表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/46

ep.8 引越し

アレムの誕生日パーティーは、贈り物で空気が一変した。メイは言葉に詰まる2人に真相を聞けなくて——。

「引越し!?」

突然の発言にメイは面喰らった。アレムが恐る恐る届いた木箱を開けると、豪華な金のブレスレットが入っていた。そのブレスレットを手に取ったアレムが急に言いだしたのだ、「引越しましょう」と。

「間違いない。アイツにこの家がバレた。このままここにいるのは危険すぎる」

「お……父さんなんだよね?贈り物くれた人って。何が危険?」

メイはアレムとユラを見た。2人とも言葉に詰まっているようだ。

「メイ。嫌ならあなたはここに1人で住んでもいいですよ?」

「えっ……うんん、一緒に行きたい。魔法の修行したいし……」


「長くこの街にいすぎたのかもしれないね」

ユラは小さな声でそう呟くと、顔を上げてメイに向かって笑顔を作った。

「メイ、次はどんな所に住みたい?」

ユラのその顔は、これ以上ヴァシルスの話をしないでくれと言っているようだった。


(アレムはお父さんから逃げている?ユラと一緒に?どうして?私には言えない秘密があるの?)

メイは聞きたいことがたくさんあったが、言葉を飲み込んだ。


その夜静かに、引越しの準備が行われた。ユラの魔法であっという間に荷物がまとまっていった。たった2日間しかいなかった家だったが、メイはとても寂しかった。


「よし、ここが僕らの新しい家だよ」

ユラが魔法を唱え、瞬間移動した3人は、緑が鬱蒼と生い茂った森の中に降り立った。目の前には月光に照らされた古い2階建ての木造の家があった。まるで幽霊屋敷だ。ユラの笑顔がどんどん引きつっていき、足はガクガクと震え始めた。


「ねえ、勝手に開けていいの?」

玄関のドアノブに手をかけようとしているアレムを、メイは引き止めて言った。

「ええ。ここは私の……、親族が昔住んでいた家なので」

背中にしがみつくユラを従えて、アレムは事も無げに言い、玄関を開けて中へ入った。メイも2人に続いた。

家の中は全てが木製だ。床や壁、ドアや階段、窓まで。でも古いので所々カビが生えたり、朽ちていたりととても住める様子とは思えない。


「思ったより状態が悪いですね」

「メイ!そこの床危ないよ!」

「キャア!」

朽ちた床板でメイが階段から落ちそうになったものの、ユラが抱きかかえて難を逃れる場面もあった。


「できるかわからないけど、このままじゃ住めそうにないから」

ユラは杖を取り出して呪文を唱えた。長く詠唱しているのに、何も起こる気配がない。ユラの顔は徐々に険しくなっていった。そのうち、あたりが明るくなっていき、夜が明けようとし始めた。無理なのかな、もうやめさせた方が……アレムとメイがお互いをチラリと見た瞬間、ユラの足元に青色の魔法陣が浮かび上がった。そして、真っ青な眩しい光に包まれ、木の家はまるで新築のように蘇った。


ユラは魔力を使いすぎたのか、その場に倒れた。「ユラ!」メイとアレムが駆け寄る。「流石に疲れた……へへっ。ちょっと寝てこようかな」ユラは立ち上がり、フラフラした足取りで2階へ行った。アレムは音もなくメイの背後に立ち、

「あなたもこういうことができるようにならないと、ここを去ってもらいますからね」

と耳元で囁くと、

「あなたは1番小さいあの部屋で寝てください。弟子ですから」と、キッチンの横にあった4畳ほどの家事室を指してニヤリと笑った。


(ユラはあんなに優しいのに……)メイはユラを追いかけ、階段を上っていくアレムに「あっかんべー」と舌を出した。

次回、新キャラが登場する予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ