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ep.40 死者の蘇生

メイの危機に飛び出し、命を絶ったのはユラだった。遂に、自分が王となったことを喜ぶヴァシルスだが —— 。

「ライラはずっとアレムのことばかり気にしている」


ヴァシルスは小さな離れを見つめて言った。

「今日は何を食べさせたのか、今日はぐっすり眠れたのか、今日は元気にしているのか。ワシが愛の言葉をいくら囁いても、数秒後にはアレムの名を口にしている」

アレムは、ヴァシルスの視線の先を見た。あそこに母・ライラがいるのだろう。


「ワシは王になりたいのではない。ライラを王妃にしたいんだ。そうすればきっとライラはワシを見てくれる。愛してくれる。ワシに笑いかけてくれる」

寂しそうなヴァシルスを、アレムは鼻で笑った。

「バカバカしい。そんなことのために多くの命が奪われたのか?」

「なんだと? お前も嬉しいだろう、アレム。父が王に、母が王妃となるのだ」


「……嬉しい訳が無い……。私はずっと母に会いたかった。母が私に会いたがっていたなんて知らなかった」

アレムは涙を流した。


「私は……私はもう二度と両親に会えない」

メイが、ユラを抱きかかえたまま、怒りに震える声で言った。

「でもアレムは、お互い生きてるのに、お互い会いたがっていたのに、あなたが愛されるために会わせなかったなんて、どれ程自分勝手なの」

ヴァシルスはメイを睨んだ。

「あなたは王になる資格なんてない」

メイはヴァシルスを睨んだ。

「国民が何を大切にして日々を暮らしているのか知らないでしょう? 愛する人と当たり前の日々を普通に過ごしたいんです。寝て、起きて、ご飯を食べて、働いて、遊んで。今日はこんなことがあった、あんなことをした、それを愛する人に話す。そういう普通の暮らしを大切に、国民は暮らしているんです。それを守るのが王様でしょう?」

ヴァシルスは眉間にしわを寄せた。

「私も、ユラも、アレムも、シロも。それが何よりも大切なことを知っている。それができなかった私たちだから……」


「王になる資格はないか……」

ヴァシルスはアレムを見た。

「そんな小娘にも言われるとはな」


アレムはヴァシルスに剣を振るった。ヴァシルスは膝から崩れ落ちた。抵抗しなかったように見えた。王宮の庭に、ヴァシルスの血が広がって行くのを、アレムはただ見つめた。

「たった一瞬でも……ワシが王になったことをライラに伝えてくれ、アレム」

ヴァシルスは目を閉じた。


王宮がシンと静まり返った。

「終わったね、仇討ち」

シロがやって来た。

メイとアレムとシロは、眠っているかのようなユラを見た。


「ユラ……」

「死者の蘇生、できる人がいなくなってしまったね」

「……」


「できるかもしれない」

メイが呟いた。

「やり方は教えてもらったの。成功したことはないけど、シロの魔力を借りればできると思う」

メイは力強くシロを見た。

「2人で一緒に、やってみよう、シロ。私たち、ユラの弟子だもの」

「うん」

差し出したメイの手を、シロは取った。


「ユラが甦れば、ユラが亡くなった人を蘇生してくれるはず」

「うん」

メイとシロは、まずユラの蘇生に取り組んだ。7日以内という条件付きだ。飲まず食わずで丸1日、休憩なしで蘇生を行なった。が、成功しなかった。

他の人々も7日以内に蘇生させるには、できるだけ早くユラを蘇生させたい。アレムや、ユーリ・ユリヤ、オゼンやヤシン・ピピの魔力も借りながら、2日目も寝ずに蘇生魔法をかけ続けた。が、ユラは冷たいままだった。


3日目、王宮外へ避難していた使用人たちが戻って来た。事情を話し、全員が手を繋ぎ、ユラの蘇生に一丸となった。が、ユラに変化はなかった。

もう無理なのでは……皆が諦めかけた4日目。夜になった。空に満月が浮かんだ。メイが100回目の蘇生魔法を唱えた。でも。ユラに変化はあらわれない。

メイは我慢の限界を迎え、嗚咽を漏らし始めた、その時。

「ピピッ!」

ピピが鳴き、ユラの手の中で丸くなった。

ピクリ、ユラの指が動いた。

「ん……」

ユラの声を聞いて、メイは泣き崩れた。

ユラは目を開き、その場にいた人々はユラの復活を心から喜んだ。



次回はユラ復活後の世界です。残り2話の予定です。

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