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追加 ep.1 母・ライラとの再会

ep.41にある、アレムが母・ライラに会いに行く話の詳細です。

「母に報告しなくては。伝言もあることだ」


そう言って、アレムは離れに向かった。

コン、コン。ドアをノックする。すぐに「はーい」という、きれいな声が聞こえた。

しばらくして、髪の長い、中年くらいの女性が顔をのぞかせた。

アレムはひと目見て分かった。それが、母・ライラだと。

ライラもひと目でわかったようだ。「あ……」と、小さな声を出し、よろけそうになりながら飛びついてきた。

大きな潤んだ目が、アレムをジロジロ見た。

「アレム?」

「ええ」

アレムの両腕を掴む、細い指が震えている。

「ああ……こんなに立派に……」

それ以上は涙がこみあげてきて、ライラは言葉にできないようだ。


「ひさしぶり……お母さん」

”お母さん”と呼ぶことがあまりにも慣れていないので、戸惑う。呼び方を迷ったので、少しだけ間ができた。

フフッ。ライラはそんなアレムを見て笑った。


目尻や口元に深いシワができているが、その笑顔は思い出の母と重なる。

母は母だ。そう思うと、アレムの目頭が熱くなった。

しかし、同時に不安が湧いてきた。


「今日は……言わなければならないことがあって……」

アレムが顔を曇らせたので、ライラは何か気づいたようだ。

「もしかしてヴァシルスのこと?」

「……ええ」

「入って? 座って話しましょう」




「ほんの数分でしたが、アイツはこの国の王になりました」

案内された居間にで、ヴァシルスが王宮で起こした出来事を、アレムは話した。

最後は自分が手を下したことも。


「私は何度も言ったのですよ。王妃になりたいとは思わないと」

話を聞き終えたライラは、額を右手で覆った。


「私は家族と穏やかに暮らしたい。アレム、あなたと一緒に暮らしたいと言い続けていました」

「アイツは?」

「ワシはそなたの家族ではないのか? と聞かれました」

「それでなんと答えたのですか?」

「あなたも私の家族です。でも、アレムと一緒の方がいいと言い続けました」

「アイツは、お母さんと2人で家族になりたかったのでは?」

「腹を痛めて、私がアレムを産んだのです。アレム抜きで家族を作るなど、私には考えられない」

「……どこまでも、そうして平行線だったのですね」

「私もあの人も頑固なのです。似た者同士だったのよ……」


ライラは、力が抜けたような顔になった。

「そう、亡くなったのね……」

母は悲しんでいるようだ。室内は手入れが行き届き、豊かな暮らしぶりが垣間見える。気に入らないと、人でも物でも殴る蹴るアイツが、この家では、いっさい暴力などしていなかったのかもしれない。


「アレムとヴァシルス、家族3人。一度でもいいから食事がしたかった……」

ライラは涙を流した。

「私は何をどう、間違えたのかしら」

アレムはライラの手を取った。

「間違えてなどいないと思いますよ」

なだめるように、アレムはライラを見つめた。

「私はお母さんとの日々を取り戻したい。これから、私もここに住んでもいいですか?」

「ええ、もちろん」

ライラは強く手を握り返した。


コン、コン。

戸を叩く音がしたので、アレムは慌てて涙を拭き、ドアを開けた。ヤシンが一礼した。

「アレム様。女王様が、家族ランチにご招待したいとのことです」

赤い目を見られたが、ヤシンはすぐにそらして言った。


振り返ると、母はドアの近くまで来ていた。

「ぜひ、いってらっしゃい。また後でね」

母はにっこりと笑った。

「ええ、いってきます」

アレムも笑顔になった。

完結しましたが、こんな感じの後日談を、あともう少し追加したいと思っています。

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