自分に合っているというか……」

「へーかっこいい! いいじゃんいいじゃん、陰陽師!」

「陰陽師っていうほどのもんじゃないです。基本は修験道なので……。でも、どうしても陰陽道の技、使っちゃうんですよね……」

「へー、そっちのが才能あるからじゃない?」

「いえ、というより、陰陽道の技って個人的に……」

「個人的に、なに?」


 羽衣(うい)はさらにほっぺたを真っ赤にして言う。


「かっこいいから……」


「えー、山伏(やまぶし)もかっこいいわよ」


 零那(れいな)はほおを膨らまして言う。

 

 そこに、編み込みサイドポニーの幽霊少女も、虹子と同じように拍手しながら、


「どっちもかっこいい! 助けてもらっちゃったね! ね、ね、あなた、名前なんていうの?」

「名前……? 羽衣(うい)です。三日月羽衣(うい)


 羽衣(うい)は普通に答える。


「え、名前なんて教えちゃって大丈夫?」


 不安げに聞く虹子に零那(れいな)が言う。


「大丈夫よ、名前くらい。私は三日月零那(れいな)。この子の姉ね。こっちの人は甘白虹子さん。で、あなたの名前は?」


 ゴスロリ幽霊少女はそれに答えようとして――。


「ええと、私は……。あれ? え? あれ? なんだっけ……。あれ、私、自分の名前思い出せない……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ