追加ep.3 シェリの屈辱の日々
アレムは、シェリを副団長に任命した。なぜ反逆者である自分を副団長にしたのか。シェリはアレムに問いかける。
「なぜ俺を副団長にした?」
騎士団の訓練を見守るアレムは、シェリに後ろから声をかけられた。
「あなたはいつ裏切るかわからないので、目を光らせるためです」
「あ?」
シェリはアレムを睨んだ。
「というのは冗談ですよ。そんなに怖い顔をしないでください。私は幼い頃から人との関わりを絶って生きてきた引きこもりなので。 団員の相談事などには貴方の方が乗れると思ったんです」
アレムは素振りをする団員らを、見つめて言った。
「それに……」
「それに?」
「あなたの強さは私が一番よく知っています」
「ふんっ」
シェリは口の端を上げた。
「もっとストレートに、あなたが師匠なので、ぐらいのことは言えないのか?」
「いえ、師匠だとは全く思っていません!」
「おい、全くって言ったな?」
シェリとアレムは笑い合った。
「あ、そういえば。メイに飛ばされた先で、ひどい目にあったと前に言っていましたが、どんな目にあったんですか?」
アレムの問いかけに、シェリは眉間にシワを寄せた。
「ふん、忘れてかけてたのに思い出させんなよ」
シェリは壁にもたれかかった。
「あの夜、俺が飛ばされたのは東の小国の中でも、特に治安の悪いスラム街だったんだ……」
シェリは腕を組み、遠い目をした。
「雨が降ってたんで、俺は目の前にあったバーに入った」
「『クソ! こんな汚ねえ街に飛ばしやがって!』俺は机を叩き、酒を頼んだ。すると、『あら、あなた。足を怪我してるんじゃない?』と、店員の女が声をかけてきた。女は美人だった。しかもグラマーだ。今晩は泊まる場所も金もない 。俺は、この女の世話になろうと考えた。女を口説くことなんて、俺には容易いからな?」
アレムは「さあ?」と言い、首を傾げた。
「だが、この女がひどい女だった。俺に安酒をガンガン飲ませる。なぜか身体が熱くなる酒で、俺は熱くてたまらなくなって、服を脱いでいった。そして、とうとう下着1枚になった。すると、屈強な男がやって来て、店の外に放り出された。雨の中だ。濡れると今度は信じられないくらい寒くなった。店の戸を何度叩いても、明かりは消え、物音ひとつしない。それなのに街を行く人々は、俺を全く気に留める様子もない。あの辺じゃそんなことが日常茶飯時なんだ」
「そんなことが日常茶飯事か、どうかしてるな」
「そうだろう! 俺は俺のことを鼻で笑った男を殴り、身ぐるみを剥がし、そいつの服を着てゴミを漁った。そうして何とか生き延びながら、バルドルアを目指したんだ」
シェリは思い出しながら腹が立ってきたようだ。
「それもこれも、メイが俺を飛ばしたせいだ!」
シェリの大声に、素振りをしていた団員たちは、驚いて素振りをやめた。
「いやいや、よくわからない店に入り、女の言うまま酒を飲んだ、あなたのせいでしょう?」
アレムは団員に手を振り、こちらのことは気にするなと合図した。
「うるさい、うるさい! お前の正論はもう聞き飽きた!」
「そう言えば聞きましたよ? あなたが眼帯になったのは、女の剣士に見惚れたからなのでしょう?」
「!」
「先王様がおっしゃってましたよ。シェリは女を見るとスキができる。だから騎士団を辞めさせたのだと」
「何? そうだったのか……怪我をしたから、見捨てられたのだとばかり……」
「自分が女に弱いことを自覚してくださいよ」
「うるさい……」
「これから、助力をよろしくお願いしますね? シェリ副団長」
「ふん、いずれ返り咲いてやるよ、団長に」
「そうならないよう、私も努力します」
「ふんっ」
シェリとアレムは笑い合った。
追加エピソードは後1つ、シロについて書きます。




