ep.38 ユラを守る
王国騎士団の裏切りを知り、戦いへ向かうアレム。一方シロは、ヴァシルスに「仇を討つ!」と宣言して—— 。
「アレムとたくさん修行したんだ」
そう呟くと、シロは空へ飛んだ。
「魔法が使えない奴とは、こうやって距離を取れば良いんだ。手も足も出ないだろう?」
庭木より高い位置で、シロはヴァシルスに杖を向けた。
「炎魔法! 炎魔法!」
炎撃は簡単に避けられた。
「距離を取れば取るほど、当たらんぞ?」
「いや、当てられる」
1度は避けた炎撃が、カーブしてヴァシルスの元へ戻ってきた。ヴァシルスはその1つを避け損ね、左肩に喰らった。
「くっ……」
「お前の命が尽きるまで、ずっとこれをやってやる! 炎魔法」
「ならば」
女王を植木の影に運んでいたユラやヤシンの元へ、ヴァシルスは走った。そして、炎撃が自分に当たる寸前に避けた。シロの炎撃はヤシンの背中に当たった。
「ぐわぁっ!」
ヤシンはその場に倒れた。
「ガハハハッ、仲間がやられたぞ?」
「お前のせいだろ!」
シロはカッとなり、今度は近づいて炎撃を当てしようとしたが、ヴァシルスの斧で箒を真っ二つに割られ、地面に落ちた。
シロは走って逃げたが、追いつかれ、ヴァシルスの巨体に乗られ、身動きが取れなくなった。
「がはっ……」
「この棒切れがないだけで、お前らは何もできんのだろう?」
ヴァシルスはシロの手から杖を奪うと、真っ二つに折った。そして、シロの顔を覗き込んだ。
「お前は見込みがある。殺るのが惜しい。わしの部下になれ。良い暮らしをさせてやるぞ?」
シロはヴァシルスと目を合わせた。
「ソウレンとの暮らしは、さぞ貧しかっただろう?」
「いい家で……肉をたらふく……」
「ああ、そうだ!」
ヴァシルスの笑顔に、シロはニカッと笑った。
「それはいいな! でもいらん!」
ヴァシルスは深い溜息をついた。そしてシロの首に剣を振り下ろそうとした ——その時。
槍のような水が、ヴァシルスの剣を弾いた。シロとヴァシルスが振り向くと、メイが水を体に纏っている。まるで青い大蛇が体に巻きついているようだ。
剣を拾おうと、ヴァシルスは立ち上がった。しかし、手が痺れていて思うように持てない。
メイはヴァシルスの前で止まった。
「何だ? 小娘がわしと戦うつもりか?」
ユラはメイを助けようと走ったが、駆けて来たシロにとめられた。
「女王を蘇生していたんだろう? 続けたほうがいい。メイもたくさん修行したんだ、大丈夫」
「でも……」
「ユラがいなくなったら、誰が蘇生するの? 蘇生できるのはユラしかいないんだ。ユラは殺られたらダメなんだ。出ていったらダメだ」
ユラはメイを見た。
ヴァシルスが闇雲に振り回す斧を、メイは水で次々と弾いている。
「ヴァシルスは怖いんだ。僕は何度も奴に殺されかけた。母上やアレムが助けてくれたり、運が良かったりして、たまたま生き延びたけど。僕はずっとヴァシルスが怖かった。だから僕は王宮を出たんだ。そんな奴とメイが戦うのなんて、見てられない」
「だめだ、ユラ、耐えて!」
王宮の廊下で、シェリは横たわっていた。意識が朦朧とする中、思った。
目の前で繰り広げられる光景は果たして現実だろうか、と。
剣を1回振るっただけで、4・5人の騎士が血しぶきをあげ、倒れていく。これまで何度も戦場へ赴いたが、これほど一瞬にして敵を一掃する剣士はいなかった。
ヴァシルスに無理やり連れて来られ、嫌々剣を振るっていたあの痩せ細った子どもが、こうなるとは誰が予想できただろう。
アレムが進む道には、倒れた騎士によって道ができていた。
「わしが王になったら、お前を再び騎士団長にしてやる」
ヴァシルスにそう言われてついて来たが、それはもう叶わない。アレムによって、王国騎士団は殲滅だ。
「何がお前をそこまで強くさせたんだ?」
シェリは呟くと、目を閉じた。
王宮に残る騎士団はユーリ様・ユリヤ様に任せよう。騎士団を次々となぎ払い、アレムは庭へとやって来た。
ユラやシロ、女王は無事だろうか?
「!?」
アレムは自分の目を疑った。ヴァシルスに対峙しているのはメイだ。
「メイ!」
アレムはメイの元へ走った。
次回が本作一番のクライマックスかと思います。




