ep.4 ユラの正体
魔法使いユラの弟子になることを許された芽依。ユラとアレムの住む家に迎え入れられた。しかし、実は2人には芽依に話せない秘密があって——。
「ユラ、あなたの身分がバレるような言動はくれぐれもしないように」
「分かってるよ、アレム」
「あくまでも、この辺境の地フィリエに住む魔法使いユラとして」
アレムは辺りを見回し、ユラに近づいて小声で言った。
「バルドルア王国の第一王子であることはご内密に」
「しつこいなー、分かってるって」
芽依をユラとアレムの住む家へ迎え入れ、余っていた部屋をあてがい、寝かせた後、ユラは風呂に入った。その風呂場へ突然アレムはやってきて、コソコソと内緒話を始めた。
「のぼせちゃうからもう出たいんだけど?」
「私も今後は執事としてではなく、もっとフランクに接しますよ?」
「だったらその敬語をやめたら?」
「いえ、これだけは絶対にやめません」
「なんでだよ!」
ユラがバシャンと湯を叩いたので、アレムの顔はびしょ濡れになった。
「ごめん」
「いえ」
乱れた深緑の髪をかき上げながら、アレムは立ち上がった。
「私もすぐ入りますので」
「僕が出てから入ってね」
「はい……昔はよく一緒に入って、私がユラを洗ってあげたのに……」
「そんな昔の話はいいよ」
「いいですか、ユラ。くれぐれもメイに……」
「ああ、もう分かったって!」
ユラはうんざりして風呂から出た。
ユラがこのフィリエの村で暮らすようになったのは6年前。その時からずっとアレムと2人暮らしだ。
アレムは子どもの頃から、騎士団に入れるほどの剣の腕前だったが、なぜかユラを慕い、護衛執事として付いてきてくれた。
「そういえば、もうすぐアレムの誕生日じゃなかったけ?」
「明後日で22歳になります」
「ギャッ!」
体を拭いていたユラの背後から、気配もなくアレムの声が聞こえてユラは飛び上がった。
「もう!急に後ろから話しかけないでって言ってるじゃん」
「すみません、ではお風呂いただきます」
アレムはたくましい体を微塵も隠しもせず風呂へ向かった。
「もう22かぁ……そういえば、メイは何歳なんだろう?」
翌朝。ト、ト、ト、ト、ト……
包丁で何かを切るような、料理する音でメイは目覚めた。
こんな音を聞きながら起きたのは何年ぶりだろう。それこそ両親が亡くなった日の朝、以来だ。
固そうだと思ったベッドは、思いのほか気持ち良く、メイは久しぶりにぐっすり眠れた。昨晩ユラに貰った襟のない白いシャツも柔らかくて着心地が良い。
「夢じゃなかった。本当に私、魔法使いの弟子になったんだ」
寝癖だらけの髪を整え、メイは部屋の戸を開けた。キッチンではユラとアレムが朝ごはんの支度をしていた。
「あ、おはよう、メイ」
「弟子のあなたが一番遅く起きてどうするんですか?」
「ごめんなさい……おはようございます……」
ローブもなく、白シャツに黒ズボン。昨日よりラフな格好をしたユラとアレムだが、相変わらずユラはキラキラして神々しく、アレムはピリピリして近寄り難い。
「もうすぐ朝ご飯できるから、顔洗って来ていいよ」
「うん」
「あ、メイ。ご飯の後、2人で出かけたいんだけどいいかな?」
「え?」
ユラがメイを突然誘ったので、アレムの右の眉がグイッと上がった。
次の話はユラとメイのデート?のような回になりそうです。